Intraasia注記:数年前にマラヤ大学留学生活記を寄稿していただいたコタバルさんが、2001年末年末休暇を利用してケダー州の友人の家を再訪問しました。彼女からその時のお話しを寄稿してもらったのが下記の文章です。ここに掲載しました文章と写真はすべてコタバルさん提供のものそのままです。尚文章の段落化と写真の配置及びトリミングと主タイトル付けだけはIntraasiaが行いました。
「毎年ハリラヤになるとね、お母さんがコタバルのいた年の話をするんだよ」友人のひとことがきっかけで、クリスマスとお正月を4年ぶりのマレーシアで過ごすことになった。
これが友人の家(右の写真)。4年前とちっとも変わらない。懐かしい顔に、笑顔の再会を果たす予定が、私は腹痛に悩まされていた。激辛ミー・ゴレンか冷え過ぎたバスが原因か。なんとか到着したバスターミナルには、友人の姿がない。やっとつながった電話からは寝起きの友人の声。到着時刻を伝えておいたのに。
うなだれてベンチに横になり1時間が過ぎた頃だろうか、やっと友人とお父さんが迎えに来てくれた。家に着くとお母さんが笑顔で迎えてくれたが、マレーシア式の挨拶をするのがやっと。「emak(お母さん)、ごめんなさい」、4年ぶりの感動的な再会のはずだったのに…。
こんな子いたっけ? 隣に住んでいる2番目のお姉さんに聞くと、「私の子」。彼女の長男は警察官としてジョホールで働いていて、長女は今年結婚予定。聞き間違えかと思い、友人に同じ質問をすると、「お姉ちゃんの子、2年ぐらい前にもう一人生まれたの」。よく見ると似ている。4番目のお姉さん一家が引っ越しだというので家族総出で手伝いに行くと、彼女も妊娠中。車で10分のところに住んでいる1番目のお姉さんのこどもも一人増えていた。彼女は40才、マレーシアに高齢出産なんて概念はないのだろうか。
近いうちに友人が結婚するという知らせがあったことも、マレーシアに来た理由のひとつだった。結婚間近な彼女の部屋にはブライダル雑誌が積まれ、暇さえあればドレスを選んでいた。買い物に行っても、招待状に使うカードを吟味している。部屋には写真が飾ってあり、「ハンサムじゃないけどやさしい人。毎日電話があるんだ」という彼は役人で32才。大学時代にアルバイトをしていた本屋で彼と知り合い、2年間の交際を経て婚約。「年が離れていればいろんな経験があるから考え方も違ってくるし、頼りにもなる」そうだ。
「日本にはないんだから、たくさん食べてきな」とお父さんは早速ドリアンを買いにpasar(市場)へ連れて行ってくれた。
入り口にはドリアン屋が3軒。迷っていると「中を見て嫌なら買わなくていいよ」と2軒目が声を掛けてきた。お父さんのドリアン選びは真剣だ。匂いを嗅いだり、振ってみたりして次々に選んでいく。何がわかるんだろうと真似してみるが、さっぱり違いがわからない。1kg RM2のものを4コ7kg分買い、合計でRM14(約560円)なり。
時間をかけてじっくり厳選されたドリアンは(右の写真)、黄色くてとろっとしていて、ちょっと苦みのきいた私好みの味で大満足! お父さん、Terima kasih banyak!
朝起きるといつもお母さんはいない。朝早くから畑やゴム園でひと仕事しているのだ。
ある日こどもたちに誘われてゴム園へいってみると、腰に蚊とり線香をつけたお母さんが木にキズをつけてゴムの白い樹液(susu getah)を採集していた。放っておくと用意したカップに溜まり、カチカチになる。これを集めて出荷するそうだ。
一方お父さんは、ほとんど家にいる。朝は車で市場へ買い物に行ったあと、コーヒーを一杯飲んで一服する。そのあとはテレビを見ながらゴロゴロしたり、隣の家に上がり込んで話をしていたり、猫にちょっかいを出したりして過ごしている。
昼食後は昼寝。午後はふらっといなくなるが、仕事に行った様子ではない。一体いつ働いているんだろう、友人に聞いてみた。「この間苗を植えたばかりだから、今は稲がなるのを待っているの」。
洋裁屋をしている2番目のお姉さんからミシンを借りた(下左の写真)。以前、3番目のお姉さんからもらったバティックを筒状に縫って下半身を覆うサロンを作るためだった。
ココナツはマレーシア人の生活に欠かせない、と言えるだろう。削ってから水を入れてよく揉み、ざるでこすとココナツミルクができる(下左写真の手前の緑色の洗面器が濾しとったココナツミルク、赤い洗面器が濾したかす)。
削り終わったココナツの殻はぽーんと庭に投げると、鶏の餌になる。鶏は殻の内側に残っているココナツを食べるのだ(上右の写真〕。ココナツの皮はアヒルを調理するための燃料にしたり、食器を洗うスポンジにする。
4年前と変わっていたことのひとつが、このココナツ削り器だ。どのお姉さんの家に行っても電動ココナツ削り器があった。赤い洗面器のようなところの中心に刃があり、それにココナツを押しつけて削る(下左の写真)。4年前に見た、お母さんが使った後の手動ココナツ削り器に股がって遊ぶこどもたちの姿はもう見られない(下右の写真)。
約1週間の滞在もあっと言う間に過ぎ、とうとうお別れの日が来てしまった。バスターミナルに着くとお父さんは一服しに外へ出ていき、車の中は友人と二人きりになった。
友人:「コタバルがまた来てくれるのをずっと待ってたよ。まとまった休みをとるために、毎日仕事してたんだ」
コタバル:「ええっ?、私のためにそんなことをさせて。でも今回は大満足だよ。みんな私のことを覚えていてくれてすごく嬉しかったよ」
友人:「また来てね。結婚式の招待状も送るよ」
泣きながら私に抱きついてきた友人の姿に、またいつかみんなに会いに来ようと強く思った。
以上。 関東地方にお住まいのコタバルさんのメールはsangatcantik@hotmail.comです。