質問内容/回答

<質問>

京都の野村です、こんにちは。

いまさらで恥ずかしい限りなんですが、、
墜落時のエネルギーを表示する時の単位ですが、
ものの本やビナの表示を見ると”KN”(キロニュートン)となっています。
ところで、エネルギーの表示単位はJ(ジュール)ですよね、
で、”J = N・m(長さ)”だったと思います ← 少なくとも20年前の高校物理
では

上記の認識が正しければ、なぜ墜落エネルギ(≒位置エネルギー)の表示は
(K)Nとなるのでしょうか?
例えば、70kgで墜落距離20mだと、私の理解では
 70(kg)x9.8(m/sの2乗)x20(m) ≒ 14,000(J)とな
りますが、
 ( ← ロープの弾性等一切無視)
これが ”140KN”と計算されるようです。
また、時折”dN”という表示も見かけますが、これはどういった単位なのでしょう
か?

以上、ご指導頂ける方いらっしゃいましたら是非レス付けて頂けませんか。
よろしくお願い致します。

<解答> 


山岡@地球クラブ(兵庫労山)です。

野村さん、お久しぶりです。
野村さんは、文系でしたね。理系の研究者からの
コメントです。

力の単位は、m(メートル), kg(キログラム), m/s(メートル毎秒)
などのいわゆるMKS単位系だと、N(ニュートン)になります。
  F (N) = M (kg) a (m/s^2)
という式ですね。落ちるときは、重力加速度a=g=9.8 m/s^2
で落ちます。

エネルギーの単位は、野村さんの記憶の通り、J(ジュール)で、
上の力に長さを書けたり、 高さh (m) を使って位置エネルギー
  E (J) =Fx移動距離、E (J) = Mgh
を使ったりします。

さて、たいていのカラビナやロープの表示は、確かに、KNと
なっています。これは、力の単位ですね。実際にかかるのは、
力ですので、このほうが直接的です。

昔使っていた、力の単位、重量キログラムを使うと、
1 kgf= 9.8 Nとなります。

カラビナだと、破断は、大体、2-3トンくらいの静加重で
起きます。これを力に言い直すと、
 F=2000kg x 9.8 m/s^2~20000 N~20 kN

おおまかには、ニュートン表示のものを10で割ってやれば、
上の重量キログラムになり、我々の感覚に近いものとなります。

墜落距離がどのくらいの時にいくらの力がかかるかは、
方程式を解かねばなりません。おおまかには、何メートルかの
墜落で、1トンくらいの力はすぐにかかります。ロープの伸びや
支点との摩擦などでこの力は分散されます。
文部省登山研修所が毎年一回出してる本のなかに、これらの
計算をした論文が確かあったと思います。
岳稜の松本さんは、この辺の事も詳しく自分で実験・研究されて
ますね。


