入山規制が一部解除される岩手山=本社ヘリから
日本百名山の一つ岩手山(2038メートル)の東側4ルートの入山規制が1日、解
除される。火山活動活発化による98年の登山禁止以来3年ぶり。全国から多くの登
山者が詰めかけそうだ。一方、火山活動は依然続いている。通報装置や監視員配置な
どの安全対策もとられる。活火山との新しい付き合い方に向けた一歩でもある。
入山できるのは、御神坂(雫石町)、馬返し(滝沢村)、焼走り、上坊(ともに西根
町)の4ルート。火山専門家の検討会で「噴火が切迫していない」と最終確認され
た。西側は水蒸気爆発の恐れがあり、規制は続く。
監視活動は県山岳協会員らが当たる。平日は2人が八合目の避難小屋に常駐。休日は
人を増やして禁止区域への立ち入りを見張る。
登山道には11基の緊急通報装置がある。噴火の危険が迫ると、各町村の防災無線で
起動させ、サイレンと赤色灯で知らせる。
1日は午前0時、地元3町村の職員が、各登山口にある入山禁止の看板や
規制ロープを撤去。午前6時ごろから、各町村が登山口で安全を祈願する。
式の後、上坊以外の3ルートから地元山岳会や役場職員らの登山隊が山頂を目指し、
正午に山頂でピッケルを交換する。
◇
30日午後3時から西根町平笠の国際交流村で、冒険家大場満郎さんの山開き記念講
演会がある。
3年ぶりの登山解禁の様子は、7月11日午後7時から、岩手朝日テレビ開局5周年
記念特別番組「みなみらんぼう岩手山に登る」でも放映される。
■イメージアップ期待/うれしさ半面不安も■
3年ぶりの入山規制解除に山にかかわる人々は、さまざまな思いで1日を迎えようと
している。
雫石町長山の岩手高原でペンションあみはりロッヂを営む千葉健悦さん(62)は、
1日に登るつもりだ。登山道を自分で確かめ、宿泊客に説明できるようにするため
だ。
不況と火山活動、98年9月のマグニチュード6・1の地震。岩手高原スキー場も営
業中止になった。客足は遠のいた。
解除方針が出た昨秋以降、問い合わせや予約が入った。うれしかった。が、苦しんだ
だけに「すぐに客が戻るとは思っていない」。
近くでペンションさんりんしゃを営む三輪亨さん(54)は「八方ふさがりの中で、
明るい話題」と歓迎する。三輪さんのペンションは以前から登山客は多くない。しか
し、客足は規制以降で数割落ち込んだ。
登山解禁と、9月に松尾村で開かれるフォークジャンボリーなど、岩手山ろく全体の
イメージアップ効果に期待を寄せる。
監視活動に取り組む県山岳協会副理事長の吉田春彦さん(42)は、うれしさの半
面、不安もある。災害の危険が高まった時の下山誘導は監視員の仕事だ。夜間はどう
するのか。情報伝達は混乱なくできるのか……。
登山は自己責任が原則。「天候急変に備えて十分な装備・食料を持って登ってほし
い。ガレ場があるのでスニーカーでなく足首を守れる登山靴で。登山者カードと下山
カードも必ず書いて」と呼びかける。
滝沢村防災対策室の藤原治さん(43)は地元3町村のまとめ役として、昨年から7
回も登って安全対策の準備を進めた。
緊急通報装置もメーカーと「手探り」で開発した。太陽電池で補強した電源は、何と
か間に合った。
「多くの登山者が予想される初日を、無事故で乗り切りたい」。今はそれだけを願っ
ている。(6/30 asahi.com 岩手)
ACHP編集部
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