2000年の初日の出/頂上へ例年以上の人/風景の下に空き缶

 富士山の初日の出のもようを伝える新聞記事です。

 2000年の初日の出をインターネットで生中継するため12月31日、富士山に登 った。「すでに死者2人」。冬富士登山の危険を警告する看板を横目に、富士 から 初日の出を見ようという人たちがつづらおりの登山道を登る。

 恋人同士らしい若いカップル、中年の男性、高校生2 人組……。米アラスカ州から 来た男性2人は「ビューテ ィフル」を連発しながら遠くの山々の写真を撮っていた。

 しかし、吉田口登山道の5合目・佐藤小屋に着く直前にある廃屋の横には、空き缶な どが山積みにされていた。7、8合目ではトイレのわきに「トイレ協力金100円」 という看板をみかけた。冬はほとんど人はいないが、夏には30万人が山頂を目指す 。看板はその人たちが利用するトイレを清潔に保つために協力を呼びかけたものだ。 しかし、そのトイレのほとんどが垂れ流し状態で、し尿による環境汚染も深刻だ。

 午後5時ごろ、日没と同時に突風が吹き始めた。午後6時半、9合目で雪を削りテン トを張る。夜中には風速20メートル以上になり、捨てられていたビニール袋が飛ば されてくる。冬富士名物の強風は格好の“すす払い”なのかもしれない。

 翌朝は氷点下16度。アイゼンを雪面にきしませ、10人ほどの登山者が頂上を目指 した。午前6時過ぎ、水平線が赤く燃え、2000年が明け始めた。

 50年間佐藤小屋を取り仕切り、昨年引退した佐藤茂さん(72)によると「例年は 3合目くらいまで雪があるが、今年は8合目まで。こんな正月は記憶にない」。いつ もなら40人程度の佐藤小屋の宿泊客も「今年は200人もいた」という。

 今年は山梨県側の観光道路・富士スバルラインも5合目まで通行でき、元日だけで約 1200台の車が訪れた。インターネット生中継は、7500件を超えるアクセスを 記録した。

 新ミレニアムの幕開けに人々は何を祈ったのだろう? (1月13日 毎日新聞 朝刊)

 ACHP編集部


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