エベレスト かつては1万5000メートル?

●エベレスト かつては1万5000メートル?  巨大地層ずり落ちた?学術調査隊 頂上付近で断層発見

エベレストに関する新聞の記事を紹介します。

 世界最高峰のエベレスト(中国名チョモランマ、8,848メートル)の上には約2000万 年前まで、巨大な地層があった...。昨年登頂に成功した「チョモランマ総合学術 調査隊」が、その証拠となる断層を発見していたことが明らかになった。調査隊に参 加した九州大学の酒井治孝教授(地質学)の分析で分かったもので、山体は「二層構 造」だったが、上の層が約300万年かけてずり落ち、さらに風雪や氷河による浸食に より、現在の形になったという。酒井教授は「エベレストはかつては15,000メートル 以上有った」としている。

 調査隊は日本、中国など31人からなり、エベレストの地質などを調べる目的で結成さ れ、昨年5月、登頂した。頂上直下の標高約8,500メートルの北壁で長さ百数十メート ルにわたって水平方向の断層を発見、映像や写真に記録し、岩石の一部を採取した。

 断層の上側は、小大陸だったインドとアジア大陸の間にあった「テーチス海」の堆積 物からできた堆積岩、下側は広域変成岩。帰国後酒井教授が分析したところ、大きく 水平にずれた断層面にそって岩石がぼろぼろ壊れており、かつて強い力がかかったこ とが分かった。

 ヒマラヤ山脈がどのようにして出来たかの研究は1980年代にはいって大きく進んだ。 現在の有力な学説では、約五千万年前にインドがアジア大陸にぶつかり地続きとなっ た結果、地中深くで高温高圧にサラされて出来た広域変成岩が盛り上がって堆積岩の 地層を押し上げ、二層構造の山脈になったとされる。

 また現在の山脈の北側に波状に曲がった褶曲地層が有ることなどから、二千万年前こ ろ堆積岩の地層が耐えきれず、北側へずり落ち始め、水平方向の断層を作りながら約 三百万年間ゆっくり落ち続けたと考えられてきた。しかし、決め手となる断層は見つ かっていなかった。

 酒井教授によると、発見された断層は、岩石の壊れ方ずれた方向が有力な学説と一致 するという。堆積岩の厚さは約一万メートル有ったと言われ、酒井教授は「二千万年 の間に山脈全体がしたから盛り上がったことなど様々な要因を差し引いても、エベレ ストは15,000メートルは有った」と説明している。

 科学技術振興事業団の金子慶之研究員(岩石学)は「断層の発見は世界的にも素晴ら しい成果だ。私は堆積岩がずり落ちた後、最近になって山全体が高くなったと考えて いるので、15,000メートル説にはにわかには納得できないが、アイデアとしてはおも しろい」と話している。  (朝日新聞 7月4日)

 先日の「チョモランマの渚」というテレビ番組でも紹介されましたが、中国側の山頂 付近は「チョモランマ層」、その下の黄色の顕著な断層は「イエローバンド層」と呼 ばれているそうです。海底の浅い部分に棲息するウミユリやミジンコの仲間、海底の 砂の化石などが発見されました。

 1万五千メートルという高さは、航空機の通常飛行高度を遙かに上回っています。生 身の人間がその高さまで登るのは不可能でしょう。 

(アルパインクライミングホームページ編集部)


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