錫杖岳/前衛フェースに2本あったジェードルルート

皆さん今日は
石際@岐阜ケルンです
いつも錫杖の話題ばかりですみません
先日ジェードルルートへ行ってきました
東海山岳会の井土氏に教えていただいた情報を確認することが
できました(やはりジェードルが2本ありました)
以下長文ですが報告します
また,冬に向け,昔岐阜登攀倶楽部の加納義則氏が岳人に掲載
された冬の錫杖の登攀についての資料を氏の了承を得てHPに再
掲しました
この冬錫杖を計画されている皆さんの参考にしていただければ幸
いです

◎2本あったジェードルルート

日本登山大系を始め錫杖の岩場のガイドには北沢フェースの左に
派生するルートとしてジェードルルートが紹介されており,ルート図
においても北沢フェース扇ハング上から別れるもの,左方カンテか
ら入るものとあり,その記述においてもはっきりせず,自分を含めク
ライマーのあいだで混乱,誤解を招いてきた。

1988年金沢クライマーズクラブの倉西孝氏ら(第二登は1週間後,
春日井山岳会北村・小林)によってフリー化の記録が発表され,
5.10bc,5.10abの2ピッチからなるジェードルは本番のフリークライミ
ングを目指すクライマーのよい目標となったが,上記の混乱からジェ
ードルに入れず敗退するパーティーの話を聞くことがあった。

1990年私は三菱自工山岳部の東田良治とフリー化されたジェード
ルをトレースし,ガイド等の記述に疑問を感じながらも,特に調査しな
かったのであるが,本年になりアルパインクライミングメーリングリスト
で東海山岳会の井土氏から情報をいただき,北沢フェースルートと左
方カンテの間には2本ジェードルが存在し,それぞれルートがあり,従
来それが混同されてきたことを知った。

今回,2本あるジェードルのうち右のラインを登り,位置関係がはっき
り確認できたのでここに紹介したい。2本のジェードルは構成も違い,
ルートの性格も違うが,どちらも登り応えのあるいいルートである。内
容については行動概要及びルート図を参照されたい。

★錫杖岳烏帽子岩前衛フェース北沢フェース左(ジェードル)ルート

2001年10月21日
石際  淳,加藤  毅,前田隆成(岐阜ケルン山岳会)
ルート図及び概念図  http://nagoya.cool.ne.jp/ishigiwa/map26.jpg

2週連続の錫杖である。今回も下部は加藤リード。
1ピッチ目。北沢フェースの取り付きがはっきりせず,クライムダウン
したりして,結局濡れた凹角を左上する。
2ピッチ目。次第に傾斜が強くなる草付き混じりの悪いフェース。
3ピッチ目。草付きを左上し,北沢フェースと白壁の間の大凹角下へ。
4ピッチ目。石際にリード交代。凹角には左壁に新品のボルトラダーが
あり,すごく快適そう。ハンド〜フィンガークラックをできるだけフリーで
上がり,苦しくなったのでアブミに乗る。やさしい人工で,チムニーに入
るとピンがなくなる。左壁の広いクラックを登り,扇岩テラスへ。このピ
ッチはフリー化できそう。
5ピッチ目。下部は思っていたボルトラダーではなく,スラブをフリーで
行く。ピンが少なく少し緊張する。ボルトラダーに入ると快適人工。ピン
は古いが錫杖らしくなくしっかり打ってあるので安心である。
6ピッチ目。恐ろしいハンギングビレーの後,高度感満点のハング越え。
ハング上からフリーでトラバースして北沢フェースと合流。
7ピッチ目。汚い凹角からチムニー。右壁に移るところがちょっと微妙な
バランス。スラブを少し登りブッシュ帯に入り終了。後はブッシュをこい
でP2に出る。

槍見5:40  取付8:30  終了15:30  P2発16:20  烏帽子岩西肩経由クリヤ
谷17:00  槍見18:00

古いものであるがフリー化されたほうのジェードルルートの記録も参考ま
でに附記する。

★錫杖岳烏帽子岩前衛フェース「ジェードルルート」〜烏帽子岩「東肩
ルート」

1990年11月3日
石際 淳(春日井山岳会),東田良治(三菱自工山岳部)
ルート図 http://nagoya.cool.ne.jp/ishigiwa/map20.jpg

 左方カンテから北沢フェース左の凹角を抜けるこのルートは実にすっき
りしたラインで,フリークライミングの楽しさを満喫できるいいルートである。
特にジェードル2ピッチ目のレイバックは北沢フェース最上部のすごい高
度感の中で完全なレイバックを強いられる。注文の多い料理店から継続
すれば,X級以上のピッチが5ピッチ続くいいラインになる。マルチピッチ
のフリーを目指すクライマー諸氏にはぜひ登っていただきたい。必要なギ
アはフレンズ,ロックス各1セット。

槍見のあたりは紅葉がすばらしい。いいペースで取付まで行く。左方カン
テに取りつき,気分良くロープをのばす。東田さんも少ないランニングで快
調にとばしている。ジェードルルート1ピッチ目は東田さんに行ってもらう。
なかなかいやらしそうで,垂直の凹角に入るところで人工に切り替える。
ピンは多いのでスムーズに登りコールがかかる。私もフリーでトライする。
東田さんのザックも背負っているので結構つらい。凹角手前がいやらしか
った。凹角に入るとフィンガージャム等でハーハーゼーゼーの力のいるクラ
イミングであった。一回ハーケンに乗ってしまった。2ピッチ目は石際リード
で「鼻血の出そうな」レイバックをやっつけ,今度は荷上げをして東田さんも
フリークライミング。お昼に終了したので烏帽子岩も登って楽しかった。帰り
は高山で白水(今はもうありません)の大盛りチャーハンを食って帰る。

槍見7:00 取付8:40 ジェードルルート終了12:20 東肩ルート取付13:00
烏帽子岩てっぺん13:45 東肩14:30 クリヤ谷15:30 槍見16:30

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