後志支庁の羊蹄山(1898メートル)で一九九九年九月、登山中の女性ツアー客二
人が凍死した遭難事故で、道警捜査一課と倶知安署は三十一日、台風の中で登山を強
行するなどツアー客の安全確保が不十分だったとして、ツアーを企画した京阪交通社
(本社・大阪市)サブマネジャーの男性添乗員(51)と、同社の営業統括室部長
(64)の二人を、業務上過失致死容疑で、札幌地検小樽支部に書類送検した。中高
年の「百名山」登山ブームの中で、登山ツアーの添乗員らが過失に問われるのは、全
国初。
調べによると、添乗員は、同年九月二十五日、ツアー客十四人とともに、後志支庁倶
知安町側から羊蹄山に登った。台風が通過した直後の悪条件の中、単独でツアーを引
率しながら、危険の事前説明や人数を確認して分散を防ぐなど、遭難事故を防止する
業務上の注意義務を怠り、京都府八幡市男山竹園四、無職広島洋子さん(当時六十四
歳)と京都市下京区小坂町一六、同下倉美恵子さん(同五十九歳)の二人を凍死させ
た疑い。
また、同社部長は添乗員の上司で、客への事前説明や離散防止の指示を徹底させ、添
乗員を増員するなどの安全確保の注意義務を怠り、添乗員にツアーを一任し二人を凍
死させた疑い。
事故直前、本道には台風18号が上陸。山ろくの倶知安町では暴風警報と大雨洪水注
意報が発令され、最大瞬間風速三十七・一メートルを記録した。このため、事故直後
から、地元や登山関係者の間でツアーの無謀さを指摘する声が上がっていた。
ツアーは、ニセコアンヌプリ(1308メートル)と、作家深田久弥氏が選んだ「日
本百名山」の一つとして知られる羊蹄山を、同年九月二十一日から四泊五日(船中三
泊)の日程で登る目的で、同社が企画、募集。関西地方の中高年を中心に、男女計十
六人が参加した。
同署などによると、客は午前七時半に登山口で男性添乗員から台風の説明を受け、う
ち二人が入山を断念。しかし「登れる所まで登りたい」との意見が多く、十四人で登
山を開始。途中の三、五、八合目でさらに計三人が登山を断念した。
九合目付近で死亡した女性二人を含む四人が遅れ始めたが、添乗員は声をかけないま
ま、頂上を目指したという。しかし、このうち三人が遭難し、男性客一人は自力で下
山したが、二日後の二十七日朝、道警などの捜索で凍死した女性客二人が見つかっ
た。
京阪交通社の辻本徳彦企画開発部長(56)は「まだ連絡を受けていないので、詳し
いことはわからないが、大変重く受け止めている。どこに過失があったかをしっかり
と確認し、今後の登山企画にいかしたい」と話していた。
(8月1日 Yomiuri On-Line 北海道版)
ACHP編集部
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