地球温暖化で富士山の永久凍土が縮小 25年間で約300メートル山頂側に後退
富士山(3776メートル)南斜面地下の永久凍土帯が温暖化のため縮小し、この約
25年の間に標高差で約300メートルも山頂側に後退したことが、国立極地研究所
(極地研)や静岡大、筑波大による初の地中温度連続観測で分かった。10日、山形
市で開催中の日本雪氷学会で発表した。
研究グループは極地研の藤井理行教授ら。富士山の標高約2800メートルから山頂
直下までの南北両斜面に、温度センサーを深さ50センチの地中に標高差200メー
トル間隔で計10地点設置。2000年8月から1年間、連続して温度変化を測定し
た。
その結果、南斜面(静岡県側)では年平均が0度になるのが標高3500メートル辺
りで、この付近に永久凍土の下限があることが判明した。
1976年夏の同教授らによる地温の観測では、永久凍土の下限は3200メートル
付近と推定されていた。この25年で、山頂まで残すところ200−300メートル
となり、永久凍土の分布域が大幅に縮小した。
北斜面(山梨県側)では永久凍土下限は3000メートル付近と分かり、76年当時
とほとんど変わっていなかった。
永久凍土の分布域は、冬季の凍結と夏季の融解のバランスで決まる。富士山頂では、
76年から2000年の間に2月の平均気温が約3度も上昇した一方、8月は約0.
2度の上昇に止まり、冬季に凍らせる能力が低下したことが後退につながったとみら
れている。
藤井教授は「山頂でも(表層の融解が進み)地温が零度になる層が、昔より深くなっ
ている。植生への影響や、富士山西側で進む斜面崩壊の加速化が懸念される」と話し
ている。
■永久凍土
高緯度地域や高山帯で、寒冷のため1年中凍結している土壌。シベリアやアラス
カ、カナダなどに広く分布、面積は全陸地面積の十数%に及ぶとされ、かつて陸上
だった海底下にも存在する。シベリアでは厚さが1000メートル近くになる所もあ
る。融解で中に閉じ込められていたメタンなどが放出され、温暖化がさらに加速する
恐れが指摘されている。日本では富士山のほか、立山(富山)や大雪山(北海道)な
どに分布している。(10月10日 サンケイスポーツ)
ACHP編集部
★ お知らせへ戻る ★ INDEXへ戻る