高知労山@中田です。
少し前に話題になった長野の県有ヘリ有料化の問題ですが、7月8〜9日に高知
市で開かれた「平成16年度全国山岳遭難対策協議会」の中で、総務省消防庁幹
部がヘリ有料化について話した部分の要約を紹介します。
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発言者は小池敦郎・消防庁防災情報室課長補佐
消防庁で有料化を検討したことはない。
長野の田中知事が1月に夏から消防ヘリを有料化するとマスコミにちらっともら
し、大きな記事になった。先週の朝日にも出ていた。大長山の学生の事故でマス
コミが救助費用の話を記事にしたことで議論がわき起こった。イラクの人質の
「自己責任」論から一部の国会議員から救助費用の有料化という考えも出たとい
う背景がある。
公式見解ではないが、有料化のいくつかの問題点をあげる。
消防組織法上の問題
8条で消防の費用は市町村が負担、つまり無料と言っている。火事や救急車を呼
んでも、費用を請求することはない。山でも同様。山の問題とは別に、消防の任
務に該当しない活動に、受益者から応分の負担をとることは可能ではないかとい
う議論は昔からあったが、消防ヘリは市町村からの支援要請に基づいて出動する
わけであり、要救助者から金をとるのが筋として正しいのかどうかよく分からな
い。
航空法上の取り扱い
2条で航空運送事業とは、航空機を使用して有償で旅客・貨物を運送する事業と
いう定義がある。消防ヘリがとる金が60万なのかガソリン代なのか分からない
が、JALとかANAとかと同じ航空事業者になってしまう。行政機関が事業者
になりうるのか。
警察や他県との調整
警察は有料化は考えていないと言っている。消防だけが有料化すると誰も消防に
助けを求めなくなるのは当然。尾根のどちらに落ちればただというのは、やはり
これはおかしい。消防だけを有料化することはありえない。
対応する範囲が難しい
料金を徴収するべき山岳遭難がどういうものなのかよく分からない。「有料化」
の背景には「安易な救助要請の抑止」があるのだが、やむをえない事故、山小屋
や林業関係者の事故、地元の山菜採りまで定義づけていいのか。範囲が難しい。
長野は最初一律にヘリが出れば金を取る方向で考えていたようだが、議論は止ま
っているようだ。地域を指定して、その中なら山岳遭難とする考えもあるかもし
れないが、60万取られると分かっていたら、その地域から何が何でも外れてか
ら救助要請することもあるし、実費弁償(ガソリン代だけの請求)なら、逆にタ
クシー代わりに使われてしまう恐れもある。海のこともある。
費用徴収コスト
消防ヘリは市町村からの要請に基づいて出動する訳で、費用を請求するなら市町
村がやるのが筋だが、事務負担が増える。職員も減っており、事務が増加するこ
とが山岳遭難の抑制に効果的なのか。「料金を払えばいいんだろう」と、事故に
たいする反省が薄くなってしまう。消防隊員は使命感でやっているので金を取る
ということに賛成しない。(士気に)悪影響を及ぼすことも考えられる。有料化
については財政面からの話が多いが、消防隊員や航空隊員には、有料化に賛成す
るような雰囲気はない。
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