荒島岳山頂の元無線中継所を撤去

日本百名山の荒島岳山頂の元無線中継所を撤去します=建設省

ようやく撤去される荒島岳山頂の旧無線中継所(大野市で)

作家・深田久弥(1903―71)が「日本百名山」のひとつに選んだ大野市の荒島
岳(1523メートル)山頂にあり、登山客から「山の雰囲気を壊す」と不評だった
元無線中継所の建物の取り壊し作業が近く始まる。中継所が使用されなくなって25
年。山頂はようやく元のきれいな姿に戻ることになり、登山関係者を喜ばせている。

同中継所は、和泉村の九頭竜ダムと大野市の管理事務所を結び、雨量や水位情報など
観測データを中継するために、建設省が1967年に建設した。鉄筋コンクリート2
階建て延べ65平方メートルで、中には中継機材が置いてあった。

しかし、風雨の影響を受けて機械類が故障しやすく、補修には機材を担いで山に登ら
なければならないなど苦労が多く、不便だった。このため、75年9月、真名川ダム
建設を契機に、情報伝達系統を九頭竜系と真名川系に分散させ、同中継所は使用しな
くなった。

用地は営林省が管理し、中継所が不用になった時は、撤去する契約を結んでいたが、
費用がかかり過ぎるため、契約の更新を続け、建物はそのまま放置されて荒れてい
た。この間、地元の大野市に無償で払い下げ、山小屋として再利用する案も浮かんだ
が、実現しなかった。

最近は百名山ブームで、年間2万人を超す登山者が山頂を目指しているが、「百名山
の頂上にふさわしくない」「山の雰囲気が壊される」などと不評。このため、同市や
県内の山岳団体が再三、建設省に撤去を要請していた。

工事には、ヘリコプターで重機を上げて山頂で組み立て、壊した建物の骨材約50立
方メートルなどは真名川ダムのヘリポートへ下ろす。工費は約5千万円。ほかに同山
頂には反射板2枚があるが、大野、勝山市境の経ヶ岳中腹に中継所を設け、永平寺町
の鳴鹿えん堤とを結ぶ回線を確保したあと、すべてを撤去するのは2002年ごろの
見通し。

建設省九頭竜川ダム統合管理事務所は「長い間迷惑をかけた。撤去作業は、登山者が
多い土、日曜日を外し、強風を避けなければならず、10月末までかかる」と話して
いる。

地元のある山岳会員は「鉄筋の建物があることで、日本百名山を期待して登る全国の
人たちに、恥ずかしい思いをしていた。撤去されれば、360度の展望が確保され、
山の雰囲気が戻る」と歓迎している。

百名山は、石川県出身の小説家で、登山家の深田久弥が、山の品格、歴史、個性を基
準に全国から選び、「日本百名山」を著した。中高年登山愛好家のバイブル的存在に
なって各地の百名山を目指す人が多い。(9月21日 Yomiuri On-Line 北陸版)

ACHP編集部

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