マレーシアとタイの一般向け乗り物・交通機間を解説し比較する


ひとこと

自由旅行者の旅行に役立つために、「今週のマレーシア」の第339回掲載の同名コラムの一部をここに載せておきます。全文は「今週のマレーシア」を開いてご覧ください。

長年各種の乗り物に乗りまくってきた者として両国を比べる

筆者はタイとマレーシアに関わって以来これまで約18年ほどの間に両国で車輪の付いた交通機間・乗り物を利用した回数は、控えめに見積もっても合わせて一万回を軽く超します。その種類は市内乗り乗り合いバス、近郊バス、中長距離バス、鉄道、電車、サムロー、乗り合いバン、タクシー、乗り合いタクシー、バイクタクシーなどです。乗り物好きであり且つあちこちと移動することに限りなく興味を抱く筆者は、多くの旅ではできるだけ動き回ります。そういう時にはこれらの車輪付き交通機間・乗り物をたくさん利用します。クアラルンプールやバンコクでは常に市内乗り合いバスを日常的に利用してきましたし、今でもそれはもちろん変わりません。

こうして筆者のマレーシアとタイにおける滞在と旅は交通機間・乗り物の利用なしには全く成り立ちません。そこでタイとマレーシアの一般向け交通機間・乗り物を表にして分類し、それぞれ解説・評価してみましょう。尚ここでいう一般向け交通機間・乗り物とは人を運ぶための車輪付き運搬手段に限定し、渡し船・ボート類及び飛行機は省きます。

注:サラワク州の乗り物だけに関しては記憶があいまいなので、この表と解説に一部含めてない場合があります。がマレーシアに関する説明と評価にほとんど違いは生まれてこないはずです。


マレーシアとタイの一般向け乗り物比較表
距離分類交通機間・乗り物
マレーシア
タイ
長距離列車 2本線:西海岸線と東海岸線
ただ運行本数が片方向合計で
日に10数本とたいへん少ない
全て冷房車両
4本線:北部方面線、北東部方面線
東部方面線、南部方面線、
運行本数は多く列車種も豊か
3等は非冷房車
バス全て冷房車 大多数が冷房車だが
一部にまだ非冷房車もある
中距離列車 2本線:西海岸線と東海岸線
特徴は長距離と同じ
鈍行のみ非冷房車両あり
4本線:北部方面線、北東部方面線
南部方面線、東部方面線
さらに支線として2路線ある
運行本数は多く列車種も豊か
バス全て冷房車非冷房車より冷房車の方が多い
定員制バン存在しない 中部、南部で極めて一般的。
途中で客を拾わない分バスより早いが
定員に達するまで発車しない
乗り合いタクシー クアラルンプールではもはやすた
れたが、地方町ではまだまだ需要
が根強く、ほとんどの町にある
中規模程度の町には通常あるが
ない町も珍しくない。一般に車両数
は少なく、運賃割り高で人気薄
近距離列車中距離の場合と同じ中距離の場合と同じ
バス冷房車、非冷房車 冷房車、非冷房車
非冷房車が幾分多いように思われる
定員制バン 正式にはサバ州以外にはないが
一部州で非合法運行されている
定員制というより乗り合いバンに
近いといえる
中部、南部で極めて一般的。
途中で客を拾わない分バスより早いが
定員に達するまで発車しない
乗り合いタクシー 地方町では需要が根強い
バス運行がないなどの場合は
唯一の公共交通手段となる
存在しないはず
乗り合いピックアップ
乗り合い軽トラック
存在しない ものすごく一般的であり、どの市町村
にも存在する。路線が木目細かく且つ
低料金なので利用者がたいへん多い
首都内乗り合いバス ほとんどが冷房車両
Intrakota, Cityliner の大手2社
と数社の小バス会社が運行
4段階のゾーン運賃制
冷房車両化が進んだが、まだ数割は
非冷房車。これを含めて同一路線で
バスのグレード種類が数種ある
運賃が高いほど座席数が少なく快適
大多数が公営バス
高架電車 Starline とPutraline の2路線
モノレールが開通すれば3路線
SkyTrain 1路線のみ
近郊電車 Komuter電車のこと
市内電車としても利用できる
通常の列車を近距離で使えるが
近郊電車としては存在しない
タクシーメーター制冷房車メーター制冷房車
トゥクトゥク存在しないバンコク名物、料金交渉制
乗り合いピックアップ・
乗り合い軽トラック
存在しない 基本的に中心部を外れて運行して
いる。市内で乗り降りする便もある
運賃はほぼ決まっている
バイクタクシー存在しない 市内のある地区内だけを運行する
多くの人が日常的に使っている
運賃はほぼ決まっている
地方の
市・町
乗り合い市内バス 大きな町のみで運行、冷房車が
多いと思われる、
(ペナンなどにはミニバスもある)
大きな町のみで運行、
冷房車、非冷房車混在
タクシー 大きな町のみにある、
メータ付きでも料金交渉制が多い
市内タクシーのある町はごく少ない
トゥクトゥク存在しない 中規模以上の町では、これを見か
ける場合がよくある。料金交渉制
乗り合いピックアップ・
乗り合い軽トラック
存在しない 基本的に郊外へ行く時に使うものだが
市町内で乗り降りするのもごくあたりまえ
運賃はほぼ決まっている
サムロー(自転車型と
バイク型)
ペナン、マラッカのは主として
観光客用といえる。コタバルでは
地元人が主として利用しているが
数は多くない。全て自転車タイプ
どの町にも必ずといっていいほどある
自転車タイプとバイクタイプの2種あり
町によっては2種ある所も1種だけの所
もある。料金交渉制
バイクタクシー存在しない 一般にごく近距離運行でどこでもある
多くの人が日常的に使っている
運賃はほぼ決まっている
田舎・村 乗り合いピックアップ・
乗り合い軽トラック
存在しない 基本的に他の地へ行く時に使うものだが
同一地で乗り降りしても全く構わない
運賃はほぼ決まっている
サムロー(自転車型と
バイク型)
これまで見かけたことがない 多くの村にあると思われる
自転車タイプとバイクタイプの2種あり
所によっては2種ある所も1種だけの所も
ある、料金交渉制
バイクタクシー存在しない 一般にごく近距離運行でどこでもある
多くの人が日常的に使っている
運賃はほぼ決まっている

