富士山レーダー、今月で引退「35歳」老朽化で

 日本の最高峰から35年間にわたって台風などを観測してきた富士山頂の気象レーダ ーが今月いっぱいで業務を終える。過 酷な建設作業の様子は、気象庁の測器課長だ った新田次郎の小説「富士山頂」の題材にもなった。だが、老朽化した設備を更新す るには多額の費用がかかるうえ、気象衛星や観測技術の進歩もあり、車山などに新設 されるレーダーに仕事を譲る。

 富士山レーダーは東京五輪が開かれた1964年に完成した。戦後、伊勢湾台風など 大型の台風が相次いだことから、本 州の南海上をよく見ることのできるレーダーが 必要となった。当時の技術では、こうしたレーダーはなるべく高地に置く必要があり 、富士山頂が選ばれた。

 富士山レーダーは、波長が長く出力が大きいため、国内のほかのレーダーの倍の80 0キロ先まで探知できる。南から接近する台風に目を凝らし、進路予想など予報業務 に力を発揮して きた。

 しかし、77年に気象衛星「ひまわり」が登場すると、台風の監視役としては徐々に 存在意義が薄れてきた。

 レーダーは78年に更新したが、再び老朽化。山頂で施設を更新するには経費がかか りすぎることもあり、2基を別の場所に新設することになった。

 新しいレーダーは、長野県茅野市の車山(標高1925メートル)と、静岡県菊川町 の牧之原台地(同156メートル)で、11月1日から稼動する。2基で約7億円か かったが、富士山で更新するとその倍以上が必要だという。

 山頂の測候所では風雨、雪といった地上観測などの業務は続ける。レーダーを覆う白 いドームは、測候所の屋根の一部を兼ねており、そのまま使われる。 (asahi.com 10 月27日11:40)

 ACHP編集部


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