マングローブの川をボートで航行するツアー Mangrove Adventure


スランゴール州はその西側をずっとマラッカ海峡に面しており、いくつかの島がそこに浮んでいます。これらの島の多くはポートクランからボートで、またはフェリーで簡単に渡れます。また大きな島例えばケリー島などは本土側とを結ぶ橋がかかっており、海と言う事をあまり意識しないで島に渡れます。その海を意識しないで渡れる島の一つにPlau Indahインダ島があります。場所はクランから車で30分ほど離れており、近代的な港湾施設があるポートクランのWest Portと呼ばれる施設があり、その近くにはStar Cruises の近代的且つ大きなクルーズターミナルがあります。下の2枚の写真がそれです。



マラッカ海峡の島々と本土側の海岸線には今尚多くのマングローブの湿地帯が残っているそうで、海にながれ込む川もそういうマングローブ湿地帯の中を流れていきます。
さてそのマングローブ湿地帯を流れる川の中からツーリスト向けの場所を見つけ出し、そこで ”Mangrove Adventure"と名づけたツアーを行っている地元の旅行会社Wetlands Toursがあります。筆者は9月終わりのある日そのツアーに参加する機会を得ましたので、報告しましょう。

このマングローブアドベンチャーツアーは今の所 Star Cruieseターミナルから出発し、途中川を航行する時、川岸にある海鮮レストラン兼Wetlands Tourの現地案内所で客を乗せていくのです(クルーズのない場合は、このレストランが出発点になる)。従ってこのツアーの参加者は筆者を除いて全部クルーズ船の乗客、白人ばかり、でした。これは月曜日にクルーズ船がターミナルに接岸するので、それに合わせてツアーを組んであるからです。

ツアー会社社長の Mr. Mohd Nasirによると、Visit Selangor Year 2000に呼応して99年5月から始めたこのツアーは外国人に人気よく、現在ツアーの催行は月曜日だけですが、ごく近い将来クルーズ接岸とは別に催行数をもっと増やしていく予定でだそうです。その場合最低4名からツアーを出します。

この川をSungai Cahndonといい、インダ島を横断するような形です。クルーズターミナルのある地点から島を横断して隣のケリー島近くまでボートは航行します。

さて川を航行してまもなく、先住民族Orang Laut、英名Sea Gypsiesと呼ばれる、の部落近くを通りますので、その内の 1軒にボートをつけて上がります。川面に張り出して立てられた写真の小屋の内部を見学するわけです(下の3枚の写真)、その時Orang Lautが手づくりした民芸品が参加者に配られます。家と言っても物のほとんどない小屋ですが、彼らの生活の一端を垣間見る事ができるようにプログラムが組んであるわけです。



Orang Lautというのは字義通りにいうと海の人という意味で、マレーシアでもごく少ない先住民族グループで、めったにその名前を聞きません。昔はその名の通り海のジプシーであったようですが、今はマレーシア政府の尽力もあってこのように定住しているのです。尚Orang Laut南タイの西海岸の島々に定住していることが知られています。この一帯に住むOrang Lautは27家族だそうで、州政府はOrang Laut用に小学校を建て、子供たちの教育に当っています。そのためマレーシア語を解するとの事ですが、筆者は確かめられませんでした。

彼らの生活はこの川と沿海での漁が主たる生活の糧にしているそうです、川岸で水遊びして遊んでいる子供たちや、いくつかの住居小屋がボートから眺められます、主集落は堤防に遮られて見えません。

この後、ボートは次第に細い支流へ進んでいきますが(下の左写真)、ツアーガイドのMs. Elizabethが常に参加者を引きつける話術と解説で楽しませてくれます(英語のみ)。マングローブの沼地帯に生える植物、小動物、鳥類、魚を順番に、指差し時にはボートを停めて、説明してくれます。このためツアー名はアドベンチャーでもたいへん知的興味を満足させてくれる教育ツアーでもありますね。こういうマングローブの湿地帯はここでなくても訪れる事はできますが、やはりぼんやりと眺めているだけではよくわからないものです。指差しながら実物を見るのとは、印象がずいぶん違いますからね。



