黒部川の関西電力・出し平ダムと建設省・宇奈月ダムで行われる国内初の連携排砂の
実施期限が、24日で残り1週間となったが、今後天気が大きく崩れる見込みはな
く、期限内での排砂実施は極めて困難な状況だ。建設省は9月末までの期限延長を望
んでいるが、アユ産卵の影響などを懸念する声もある。建設省や関係市町村などで構
成する黒部川土砂管理協議会は、週明けにも会合を開いて対応を決める。
連携排砂は、8月末までに出し平ダムで毎秒300トン以上、宇奈月ダムで同400
トン以上の流入水量のいずれかの条件を満たせば実施される。しかし、富山地方気象
台によると、県内の7、8月の雨量は23日現在、わずか計92ミリ(平年は7、8
月で計418.5ミリ)だ。建設省と関西電力は、7月15日と24日の2回、連携
排砂の準備態勢に入ったが、条件を満たす流入水量に至らなかった。
昨年の出し平ダム単独排砂も、8月末まで条件を満たす雨は降らず、「特例措置」と
して実施期限を9月末まで延期。台風による大雨で、同月15日から実施された。だ
が、9月は定置網漁やアユの産卵期が始まることや、排砂基準がなし崩し的に拡大さ
れることに、漁業関係者らから懸念の声が出ている。
期限延期以外に、出し平ダムにたい積した土砂の変質抑制策が考えられる。出し平ダ
ムからの発電用の取水を停止し、ダム上部の洪水吐(ばき)ゲートを閉め、下部の排
砂ゲートを少し開くことで、ダムの水を上から下に動かす方法だ。たい積した土砂に
酸素を供給することで不自然な変質を防ぐという。排砂ゲートを開くため、排砂予定
量20万トンの約100分の1の2千―5千トンの土砂が流出し、下流の宇奈月ダム
湖底にたい積する。
建設省黒部工事事務所は「変質抑制策をとったとしても、来年に土砂を持ち越すこと
で多少の変質が進むのは間違いない」としているが、「期限延期に対する各方面から
の反発を押し切るだけの説得材料もない」と頭を抱えている。
一方、県漁連(大黒信吉会長)は23日、黒部川周辺八漁協の組合長を集め対応を協
議した。「延期しての実施もやむなし」との声も多く出る一方で、九月は富山湾一帯
で定置網漁が本格化するほか、黒部川には産卵を控えたサケのそ上もあり、漁への影
響を懸念する声もあった。県漁連では29日に県下全漁協の組合長会議を開き、最終
的な態度を決定する方針だ。(8月25日 Yomiuri On-Line 富山版)
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