県庁で記者会見した富山雷鳥研究会のメンバー
北アルプス・立山室堂(立山町)で昨年十一月、国の特別天然記念物・ライチョウの
オスの成鳥二羽に原因不明の皮膚病が見つかった問題で、一九七二年から現地でライ
チョウの生息調査を行っている市民グループ「富山雷鳥研究会」(熊木信男会長)の
メンバーが二十二日、県庁を訪れ、「人間の入山による影響が大きいのではないか」
として、県自然保護課に今後の対策を求めた。同会は、皮膚病が北アルプスの別の地
域にも広がっている恐れがあると見て、今後、さらに詳しい調査を続けていく方針
だ。
皮膚病におかされたライチョウは、環境省の委託を受けて現地を調査している同会の
メンバーが発見。死亡した一羽について、岐阜大に持ち込んで病理解剖を行ったが、
原因は分からなかった。現在、獣医などの専門家も交え、特別調査チームを作り、原
因究明を急いでいる。
記者会見した同会は、室堂みくりが池周辺の平地〇・七平方キロの範囲で行っている
ライチョウの生息調査の結果として、一九九六年まで二十七あった縄張りが、九八年
から十程度に激減していることを明らかにした。同会運営委員長の河野昭一・京都大
名誉教授は「個体数でも、当然、激減しているはず。現在、最新のデータを集計中
だ」とした上で、「土木工事など、人による改変が激しい場所でのこうした現象は、
非常に重要な意味を持つのではないか」と、今回の皮膚病が人的影響による可能性が
高いことを示唆した。
また、河野委員長は、り患した二羽のライチョウが七百メートル離れた別々の縄張り
で見つかったことを挙げ、「北アルプスの別の地域に伝染している可能性は十分あ
る」と不安を口にした。
河野委員長は、今後の対応として、検体のウイルス調査の徹底や、他の地域でのり患
状況の調査など、病気そのものへの対策を挙げたほか、保護対策として、ペットの持
ち込み禁止や、五―七月のライチョウの繁殖期における立ち入り禁止など、行政側が
積極的に行う必要があるとし、「もはや我々のレベルではどうにもならない。国レベ
ルでの対策が必要だ」と話した。
ライチョウは、一九六一年の文化の日(十一月三日)に「県鳥」に指定され、長い
間、県民に親しまれている。県自然保護課では「原因ははっきりしていないが、県と
して、調査、対策に協力できることは協力していきたい」と話している。(2月23日
yomiuro on-line 富山版)
ACHP編集部
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