出し平、宇奈月ダム土砂の変質抑制開始

黒部川の関西電力・出し平ダムと建設省・宇奈月ダムの連携排砂中止を受けた両ダム
湖底の土砂のヘドロ化を防ぐ変質抑制対策が三日、始まった。

両ダムでは、今年七月十日から八月三十一日までの間に、全国初となる連携排砂を予
定していた。しかし、排砂基準を満たす降雨が実施期間中になかったため、先月二十
九日の「黒部川土砂管理協議会」(座長=中山隆・北陸地建河川部長)で、排砂実施
期間を延長せず中止し、今月十四日までに土砂変質抑制策をとることを決めていた。

抑制策は、まず出し平ダムで、ダム上部の洪水吐(ばき)ゲートを使って水位を低下
させた後、ダム下部の排砂ゲートを開けることでダム湖の水をほぼ入れ替え、湖底に
たまった土砂に酸素を供給する。出し平ダム下流の宇奈月ダムでは、出し平ダムから
流入する水を、洪水吐ゲート、水位低下ゲートを調節して水位を一定に保ち、水を入
れ替えてダム湖内の濁りが早くとれるようにする。

この日は、三日午前零時―同三時の出し平ダム上流域での累計雨量が十ミリを超えた
ことなどから、午前六時半に抑制策の実施を決め、実施本部(本部長=鎌田照章・建
設省黒部工事事務所長)が宇奈月ダム管理所に設置された。

抑制策の実施作業では、午前十一時に、出し平ダムの洪水吐ゲートを開け、毎秒六十
トンの放水を開始。水位低下後の午後零時十分から、ダム下部の左右一か所ずつの排
砂ゲートを開き始めた。全開時には五メートル開く排砂ゲートを約五十センチだけ開
け、午後八時十一分にゲートを閉じるまで毎秒八十トンの水を放出した。出し平ダム
の排砂ゲートを閉じた後、宇奈月ダムが四日夕方までに約九メートル水位を下げた時
点で抑制策は完了する。排砂ゲートを開けた後、出し平ダム直下では午後二時に最も
濁りが激しくなっていた。

出し平ダムには県漁連、地元のくろべ漁協、黒部川内水面漁協から関係者が訪れ、抑
制策の実施作業を見守った。

くろべ漁協の松野均組合長は「(抑制策は)漁業に影響はないだろうが、効果もそん
なにないのではないか。効果を実証できる基準などをこれから確立して欲しい」と話
し、抑制策の効果を疑問視する声があがった。

また、排砂による漁業被害を心配する入善・朝日刺し網部会の佐藤宗雄代表も「抑制
策は本当に効果があるか疑問だ。今の状態の排砂は絶対反対だが、漁業者も中に入れ
た大きなテーブルで一番いい排砂方法について話し合いたい」と、現在の排砂方法そ
のものの根本的見直しを訴えた。(9月4日 Yomiuri On-Line 富山版)

ACHP編集部

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