停電と断水(コタバルさんの投稿)


UM(Universiti Malaya)の寮では停電と断水がよく起こります。過去3ヶ月の間に停電は2回、断水は3回ありました。もちろん、ここマレーシアでは、断水と停電は何の知らせもなく突然起こります。
 

停電

2回の停電は夜に起こりました。1回目の停電では、「これが噂の停電か。」と思いました。というのは寮に入ったばかりの頃、マレーシア人ルームメイトから、停電が起きたときの為にろうそくを買っておいた方がいい、と言われていたからです。買っておいたものの、なかなか出番がなかったのでたんすの奥にしまい、油断していた隙に停電が起りました。暗い中、まず鍵を探し、タンスを開け、懐中電灯を取り、ろうそくを探し、やっとのことでろうそくに火をつける事ができました。

何もする事ができない上に、部屋の中は蒸し風呂状態なので外へ涼みに行くと、暑さを逃れて出てきた人が溢れ、寮の前にある屋台は繁盛していました。暗いのをいいことにカップル、気のせいかもしれませんが、特にマレー人カップルがここぞとばかりうじゃうじゃいます。キャンパス外の屋台へ夜食をとりに行く学生の車とバイクの往来も多くなります。

停電から学んだことは2つ。1つめは、お風呂(といっても「水浴び」ですが)はまだ明るいうちに済ましておく事。2回目の停電は、買い物をして夜遅く帰ってきたばかりの時に起きてしまい、暗い中、友達に懐中電灯で照らしてもらってシャワーを浴びました。2つめは、当たり前ですが、懐中電灯とろうそくは手の届く場所に置き、いつ停電が起こってもいいように準備しておく事です。1回目の停電後から懐中電灯とろうそくは準備したものの、夜遅くお風呂に入る習慣が身についている私は、明るいうちにお風呂に入る事をついつい忘れてしまいます。
 

断水

断水は停電よりも大変です。水が止まると、寮生は「Tidak ada air, tidak ada air.(水がない、水がない。)」と言いながら、バケツを手に水の出る場所を探します。場所によっては、まだ水が出るところがある場合もあるのです。そのような場所はバケツを持ったみず待ちの学生でいっぱいになります。

水の出る場所がトイレとなると、びっくりするような光景を目にします。マレーシア人は用を足した後、水で洗う習慣をもっているためトイレには蛇口とホースが備え付けられているのですが、そのホースはほとんどの場合トイレの床においてあり、ホースの先が時々便器の中にはいっていることもあります。そのホースを洗面台の蛇口につけてバケツに水を入れる人がいるのです!!!衛生観念が薄い国とはいえ、そこまでするとは思ってもみなかったので、閉口してしまいました。

水を手に入れた後はごみが入らないようビニール袋をかぶせておきます。ここで注意しなくてはいけないのは、そのバケツを部屋の中に置いておくことです。断水時には「水泥棒」も出るのです。さらにあきれてしまう事に、断水にかかわらず、寮のお掃除のおじさんが車を洗ったり、花に水を遣ったりして、ふんだんに水を使っています。「寮生はシャワーも浴びることができないのに、どうしてこんな時に…。」と頭にきた事もありました。

断水時の日本人留学生は、歯ブラシと先顔料を常に携帯し、水を見つけたらあらうようにしたり、キャンパス外の友人の家でお風呂に入らせてもらったりします。思い切ってホテルに泊まり、そこで洗濯とお風呂を済ます人もいます。

断水から学んだ教訓は3つ。洗濯はこまめにしなくてはならないという事。断水はどのくらい続くかわかりません。断水中には洗濯物が溜まる一方なので、日ごろからまめにしておかなくてはなりません。普段から「もう洋服がない!」などと言っているわたしにとっては大きな課題です。といいつつも、断水が起こる度に洗濯籠を見て「またやってしまった。」と思っていますが。停電時と同様、お風呂も帰ってきたらすぐに入るべきです。暑い国でお風呂に入れないのはつらいことです。
 
KL市内の割にUMで断水が多い理由は、ここが大学だからだそうです。慢性的な水不足に悩まされているマレーシアは節水をしなくてはならず、病院などの水が絶対的に必要な施設に比べて、大学は断水の対象になりやすい場所といえます。しかし最近UMの隣にあるUniversityHospital(大学病院)でも断水があったらしいので、マレーシアの水不足は相当深刻なのでしょう。

マレーシア国内を旅行中に会ったシンガポーリアンに「水を返して。このあいだは断水でとても困ったんだから。」(マレーシアはシンガポールに水を輸出しています。)と冗談で言ったところ、意外な答えが返ってきたのと同時に、そんなことも知らなかったと恥ずかしくなりました。「確かにシンガポールは水をマレーシアから輸入しているけれど、マレーシアは水を浄化する技術が遅れているから、シンガポールが水の一部を浄化して返しているのです。マレーシアで現在使われている水道管は古いものなので、水の半分以上は漏れてしまっているのです。」と彼らは話してくれました。新聞にも雨は降るのに水がないのはダムが少なく、しかも小さいからだと書いてあったことを思い出しました。

マレーシアの水不足が深刻な限り、UMは常に断水のターゲットにされるでしょう。断水対策は常に取っておかなくはと思う今日このごろです。


(Intraasiaのひとこと: 水不足騒ぎについては、「今週のマレーシア」で1回と、「新聞の記事から」で時々書きましたので、参考にしてください。マレーシアの全土で水不足が発生しているわけでなく、州または地域によってです。
尚、シンガポールへ水を売ること自体は国家と国家の契約ですが、水を供給しているのはジョーホール州のみです。)

98年7月26日掲載