十和田八幡平国立公園内の八幡平(1613メートル)の頂上展望台の評判がいま一
つ芳しくない。360度のパノラマを期待してたどり着くと……。周りの樹木が伸び
て視界を遮っている。「頂上」の標柱を立てている安代町が「建て替えて高くして」
と、展望台を管理する県に注文したが、そこは国立公園。「景観保護」が優先され
る。
「ここが頂上」
「何にも見えない」
展望台に立った行楽客らの第一声は、ほとんどが落胆交じりだ。
八幡平には年間延べ120万人が訪れる。駐車場のあるレストハウス(1550メー
トル)まで車で上れ、徒歩約20分で頂上に行ける手軽な山だ。
レストハウスの近くや遊歩道の途中の展望台からは岩手山ろくや八幡沼などの絶景が
見られるが、頂上展望台は高さ約4メートル。背の高いアオモリトドマツが周りを囲
み、眼下の展望は得られない。岩手山など標高の高い山の上部がかろうじて見える程
度だ。
「全国からの観光客ががっかりして帰る。町として不名誉だ」
展望台の傍らに立つ「八幡平頂上」の標柱に町名を入れる安代町の北舘義一町長は言
う。旅行者が記念写真を見返すたびに「期待はずれだった」と嘆いているのではない
か、が気がかりだ。
展望台は86年に県が設けた。町職員によると、当時は今ほど樹木は高くなかったと
いう。
今春の県市町村連絡会議の席上、県の今年度予算を説明された北舘町長は「レストハ
ウスと一緒に頂上の展望台のことも考えてもられないか」と訴えた。
県は秋田県と合同で老朽化したレストハウスを今年度から3年かけて建て替えるから
だ。
突然の提言で、県と環境省、安代町の職員は6月半ばに実地調査した。手っ取り早い
対策は樹木の伐採だ。だが、国立公園内の特別保護地域での伐採は環境省の許可が必
要だ。
環境省国立公園課は「公園利用の観点から切ってもいい」。が、展望台の周りの伐採
だけでは眺望は変わりそうにない。結論は「手すり部分までの1・3メートルは展望
台を上げていいが、景観を損ねるので周りの木より高くするのは認めない」。
伝え聞いた北舘町長は「仕方ない」と肩を落とす。県自然保護課は「八幡平はその名
の通り平らな地形。頂上では山々の姿を見上げて楽しんでほしい」と話している。
(8/4 asahi.com)
ACHP編集部
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