大町市の市立大町山岳博物館は、このほど生まれたニホンカモシカの赤ちゃんを、
「十数年ぶり」という人工授乳で育て始めた。半世紀近い飼育歴があるが、生まれた
カモシカの生存期間は、ほとんどが一年以下。今年は同館五十周年の節目だけに「今
度こそすくすく育ってほしい」と、手厚い態勢で取り組んでいる。
赤ちゃんカモシカは、ともに十年ほど前に市内の山林で捕獲された雄の「クロ」、雌
の「峯子」の間に生まれた。このペアからは過去八年、毎年一頭ずつ生まれている。
九百日以上生きたケースもあるが、最近三年間は生後三十日前後で死亡している。
同博物館は死がいを解剖するなどして調査。体重の増加が順調でなかったり、体内に
母親の体毛があったことから、母乳が十分出ずに発育不良につながった―と分析し
た。また、土の中の寄生虫が体内に入り、胃腸障害を起こすケースも分かっている。
このため、十四日朝に生まれた赤ちゃんは、免疫力をつけさせるため「峯子」の初め
ての母乳を与えた後、翌日には引き離し、人肌に温めた市販の牛乳を一日五、六回与
えて飼育。土中の寄生虫の卵が赤ちゃんの口に入らないよう、床をコンクリート張り
にした「緊急保護舎」を今春設けて、その中で育てている。
赤ちゃんは体長五十センチ、四キロほど。成長具合をみながら一週間―十日後には一
般公開する方針だ。今は「チビちゃん」と呼ばれている名前も秋ごろに公募する予定
だ。
大町山岳博物館で生まれたニホンカモシカの赤ちゃん(5月17日(木)信濃毎日新聞)
ACHP編集部
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