交通機間・乗り物マレーシアタイ

注:料金交渉制といっても距離に従がって相場はちゃんとあるので、地元人が利用する場合は交渉料金の幅は小さい。バンコクや観光地では外国人に吹っ掛けてくる幅が広くなるが、これは仕方がないとも言える。


乗り物種毎に説明を加える

乗り合いピックアップ・乗り合い軽トラック:通称ソンテーオと呼ばれ、荷台に幌と長いすを設置して乗客を数多く乗せることができるようになっている。車毎に路線が決められておりタクシーのようにどこへでも行くわけではないが、路線上であればどこで乗降しても構わない。運賃は距離によって数段階ある定額制で降車時に払うのが一般的。行き先表示はほとんどタイ語のみであり出発地点もばらばらなので、旅行者にはたいへん難しいが、これを使いこなせれば人が住む所なら大抵の所へごく安価に行くことができる (だから筆者のお気に入りの乗り物です)。最もタイ的乗り物。

バイクタクシー:決められた地点で客待ちしており、流しはしないのが基本です。バイクの後部シートに人を乗せて近い距離内の指定場所まで客を運ぶ。バンコクでは客もヘルメットをつけるように用意されているが、他の町ではまずヘルメットは用意されていない。便利ではあるが転倒時の危険性は常にある。(よって筆者はこれしか選択がない場合を除いて、めったに利用しません)。ベトナムにもありますが、タイとは違う。

サムロー:自転車またはバイクの横、前、後ろに客用荷台車を取り付けて人を載せる車両のこと。タイでは車の前に客用荷台車をつけるタイプはないはずです。タイだけでなくインドネシア、ベトナムにもあるお馴染みの交通手段ですね。自転車タイプ(マレーシア語とインドネシア語ではベチャと呼ばれる)はだんだんと数が減っている。バイクタイプはスピードがあまり出ず転倒の危険性はずっと低いので、バイクタクシーより安全度はずっと高い。

鉄道:タイ鉄道の夜行寝台には冷房車両と冷房なし車両の2種あるが、マレー鉄道の寝台車は冷房車両のみ。対面式座席の冷房なし3等車両はタイ鉄道では極めて多くの列車に連結されており、乗客が多い。マレーシアのサバ鉄道は近距離鉄道であり、寝台などの設備はない。警備面での特徴として、タイ鉄道の夜行はほとんどの列車に制服姿の警官が同乗するが、マレー鉄道で同乗の制服警官の姿を見るのは例外的な場合といえる。

定員制バン:通常12人ぐらいが定員であり、運賃先払いし定員になり次第目的地に向けて発車する。よって途中で客を拾わないが、目的地近くではどこでも降りられる。さらに乗車地は市町の中心部が多く便利なので、利用者の人気が高い。バン発着所とバンの行き先表示は、外国人の集まる観光地は別として、大多数の場合はタイ語のみなので、タイ語が読めないとどの町へ行くバンなのかさえわからないことになる。

乗り合いタクシー:タイには上記の定員制バンがあるため乗り合いタクシーは人気薄で、どの町にもあるわけではない。マレーシアでは大抵の町にありますが、ある地点まで1台いくらと料金が設定されているので、1人だけで乗る場合は残り3人分を支払うことになり物価に比して相当高い。マレーシアでも中近距離バスのサービス向上で少しづつ減ってきたが、地方の町から近郊の部落、村への足はこれしかない場合が多い。

