「秘峰」カイラス、中国が登山を許可

「秘峰」カイラス、中国が登山を許可 チベット仏教・ヒンドゥー教の聖山、信徒の
反発は必至 

《写真》 登山許可の出た聖山カイラス=撮影・貫田宗男さん

中国・チベット自治区にそびえる、チベット仏教とヒンドゥー教で最重要の聖山とさ
れる未踏峰、カイラス(6656メートル)への登山許可が中国当局からスペイン隊
(ヘスース・マルティネス・ノバス隊長)に与えられたと、英・オブザーバー紙が伝
えた。

カイラスはヒンドゥー教の神、シバの玉座、宇宙の中心とされ、いまなおインドから
の巡礼者が絶えない。巡礼者はピラミッド形の独立峰を眺めながら一周約50キロを
巡礼して歩く。チベット仏教徒の中には何千キロも歩いて訪れ、全身を地面に投げ出
す五体投地を繰り返して巡る信徒もいる。

日本人では、仏典を求めてチベットに潜入した僧・河口慧海が1900年に初めて参
拝した。近年は日本をはじめ各国のトレッキング隊も訪れているが、近くから眺める
だけで、登るなどもってのほかの秘峰だ。

今回の登山許可に仏教徒、ヒンドゥー教徒らの反発は必至とみられる。チベット出身
のペマ・ギャルポ岐阜女子大教授(国際関係論)は「人権侵害だ。タリバーンの大仏
爆破以上の暴挙だと思う」と語る。

中国当局が許可を出したのは初めてではない。8000メートル峰全14座に最初に
登ったイタリアのラインホルト・メスナーは80年代半ばにカイラス一周の許可を申
請したところ、登頂許可がきた。しかし、現地で巡礼者の祈りの様子を見て登山を断
念したという。メスナーは「この山を征服することは、彼らの魂を制圧することだ」
と語っている。(5月18日 朝日新聞 朝刊)

ACHP編集部

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