クアラルンプールを中心としてその周辺・近郊を結んで運行されている電車網には4種類あります。
現在ではStarline と Putraline の両方とも政府持ち株会社SPNB の翼下にはいりました。Komuter はマレー鉄道が運行し、KL Monorail は独立した民間企業が運行しています。
クアラルンプールの公共交通網は、モノレールを除くこれらの電車網が完成して軌道に乗った2000年ごろからぐっと良くなりました。90年代中頃まではバスしかなかったのですから当然といえば当然ですが、東南アジアの首都として、ジャカルタやハノイはいうまでもなくバンコクよりも早く且つ路線数多く建設し運行している先見性は賞賛すべきですね(都市イコール国家であるシンガポールは除外します)。大多数の利用者は、電車網にいくつかの不満はあってもまず利便さと快適さを評価していることと思います。
そこでこの4種の電車に関して、開通以来毎年それぞれに何十回も乗り続けている一人の乗客として、良い面と優れた面を評価した上で、こうしたらもっと利用しやすくなるのにという提案と意見です。
Komuter を除いて、電車・モノレールの時刻表は掲示板であれ配布式紙製であれ、全く存在しません、つまりある駅を何時何分発という運行は約束していません。
電車網の中で唯一 Komuter は細かな時刻表を作成しています。KL Sentra駅のような大きな駅だと紙製両面カラー印刷のKomuter 時刻表が案内所に置いてあるので入手は可能ですが、多くの駅では配布用には揃えていませんので、それほど簡単に入手できるわけではない。通常の Komuter駅だとこの紙製時刻表が駅の壁などに1枚か2枚程度貼ってあります。 別の紙に大書したり、時刻表用の掲示板があるわけではありません。プラットフォームには全く時刻表はありませんが、上下線のプラットフォームにそれぞれ備えてある電光掲示板で、次ぎの電車の発車時刻が表示されます。しかし電車の運行が遅れたり乱れても、電光掲示板に表示される次ぎの電車の時刻は変化しません、つまりプログラムされた時刻を表示しているだけです。時刻表が公知されているからといってその通りにきちんと運行されているわけではありませんが、時刻表はないよりもあった方がよいに決まっていますね。
多くの駅においては、改札を通る前の構内に運行路線図と料金表を示した大きな独立した掲示板があり(一部駅は改札後の一画にも立ててある) 、その中で運行頻度として次ぎのように表記されている、「平日:7時半から9時半 及び16時半から19時半は4分から8分毎、 その他時間帯は7分から10分毎、 日曜と祭日:1日中 10分から15分毎」
プラットフォームにはこの種の表示または掲示は全くなく、次ぎの電車がどの方面行き電車かを知らせる電光掲示板がある。しかし発着時刻は表示されません。
駅施設の入り口あたりか切符売り場あたりか、どこかに表示してある "Putraline のお知らせ" の中で、運行時間を小さく示している駅もある一方、それすら示していない駅もある、それも Masjid Jamek 駅、Pasar Seni 駅のような大きな駅ですらない。何分毎に1本といった電車の運行頻度は決まっているだろうが、駅利用者には全く公知していない。プラットフォームに電光掲示板があるが、電車の到着を知らせる機能はない。よってプラットフォームに電車がごく近づいたことで、乗客は電車の到着を知る。ダイヤが乱れてもそれを知るすべはない。相当なる乱れの時は駅員が口頭で知らせることはしている。
駅の内外、プラットフォームを通じてどこにも運行頻度を知らせる表示または掲示はない。プラットフォームにテレビが吊り下げてあるが、これは広告用テレビであり、電車の運行とは関係ない。まさにいつ来るともわからぬ電車を待つだけです。まるで市内・郊外乗り合いバスみたいで、待っておればそのうち来るさというところです。
尚、マレーシアの電車に時刻表など要らないという論議は、Komuter を見れば間違いですね。路線の一番長いKomuter が時刻表を、ちょっと不十分とはいえ、公知しているのですから、より短い路線である他の電車は時刻表を作成して、駅内に掲げることはやってやれないことではない、と思われます。時刻表が必須であるとは言いませんが、”10歩譲って”、せめて運行間隔は掲示・表示して利用者の便に供するべきですね。頻繁な利用者であれば、電車の運行間隔がしばしば不規則になることに気がつきます。そこで電車運行に責任を持つ会社として運行間隔を利用者に公知し、それを守る意味を含めて規則的な運行により努力すべきでしょう。
各駅での始発と終電の時刻が表示されていません。始発と終発の時刻は利用者にとって大事な情報のはずなのにです。
