富士山の元強力(案内人)、彦さんこと小俣彦太郎さん(80)を、山梨県富士吉田
市が「かくれた功労者」としてこの24日に表彰する。登頂は850回以上。199
4年には来日したカーター元米大統領夫妻を頂上へ導いている。
5年前に引退。「スバルラインができ、排ガスで木は枯れる。食った後は『捨てちゃ
え』と(富士山は)観光の山、ごみの山になった」の思いもあった。
八丈島生まれ。17歳で強力に。60〜70キロの荷を背負い半世紀以上。信仰の山
の変遷を見続け、強力の名も案内人、ガイドと変わった。
92年夏、彦さんは京都府立高校生とともに雨の9合目にいた。疲れに加え、急激に
冷える体。「危ない。彦さん下りよう」という後輩ガイドの声をよそに「いや、登
る」。注意力が低下する中、落石が多い所を下れば事故になる。一度頂上に出て、安
全な下山道を下る、の判断。高校生ら約350人は山を知る男に導かれ、無事だっ
た。
「時代が変わっても山は山、厳しさは変わらない。お手軽じゃいけないよ」。強力の
顔がよみがえった。【野崎勲】 (毎日新聞2000年7月22日東京朝刊から)
ACHP編集部
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