キタダケソウの開花に合わせ  南アルプス・北岳 1週間早く開山

雪が解けると一斉に咲き出すキタダケソウ=北岳の山頂近くで 99年7月撮影

北岳の山頂で一休みする登山者=99年7月撮影

南アルプス・北岳(3192メートル)の今年の開山祭は例年より1週間ほど早い今
月23日、登山口の芦安村の広河原で開かれる。例年、7月1日の富士山の山開きと
重なっていたため「注目度が低かった」(同村)。今年は、日本に近代登山をもたら
した英国人宣教師ウォルター・ウェストン(1861〜1940)の北岳登頂から9
9年。1世紀の節目を前に「高山植物の宝庫」の山をアピールしようと、キタダケソ
ウの開花期に山開きを合わせた。

北岳は富士山に次ぐ国内第2の高峰だが、知名度では遠く及ばない。また、登山者の
数では北アルプスにかなわない。北アルプスは年間約1300万人が訪れるが、南ア
ルプスは同46万5000人にとどまっている。

一見、影の薄い北岳だが、実は「高山植物の宝庫」だ。6月中旬に山頂付近の雪が溶
け出すと、北岳にしか生育しないキタダケソウが咲き始める。キタダケキンポウゲや
キタダケトリカブトなど北岳の特産種も多い。ハクサンイチゲやミヤマクロユリなど
高山植物は200種以上だ。

優しい表情を見せる一方で、山頂から突き出すバットレス(胸壁)は、古くから岩登
りの殿堂として岳人のあこがれだ。多面的な魅力を備えているのが北岳といえる。最
近は、環境に配慮したトイレの導入が山小屋で進むなど、登山環境は良くなってき
た。

ウェストンが北岳に登頂したのは1902年8月。当時は、芦安村から鳳凰(ほうお
う)のりょう線を越え、野呂川を徒渉した。当時の村長・名取運一氏らの協力を得
て、登山には10日間を要したという。

今では、南アルプス林道を使えば、甲府から車で2時間で広河原まで入れる。そこか
ら山頂までは、大樺沢ルートで6〜8時間。同林道が大衆登山の道を開いてからは、
間もなく40年になろうとしている。

広河原には、ウェストンと名取、林道開設時の県知事・天野久の3氏を、「南アルプ
スの開祖」として顕彰するレリーフがある。

今年の開山祭には、天野久氏の3男で現知事の建氏、名取氏の孫なども出席し、午前
10時半から安全祈願などの開山セレモニーがある。

このほか、地元で登山教室などを開いている「芦安ファンクラブ」の協力で、開山祭
の後に参加者を限定した「キタダケソウ観察会」も開かれる。例年だと、今月20日
前後にキタダケソウが満開になるという。

同クラブの仲田公彦さんは「北岳は富士山ほど話題にならないが、雄大な景観と豊富
な高山植物が魅力だ。もっと多くの人たちに知ってほしい」と話している。

問い合わせは、芦安村企画観光課(TEL055・288・2111)へ。 (06/18
asahi.com)

ACHP編集部

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