長野、岐阜両県側がそれぞれ三十日、来年度から、北アルプス・乗鞍岳に至る「県道
乗鞍岳線」と「乗鞍スカイライン」の通年マイカー規制に乗りだす方針を打ち出し
た。シーズン中の渋滞解消と排ガスの影響が指摘される沿道の樹木の立ち枯れなど自
然環境への負荷軽減が期待される。ただ、規制期間や環境対策の財源などの方針が両
県で違っており、規制の効果を上げるには、今後、連携組織の設置といった「乗鞍方
式」の確立が求められる。
環境省によると、国立公園内の車道で複数の県にまたがりマイカー規制を行うのは初
めて。そうしたこともあって、今は両県で規制内容など異なる点も少なくない。
岐阜県は、乗鞍スカイラインの開通時期を現行通り長野県側より二カ月早い五月十五
日とする予定。規制時間も、長野県側が通年で午前六時からとしているのに対し、岐
阜県側は通常午前七時、夏季に限り午前三時半とする方針だ。
また岐阜県は、環境保全の財源として観光バスやタクシーなどに課税する「乗鞍環境
保全税」(仮称)の導入を検討しているが、長野県側は「検討課題ではあるが徴税は
テクニック的に難しい」との姿勢。車両の出入りをチェックするゲート管理など規制
に必要な費用は、独自に設ける協議会の負担金で賄う方針だ。
マイカー規制が始まった後の観光振興の内容や観光客の利便性の面で両県の対応がち
ぐはぐになると、乗鞍岳周辺のイメージダウンにつながりかねない。通行車両の許可
基準も統一しないと規制の意味が薄れてしまう。
乗鞍高原(南安曇郡安曇村)の住民は全体的には「全面規制はやむを得ない」との受
け止めだが、景気回復が遅れる中、観光面で複雑な心境の関係者もいる。「部分規制
だというから賛成してきた。通年規制でいいのは岐阜だけで、長野には何らメリット
がない」と地元旅館の女性。乗鞍スカイラインは来年度、無料化も始まる。規制で公
共交通機関の活用が増えると、道路条件の良い岐阜側に観光客が流れてしまうので
は、との不安だ。
こうした不満を解消していくためにも、今後、住民を交えて両県が合同で積極的に話
し合っていく必要がある。(5月1日 信濃毎日新聞)
ACHP編集部
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