県内十一山岳会でつくる「県中高年山岳会交流会」(会長・大村道雄信大助教授)
が、昨夏を中心に取り組んだ北アルプスや八ケ岳連峰など県内の山域の「水場」の水
質調査で、調査した十四地点のうち、北ア・穂高岳横尾本谷橋湧水など十二地点で大
腸菌群が検出されたことが九日、分かった。登山者自らが広域的な山系で調査し、大
腸菌汚染の状況を確かめたのは初めて。
市民団体「山のトイレさわやか運動」(田部井淳子代表、事務局・日本トイレ協会)
が、登山者などによるし尿汚染がどの程度、水場に影響を与えているかを調べる目的
で呼びかけた全国の山岳調査(約百六十地点)の県内分。同協会などが十、十一日に
松本市内で開く「全国山岳トイレシンポジウムin松本」で、全国状況を含めて概要
が報告される。
県内の調査対象は北アと八ケ岳連峰、戸隠山、飯縄山の十四カ所の水場。それぞれ夏
山シーズン前の昨年六―七月中旬、最盛期の七月中旬―八月末、シーズン後の九―十
一月初旬の計三回、水を採取し分析した。
三回の合計で百ミリリットル中の大腸菌群の個数が最も多かったのは、穂高岳横尾本
谷橋湧水の五十四個。かなり差が開いて北ア・蝶ケ岳本沢登山補導所本流と八ケ岳連
峰・赤岳柳川南沢が六個と続いた=表。水場で水を飲む登山者もいるが、水道法に照
らすと、大腸菌群を検出した水は飲用に適さない。北ア・針ノ木岳大雪渓、赤岳川俣
川赤岳沢出合付近は検出しなかった。
県内の山岳地帯の水質調査はこれまで、旧豊科保健所や信大研究グループなどがそれ
ぞれ、北アの梓川水系や白馬岳周辺など比較的狭い範囲で行い、汚染状況はその都
度、確認していた。
今回の調査を指導した大村助教授(環境住居学)は「水場の上には山小屋などしかな
い。大腸菌汚染は登山者や山小屋からのし尿が影響したのでは」と指摘。県衛生公害
研究所の鈴木富雄主任研究員はそうした可能性に加え、「野生動物の影響も考えられ
る」としている。
山岳地帯のし尿処理問題では、環境省も九九年度から山小屋のトイレ整備に取り組み
始めている。「山のトイレさわやか運動」事務局は「登山者にもっと関心を持ってほ
しいので、今年は調査地点をさらに増やし、三百カ所を目標にしたい」としている。
(5月10日 信濃毎日新聞)
ACHP編集部
★ お知らせへ戻る ★ INDEXへ戻る