北海道ピリカヌプリ/滝転落事故

◆登山者3人が滝に落ち1人死亡、2人不明 北海道大樹町

16日正午ごろ、北海道大樹町の日高山脈ピリカヌプリ(1、631メートル)山中
で、札幌市から沢登りに来た5人のパーティーのうち3人が川を横断中に滝に転落し
た。道警広尾署によると、このうち2人が行方不明、1人が意識を失って現場に残っ
ていたが、17日午前、遺体で発見された。

5人は札幌市の山岳会「童人チロロの風」のメンバー。行方不明になっているのは、
会社役員篠原孝二さん(52)=札幌市中央区南三西26=と、同、奥村信夫さん
(50)=同市清田区平岡二条2丁目。死亡したのは、無職藤沢明子さん(58)=
同市東区本町二条8丁目。

16日午後4時ごろ、同署大樹駐在所に、下山してきたメンバーの札幌市手稲区曙四
条2丁目、会社社長安藤和昌さん(56)ら2人が「仲間3人が滝に落ちた」と届け
出た。

同署や安藤さんの話によると、現場は大樹町のヌビナイ川にある滝付近で、5人は滝
の上流の川を、ロープを使って右岸から左岸に渡っていた。篠原さんと奥村さんが両
岸でロープを持ち、藤沢さんがロープをつたって横断している最中に転んで流され、
2人も引きずられてロープごと滝に転落したらしい。藤沢さんは、安藤さんら2人が
救助したが、意識不明のため現場に残してきたという。

安藤さんによると、現場は川幅3、4メートルで、下流5メートルほどのところに滝
の頭があり、滝の高さは約20メートルで、水深は5メートル以上。当時は「小雨
で、川の流れは速かった」という。

一行は14日に入山し、17日に下山する予定だった。登山歴は藤沢さんが20年、
篠原さんと奥村さんは1年程度という。

(9月17日 asahi.com 12:15)

◆滝転落、不明の2人遺体で 重体女性も死亡

 十勝支庁大樹町の日高山系ピリカヌプリ(1631メートル)で十六日、登山者三
人がヌビナイ右股川の滝つぼに転落して女性一人が重体、男性二人が行方不明になっ
た遭難事故で、道警などは十七日早朝から、救助隊員ら三十八人で捜索・救助活動を
始めた。その結果、同日午前九時二十分ごろ、重体のまま現場に残されていた札幌市
東区本町二の八、パート従業員藤沢明子さん(58)を現場近くの下流で発見、自衛
隊のヘリコプターで収容したが、すでに死亡していた。

また、行方不明だった同市中央区南三西二六、会社役員篠原孝二さん(53)と同市
清田区平岡二、同奥村信夫さん(50)は同日午後零時四十分ごろ、さらに下流の沢
で遺体で見つかった。

しかし、沢は増水しており、収容作業は困難なことから、天候の回復を待ってきょう
十八日早朝にも再開する。

「だめか・・・・・・」 家族ら沈痛

道警などが大樹消防署に設置した「山岳遭難対策本部」には、十七日未明から、篠原
さんら遭難した三人の家族や親せき、友人が詰め、「どこかにはい上がって、何とか
無事でいて」とわずかな希望をつなぎ、捜索の様子を見守った。

しかし、重体のまま現場に残されていた藤沢さんは、増水によって約十五メートル移
動した下流で遺体で発見。続いて、正午過ぎには、篠原さんと奥村さんの二人の遺体
も見つかり、家族の間からは「やっぱり、だめだったか」と悲痛な声が上がった。

篠原さんの兄の会社経営篠原勝さん(63)(札幌市南区真駒内緑町)は「弟が山登
りをしていることも知らなかった。昨夜、遭難の知らせを受け、まさかと思ったが、
現実になってしまった。二十メートルもの滝から落ちたと聞き、覚悟はしていたつも
りだったが」と沈痛な表情。

また、救助活動に駆け付けた山岳会「童人チロロの風」の前代表の会社員八木浩さん
(39)(同市手稲区手稲本町)は「四年前の十月に山岳会を結成して以来、これま
で一度も事故がなかったのに、一度に三人も……。沢を渡る時にロープを岩などに固
定しなかったのは、一瞬の気の油断としか言えない」と話していた。(9月18日 朝日
新聞)

◆流れに垂直のロープが原因か

「川の流れに直角にロープを張り、2人で両端を支えるという危険な状態で事故が起
きてしまった」。日高山脈・ピリカヌプリで3人が滝に転落した事故で、パーティー
のリーダー三浦順一さん(63)=札幌市東区=は17日午後、対策本部のある大樹
消防署で記者会見し、事故当時の状況を説明した。

三浦さんの話では、パーティー5人は滝の手前10メートルほどの地点で川を渡ろう
とした。川幅は約3メートル、深さ約30センチ。川底は岩盤だった。

先頭は、登山歴40年以上の三浦さんだった。「片足を水中につけると次の足が対岸
につくほど」の狭い川幅で、特に危険とは感じなかったという。ただ、水の勢いは強
く、後続には「ほかの地点で渡った方がいい」と伝えて先に進んだという。

2番目の篠原孝二さん(52)からはロープを使った。三浦さんが渡った場所から約
5メートル上流で、ロープの一端を自分の体の金具に固定し、もう一方を奥村信夫さ
ん(50)に固定して渡ったという。

事故は3番目の藤沢明子さん(58)が渡っている時に起きた。ロープは川を渡り終
えた篠原さんが対岸で手で持ち、もう一方の端は奥村さんの体に固定していた。その
ロープを伝って、藤沢さんが渡り始めたところ川の中で転倒。ロープを流れに対して
直角に張っていたため、水流をもろに受ける形になり、2人でロープを支えきれず、
3人ともに流され、滝の下に姿を消したという。

事故が起きた時、三浦さんは次の急斜面を登っていて、ロープが流れに直角に張られ
た危険な状態だったことを知らず、気がついた時に、3人はすでに流されていた。
「あっという間の出来事で、何もできなかった」という。

三浦さんは「あのような危険なロープの使い方をするとは思いも寄らなかった」とい
うが、結果として大きな事故につながったことについて、「危険な場所だったのに、
自分もそれを感じなくなっていたのかもしれない」と沈痛な表情を見せた。
(9月18日読売新聞 北海道版)

ACHP編集部

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