山岡さん  野村です、こちらこそお久しぶりです。  早々にありがとうございます。  > これは、力の単位ですね。実際にかかるのは、力ですので、このほうが直接的で す。  そうなんですか!  実際に相手にしているのはエネルギーではなく、”仕事”だということですね。  ならば”N”を用いること、納得できます。  実際のクライミングの墜落においては、E (J) = Mgh は実用的でないから  ひとまず忘れてしまっていいということになるのでしょうか?  確かUIAAの定義?に   体重/80 x 4.5 x FF(墜落係数) (KN) というのがありました よね、  こちらの方を意識していけばいいということになるのでしょうか、、 野村勝美
野村さん、こんにちは 重川@ブロッケンと申します。 あのお、その解釈はちょっと違うようですよ。 joule というのは「仕事、エナジ、熱量」の単位です。つまり物理量としてはエ ナジも仕事も同じとみなされます。 ロープやビナで論じているのは数回の衝撃荷重に耐えられるかどうかです。 衝撃荷重は「力」の単位で表現されるということです。 もし、それらの強度が「仕事」で整理できる(仕事と寿命に相関がある)とした ら、「わずかな静荷重(体重そのもの)をかけて引き上げることを繰り返せば切 れる」ということになってしまいます。ビナで折り返して荷重をかけながら引っ 張ればロープは痛みはしますが、仕事はプーリを使っても同じだし、それだけで はいくらやってもビナが壊れることはないでしょう。だから「仕事」で整理はで きないわけです。あくまで力が問題になるわけです。
川上@MSCCです。 唐突ですが参考までに。 質量の単位:kg 力(荷重)の単位: kgf と N 仕事量の単位: J と N・m と整理するとわかりやすくなると思います。 いずれも地球上の重力に絡み合っていて考えるとややっこしくなります。 質量は、地球上でも月の上でも変りませんが実際にバネばかりにつるせば、示す値 は変ります。 重力が違うからです。(月に行ったことないけど) つまりバネはかりのは力(荷重) kgf もしくは N です。 山岡さんの説明をもう少し分解すると 標準重力加速度(9.80665m/s^2)としたとき 力=1kgf=1kg・9.80665m/s^2=9.80665N となります。 この時の”標準重力加速度(9.80665m/s^2)”がみそです。 厳密に言うと日本国内でも重力加速度は北と南で若干違います。 南へ行くと体重は軽くなる。 だから、バネ(筋肉)の強さは変らないのでハング が楽に登れる(笑) 冗談はともかく、月に行ったときは kgfのf もしくは N の 値を月の重 力にあわせればつじつまが合うことになります。 月の重力を地球の1/6とすれば、1.63m/s^2=9.80665m/s^2/ 7ということですね。 つまり ”仕事”は ××kg のものを △△m動かしたことをいいます。 だから、”力” (kgf もしくは N)とは違います。 クライミングを考えたとき、細かいことを一切無視して、 70kgの人が10m落ちれば 700kgf ザックリ 70N の力(荷重) が化カラビナにかかると考えればいいんじゃないかな。 これが山岡さんの意味するところ。 意味は違うけど 700kgf=700kg と解釈しちゃって ピトンの抜け荷 重を仮に500kgfとすれば、700kgの錘をぶら下げればピトンは必ず抜け る。というような具合に計算して、ランニングを取ったり、ビレイしたりすればイ メージしやすいと思う。 野村さんの話は疲労の話ですね。 ビナを対象にすれば、いわゆる金属疲労です。 S/N曲線・・・ストレス(荷重)と破断したときのストレスを加えた回数の曲 線)が意味するとこです。 たとえば静荷重 1000kgf で 破断するビナがあったとき 500kgfの繰り返し荷重では10万回で破断する 250kgfの繰り返し荷重では1000万回で破断する といった内容のものです。 (注意:この数値には根拠はありません。あくまでも例です) 実際の衝撃荷重は計算できないし、外的要素(岩に擦れたり、カムッちゃったり) や製品の品質もあるので、 ギヤへの信頼度はまさに個人のセンスといえるでしょう。 金属ものは、”投げない・落とさない”といわれる由縁はそこにあります。 エネルギー保存の法則というのがありますから、上の例で言うと、 70kgの人が10m落ちれば 必ず700kgfのエネルギーが発生して、 ロープやビナ・ピトン・ハーネス・人体・空気抵抗などに分散されるわけです。 落ちた時の人体への衝撃が小さければ、比較的ビナ・ピトン・ハーネスへのダメー ジは小さいと言えると思います。 逆に、ロープへのストレスは大きいはずなので、要注意。
