ペルリス州はマレーシアで一番小さい州です。面積わずか760 Kmで人口も20万そこそこです。半島部北西端に位置し、北側はすべてタイのサトゥン県との国境線になっており南側はほとんどケダー州と接しています。ペルリスはその昔、現在はケダー州の一地方であるKubang Pasu と現在もタイの県であるSatunの一部でした。 その後ペルリスはペルリスとなりましたが、1700年から1909年まではタイ領でした。ペルリスは当時のタイ政府に年4回 金(BungaEmas)を納めていたとの事です。
その後1909年の英タイ条約でペルリスは英国の保護州になったのです。こうしたことからペルリス州民はサトゥン県との関係が深く、親戚を持つ人も珍しくないとのことです。
旅行者にはほとんどなじみのない州でしょう。ただマレー鉄道でタイとマレーシア間を通行される方はその国境駅Padang Besarの名はご存知でしょうが、そこで降りる方はまずいないでしょう。もう一つPerlis州へ行く機会としては、波止場町のKuala Perlisからフェリー便でランカイ島へ渡る場合ですが、これも普通の旅行者には縁がないでしょう。
筆者はランカウイへ渡る時数回フェリーを利用しているし、何回もマレー鉄道でタイとマレーシア国境を超えたので比較的なじみがあります。州都Kangarは歩いて回れる程度のこじんまりとしたすっきりとした都市です。これからお話する Gua Kelam洞窟観光のベースにしてもいいでしょう。
さて今回筆者はクアラルンプールからの夜行列車でPadang Besar駅に朝8時前につきました(右の写真)。プラットフォーム上を乗客の流れにのっていくと出入国管理手続き所に行ってしまいますので、駅舎の2階に上がり、そこから陸橋で駅舎外に出ます。
駅前のロータリーをPadang Besar中心街方向に向かって歩いて数分でそこにつきます。いずれにしろ商店街の通りが2本ほどあるだけの小さな町なので迷うことはないでしょう。乗合いタクシー集合所がありますので、すばやく且心配なくGua Kelamへ行きたい方は、乗合いタクシーをお使い下さい。行き先別に1台いくらの固定料金ですから料金上は心配ありません。
筆者はもちろんバス派ですから、朝食をとりながら気長に乗合いバスを待ちました。この町にバスターミナルはありません、バス停があるだけで、そのバス便も州都Kangar行きだけのようです。このバスがGua Kelamのある Kaki Bukit村を経由するのです。
やってきたHBR会社のバスに乗ると約15分で、Padang Beasrから10Kmほど離れた Kaki Bukit村に着きますのでここでおります。いくつか並ぶ商店、そのすべてが華人の店です、のある1本道を抜けて山に向かって500mほど歩けば(右の写真)、そこがGua Kelam洞窟の入り口になっており、駐車場と数軒の屋台があります。その左側は小川の流れる遊歩道になっています。
さてGua Kelamとはマレーシア語で暗闇の洞窟という意味です。かつてこの洞窟裏にある山山に錫鉱山があり、そこから掘り出された錫鉱石を、この洞窟内に作った渡し橋を利用して運び出していたのです。50年代から70年代にかけて栄えた錫採掘も終わり、当時にぎやかだった村Kaki Bukitは寒村に戻ったそうですが、Gua Kelamを観光公園に転化した現在では 洞窟観光のふもと村になったのです。
左2枚は洞窟入り口です
Gua Kelamの入り口から洞窟を突き抜けた出口まで、ちょうど洞窟内を流れる川の上に長さ370mの渡り橋(支持橋)がこしらえてあります。
川の水面から、水位によって違いますが、約1mから1.5mほど上に支え渡された幅2.5mの木製の渡り橋は手すりがありますので、照明されているとはいえ薄暗い洞窟内でも安心です。もっとも渡り橋ですから歩くと多少ゆれます。
