えさ不足で移動、車と衝突 国道で5日間に4頭犠牲
山中では3死体確認、衰弱か
峡北地域でニホンジカが車と衝突死するケースが相次いでいる。北巨摩郡白州町と武
川村の国道20号で五日間で四頭が死亡。いずれも先月に降った大雪の影響で生息し
ている山間地のえさが不足し、えさを求めて平地に下りて来た際に事故死したとみら
れる。このほか同郡高根町清里の山中では、降り積もった雪の中を移動中に死んだと
みられるシカの死体が三カ所で確認された。一九九八年一月に降った大雪の際にも、
八ケ岳山ろくに生息するシカがえさを求めて中央自動車道を横断中に車と衝突して三
頭が即死する事故があり、専門家は「積雪が少なくなるまでは動物にとって厳しい状
況が続きそう」とみている。
白州、武川両町村役場や長坂署によると、国道20号でのシカと車の衝突事故は九日
から十三日までに三件あり、計四頭が死んだ。九日午後十時半ごろに同郡白州町白須
で二頭がトラックと衝突したのをはじめ、十一日午後七時四十分ごろに同所「道の駅
はくしゅう」付近で一頭、十三日午前三時半ごろに武川村三吹で一頭が衝突死し
た。
現場付近の雪に残っていた足跡や目撃情報などによると、シカはいずれも南アルプス
山系から八ケ岳方面に向かって国道20号を横断しようとした際に事故に遭った。三
件とも車の一部を破損したが、運転者など人間にけがはなかったという。
一方、北巨摩郡高根町清里の川俣川渓谷付近では、積雪の中を移動中に力尽きたとみ
られるシカの死体が三カ所で計三頭あった。地元の自然観察員が十四日までに確認し
たもので、死体はすでにキツネやテン、オオタカに食べられていたという。
県鳥獣センターによると、シカは八ケ岳山ろくや南アルプス山系、御坂山系、富士山
ろくなどに生息している。山梨動物生態研究会の依田正直会長によると、シカはこの
時期、スギやヒノキなど針葉樹の葉やササ、枯れ草などを食べている。今回は大雪で
えさが覆われてしまい、えさを求めて移動した可能性が高いという。同センターも、
かなりの数のシカがふもとまで下りてきているとみている。
依田会長は「えさがなくなると雪が少ない静岡県側に移動できる富士山ろくと比べ
て、八ケ岳山ろくや南アルプス山系はどこも雪が深く動物が移動できない。山中の雪
が解けるまでは食糧難は続くのではないか」と話している。
一方、シカの受難が相次いでいることで、八ケ岳南ろくを中心に活動する「八ケ岳自
然クラブ」(斎藤登美夫代表)は二十二日、小淵沢町の観音平付近を中心にシカなど
生息する動物の生態観察をすることにしている。(2月15日 山梨日日新聞)
ACHP編集部
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