岩木山 雪崩事故に関するマスコミ報道

◆岩木山で雪崩、2人不明

十九日午前十一時三十五分ごろ、岩木山スカイライン八合目付近で、雪崩が発生し男
性スキーヤー二人が巻き込まれたと弘前署に一一〇番通報があった。

弘前署によると、男性スキーヤー四人が雪上車で津軽岩木山スカイラインを登り、四
人が八合目から滑り出したが、前を滑っていた二人が雪崩に巻き込まれたという。

午前九時ごろに、四人を雪上車で八合目付近まで送った同町常盤野黒森の食堂の関係
者によると、四人は近くのペンションの宿泊客と、無事が確認されている同ペンショ
ンの経営者の男性と見られる。

現在、二人の安否は不明。無事だった二人は携帯電話を持っており、現場から情報を
送っている。

弘前署員、弘前消防署員が現場に向かうとおもに県警ヘリ「はくちょう」が救出のた
め現場に向かった。

雪上車が一台しかないため、現在、同署員、捜索隊員をピストン輸送して現場に向か
わせている。 青森地方気象台によると、同日午前の津軽内陸部の気象は、おおむね
曇りだったが、雪も降っていたという。雪崩注意報は出ていなかった。気温も午前十
一時現在の弘前での気温が〇・一度と、それほど上昇はしていなかったという。
(1月19日 東奥日報)

◆山スキーで雪崩に巻き込まれ2人重体 青森・岩木山

19日午前11時半ごろ、青森県岩木町の岩木山(1625メートル)の八合目付近
で「山スキー客2人が雪崩に巻き込まれた」と110番通報があった。県警弘前署や
消防などが現場付近を捜索したところ、男性2人が深さ1〜1.2メートルのところ
に埋まっているのを見つけた。意識不明の重体だという。

弘前署によると、2人は弘前市の黒滝静一(くろたき・せいいち)さん(60)、山
形県新庄市の田口郁男(たぐち・いくお)さん(41)と見られる。

調べによると、男性2人は仲間4人で、地元ペンションから同日午前10時ごろ、雪
上車に乗って岩木山に登り、8合目付近で車をおり、山スキーを始めたという。滑り
始めてすぐに、前に滑っていた2人が雪崩に巻き込まれた。

同署によると、雪崩は幅約50メートル、長さ約100メートルにわたって起きてい
たという。

岩木山周辺は、17日夜から18日にかけて、10センチ以上の雪が降っており、固
まった雪の上を新雪が滑る表層雪崩の可能性が強いと見られる。(1月19日
asahi.com 16:20)

◆山スキーで雪崩に巻き込まれ2人死亡 青森・岩木山

19日午前11時半ごろ、青森県岩木町の岩木山(1625メートル)の8合目付近
で「山スキーで2人が雪崩に巻き込まれた」と110番通報があった。県警弘前署や
消防などが付近を捜索、午後2時前、深さ1〜1.2メートルの雪の中に埋まってい
る2人を相次いで見つけた。2人は同日夕、同県弘前市内の病院で死亡が確認され
た。

雪崩に巻き込まれたのは、弘前市文京町、無職黒滝静一さん(60)と山形県新庄市
五日町、山形県庁職員田口郁男さん(41)。

調べによると、2人は地元でペンションを経営する高田敏幸さん(49)、環境省東
北地区自然保護事務所・世界自然遺産生態管理官の千村勝哉さん(58)と一緒に、
地元の食堂経営者が運転する雪上車で、同日午前10時ごろ、高田さんのペンション
を出発。7合目付近で降り、8合目まで歩いて登り、黒滝さん、田口さんの順で滑り
始めた。その直後に、2人が雪崩に巻き込まれた。高田さんが携帯電話でペンション
に連絡、家族が110番通報したという。

黒滝さんは約2時間後、田口さんはその約30分後に発見された。

黒滝さんと高田さんは、ボランティア組織「日赤岩木山パトロール隊奉仕団」のメン
バーで、いずれも20年近いスキー歴があり、田口さんもスキーのベテランという。

同署によると、雪崩は幅約50メートル、長さ約100メートルにわたっておきたと
いう。

岩木山周辺は、17日夜から18日にかけて、30センチ近いの雪が降っており、固
まった雪の上を新雪が滑る表層雪崩の可能性が強いと見られる。

岩木山には山スキーのコースがいくつかあり、標高差約1千メートルの雄大な斜面を
一気に滑れるため、春のシーズンには人気があるが、冬期間は山に詳しいスキーヤー
しか入らない。(1月19日 asahi com 19:15)

◆新雪の山ベテランのむ/岩木山2人死亡

雪山の美しさを満喫するはずの山スキーが暗転した。19日、岩木山の8合目付近で
起きた雪崩は、ベテランスキーヤーを巻き込み、約100メートルに渡って、崩れ
た。専門家は、固まった雪の上を不安定な雪が滑る「表層雪崩」の可能性を指摘す
る。あっという間の出来事だったとみられる。前夜から降り続いた新雪と不安定に
なった斜面が災いした。

低い音・・・一瞬で ─表層雪崩の可能性─

4人を乗せた雪上車は午前10時前、ふもとの高田敏幸さん(49)経営のペンショ
ンを出発した。雪上車を運転した付近の食堂の経営者によると、7合目ぐらい(標高
約千メートル手前)まで4人を乗せていった。午前11時すぎ、車を降りた4人は、
8合目付近まで登っていったという。

