NTTドコモは、北アルプス・常念岳(二、八五七メートル)の常念小屋そばに基地
局を設け、十二日から周辺の山小屋やりょう線で携帯電話を使った通話やiモードの
サービスを始める。本格的な登山対象の山では富士山に次ぐ基地局設置という。携帯
電話は遭難時の連絡手段として、県警が登山時の持参を指導している。一方で、平地
と同様に使える状態になることで安易な救助要請につながったり、受信音や通話の声
で山の静寂を壊す、との指摘もある。
同社長野支店(長野市)によると、今回エリアになるのは、常念岳や槍ケ岳(三、一
八〇メートル)、北穂高岳(三、一〇六メートル)の周辺。環境や景観に配慮し、常
念小屋が以前無線電話用アンテナを取り付けていた高さ約五メートルの鉄柱に、衛星
放送の家庭受信用と同程度の大きさの簡易式パラボラアンテナを取り付ける。
基本的に、五月上旬から十月下旬までがサービス期間。毎年その時期にアンテナを取
り付けたり外したりする。
北アはほとんどの地域が携帯電話のサービスエリア外。これまで、場所や天候、向き
などによって、偶然通話ができる状況だったが、県山岳協会関係者からサービスエリ
ア拡大の要望があり、基地局設置を検討してきたという。
携帯電話による救助要請は増加傾向。県警地域課によると、昨年の県内の山岳遭難百
四十八件のうち、四割近くの五十五件が携帯電話からだった。同支店は基地局設置で
「沢筋に入らない限り、平地と同じように安定した利用が可能」とする。
ただ、日光国立公園の尾瀬特別保護地区では同社が、地元群馬県片品村から遭難時の
緊急連絡策として要望を受けてエリア拡大を計画したが、自然保護団体が「静寂な尾
瀬の価値が失われる」と反発。同県も見直しを求め、同地区での基地局設置を断念し
た。
北アルプスでも「家族などに山の様子を伝えたりするのに便利」と、携帯電話を平地
と同じ感覚で使う人は多い。サービス拡大は「山の自然を楽しんでいる最中に、周り
で携帯を使われるのは迷惑」と、携帯電話の利用を敬遠する登山者の反発も受けそう
だ。(7月12日 信濃毎日新聞)
ACHP編集部
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