富士北ろく地域に日帰り温泉建設ラッシュ

富士北ろくの主な日帰り温泉

ここ数年、富士北ろく地方で「日帰り温泉」が急増。今年だけで新たに3カ所がオー
プンした。「温泉を楽しみたいが、泊まるのは費用がかかる」という温泉ファンを
狙った作戦が当たり、新しい観光スポットに育った。各施設は、ふろの種類や眺望、
料理や料金、営業時間などで工夫を凝らす。ただし、あまりの建設ラッシュに、はや
限界ではとの見方も出始めた。

山中湖村が実質的に運営する「紅富士の湯」では10月2日、100万人目の入場者
に、64万円相当のドイツへのペア旅行券を贈った。当日の入場者全員にも、記念品
や缶ビールの大盤振る舞いだった。

1998年7月のオープン以来、わずか2年3カ月弱。「冬の朝、露天ぶろから赤く
染まった紅富士が見られます」が殺し文句だ。総支配人の小林副道さん(58)は
「立地、眺め、施設の良さの3拍子がそろっているからでしょう」と自信を見せる。

冬の間、土・日・祝日に早朝営業している紅富士の湯は今年正月、「元日の朝、紅富
士が見えなかったら料金を返すし、おわびの品を差し上げます」という企画を打ち出
し注目された。来年も継続するという。

村は96年にも「石割の湯」をオープンしており、こちらも順調だ。

ブームのきっかけを作ったのは94年、河口湖町にできた「天水」だ。それまでは、
86年にオープンした「富士健康センター」が同じ町内で人気を集めている程度だっ
た。

そこへ「天水」が1億円以上をかけ、地下1500メートルで45.2度の天然温泉
を掘り当てた。責任者の山田富重さん(74)は「ここが温泉掘削でも経営でも成功
したので、この種の施設が一気に増えた」と振り返る。バブル経済が弾けた後の「安
・近・短の時代」に完全にマッチした。

97年12月には鳴沢村に「ゆらり」、98年6月には勝山村の「湯〜園」が続い
た。いずれも富士山が売り物だ。県外客も多く、「ゆらり」は全体の85%を占め
る。宿泊も「湯〜園」なら平日の素泊まりは3000円だ。

建設ラッシュは止まらない。2000年には、3カ所も誕生した。付加価値をどう付
けるかがますます重要になる。

河口湖町の「温泉寺」は元日から営業開始。大きな日本住宅の民家を利用、高級感を
出した。山下孝支配人(28)は「グレードアップした温泉施設で、ゆったり、のん
びりがキャッチフレーズ。料理にも力を入れています」と語る。

お手軽路線とは一線を画し、大人1人が1泊2食付きで33,000円(平日)の宿
泊施設も設けた。山下支配人は「今後も富士北ろくの温泉人気は衰えない」と自信を
示す。

ほかにも湯にミネラル水を使ったり、天然塩を入れたりした施設ができた。もちろ
ん、さまざまな薬草ふろがあちこちにある。

富士北ろく地方の施設は、県内の他の地域に比べれば、首都圏からの客が多く恵まれ
ている。98年に県内を訪れた観光客は初めて4000万人を突破したが、このうち
4割強を占める。なかでも河口湖、西湖周辺が750万人と、地域別では県内一だ。

さらに宿泊客は減っているものの、日帰り客は大幅に増えており、首都圏から近い富
士ろく地域は、信州や東北、北陸など遠隔地の観光地に比べて有利だ。

しかし、この温泉ブームもそろそろ限界の声が聞こえる。海外旅行券プレゼントのよ
うに、客の奪い合いは激しくなった。さらに安い海外旅行をはじめ、ライバル商品は
引きも切らない。今後、温泉施設やサービスを巡って、激しい生き残り作戦が展開さ
れそうだ。


最近オープンした富士北ろくの主な日帰り温泉

 名 称    所在地    最大収容人数   大人の基準料金       特徴
天 水    河口湖町    150人     1000円    河口湖温泉の元祖。森林浴も
石割の湯   山中湖村    300人      700円    純和風の木造ドーム型建物
ゆ ら り  鳴沢村     430人     1200円    砂・炭・桧など16種類のふろ
湯〜園    勝山村     500人     1000円    富士眺望の元湯。手打ちそばも
紅富士の湯  山中湖村    600人      700円    庭園ぶろから紅富士を見る
温 泉 寺   河口湖町    100人     1200円    温泉と建物と食事に自信
レイク・ランド   勝山村  200人        1200円    24時間の天然ミネラル健康泉
いずみの湯  足和田村    130人      800円    安い料金で、ゆったりのんびり

(12/11 asahi.com 山梨版)

ACHP編集部


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