彼女は両岸にたくさん生えているソノラティアという植物のつぼみを指差しながら説明をします(上の右写真)、この植物は夜間しか花が咲かないとのこと。マングローブは生命力の強い木のようで、常に下部は水没していても死なないのですね。根が中写真のように複雑な形態をしており、その実は 左写真のようなやりの先型をしています(下の写真3枚)。これが水面下の泥などにつきささり、繁殖していくのです。マングローブはこういう沼地のエコロジーの要でしょう。



小動物では、まず多いのがムツゴロウでしょう。泥地にいるムツゴロウはちょっと小さくて見えませんが、時折数10センチほどのムツゴロウが水面を泳ぐのが目に入ります、まことにすばやく写真を撮る暇も与えません。さらにたまに見えるというより船頭が目ざとく見つけてくれるのが、水中オオトカゲです。ボートを近づける前にたちまち水中に消えてしまいますが、大きなトカゲが透明度ほとんどゼロの川を泳いでいるのです。

シルバーリーフモンキーらの猿が木の上で遊んでいます。遠くからではなかなかわかりませんが、不自然な木の揺れ方を目印に見付られるのです。でも近づいていくと猿もすばやく消えてしまいます、上記の他に、キングフィッシャー、Heronなどの小鳥が飛びまわり、イーグルが水面下の魚と蝦を狙って上空を滑空しています。



魚類はテラピア、うなぎなどが生息しているとかで、ツアーの途中で、一行のボートの地元漁師が網なげのデモンストレーションをします(上左写真)。網をさっと水面に投げ下ろすとそれだけでいくつかの小さな魚が網にはいります。しかし漁ではありませんので、そのあと水に戻してあげるのです。さらに伝統的漁法の道具 bubu を示してくれます。竹でこしらえたBuBuの中にはうなぎも捕まっていました(上の中写真)。

またガイドのMs.Elizabeth(上の右写真の女性)が手にしているのは、伝統的な蝦取り道具です。夜間漁の時ボート上からこれで水面をなぜると、それにおどろいて蝦がはねてボートに飛び込んでくるとのこと、面白い漁法ですね。

ボートの船頭らが手にしているのはHorseshoeカニ(蹄鉄に似ているのでこの名前がついているのでしょう)です。この川でよく採れるのだそうで、小さい方がオスで繁殖期にはメスの背に乗るとのこと。奇妙な形ですが、これほど大きいとは筆者は知りませんでした。食べられるのかどうかは聞き忘れました。



マングローブの川は沼地湿地というイメージがありますが、水がどろどろという訳でもなく緩やかな流れがあるし、満潮に向かって潮の流れも感じられます。両岸のマングローブの生息する様子を見ながらボートで航行すると、こういう環境を保持していくことの重要性が感じられてくるものです。

蚊もヒルもほとんどいないので、楽しく且つ興味心を満足させてくれるツアーですね。当サイトの別ページで紹介しているように東海岸州やランカウイへ行けばマングローブツアーに参加できますが、そこへ行かない方や、クアラルンプールからそれほど遠くない場所で参加して見たい方にはこのツアーはお勧めです。熱帯のエコシステムの要の一つであるマングローブ湿地帯の様子を観察してみるのもいいものだと思います。

ツアー概況と申し込み方法

一人当たり:RM110、 救命ジャケットを必ず貸与着用し、日除け帽子も貸与される。4人乗りから10人乗りほどのボートを使用。ツアー催行は午後多少遅くはじまり約3時閑弱かかる、ただ潮の干満によってツアー開始時間は変化する。虫除けスプレーを念のため持参した方がいいかんもしれません。
1グループになればクアラルンプールのホテルまで迎えに行くとの事です。料金追加でしょう。
その他Wetland ToursではKetam島へのツアーも催行しています。

自力でツアー出発地まで行くのはちょっと骨が折れますよ。Klangまでバスで行き、それからミニバスで現場まで行かねばなりませんが、降り場所が非常に目立たない所にありますし、時間も結構かかりますので、旅行者はホテルまで迎えに来てもらった方がいいでしょう。

Wetland Tours Sdn. Bhd. (Sdn Bhd.は会社と言う意味)
24B, Jalan Batu Unjur 1, Taman Bayu Perdana
41200 Klang, Selangor
Tel: 03-33238433, Fax: 03-33238455, E-mail: Wetldtrs@tm.net.my

2, October 1999 掲載