マレー鉄道(KTMと呼ぶ)のクアラルンプール発20時20発のWAU Ekspresでクランタン州の北端Tumpatにむけて出発。この列車は2時間半ほど半島を南下し、Gemasから今度は東海岸に向けて一路北上するのです。筆者はいつものように2等寝台をとりました。
10時間を超える夜行ですから座席よりずっと楽なのです。目的地のTanah Merah までRM45ですから、西海岸だけを北上する又は南下す路線より多少高いのですが、それは走行距離が長いからです。
バスで行く人、こちらの方が一般的ですが、ならクアラルンプールのHentian Putraバスターミナルからクランタン州方面行きのバスに乗ります。多くは夜行便ですが朝発のバスも数も少ないながらあります。但し日中発はありません。
列車はそれほど飛ばすでもなくとごとごと走りますが、夜なので気になりません。この路線はシンガポール行きやバタワース行きの半島西海岸側を走る路線と違って、観光客の非常に少ない路線です。なぜなら東海岸の離島へ行くのが目的ならもちろん飛行機が一番便利で早いのですが、バス便は列車よりずっと本数もあり離島への渡航地点に割合近いところを通りますので、旅行者にはバスが好まれるのでしょう。値段もバス便はRM30そこそこです。
この夜行列車の一番のよさはバスより多少時間がかかりますが、ゆっくり寝ていけれるということですね。そんな時も子供連れのマレー家族や傍若無人の小グループと乗り合わせたらあきらめて下さい。
さてクランタン州からタイへ渡る国境には3ルートあります。一つは当ページでもすでに報告しました、「マレー鉄道の案内と旅」を参照して下さい、Rantau Panjang − Sungai Kolok (タイ側の町)ルートです。東海岸ルートで一番ポピュラーですね。Rantau Panjang へはPasir Mass駅で降ります。このあたりはその中の項目「 20時20分発クランタン州行き夜行列車の旅」 を参照して下さい。
次にPengkalan Kebor ルートです。ツーリストにはまったく知られてない国境ルートです。
一般マレーシア人でもそこに国境があることを知っている人は、クランタン州の人たちを除けばまずいないでしょう。降りる駅はWau Ekspresの終点駅 Tumpat駅 かその手前のWakaf Baru駅です、または州都コタバルからバスで行ってもいいのです。 「旅マニアのための国境超えその1 」を参照して下さい。
クランタン州第三の国境ルートについてこれから述べましょう。このタイとの国境BukitBungaルートは97年10月にオープンしたばかりで、それまでは生活国境でした。つまり国境地点の住民だけが行き来できる越境ポイントで、一般人はマレーシア人もタイ人も越境できなかったのです。
Bukit Bungaにできたこの新国境検問所へはまずKTMのTanah Merah駅で降ります。次のPasir Mas駅で降りてもよいのですが、そこからは結局陸路Tanah Merahまで戻る形になりますので、Tanah Merah駅下車が一番近いのです。
Wau Ekspresの時刻表では6時34分着、まあ大体少し遅れますから朝7時頃着きます。まだちょっと薄暗い中、小さな田舎駅をでて駅前の一本道を左方向へ数分も歩けば右手に市場が見え、次に交差点を右に入ると、バスセンターがあります。鉄道駅から徒歩5分でしょう。バスセンターの付近には乗合いタクシー乗り場もあります。
注:乗合いタクシーとは行き先によって1台いくらと決まっていて、乗客は1人から4人まで。1台分払えば1人でも出発します。
鉄道駅で列車を降りると、大抵乗合いタクシー運転手が寄ってきて「どこへ行くのか?」とうるさいのですが、朝も早いしそんなに急いでタクシーを拾うことはありません。彼らはよく多少ぼりますので、乗合いタクシー乗り場から乗った方が無難です。(右の写真)
朝7時ごろにはこのTanah Merah町の大衆食堂も店開けてますので、朝食でもゆっくり取ってから出かけることにしましょう。ロティチャナイかクランタン風マレー飯ですね。バスセンターから州西端の村Jeli行きのローカルバス、もちろん冷房ナシ、が出ています。このバスが国境のあるBukit Bungaを通るのです。そんなに本数がないので、バス待つ間に町をぶらついてみるのもいいのでは。
