センサー付き 鋼鉄の指先 フリークライミング 平山ユージ |
普通の男性の1.5倍はあるだろうか。指の太さが目を引く。指2本で懸垂が出きる。 取材前日、鉄棒で懸垂を70回した。「最初の目標は100回だったけど、ペース配分を 間違えて果たせなかった。次は絶対クリアします」。分厚くなった指先をヤスリで削 るのが日課だ。
フリークライミングは素手だけで垂直の壁を登る競技だ。プロの平山ユージ(30)は 、10年前から欧州を舞台に世界の競合と渡り合ってきた。
173センチ、66キロ。昨年ワールドカップで初の総合優勝。12月の世界選手権で金メ ダルを目指す。これまでは銀が最高だった。
欧州勢が圧倒的優位に立つ競技で、孤軍奮闘する平山の強さの秘密は?
今年2月、鹿屋体大の山本正嘉助教授(41)=運動生理学=が、平山を含む国内トッ プ4選手(女性1人)の身体能力を調べた。
山本助教授は「特殊な計測器を使用しなかったので数値化出来ないが、平山の強さは 、握力とは違う種類の、指先で引っかける力ではないか」と見る。
「指先の力?」との問いに、平山は一瞬、考え込んだ。時には5ミリ程度のホールド (出っ張り)に指先をかけ、全体重を支える。下見無しの一発勝負がルールで、研ぎ 澄まされた勘も問われる。
「トレーニング前後、指先でぶら下がって身体を刺激する。指先は壁を登るための触 角だから」と平山。なるほど、「センサー付鋼鉄の指先」なのだ。(10月4日 朝日 新聞 朝刊)
ACHP編集部