山本です。 1960年に国際度量衡会議でメートル系単位(SI)への表示の統一が決議されまし た。 それに伴い、重力系単位(MKS)は使用しない方向になりました。 日本においては、1951年に度量衡法が廃止され計量法制定された時にメートル法 が採用されました。 さらに1990年からはSI優先表記となりました。これは工業的に表記を世界と統一す る必要が有ったわけです。 ところが物理学者はcm.g.sの(CGS単位)を取り、工学者.技術者は(MKS 単位)を取りました。 1992年からは法律でSIを使用する様に改正されました。 さて、N・mと書いた時とKgf・mと書いた時は単位の換算は有るとしても。 (定義は、1Nの力が作用する点から力の作用する方向に垂直に゜取った距離1mの点 において、距離ベクトルと力ベクトルで作られる平面に垂直にたてられた軸に対する その力のモーメント) であります。 ここで違う事はNは加速度を与える力である事を定義付けています(地球上で無くて も通用するわけですが)Kgfキログラムフォースと書いた時は1キログラムに1G を与える力なので。これは単純に1キログラムの重さと言う事です。 ジュールと書いた場合は、仕事になりますので、垂直方向の加速度での衝撃を表すの に適当ではありません。 (加重のモーメントによる破壊の時の数値は主に金属は破断する前に耐力の降伏点を 過ぎます、一般に2%の変形を超えると元には戻らないと言っています。破壊試験を して破壊された物は売れませんので、平均的引っ張り強度の規格数値から計算して、 何キロまでなら絶対破断しないと言う数値の安全側の数値を表記すると言う事に成り ます、しかしながら。アルミ材の生産国やロットに寄ってばらつきが有って、本当に 大丈夫かどうかは分かりません、刻印されてる数値が命を保障する物ではありませ ん、評判と使い方でしょうか) 昔ドイツではKgfをKpキロポンドと呼びました、 ヤードポンド法単位では、ft・lbfフートポンドに成ります。 定格加重や引っ張り強度では。kgで無いと何キロに耐えられるのかどうしても感覚 的には分からない。 Nから換算してもどうも信じられなくて。自分の体重をNで表示した事が無いからで しょうね。 分かりやすく書くつもりが余計分からなくなってしまいました。
川上さん、山本さん  野村です、はじめまして。  いろいろと教えて頂いてありがとうございます。  >川上さん  > 力=1kgf=1kg・9.80665m/s^2=9.80665N  > 70kgの人が10m落ちれば 700kgf ザックリ 70N の力(荷重)  とありますが、これは7000Nと解釈しますが、よいですか?  高校の物理の教科書程度の生半可な知識では追っ付かないですね(^^;  これからいろいろ勉強してみます。  みなさん、ありがとうございました。  それでは。 野村勝美
川上です。 そうです。思いっきり、間違ってました。 文の内容からすると7000Nが正です。 すみません。 しかも、内容自体にウソがありました。 これは、静荷重の話で・いわゆる人がただぶるさがっているような状態のことで す。 ある運動エネルギーによって700kgfの荷重がビナにかかったとすれば、約7 000Nである という意味です。 それから、他にも同様のウソがあったので訂正します。 最後の方の ””70kgの人が10m落ちれば 必ず700kgfのエネルギーが発生して、 ロープやビナ・ピトン・ハーネス・人体・空気抵抗など・・・・”” はウソです。 9.8をかけなければならないので、約7000N・m(またはJ)です。 重ね重ねすみません。 わかりやすく説明しようとして、書いてる本人が混同してしまったようです。 クライミングにおける墜落(運動エネルギー)を実際の荷重に置き換える作業は、 ロードセルを使用して、実験している文をどっかで読んだことがあります。そちらを 探しだして、見られると現実的だと思います。 まちがえなくいえることは、ビナなどの表示はKN(キロ・ニュートン)は静荷重 における破壊点付近の値だということです。 そこまで耐えるのか?そこで壊れるのか?は不明です。たぶんそこまでは耐えると いう意味だと思いますが・・・ ではでは、お粗末でした。
埼玉の柳田と申します。はじめて投稿します。 > また、時折”dN”という表示も見かけますが、これはどういった単位なのでしょ う > か? 私の手元にあるギア類の表示に daN は ありますが dNは見あたらないので、答えにならないかも知れませんが、参考までに。 daN ならば  daは deca:デカ(=10)の意味です。 すなわち 1daN=10N
