明るく楽しい南極――露天ぶろも花見もサッカーも
日本の観測史上初めての女性越冬隊員として、南極の冬を昭和基地で過ごした京都大
学大学院生の東野陽子さん(30)と東北大学大学院生の坂野井和代さん(29)
が、その体験を一冊の本にまとめた。「南極に暮らす」(岩波書店)。南極の厳しく
雄大な自然や総勢39人の越冬隊員たちの交流が語られている。
二人は1997年11月、南極観測船「しらせ」で日本を出発し、99年3月に帰国
した。
昭和基地の真冬は零下20度以下。ひたすら雪と氷の大地が続き、目の前が見えない
ブリザードに何日も閉じ込められることもある。だが、この本に描かれた南極生活
は、ことのほか明るい。
凍る夜には音もなくオーロラが乱舞し、満天の星々が顔を出す。基地内には喫茶店や
バーがつくられ、露天ぶろやお花見、盆踊り、サッカーなど楽しみは多い。「南極と
いうと冒険物語のようなイメージが強いが、もっと日本での日常に近い人間らしい暮
らしがあふれていることを知ってほしかった」と坂野井さん。
帰国後、研究の合間に少しずつ書きためた。隊員に決まるまでの不安や出発前の訓
練、自分の足で立った南極大陸の印象、観測の苦しさと楽しさなどを1章ずつ交代で
担当した。
「史上初の女性」といわれるのは二人とも苦手。「野外でのトイレは苦労したし、重
い荷物が持てず迷惑もかけたけれど、それ以外、女性だから、と特別扱いされたこと
も意識したこともなかった」(東野さん)。「女性もごく普通に南極で頑張れる。こ
の本を読んで、後に続いてほしい」(坂野井さん)(7月23日 朝日新聞 朝刊)
ACHP編集部
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