獨標登高会の寺田です。
●スタイルとグレード
アイスクライミングのスタイルについて、「フリー」と言う概念は捨てるべきだと思
います。理由としては素手と素足でも登攀可能なフリークライミングに対し、アイス
はアックスとアイゼンという道具無しには不可能だからです。道具を使用すること自
体、人工と考えられないでしょうか?またフィフィ云々の話しも、それ以前にリスト
ループを使用すること自体がA0で有ると思います。フリークライミングで言えば、
ボルトにかけたヌンチャクを掴んだ状態と言えないでしょうか?かといってリストル
ープ無しにはあまりに危険すぎます。以上の理由からアイスクライミングは、フリー
でも人工でもない全く独立した別のジャンルのクライミングと考えるべきだと思いま
す。あえて言うならアイゼン・手袋に対し、アックス・アイゼンクライミングとでも
呼ぶのでしょうか?行き着くところは現代の先鋭的なミックスクライミングでしょう
。極端な話しフリーのルートをアックス・アイゼンで登ると考えてください。ただジ
ェフ・ロウの理念は、オンサイトでナチュラルプロテクションが前提ですが...。
BD社の取説を読むと、「アイスクライミングの鉄則は、絶対に墜落しないこと!」
とあります。プロテクション設置の際、力つきて落ちては危険です。フィフィに体重
を預ける預けないは別として、フィフィの使用は安全なクライミングの前提条件であ
ると思います。アイスクライミングはその性質上、系統立ったルール作りが成されて
来ませんでした。高難度をストイックに追い求める人もいれば、仲間とわいわいエン
ジョイする人もいるでしょう。各自が信じるスタイルで、安全かつ楽しく登るのが一
番だと思います。
グレードに関しては、白山書房のアイスクライミングの前書きに有るとおり、参考程
度に留めるべきだと思います。氷の状態は気象条件により大きく左右されるからです
。昨シーズンと今シーズンでは、異なるのは当たり前です。12月と3月でも、大きく
違うでしょう。同じ日でも午前と午後も異なるはずです。先行パーティの後、ピック
やプロテクションの痕跡を使用することにより簡単になる場合も考えられます。サー
ファーの間では、「同じ波は二つと無い」と言う言葉があります。厳密な言い方をす
れば、生き物の様な氷にも同じコンディションは存在しないということです。またギ
アによっても難易度は変わると思います。縦走用のピッケルとアイゼンでは、難しい
と感じるでしょう。またフィーレの出現によってEBで登られたスラブが軒並みグレ
ードダウンされたように、ギアの進歩により簡単になることも考えられます。それ故
グレードは山行計画を立てる際の、大まかな目安として考えるべきであると思います。
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