バスを待つのがいやなら乗合いタクシーでBukit Bungaまで行きます。運賃は1台RM12です。多分相乗りする人はいないでしょうから、一人でRM12払うことになるでしょう。
筆者は休日の金曜(クランタン州はイスラム休日を適用)でバスの本数が少ないこともあり、タクシーを使いました。
車は約30分地方道、といってもこれは国道4号です、を走りBukit Bungaに着いたのですが、そこは道路端に国境検問所のあることを示すKomplek UPP Bukit Bungaと書かれた小さな標識が一つ出ているだけで、まったく目立ちません。バスで行く場合はよく運転手に頼んでおかないと、自分一人では降りる場所が絶対にわからないでしょう。
この道路端の看板脇と細道の入り口に小屋があり(左の写真)、バイクタクシーのあんちゃんが客待ちしていますので、そのバイクに乗って国境検問所までの約1Kmの農村の小道をいくと、小道が行き止まるあたりに目的の国境検問所があります。平屋建てのまだ新しい建物です。入り口にImigresenの標識があり国旗が掲揚されてます。(行政上はKampung Jenupという)
いずれにしろこのあたりはこの建物以外民家と屋台に毛の生えたような茶店があるだけです。国境の村どころか部落です。従って周りに旅行客あいての店など1軒もありません。タクシーさえもいません。バイクタクシーのあんちゃんが1,2人待っているだけ、小道を鶏ややぎがうろついているのんびりさ、筆者はこれまでいろんなところで陸路国境超えしてきましたが、もっとも牧歌的な国境検問所の一つですね。
無理もありません、このBukit Bungaは国境検問所が97年10月にオープンするまでは地元住民だけに許された越境ポイントでしたから。
この小道は川で行き止まりになておりそこには鉄条網が張られているので、なんとなく国境の感じはわいてきますが、そこからちょっとはなれた川岸では人々が物を洗っています。川幅10mもない浅い川ですから、鉄条網はただ象徴的な意味合いで、住民が対岸のタイに渡ろうとすればいつでもどこからでもできそうです。もちろんタイ側からも同じです。(左の写真)
この小さな川の対岸に小さなタイ部落が見えます。Bukit Taと呼ばれるムスリム部落だそうです。川を挟んで国は違うけど住民にそんなに違いはないのでしょう。南タイはもともとムスリムの多い地域で、所によっては半分いや3分の2をムスリムが占めるところもありますからね。
このBukit Bungaはマレーシア・タイ間にいくつもある越境ポイントの中で、もっとも小さく且つ知られてない越境地点であるのは間違いありません。幅10mほどの川でも橋がかけられていないので、手こぎボート程度の大きさの渡し小船で対岸に渡ります(左の写真)。
ですからバイクでさえも越境できないわけです。外国人はいうまでもなく、マレーシア人でこの国境を知っている人はクランタン州の住民でさえ少ないでしょう。
新しく税関とパスポート検査場の整った建物ができたにもかかわらずいまだ生活国境ですね。将来川に橋が架かるそうで、そうなればきっと旅行者もやってくることでしょう。のんびりとした国境なので、国境係官もひまでしたので、筆者としばらくおしゃべりしてくれました。
国境付近の民はこの渡し船を使って自由に行き来しており、いちいち係官に越境パスを提示していません。越境パスとは国境付近の住民だけに発行される証明書です。
マレーシア側の国境検問所兼渡し船乗り場の金網門があくのは朝6時から夕方7時までです。タイ側の検問所、こちらからは見えない位置にあるそうですが、も当前同じ時間でしょう。タイ側の部落から乗合いバンで30分ほどで地域の主要都市(タイ)Sungai Kolokへ行けるそうです。Sungai Kolokへ行くのが目的なら Rantau Panjangルートが一番便利で且つ隣り合ってますから、他地域からわざわざこの不便な寒村にある越境地点までくる人はいないでしょう。ですからこのBukit Bunga国境ルートは当分穴場中の穴場国境ルートでありつづけるでしょう。
2005年6月追記:このBukit Bungaとタイ側の Buketaを流れるGolok川に橋を建設する計画が以前からあります。しかしマレーシア側ととタイ側で 国境位置に関して食い違いが解決されていませんので、まだ建設に入っていません。この橋は工費RM800万で両国の所有となる予定です。
追記 2008年12月23日掲載の「新聞の記事から」