レーサーの片山右京さん、エベレスト登山に挑戦

エベレスト登頂に挑戦する片山右京さん=神奈川県相模原市で

昨年10月、中国・ネパール国境のチョー・オユーに登った片山さん(右)=写真提
供・片山企画

レーシングドライバーの片山右京さん(39)が世界最高峰のエベレスト(8848
メートル)登頂を目指し9日、日本を出発する。ルマン24時間など本業のレース活
動をしながら、登山を続ける。昨年は初の8000メートル峰、チョー・オユー(8
201メートル)登頂を果たした。「日本人として初めて、世界の8000メートル
を超える14峰を制覇したい」。大きな目標に意欲を燃やしている。
 「レーシングドライバーとしてより、山の方がずっと長いんです」。片山さんは
ロッククライミングをしていた父の影響で、小学生のころから山に登っていた。F1
ドライバーだった95年に登山を再開し、マッターホルンやキリマンジャロなどにも
登頂した。

エベレストは今春、登頂ラッシュでわいたが、秋は気温が下がり、登山隊も少ないた
め、登頂率は圧倒的に低い。初挑戦の今回は登頂を助けるシェルパらと登り、800
0メートル付近の最終キャンプ以降は酸素ボンベを使うが、いずれは無酸素・単独登
頂に挑戦するつもりだ。

ネパール側から、高度に体を慣らしながら登り、約5300メートル地点でベース
キャンプを設営。8月末以降にキャンプを出発する。

○「劣」で終わらぬ

片山さんが険しい山に挑み続けるのは、「F1を降りてもアスリートとして終わった
わけじゃない」というこだわりがあるからだ。97年にF1を引退した当時、「セナ
やシューマッハーといった天才にはかなわないと思い知らされた。人間として、優劣
の『劣』というレッテルを張られた気分だった」という。「だがこんなもんじゃ終わ
らせないぞ、という気持ちもあった」と明かす。

一方で、自分への挑戦を通じ、「何でもやればできるということを伝えたい」という
思いもある。片山さんは「頑張ることを恥ずかしがったり冷やかしたりする風潮が大
嫌い。泳ぐのも逆上がりも、人間は反復練習なしでは何も出来ないのに、大人になる
と面倒がったり、失敗を恥ずかしがったりして、できないと決めつける。小利口に
なって言い訳ばかりうまくなる」と話す。

昨年4月に作った「Team UKYO」では、片山さんのチャレンジ精神を、参加
者が体験する活動を開く。7月には、昨年に続き2回目のトレッキングツアーを開
催。神奈川県の丹沢に、3歳の幼児から76歳のお年寄りまで約70人が片山さんと
挑んだ。

○自転車で走破も

今年に続き、来年もパリ−ダカールラリーに挑む。レース以外では、自転車での全国
縦断も続けている。「自転車が終わったら、次はジョギングで」「南極を自転車で走
破して極点まで行ってみたい」と、挑戦への意欲はつきない。妻からは「何がどうし
てあなたをそうさせるのか」と不思議がられるという。

登頂日は、F1の日本グランプリ決勝(10月13日)と重なる可能性がある。「天
気次第では、わざと決勝の日にぶつけようかと考えている。優勝して表彰台の最も高
いところにいるシューマッハーに、衛星携帯電話で『チャンピオンでも、ここまでは
来られないだろ』と、しゃれで言おうかな」。笑いながらも、真剣な目つきで話し
た。

   *

63年5月29日生まれ。東京都出身。身長165センチ、体重60キロ。日大三高
時代は陸上部で中長距離選手。83年にFJ1600でレースデビュー。86年から
2年間、フランス国内のレースに参戦。91年のF3000全日本王者を経て、9
2〜97年までF1参戦。99年ルマン24時間で2位完走。同年から、全日本GT
選手権に参戦中。家族は、妻と長男、長女の3人。活動の模様はホームページで紹介
されている。 (8月7日 asahi.com 15:39)

ACHP編集部

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