この長い一文は 「今週のマレーシア」 に2002年3月に連続掲載したものです。「飲食物の話題」ページにぴったりのテーマですので、ここにも掲載して、旅行者・在住者の皆さんの目に付きやすくしておきます。実践用ですから、印刷してお持ちになることをお勧めします。
前書きは省略
さて前書きはこのくらいにして本題へ入りましょう。
ずっと以前のことになりますが、98年のコラム第107回で「よくわかる実践マレー料理注文の仕方」 というマレー大衆料理に絞ってその注文法をちょっとおもしろくおかしく紹介したコラムを書きました。マレーシアの大衆料理一般の概説を載せたのが99年のコラム第137回 「料理法知らずのマレーシア料理案内と勧め」です。次いで107回とは別の角度からコラム第138回で 「一夜漬けで覚えるマレー料理の注文法」 を書きました。一般的なマレー料理の注文法に関してはこの3つのコラムをじっくり読んで知識を仕入れ、料理名を覚えていただければ、まあなんとか注文できると思います。もちろん完璧にできるわけではないですよ。この3つのコラムをまとめて、旅行ページの「飲食物・料理・果物の話題」内に項目として掲載していますので、マレー料理・飲み物に関してはそちらをご覧ください。
そこで今回から3回にわけて、大衆中国料理に関して概略を説明し簡便な注文方法を皆さんに伝授しようと、第して 「実践 よくわかる屋台・大衆中国料理の解説とその注文の仕方」を書きました。題名につけたように、これは実践のためのコラムですから、読者の皆さんに是非屋台・大衆中国料理を味わっていただきたいと思います。
一般に日本人は、看板などに漢字で料理名が書いてある大衆中華料理の方が大衆マレー料理より注文しやすいと思われるかもしれませんが、あにはからんや、そうでもないのです。マレーシア語はまあ初心者が書かれた通りに発音してもマレー人らに通じる率は高いので、マレー屋台の時はマレーシア語の発音を表記しましたね(尚聞き取りは発音の何十倍も時間がかかるので、一夜漬けでできるわけありませんよ)
中国漢字の意味は日本漢字と違う場合が往々にしてあります。そのいい例が”粉”という漢字です。これは中文(日本語でいう中国語のこと)では、広い意味での麺類の意味ですから、決して粉(こな)そのものではありません。例えば、地元華人はよくこういう言い方をします、「今晩の晩御は飯 [fan] にしようか?それとも粉[fan] にしようか?」 この表現のローマ字表記ではいずれも同じ”fan”ですが、声調が違うので意味が違うのです、この意味は 「ご飯物にしようか、それとも麺類にしようか?」 ということなのです。
屋台・大衆中国料理は大きく分けて、飯類、粉類(めん類)、粥類、湯類、肉・海産物類などの独立した料理、甜品類、その他 でしょう。このうち最も一般的でどんな屋台街と大衆食堂のメニューにもあるのが飯類と粉類の2種類です。尚飲み物類は当然どこにもあり、食べ物とは別の屋台が扱っています。
屋台はそれぞれ1種類から関連ある数種類の料理に少品種特化しています。つまり蝦麺を売る屋台人がその同じ屋台で炒飯を調理して売ることはありえません。板麺と伊麺をいっしょに調理して売ることはありますが、豬肉粉と魚滑粉の組み合わせは極めて少ないはずです。まして廣府炒と雲呑麺をいっしょに売る屋台はないでしょう。
大衆食堂、一般にこれをコーヒーショップとかマレーシア語でKopi Tiamと呼びます。こういうコーヒーショップの看板には店名として何々という屋号に続いて茶店、茶室、餐廳、茶餐室、飯店、餐館と書かれています。時々それに添え書きする形で何々Restaurantなどと書かれています。これらの語句:茶店、茶室、餐廳、茶餐室、飯店 に本来は違いがあったはずですが、現在では少なくともマレーシアでは実質的にほとんど違いはありません。(台湾、香港では違いがあるかもしれない)
またたくさんの屋台を一箇所に集めた屋根付き吹き抜け式の建物があります。こういうのをホーカーセンターHawker Centre とかフードコートFood court とマレーシアでは呼びますが、華語(中文)ではよく「美食中心」と表記しています。これを真似て大衆食堂が屋号の次ぎに何々美食中心と書く場合もあります。このように店の呼び方はその店主の好みで好き好きにつけているのです。
