「山は常に死の危険と背中合わせ」と話す臼田聡・県警豊科署地域課係長
夏の登山シーズンが終わった。今年、県内の夏山での遭難事故のけが人は53人で過
去最多となった。昨年1年間に県内の山を訪れた登山者は約67万人。遭難事故は1
42件発生し、155人が巻き込まれた。40歳以上の中高年登山者の事故が約7割
を占める。これから秋の登山シーズンが最盛期を迎える。遭難しないための注意点な
どを県警豊科署地域課係長の臼田聡さん(42)に聞いた。
−−登山へ行く前に、日ごろ、心がけておくべきことはありますか。
「健康管理をしっかりして下さい。トレーニングをしっかり積んで、体調を十分に整
えておくことです。登山前には健康診断を受け、医師に具体的な日程をいって相談し
て下さい。風邪や疲労、無理な日程は体調を崩し、体が高度に順応できなくなり、高
山病につながる可能性もあります」
−−何を持っていったらいいのですか。
「雨具、ヘッドランプ、防寒着、水筒、着替え、食料は必需品です。日帰りでも万が
一を考え持って下さい。最近は携帯電話を持っていくことを指導しています。万能で
はありませんが、年々通話地域が広がっています。気温が低いとバッテリーの消耗が
早いので、予備のバッテリーも必要です」
−−登山に出発する前にすることはありますか。
「必ず登山計画書を提出して下さい。主な登山口には所定の登山届、登山者カードが
備え付けられているので、入山する際に記入して、備え付けの箱に投かんして下さ
い。登山届の日程などを手がかりに捜索し、救助された例がたくさんあります。事故
が発生した時、遭難者はだれか、家族への連絡先などがわかります。また、登山者全
員が計画段階から行程全般を知ることが大切です。最近、『連れられ登山』が多く、
自分がどこに登るかわかっていない登山者が数多く見受けられます。自分が登山をす
るという自覚を持つことで、トラブルが発生したときに精神面、体力面で必ずプラス
になります」
−−事故はどんな時に起こりやすいのですか。どのような歩き方がいいのですか。
「上りよりも下りの方が起きやすい。疲労から集中力がなくなっている。転んで骨折
などしている。ゆっくり、踏みしめて一歩一歩確実に歩いて下さい。また、岩場など
では、3点支持といって両手足の1点だけを動かし、後の3点はしっかり捕まって下
さい」
−−最近、目立つ点はどんな点ですか。
「単独登山が目立ちます。気軽で他人に気兼ねしなくてもいい気持ちもわかります
が、骨折などした場合助けが呼べず大事に至るケースもあります。また、一人が疲労
から遅れると先に行って置き去りにするパーティーの形態をなしていないのも目立ち
ます。旅行会社やガイドが企画するツアー登山による事故も増えています」
「自然を相手にする山は、常に死の危険と背中合わせということを自覚して下さい。
悲しい思いをするのは、残された家族です。家族の心の痛手は大きく、どんな理由づ
けをしても深い悲しみを和らげることはできません。どうか、安全な登山をして、楽
しい思い出を作って下さい」
うすだ・さとし 59年佐久市生まれ。87年から93年まで県警機動隊で山岳遭難
救助に携わる。93年から96年まで大町署地域課白馬村交番で北アルプス北部、0
0年から豊科署で北アルプス南部の山岳遭難救助にあたる。 (9/9 asahi.com 長野
版)
ACHP編集部
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