時刻表が発表されているので、ある何々駅での始発時刻と終発時刻は調べられます。ただその駅の始発時刻と終発時刻を目立つように表示・掲示している駅はありません。
駅構内に運行路線図と料金表を示した大きな独立掲示板があり、その中で運行時間として表記されている、「始発: Sentul Timur 駅、Ampang 駅、Sri Petaling 駅 のどれも6時、 終発: Sentul Timur 駅 23時、 Ampang 駅 23時半、 Sri Petaling 駅 23時半」
しかしこの情報はその後一部だけですが変更されているはずで、日曜日の終発は30分早いと聞いています。こういった情報の変更は反映されておらず、どの駅の掲示板も以前からの掲示板のままです。それよりもわかりづらいのは、ある駅においてその駅の始発時刻と終発時刻という表示ではないことです。どの駅の掲示板も、「当駅の始発は何時何分で終発は何時何分」 という表示にすべきですね。
いくつかの駅の窓口で尋ねれば、まず決り文句的に始発6時、終発23時半という答えが返ってきます。しかしそれはそれぞれの起点駅を6時に出発する、または23時半に出発するということなので、その利用者が乗る駅まで走行してくる時間を加えなければならない。だから詳しい時間を尋ねても23時50分ぐらいでしょうという大まかな返事になる。
ただ現実には何時何分ぐらいという大まかな計算の方がいいでしょう。なぜなら6時ぴったりに一番電車が出ているという保証はないし、23時半の終発が1分の遅れもなく発車したと仮定しない方がいいので、計算上の到着時刻は大体の目安と考え幾分早めに終電を駅で待った方がいいとはいえます。
駅構内に掲げた掲示の中で運行時間帯が示されている駅では 「何時から何時まで運行」と書かれている。しかしそれはPutraline全体の運行時間という意味にしか取れない、ある駅におけるその駅の始発と終電の時刻ではありません。いくつかの駅で駅員に始発と終電の時刻を尋ねると、駅員の返事は6時始発で終発は11時半頃 という大雑把なものがほとんどでした。Starline の場合もそうですが、一般に駅員は終発電車の時刻にあまり細かくありません。
そこで駅員にさらに突っ込んで尋ねたり、SPNBの案内係りに電話で尋ねれば、始発は各駅共通に 6時ちょっと過ぎ、つまりすべての駅に電車が到着しており、始発とともにその駅から電車が出るとのこと、そして終発はPutralineの両端駅を23時半に出るので、KLSentral駅で23時45分ぐらい(Gombak方面行き)、MasijidJamekでは24時近く(KelanaJaya方面行き)、になるとのことでした、尚日祭日は終発だけ15分早くなるとのことです。
それだったら各駅にそういう表示をすべきです。その駅で始発または終発によく乗る人を除いて、その何々駅の利用者には始発と終発の時刻がまこと不明瞭です。
モノレールはどの駅でも切符窓口に 「運行時間 6時から24時」 と書かれている。さらに 「始発6時、終発24時」 とも書かれている。しかし路線の両端である起点駅以外の、ある何々駅での始発と終発は両方の起点駅からの所要時間をみておく必要があることになります。ところが奇妙なことに 駅の窓口も電話サービス係りも口を揃えて、「駅窓口は深夜12時で閉まってしまいます」 という返事です。終電に乗るには24時前に切符を買ってホームで待っていなさい、ということのようです。
全部で11駅しかない短いモノレール路線なのですから、駅毎の始発と終発時刻の表示は簡単だと思いますけどね。
しばらく前、多分1年くらい前かな、ゲストブックで何かの文を書いた際、日本では電車にシルバーシートがあるうんぬんと書いたら、「とっくにそういう名称は消えており、現在では優先席といいます!」 といった指摘を受けました。 ある表現において使われている単語とか文句は時とともに変わることがありますので、変化自体は不思議ではありませんし、変なカタカナことばよりも”優先席”という表現の方がずっと優れていると思いました。まあ、ゴールドもシルバーもプラチナも私は縁がありませんので、シルバーが消えても私には特に関係ありませんな(負け惜しみ)。
最近ふとそれを思い出して、クアラルンプールを走行する各種の電車内で”優先席”を示すことば使いをメモしました。尚文中の単語が大文字になっているのは、注意を強調するためからであり、通常のマレーシア語文章では一々大文字化はしません。
Putralein の場合:
Tempat Duduk Ini Khas Untuk Warga Tua, Warga Hamil, Golongan Kurang Upaya.
語義に忠実に訳せば、
この座席は年取った方、妊娠した方、能力の劣るグループのために特別となっています、といった意味です。
Komuter の場合:
Keutamakan Tempat Duduk.
