日本百名山・荒島岳、ブームで客増え登山道荒廃 県の修復決め手欠く
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登山客が増え、人の背丈ほどえぐれて荒廃が進む登山道(大野市の荒島岳で)
日本百名山のひとつとして知られる大野市の荒島岳(1523メートル)は、中高年
の登山ブームの一方で、登山道の荒廃が進んでいるうえ、登山者のマナーの悪さもあ
り、全国から百名山にあこがれてくる登山者に不評をかっている。県は麻袋を敷き詰
める方法で修復作業を進めているが、各所に段差が生じるなど自然が失われて〈痛し
かゆし〉の状態になっている。
百名山は、石川県出身の小説家で、登山家の深田久弥(1903―71)が全国の百
山を選び、1964年に「日本百名山」として出版した。自ら山容、品位、歴史の基
準を設けて選んだもので、以来、「名山」として登山者のバイブル的存在となった。
荒島岳は、旧制福井中学出身の深田久弥が「福井の山もぜひ入れたい」と山容や歴史
を重視して選んだとされている。
もともと知名度は低いうえ、高山植物も少ないなどアルペン的要素も乏しかったが、
百名山の仲間入りで知名度は確実に高まり、一挙に登山者が増加。中高年の登山ブー
ムも重なって、全山を行脚する登山者が増え、最近はバスツアーの団体客も訪れる。
深田久弥が紹介したのは、大野市中休からのコースだったが、登山者のほとんどは、
ふもとに近い同市西勝原の勝原コース(約3・5キロ)に集中、年間2万人を超す登
山者が幅約1メートルの細い道を歩いている。
同コースは、1959年ごろ、勝原スキー場と共に開拓された比較的新しい道で、土
が柔らかい。このため、急傾斜に付けられた登山道で表土が流れ、樹林帯では木の根
が露出。ブナなど大木を枯らす恐れがあるほか、人の背丈ほど崩壊した場所も数か所
あり、石が浮いて転がる危険も出るなど、荒廃はここ3、4年間で目立ってきてい
る。
登山者のマナーにも問題があり、山中に公衆トイレを望む声があるものの、管理が困
難なうえ、設置に疑問視する意見もある。
山岳関係者の中には、荒島岳など荒廃や環境が悪化している山を除いて新・百名山を
選ぼうという声もある。しかし、いったん名著の中に選ばれた山名を消すことはでき
ず、登山ブームが続く間は登山者が集中するものと見られる。
県は、地元大野市などと対策を相談し、今年から本格的に荒廃が目立つ個所で登山道
の修復作業を開始。
砂利を麻袋に詰めて敷き詰め、土砂の崩壊を防ぐ方法だが、最終的には傾斜のきつい
登山道のほとんどに敷かなければならない。登山者の中には、階段に抵抗感を持つ人
が少なくないが、この方法以外に荒廃を防ぐ名案も浮かばないのが現状という。
同市商工観光課は「百名山として多くの人が来てくれるのは、観光行政上、ありがた
い。登山客は旅館に泊まってもマナーがいいと聞いている。だが登山道の荒廃などの
問題は、頭が痛い」と複雑な表情だ。(10月2日 Yomiuri On-Line 北陸版)
ACHP編集部
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