南アルプス玄関口に山岳の博物館

芦安村が来年1月の完成めざす
「山の駅」テーマ 気象、観光情報も

南アルプスの玄関口である中巨摩郡芦安村に来年度、南アの歴史や山岳資料などを紹
介する「南アルプス山岳文化館」(仮称)が誕生する。自然と人の融合を目標に村が
建設するもので、山岳資料の展示だけでなく、登山者のために北岳や夜叉神峠の気象
状況をリアルタイムで知らせる情報スペースを設けるなど、登山をめぐる文化、ス
ポーツ、観光の要素を集約した新しいコンセプトを提示していきたいという。6月ご
ろ着工、来年1月の完成を目指す。完成すれば山岳文化を展示する県内初の博物館的
な拠点にもなる。村は「より多くの資料を展示したい」と、ホームページで全国の山
岳愛好家に資料提供を呼び掛ける考えだ。文化館のキャッチフレーズは「山の駅」。
南アルプスから、新たな文化の発信がスタートする。

計画によると、予定地は同村芦倉の村営南アルプス温泉ロッジ西隣で、村有地約三千
平方メートル。文化館は県産材による木造平屋で、延べ床面積は千四百平方メートル
前後になる見通し。内部に展示室、山岳図書室、情報スペース、登山用品や土産品を
販売するミュージアムショップなどを設置する。

このうち展示室は、山岳信仰時代の登山用具をはじめ、山岳雑誌や写真などで構成。
南アと登山者とのかかわりや歴史をたどる。また南アルプス林道開通当時の写真、林
業に使った機材、民具や生活史の年譜も並べ、山岳とともに生活してきた村の歴史や
文化も多面的に紹介する。さらに、北岳に初めて登頂した英国人牧師のW・ウェスト
ンを紹介する企画展なども検討していくという。

一方、情報スペースや図書室は「見る、学ぶ、集う」がテーマ。ハイビジョンテレビ
などのAV機器を使って国内外の山岳文化を紹介するビデオを上映。さらに安全な登
山をしてもらうため、山小屋と連携して気象情報を提示するほか、北岳と夜叉神峠に
カメラを常設し、リアルタイムの映像が見られるようにする。

村は「新しいコンセプトで自然と人が融合できる観光の拠点をつくろう」と役場職
員、大学教授、山小屋関係者らで一月に建設準備会を発足。計画づくりに着手した。
三月末には具体的な設計を委託する。

しかし課題は建物よりも中身。建設に向けて展示資料を幅広く収集する必要がある。
村内には広河原アルペンプラザや村営の山小屋などに山岳関連の資料や、かつての登
山用品などが保管されているものの、「全国レベルの山岳文化拠点を目指すために
は、新たな資料発掘が不可欠」(同村総務課)。このため村は、インターネットを通
じて今月末にも、南アルプスに関係する資料や書籍の提供を全国に呼び掛ける。

県内では、山をテーマにした先駆的施設として南巨摩郡早川町に「白☆(竹カンムリ
に方の右が其)史朗記念館」があるが、登山、観光、歴史、生活など山をめぐる文化
の総合的集約を目指す施設はなかったという。同村は「南アの登山基地として山岳観
光の在り方を再考する時期にきている。文化館を拠点に、将来はスイスのツェルマッ
ト、フランスのシャモニーのような長期滞在型の山岳観光都市を目指したい」とい
う。

県山岳連盟の高室陽二郎会長は「連盟も数年前、県に山岳センター建設を陳情した経
緯がある。文化館はスポーツとしての登山と文化としての登山の拠点として期待でき
る。協力していきたい」と話している。(2月18日 山梨日日新聞)

ACHP編集部

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