語義に忠実に訳せば、
座席に優先権を与える、優先権を与えた座席 といった意味です。
Komuter の表現は日本の”優先席”と同じ言い回しだと考えていいでしょう。Komuter は短いベンチ式とボックス式の2タイプの座席から構成されていますが、この注意書きが掲示されているのは、短いベンチ式座席だけです。
Putraline の場合は、具体的に対象者名を書き出しているので、文章が長くなっていますね。Tempat Duduk Ini Khas という表現は簡単にいえば”特別席”ということでしょう、Ini は「この」という指示詞。Golongan Kurang Upaya というのは直訳すれば upaya 能力が kurang 足らない golongan グループ となるので 、この表現は以前から私はどうも直接的過ぎる表現に感じます。もちろん私の語感ではということからであり,良いとか悪いということではありません。
Starline の場合:
以前は全くなかったがごく最近、恐らく2004年7月か8月ごろになって、車中にこの種の表示が現れた。電車の席(全てベンチ式です)背後の窓に青いシールが張られており、それには次ぎのように書かれています:
Sila beri tempat duduk anda kepada mereka yang lebih memerlukannya
語義に忠実に訳せば、
あなたの座席をより必要とされる方々にお譲り下さい、 といった意味です。
この表現は、窓シールの貼ってあるあたりの座席だけに限定しているのではなく、座席に座る人ほぼ全部に訴えている、ととれます。つまりこの席は”優先席”とか”特別席”ですよという表現ではなく、座席に座っている人は座る必要がよりある人が乗車してきたら席を譲りましょう、という表現ですね。この件に関しては、電車路線の中で一番優れた表現といえます。
KL Monorail には表現に関わらず”優先席”は全く設けてありません。(2004年10月時点)
それでは、Tempat Duduk Khas またはKeutamakan Tempat Duduk に座っているマレーシア人乗客は対象者が車内に入ってきたとき、その席を素早く譲るのであろうか? これまでの数多くの観察から言えることは、譲らない場合の方がずっと多いといえます。もちろん譲る人もいますから、あくまでも傾向としてですよ。小さな子供連れなどの夫婦や母親はまず譲りませんね。混んできても子供をどうどうと座席に座らせており、自分の膝上に載せるような人は少数派です。これはあらゆる路線に数多くの回数乗って来た私の観察からです。
ところでよく見かけることに、小さな子供が靴を履いたまま座席に立ちあがったり、座席上を歩いています。この時親はまったくそのことを気にしません。大衆食堂や屋台センターでも同じで、小さな子供が靴履きでイスの座席上に立ちあがってもまったく気にしません。これはマレーシア人どの民族にも共通して言えますね。尚一人で歩けないような赤ん坊は靴など履いていないので、ここでは関係ないです。
えっ、私ですか? 車内がガラガラでない限り、優先席または特別席には最初から座りません。Tempat Duduk Ini Khas またはKeutamakan Tempat Duduk には、まああと20年ぐらいたったら座ることにしましょう(笑)。
座った座席の隣や近辺で延々と大声で話されたら辟易しますが、これがまた頻繁に起るのです。そのほとんどを占めるのが携帯電話による会話です。しょせん他人の出す音に対する捉え方が違うので、マレーシアで携帯電話の会話騒音がなくなることはありえませんが、それにしても、なぜ人にわざわざ充分よく聞こえ過ぎるほどの声で話し続ける必要があるのだろうか。
中長距離バス・列車や他州で運行されているバス便を除いて、クアラルンプール内外のバスや電車の様々な区間・路線に毎年どんなに少なくても 300回は乗る筆者は、しばしば携帯電話騒音にさらされます。(この1、2年回数が減ったがそれ以前はもっと数多く乗っていた)
所詮ほとんど守られっこないであろう、同意を全く得られないであろう、車中の携帯電話禁止を主張しているのではありませんよ。車中、プラットフォームには飲食禁止、タバコ禁止、などといった利用者への注意マーク・イラストが掲げてあるので、”モラルとしての携帯電話の小声化推進” ぐらいは電車会社が提案するまたは利用客の間に発想として生まれてほしいものです。
Starline と Putraline の両方とも政府持ち株会社SPNBの翼下に入ったおかげで、今年の中頃からStarline の全駅でも プリペード式のTouch'n Go カードが使えるようになりました。Starline は独自のプリペードカードも引き続き販売しているので2種類併用です。Touch'n Go カードは首都圏のハイウエーの料金支払い方法としてかなり使われていることもあって、比較的普及しているので、これは歓迎すべき点ですね。さらにKomuter にもTouch'n Go カードが使えるようになる予定のようです。
このようにゆっくりながらも利用者サービスが向上していますので、これからも期待しましょう。
注:2004年11月26日の新聞報道によれば、下記のような計画が進行中です。どのような形で切符共通化が実現するのか現時点ではわかりませんが、歓迎すべきことですね。