頂上付近の湿原に貴重な動植物が残ることで知られる平ケ岳(2141メートル)の植生
回復に、県は新年度から取り組む。湿地内で、無許可でつくられた登山道が原因の表
土流出が起きており、新年度の一般会計予算に、防止工事費として約2千万円を計上
する予定だ。
平ケ岳は水上町、新潟県湯之谷村境にあり、越後三山只見国定公園の一つ。故深田久
弥氏の日本百名山にも収録されている。
群馬県側の大半は急斜面だが、新潟県側の頂上付近は平たん地で、池塘(ちとう)が
散在する湿原になっている。尾瀬ケ原と同様の高原植物や、ホソミモリトンボなどの
希少昆虫が残る。
県自然環境課によると、表土の流出が起きているのは、頂上付近の登山道から群馬県
側の湿原に入った無許可登山道の周辺。長さ300メートル、幅60〜120センチにわたっ
ているという。
登山道は最初、踏み跡程度だったが、雨の浸食などで、深いところで約60センチの土
砂がえぐられているという。
平ケ岳の正規の登山道はすべて新潟県側にあり、湿原保護のため木道が敷かれてい
る。
だが、この無許可登山道は「群馬側の景色を見るために登山者がつけた」(同課)ら
しく、途中で行き止まりになっている。群馬県側は県条例で自然環境保全地域に指定
されているが、立ち入り禁止になっていない。
新年度予算に盛り込まれる工事は、石積みで土砂の流出を防ぐだけにとどめる。植生
の復元には自然に運ばれてきた種子が、たまった土に根付くのを待つという。工期は
新年度から2年間を予定している。
同課の井上和夫課長は「(流失分を補うのに)よその土を持ち込めば、これまでにな
かった植物が広がる可能性もある。長い目で見た復元をさせたい。完全な回復には10
年以上かかるのではないか」としている。(1/15 asahi.com 群馬版)
ACHP編集部
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