初めてメールさせていただきます。青木と申します。大学で物理学の研究をしており ます昔の山屋です。物理学者の立場として意見を述べさせていただきます。  70kgの人が静止状態から10m落下すると重力によって、およそ700N×1 0m=7000Jの仕事がなされ、これが運動エネルギーとなり、そのときの速度は およそ14m/sとなっています。落下を止めるにはこの速度を0にしなければなり ません。2とおりの方法で説明します。 @高校の物理で学ぶことですが、「運動量=質量×速度」 の変化は、「力積=力× 時間」 に等しいですから、この場合の運動量〜70×14〜1000kg・m/s を0にするには、一定時間にわたって力を加えてやらねばなりません。一定の力F 〔N〕を時間t〔s〕の間、作用させるとすると、F〔N〕〜1000÷t とな り、短い時間で、つまり早く止めようとするほど大きな力が必要となります。ザイル やカラビナの破壊強度は力で表されますから、あまり早く止めない方がよいというこ とになります。 Aエネルギーの吸収という観点から述べてみます。7000Jの運動エネルギーが、 ザイルが一定距離伸びる、つまりザイルに対して仕事(=力×距離)がなされることに よって、運動エネルギーが0となり、静止するという見方です。ザイルが伸びる距離 をL〔m〕、ザイルに作用する力をF〔N〕とすると、7000=F×Lですから、F =7000÷L となり、Lが小さいほど大きな力が必要となります。 以上、余計なことかも知れませんが、ご参考になれば幸いです。
青木さん初めまして。 川上@MSCCです。 昔の山屋さんということなので、ご存知だと思いますが・・ まさに青木さんの説明はかつてのダイナミック・ビレイってやつの有効性を物理的 に表現したものだといえますね。 更に蛇足ですが・・・ 14m/sはちょうど10m落ちきった時の最終速度です。 初速度は0ですから、落ちる距離を小さくすれば最終速度も小さくなる。 10m落ちる時の状況といえば、ランニングから5m登ってそこで墜落開始?・・ ランニングが中間地点で更に5mロープ分落ちて合計10mといったところでしょう か。 その間5mまで落ちる時間が 1.01s 速度は 9.9m/s となり 約3 0%減です。 10mまでの時間は 1.43s。 その間、どれぐらいビレイヤーがロープをたぐれるか??という問題はありますが ・・ ロープをたぐってやれば、墜落距離は小さくなって、そのエネルギーも小さくする ことが出来ます。 最初の5mは1秒もあるのに後の5mはわずか0.43秒という計算になります。 とにかく最初が肝心・ということですねぇ・・ ランニングにテンションがかかってからは、青木さんのAに準じて、逆にリリース 気味に止める。ゆわゆるダイナミック・ビレイが有利になるわけです。 ロープも長いほうがその弾性が生かせて更に有利となります。 つまり、グランド・フォールの心配さえなければ、ダイナミック・ビレイの方がラ ンニング(支点)の保護に有利であるといえるわけです。 最近は、ロープの性能も良くなって、ダイナミック・ビレイという言葉自体が死語 のような気もするんですが・・ 特に細いロープはよく伸びるので、とにかくすぐ止めろ!ってのが定説?といえる のではないかと思ってます。
山本です 現実的には、実験で確認するのが一番でしょう。 山岳会の方々は、実験データを必ず持っていると思いますが。 ××のカラビナと××のロープの時、どのくらいで破壊したとか。 当然大大的に公表する事はできないでしょうが。 仮に全てのデータが公表されてデータベースが出来れば。 使う方の立場としては、大いに助かりますが。 メーカーとしては、困る所もあるでしょうね。
国本@町田です。 以前、労山千葉の鷹取山でのロードセル使用した確保講習会のデータが 下記岳樺クラブのHPに掲載されてます。 http://homepage1.nifty.com/dakekanba-club/ →経験の交流 →ロードセルを使った確保講習会報告 最後に、ゲート開いた状態のカラビナ破断実験行いましたが、 ものの見事にぶつんと行きました。 私自身、山行中にギア落っことして、カラビナのゲートのスプリングが調子悪く なったことが過去2回あります。 外見だけでなくスプリングや安全環の状況も良くチェックしなければならないと この実験で実感しました。

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