県警の調べでは、午前11時半ごろ、滑り出しのポイントに着いたらしい。

まず、黒滝静一さん(60)が滑り始めた。黒滝さんは地元の「日赤岩木山パトロー
ル隊奉仕団」の隊員。20年近いキャリアを持ち、現場周辺を何度も滑っている。ツ
アーの時はいつも先頭だ。

だが、厚く降り積もった新雪に足を取られたのか、転倒した。

続いて、田口郁男さん(41)が滑り始めた。田口さんはペンションの常連客。雪国
育ちでスキー歴は豊富だったという。仕事で弘前市に来て3泊。この日、スキーを楽
しんでから帰る予定だった。

その後、千村勝哉さん(58)が滑ろうとした時、後ろから低い音が響いてきた。驚
いて振り返ると、後ろ30メートル付近から雪のかたまりが襲ってきた。あっという
間に、田口さんと転倒した黒滝さんをのみこんだ。

「雪崩だ」

午前11時半すぎ、最後に滑り出す予定だった高田さんは、妻に携帯電話で連絡し
た。高田さんも同奉仕団メンバーで、地元でペンションを経営して18年のスキーの
ベテランだ。

妻によると、高田さんはひどくあわてた口調で電話してきた。自宅ペンションからす
ぐ110番通報した。

高田さんと千村さんは、雪崩に巻き込まれた2人の名前を呼び、ストックを使って、
雪の斜面を懸命に探した。午後1時半ごろ、黒滝さんを深さ1メートルの雪の下から
発見。午後2時ごろ、4人の捜索隊が1・2メートル下から田口さんを見つけた。

食堂経営者は「雪に変わった点はなかったが、今思えば、おととい雨が降り、その後
寒さが来て雪が硬くなった。その上に昨晩30センチぐらい降り積もり、表層雪崩が
起きやすかったのかもしれない」と話している。

スノーモービル進めず

黒滝さんらが所属する「日赤岩木山パトロール隊奉仕団」メンバーは発生直後、ス
ノーモービルなどで救出に向かった。が、パトロール隊隊長の土岐司さん(59)に
よれば、現場付近は新雪が積もり、スノーモービルでは進めなかった。このため、圧
雪車で道を確保、徒歩で現場に向かったという。

岩木山のふもとの津軽岩木スカイライン入り口では、急を聞いて駆けつけた同奉仕団
メンバーや自衛隊員、消防署員らがせわしく行き交い、無線などで連絡を取り合っ
た。

現場に最初に到着した岩木町の会社員山崎信夫さん(39)は「沢の両側から雪が崩
れ、雪崩が起きたら逃げられないような感じだった」と現場の様子を話す。

午後5時40分ごろ、2人は救急車に収容され、住民やパトロール隊員らが見守る
中、弘前市内の病院に向かった。
 
雪崩の研修直後

雪崩に巻き込まれた田口郁男さんは、17、18日に弘前大内で開かれた「雪崩対策
の基礎技術研修会」(日本雪氷学会主催)出席のため、16日から弘前市に1人で出
張していた。
 
田口さんが働く山形県企業局最上地区水道事務所によると、田口さんは豪雪地帯の出
身で、よくスキーに出かけていたという。

亀裂など兆候なし ─表層雪崩専門家指摘─

ベテランのスキーヤーたちが巻き込まれた雪崩は、なぜ起きたのか。
 
雪崩には大きく分けて「全層雪崩」と「表層雪崩」の2種類がある。全層雪崩は、降
り積もった雪が根こそぎ滑るもので、春先や雪解け時期に多い。一方、表層雪崩は時
期に関係なく、上に積もった雪だけが滑る。

弘前大学理工学部の力石國男教授(雪氷学)は「今回は表層雪崩の可能性が高い」と
言う。表層雪崩は30〜45度の傾斜面で起きやすく、今回の現場も斜度が30度以
上あったと見られる。

多量の新雪で重みを増すと、表層雪崩が起きやすい。岩木山ろくの百沢スキー場で
は、17日夜から18日にかけて約15〜20センチの降雪があった。同スキー場よ
り標高の高い雪崩発生現場では、さらに多くの降雪があったと見られる。

力石教授は、スキーヤーの重みや滑走が、雪崩を引き起こすこともあると言い、「表
層雪崩の場合、亀裂ができるなどの予兆はなく、気づかないことが多いが、直前の雪
の降り方などを考え、山に行く人は注意が必要だ」と指摘する。

40年以上、冬の岩木山に登り続けている弘前南高教諭三浦章男さんによると、岩木
山は風の影響で、南側から東側の斜面に吹きだまりができやすく、雪崩が起きやすい
という。今回の雪崩現場も南斜面だった。

三浦さんは、冬山登山の際、登る前に雪を抜き出して付近の雪の固さやもろさを調
べ、雪崩が起きやすいかどうかを確かめるという。

三浦さんは「岩木山では人が巻き込まれるような雪崩は少ないが、必ず事前に雪の状
態を調べ、遭難位置を知らせる発信機のビーコンや赤いひもなどを持つなどの準備が
大切だ」と話した。(1/20 asahi.com 青森版)

ACHP編集部

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