中長距離バス:タイの場合、深夜走るようなバスは別にして、日中であれば多くのバスは街道のバス停で客を乗降させて行く。これがはなはだしいのは冷房なしバスであり、乗降が極めてこまめで頻繁、従がって時間がかかるが料金は当然冷房車より安い。冷房車の場合、バス会社と便によって多少違うがほとんど途中で客を乗降させない便、P1(ポーヌンと読む)クラス、と比較的数多くの回数客を乗降させる便、P2(ポーソンと読む)クラス、の2クラスがある。P1(ポーヌンと読む)クラスには座席数の少ないVIPバスが含まれ、乗客数の多い路線で運行されている。冷房バス、冷房なしバスに関わらずタイのこの種のバスは客の荷物を手助け運びするなどの助手を必ず乗せている。加えて冷房バスの中には飲み物サービスなどするスチュワーデスを乗せている便もある。

一方マレーシアのバスは発車地点に近い場所か途中のごく決められた地点でしか客を乗降させない。1度発車したら途中で全く客を乗降させないバス便も結構ある。マレーシアのバスでは長距離のため交替運転手が乗っているバス便はあるが、助手が同乗しているバスはない。(ごくごく少数の豪華バスではスチュワーデスがいるそうですが、これは助手ではない)

高架電車:クアラルンプールの方が早く運行開始し、2路線ある分より優れているともいえるが、バンコクの高架電車も乗り心地の良さと駅、電車のきれいさなどマレーシアにひけを取らない。クアラルンプールの高架電車2路線は相互共通の1ヶ月間乗り放題切符を発売開始した。クアラルンプールはモノレールが走行開始すれば3路線となり、この面でバンコクよりサービスはより進みます。

首都圏の乗り合いバス:クアラルンプールは市内と郊外を一体化し、4段階のゾーン運賃制を採用している。乗車区間が:一つのゾーン内 RM0.70 2つのゾーンにまたがる RM1.20、3つのゾーンにまたがる RM1.60、 4つのゾーンにまたがる RM2.0 となり、ごく一部の冷房なしバスを例外として全てワンマン運転で運賃前払い方式。プリペードカードも使用できる。 

交通手段に関してはマレーシアよりタイがずっと優る

上記の表と追加説明からおわかりのように、タイの方がマレーシアより乗り物の種類が豊富で且つ乗客の立場から言えば融通がずっと効くのです。その典型的なのは近距離での乗り合いピックアップ・乗り合い軽トラックであり、市町村内ではバイクタクシーとサムロの存在です。この3つの乗り物があることがタイでの旅をたいへん安価で移動しやすいものにしています。もちろん前提として、多くの経験を積み且つタイ語がある程度話せ読めることです。

マレーシアで地方に行って、その町内を回ったり近郊の田舎地区を訪問しようとする場合、近郊バスは本数少なく且つルートのきめが粗いので目的地が近郊バスのルートに当らないことがよく出てきます、そこで交通手段のない不自由さに筆者は常に直面してきました。タクシーを借りればものすごく高価になり、それは選択外です。結果として他の交通手段がないので徒歩しかないことになり、行動範囲はごく限られてしまいます。このためいくら経験を積もうとマレーシア語が話せようと、この種の移動に極めて制約がでてきます。

自家用車の持てない下層階級に特に賢著ですが、そういった人々がいかに気楽に移動できるか、どれくらい移動しやすいかという面から言えば、タイの大衆の方がマレーシアの大衆よりずっと行動的だとはっきり言えます。この意味は安価な交通手段利用の容易さの面から裏付けられます。下層階級でもバイクは容易に入手できますから、マレーシアでもタイでも田舎町村で多くの大衆がバイクで移動しています。タイでは女性がバイク運転するのは極めて日常的且つ一般的行動ですが、マレーシアでは都会地方の町田舎を通じて女性のバイク運転はたいへん少ない。特にマレームスリムの女性がバイク運転している光景を見かけるのは極めて珍しい。自前の交通手段がバイクしかない下層階級にとっては、そのバイクに乗れない者やバイクに同乗できる人数以外には近場を移動するための安価で容易に利用できる交通手段が乏しいことが移動の少なさに結びつき、これがマレーシアの田舎、地方町を特徴つけていますね。

一方タイの田舎、地方町では、上記で解説した乗り合いピックアップ、バイクタクシー、サムロが全国ほとんどの地で利用できるので、下層大衆でも簡単に且つ安価に移動できるのです。乗り合いピックアップ類は最低運賃5バーツから、バイクタクシー、サムロだと最低運賃10バーツからというのが普通でしょう。

2003年6月掲載