バーチャル高所トレーニング |
低酸素訓練に関する新聞記事の紹介です。
文部省登山研修所(富山県立山町)の「低酸素トレーニング室」が注目を集めている 。国内で初めて今春作られた設備は、酸素を減らし、ヒマラヤの高峰などの高所状態 を自在に作り出す。日本山岳会などと共同による「スーパークライマー育成」が狙い だったが、中高年トレッキングの事故防止など用途は幅広い。高所トレーニングに海 外に出かけていた陸上などの他のスポーツ界も、関心を寄せている。
研修所には8人用(32平方メートル)と4人用(約16平方メートル)の2室があり、 医療用の酸素供給記を備え付けてある。「室内の空気から酸素を取り出して濃度を調 節して、高地と同じ状態を作る」と柳沢昭夫所長。施設は「高地ハウス」とも呼ばれ 、低酸素の不可で、酸素を運ぶ血液中のヘモグロビン濃度を上げ、酸素摂取能力を高 めることで持久力アップを図る仕組みだ。
日本山岳会は6月、このテイサン素質を使って高度順化トレーニングを行い、北米最 高峰マッキンリー(6194メートル)に挑戦。グループ5人全員が登頂に成功した。一 人は高所登山経験のない60台の女性だった。
酸素は標高5000メートルで平地の半分、8000メートルで三分の一になる。個人差はあ るものの、3800メートル程度で眠気や視野狭窄、吐き気と言った高山病の症状が出始 める。
今回の登山隊は高度2000メートルから、最終的にはマッキンリーの山頂に当たる 600 0メートルの低酸素状態まで体験した。二泊三日を二回、計6日間だけだったが、効 果はてきめんだった。
中高年のトレッキング熱は高まる一方で、ヒマラヤも今や特別な場所ではなくなった 。しかし、日程を節約していきなり4000メートル中点から入る例や、一流登山家並に 一日8時間の行動を組んで高度障害で倒れる例が少なくない。
「低酸素でトレーニングすれば、現地での危険を減らすだけでなく、テイサン祖に弱 い人をチェック出きるから、中高年の事故予防にも将来有望だ」。同山岳会の増山茂 理事(千葉大医学部)は、テストの第一段階をこう総括する。
関係者の念頭には、ヒマラヤの8000メートル級に無酸素で挑む登山家を輩出させるこ とがある。来年は同山岳会の海外遠征メンバー全員に体験させデータを収集。実際の 登山に約4週間のトレーニングを実施する第二段階へ進む予定だ。
低酸素室に注目するのは山岳界だけではない。富山大学の山地啓司教授(運動生理学 )は、大学陸上部の中長距離選手11人をこの夏、3回計約2週間に渡って低酸素室に入 れた。結果は11人全員が自己ベストを出した。
練習は平地で行った。山地教授は「高地では低酸素の負荷が強く、筋力全部を使えな いし、オーバーワークになりやすいが、平地なら心配ない。リビングハイ・トレーニ ングロー(高地で生活し、練習は平地で)と言う研究が進んでいる」。
国内でこれまであった施設は、いずれも医療用の低圧室だった。完全密閉する必要が あり、建設だけで数億円かかる。。低酸素室はその点、低コストだ。研修所は総工費 約3千万円で出来た。同研修所に次いで鹿屋体育大にも作られており、大手ゼネコン が発売準備を進めている。
低酸素室は高地のないフィンランドなど北欧を中心に研究が進んだ。最近はシドニー 5輪を控え手オーストラリアなど、各国が本格的に取り組んでいる。(12月23日 朝 日新聞 朝刊)
ACHP編集部