春を告げる怪物 立山黒部アルペンルートの「熊太郎」と「熊翁」
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道路の両側に聳える15メートルもの雪の壁。その隙間を走り抜ける観光バス。富山県側
の立山と長野県側の大町を結ぶ「立山黒部アルペンルート」の春の風物詩“雪の大
谷”だが、あの除雪はいったいどうやって行っているのだろう?
雪解け時期のアルペンルートには「熊太郎(くまたろう)」と「熊翁(くまおう)」
と名付けられた2台のロータリー除雪車が出動する。最終的には雪の壁が常識はずれ
に高くなるため、通常の除雪車では、その壁を越えて雪を吹き上げる事は出来ない。
そこで通常の2倍近い吹き上げ能力を持った、アルペンルート専用の怪物マシンの登
場となった。
現場を指揮する下部古栃建設の畠山賢一氏によると、「熊太郎」達は仕上げ用の雪の
お掃除役で、実際に雪を深く掘り込んで行くのは、もっぱらブルドーザーだという。
「ブルで、上からだんだんと雪を削って行くんだ。かんなの様にね。その削った雪を
「熊太郎」達が遠くへ飛ばすんだ」
雪深く埋もれた道路には、目印として9メートルのポールが立てられているが、冬の間は
倒れたり積雪ですっぽり埋もれたりで、あまりアテにならない。「景色や方角を見た
り、まあ、長年の勘みたいなものだね」道路をピタリと掘り当てる正確さは数センチ
の誤差も無いと言う。
大谷の除雪は山麓側の天狗平と山頂側の室堂の両側から徐々に攻めていくのだが、そ
の分担も「あうんの呼吸」でやる職人芸の世界だ。
例年約15メートルの最大積雪深が、今年は20メートル以上になった。それでも3月13日
から約一ヶ月間の懸命な除雪作業で、予定通り4月20日に開通できた。
雪を吹き上げる様子を見ているだけなら、涼感満点の巨大なかき氷機だ。しかしこの
かき氷は、この道20年以上と言うベテランの職人芸の結晶でも有る。
*立山黒部アルペンルート開業期間4月20日〜11月30日。JAF会員は乗車券が
割引に。(ジャフメイト 7月号)
編集部注:新穂高ロープウェイもJAF会員の割引が有ります。
ACHP編集部
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