洞窟内の照明時間は朝8時から夕方6時半までで、入り口で入場料RM1払って中に入ります。筆者の訪れたのが平日の朝でしたから観光客は誰もいません、洞窟内に係官がいるわけでもありませんから、初めて薄暗い洞窟内を一人歩くのはちょっと気味が悪いですね。でもコウモリや虫がいっぱいいるわけでもなさそうですし、橋が傷んでいる所もまったくありませんでしたから、慣れてしまえばどうってことありません。
洞窟内は橋下を流れる川の水音が響きわたり、時に鳥の鳴き声がこだまし、意外にうるさいのです。頭上にさまざまの形状をしたしょう乳石がつれ下がっているのは洞窟におなじみの光景ですね(右の写真)。
壁面は照明のため灰色に浮かびあがり間近に見えます。数十年前まではすず鉱山労働者がここを錫鉱石を運んで行き来していたのだなと思いをはせながら、木製の橋の足場を気にしながら進んでいきます。なぜなら洞窟天井から垂れ落ちるしづくで、足場がちょっと滑りやすくなっているからです。
所どころ観察場になっていてそこは充分明るく照明されており(左の写真)、石灰岩の壁や岩の割れ目から流れ出る支流を観察できますが、全体は薄暗い程度の明るさの照明であり、ひんやりした空気、早足で駆け抜ければ5分で通り過ぎてしまう程度の長さなので、Gua Kelamはてごろな洞窟観光を楽しめます。
さて洞窟の突き抜ければ、そこはWan Tangga Valleyという山山にかこまれた一帯です。そこの洞窟出口付近が公園になっています。樹木がおいしげり、池を囲んで遊歩道がこしらえてあり、洞窟につづく小川が流れています。(右下の写真)
休憩所やベンチもいくつかあり、手を休めていた公園を掃除していた人としばしおしゃべりしたところ、週末休日には、遠くはペナン州からも行楽客がやってきて絶好のピクニック場になるそうです。でも私の訪れた朝は掃除人以外だれもいない誠に静寂でなひとときでした。
またこの公園の一角には生徒たちがグループキャンプに利用するキャンプ場もあるとか、また丘の上まで登る”登山道歩いて30分”の立て札も立っていました。マレーシアの公園らしく簡素ですが緑がよく手入れされており、こころ落ち着く場所です。
公園の背後の山々の向こうはもうタイです。といってもそこに国境通過地点はありません。さてまた洞窟を通って戻りますが、今度は余裕ができて橋の下を流れる水を覗き込むとあまり濁ってないのです。橋は第二次大戦後州政府によって修理され、それが現在の渡り橋につながるとのことです。そして今はこれを観光客が渡り Gua Kelamは生き返ったのですね。
このGua Kelam観光のふもと Kaki Bukit村から州都Kangarへ向かうには、村で客待ちしてるタクシーという方法もありますが、筆者は1,2時間に1本しかこないHBRの乗合いバスを茶店で気長に待ち、乗車時間40分ほどで30Kmほど離れたKangarに着きました。
Kangarまでの道は田園風景の中に時々こぶのような小山が並ぶ、ペルリス州ならではの風景が楽しめます(左の写真)。
数年ぶりに訪れたKangarには以前はなかった近中距離バスターミナルに到着し、その隣にこれも最近できたであろうショッピングセンターがありました。クアラルンプールなど遠距離バスは、そこから歩いて10分ほどの別の建物から出発します。
夕方でも渋滞など起こらないほどのこじんまりとした町なので、ホテルは決して多くありませんが、ちょっと高級なホテルに泊りたい方は、町外れにTravelodgeがあります。
Gua Kelam観光は自分交通手段を持たない旅行者には不便ですし、マレーシア人にもよく知られているとは決して言えませんから、やっぱりちょとした穴場観光というところですね。有名観光地ではありませんが、Intraasiaお勧めです。尚そこまで行くには上記のようにPadang Besarから行くよりも、Kangarから行くほうが多少一般的でしょう。Kangarから乗合いタクシーなら RM10いうところです。