2月5日と6日の中国正月(旧正月)が近づいてきました。筆者が住むのはクアラルンプール有数の華人地区ですから、スーパーでミカン、その多くは中国南部から輸入した潮州ミカンのようです、の箱が山積みしてあり、実によく売れます。西暦の1月になってすぐこのミカン販売がはじまり今はその最盛時期です。日本のミカンに比べれば、すっぱいし種はあるし形と色は整っていないのになぜ毎年毎年あんなによく売れのか不思議なところですが、それにはわけがあります。
ミカンの色は一般に金色ですよね、つまり中国人が大好きな”金”と同じ色で、中国人社会で縁起のよい色なのです。さらにミカンは日本語で無理に書き表せば蜜柑と書きますように、華語(中国語)では”柑(子)”と表記します。華語と親戚の広東語では”柑”は”カム”と発音し、金も”カム”と同声調で発音するのです。(中国諸語は声調言語ですので、日本語でカムと発音してもまず通じません)
こんなところからミカンは中国正月の縁起物として大もてです。食べ物ではその他いろいろ人気物、縁起物がありますが、中国正月に必ずついて回るのが、日本と同じく年賀状です、中国語で賀年片と表記します。正月になって初めていっせいに配達する超几帳面な日本と違って、賀年片は中国正月の前それもずっと前から差出し配達されます。よく知りませんが、中国でも台湾でもこれは多分同じですよね?
筆者の住む地区にはたくさんの華人経営の零細印刷会社があり、去年から賀年片の印刷と販売にフル稼働です。印刷場兼事務所によく賀年片見本が掲示してあります。そこで筆者は顔見知りの事務所でそれを写してきました(写真左と中)。あでやかな紅色基調にさまざまなデザインの賀年片が写真でおわかりのことと思います。形も大きさもさまざま、縦長のものもあります。ショッピングセンターではHello Kittyの賀年片も売られてます。
さて日本のお年玉にあたるのが、紅包[hongbaoと発音]通称Ang Pauです。ただし日本と全く同意義且つ同じあげ方ではありません。このAng Pauを入れる袋、紅包袋、も見本写真を掲載しておきましょう(写真下右)。こちらは賀年片ほど形と大きさにバラエティがありません。
さて、2月12日と13日の中国正月(旧暦の正月)に向けて華人社会は準備のために忙しく、華人商店街とスーパーはそのための買い物客でにぎわっています。並んでいる品物には油と塩に浸した鴨などの伝統的中国食品ががぜん増えます、別のコーナーでは中国正月飾りが種種並んでいます。こういったスーパー・店に掲げられた中国正月の文句の代表は、恭喜発財という、日本の正月にはまず用いない語句ですね。
この時期果物の中で一番好まれるのは何と言っても中国から輸入したミカンで、華人の多い街なら必ず売られています。食べるのでなく飾っておく又は鑑賞用として盆栽タイプのキンカンも売られていますね。ミカンは中国漢字で書けば柑子です。キンカンは中国漢字で柑橘、どちらも色は黄色ですから黄金の色に通じること、さらに広東語では”柑”の発音と”金”の発音は[gam] と同一なので(もちろんローマ字式でなく、声調をつけて無気音で発音、華語の発音は違う)、尚更”柑”と”金”は縁が深い訳で黄金好きの華人・中国社会でミカン類は大吉大利に結びつき、好まれるのです。
さらにもっとこじつけ的に好まれる果物にパイナップルがあります。中国漢字で書けば菠羅 (華語でbo luoと発音) ですが、パイナップルの身の色は黄色つまり金色ですよね。さらにパイナップルの別名は旺来(黄来とも書ける、福建語風に発音する[wong lai] が一般的みたい)です。これは多分中日辞典にも載ってないかもしれません。”黄”も”旺”も広東語ではほぼ同一の発音で[wohng ] です。”旺”は旺盛と同じ意味ですからいい意味ですね、”黄”は言うまでもなく黄金の一部です、よってどちらも縁起の良い漢字であり、その”旺”又は”黄”がやって”来”るようにと願いをこめた果物がパイナップルなのです。どうですか、パイナップルもミカンも推測と豆知識を必要とする果物でしょ?
その他中国正月用に売られる食品類には次ぎのような意味が込められているようです。
糖果 :財源滾滾 (滾とはうねりの激しい様をいう)
年GOU :歩歩高昇
紅爪子 :多子多孫
花生 :添福長寿
糖蓮子 :連生貴子