愛犬との登山は規制か容認か 山岳団体検討の条例原案

犬を連れた登山は是か非か―。高山帯の自然保護に向け、し尿や病原菌などが動植物
に与える影響を懸念してペットの犬を連れた登山の規制を含む県条例原案を県内山岳
団体が検討していることに対し、愛犬家が困惑している。犬はかけがえのないパート
ナーで常に一緒に行動したいという愛犬家にとっては「一方的な悪者扱い」が納得で
きないようだ。既に犬連れの登山の自粛は各地で呼び掛けられているが、今のところ
議論のテーブルはなく、共存の道は視界不良だ。

県中高年山岳会交流会や県勤労者山岳連盟など四団体が県に提案するために検討して
いる条例原案は、高山植物や国の特別天然記念物ライチョウの保護などを盛り込み、
犬の高山帯への立ち入りを規制する考えだ。

これに対し、犬と一緒に山歩きを楽しむグループ「遊歩会」(約二百人)は「犬の連
れ込み禁止は科学的根拠があるのか」と当惑する。犬も一緒に宿泊できる南安曇郡安
曇村のペンション経営者(54)も「モラルの低い人がいるのも事実だが、一律規制
していいのか」と疑問視している。

北アルプスや美ケ原高原を管轄する高山植物等保護対策協議会中信地区協議会による
と、犬などのペットを連れた登山者は九六年度、百七人を確認したが、昨年度は三百
四十七人に増加した。

こうした中で、県の自然保護レンジャーによると、犬が高山植物を踏み荒らしたケー
スがあったほか、中部山岳国立公園岐阜県協会によると、乗鞍岳の岐阜県側では、犬
がライチョウのひなを口にくわえていたのを目撃した―という情報があるという。ま
た、科学的な立証はされていないが、犬のし尿や持ち込まれる病原菌が生態系に影響
を与える恐れがあるとの指摘もある。

県や中部森林管理局などでつくる高山植物等保護対策協議会は昨夏、ペットを持ち込
まないよう呼びかけるチラシを初めて登山者に配った。だが、この際、犬を連れた登
山者との間で口論もあったという。

遊歩会主宰者の勝野翠さん(東京都町田市)は「犬を連れた登山者にマナーの向上は
呼びかけていきたい。できれば山岳団体側とも話し合いたい」とする。一方、山岳団
体側の事務局担当、森田稲吉郎さん(県中高年山岳会交流会事務局長)は高山帯の自
然保護を最優先する考えから、「条例原案は犬にも人にも厳しい内容にしたい」とし
ている。(2月27日 信濃毎日新聞)

ACHP編集部

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