ホーカーセンター又はフードコートという呼称はショッピングセンターの食堂階・コーナーの意味でも使います。ビジネスビルでは小規模のホーカーセンターがあり、Kantin(キャンティーンのこと)とも呼びます。これらは建物形態はそれぞれ違いますが商売形式としていずれも同じなのです。いずれも屋台商売人が、屋台分のスペースを借りて商売しているからです。
そこでこの大衆食堂つまりコーヒーショップの仕組みを説明しておきましょう。屋主が店内の場所を屋台商売人に貸し出しています。屋台商売人(華語では小販という)はそれぞれアルミ製できた調理台(屋台街で使う物と全く同じ形)を店の内外に持ち込んで、それぞれの得意の料理を調理販売するわけです。この商売法とあり方は街頭の屋台と同じです、つまり屋台が屋外又はホーカーセンター(半屋内の場所に多くの屋台を集合させた所)で商売するありかたと同じです。フードコートの場合、地域の自治体が場所と建物を提供している場合が多いです。尚大衆食堂や小さな屋台街では、同じ料理を売る屋台は原則として営業しないようになっています、共倒れを避けるために当然ですね。
1軒1軒の屋台がそれぞれ小品特化した料理をメニューとして、その料理を売った屋台が自分で客から直接料金を徴収するあり方です。ある大衆食堂の中の一画で商売している何々料理コーナーの販売人は、その店のスペースを借りているだけなのです。調理用のプロパンガスも自分で払っていますよ。尚マレーシアで都市ガスの供給されている地区は全国の中の極めて極めて限られた地区だけで、大衆食堂が都市ガスを利用している現場を見た記憶がありません。
大衆食堂はその呼び名であるコーヒーショップの名の通り、コーヒー、紅茶の飲み物も提供しています。尚飲み物は飲み物専門の屋台が担当します。例外はありますが、これはどこの屋台街、フードコート、大衆食堂でも同じで、通常は飲み物は食べ物と別払いです。
コーヒーは地元コーヒーであるKopiで、紅茶は地元スタイルのTehですね、ですから地元スタイルのコーヒーの場合はKopi 「コピ」と、紅茶がTeh 「テー」と発音して注文してください。華語ができるからといて、「珈琲」などと華語で注文するとおかしな顔をされますよ、なぜならマレーシアの大衆食堂で供されるのは、西欧風のCoffee ではなく Kopi だからです。だから華人の大衆食堂でも"Kopi, Teh" と注文するのです。ただし中級以上のレストランなら"Coffee" と注文してもおかしくはありません。Kopi を好まない方ならインスタントコーヒーを、「ネスカフェ」 といって注文してください。ネスカフェは極めて普通の飲み物ですよ。その他 Milo「マイロ」も一般的です。
氷を入れたアイス何々にする場合は"Kopi Ais" "Milo Ais" などのように品物名に「アイス」を加えるだけです。正式には「ビン」と声調をつけて発音します。ミネラルウオーターはそのまま"Mineral Water" と注文すれば、通常は500mlのミネラルボトルがでてきます。
食事時に一番多く注文され安いのが、グラス1杯の「唐茶」です。読者の方は”Chinese Tea" と注文すればいいのです。氷を入れた方がよければ"Chinese tea ice" です、華語では「雪茶」と表記されている。こうして出てくるのは、グラスに注がれた色がついた程度のお茶です。安っぽいハーブ茶もよくメニューに加わっています、「涼茶」と書かれているので、"ハーブティー”とでも言って下さい。
清涼飲料水ならCoke 「コーク」と発音、100PLUS 「ハンドレッドプラス」と発音、などはどこにもあります、この種の清涼飲料水は、「汽水」 とまとめて表記されている場合もあります。豆奨水とは豆乳のことで、豆 +女偏に乃 と書くこともあり、どの屋台にも店にもあります。読者の皆さんが注文する場合、例えばこの広東語発音は"Daochiyongsui" と声調が非常に難しい単語なので、"Soya bean" と英語で注文してください。マレーシア人の好きな飲み物の一つに"Barley”がありまして、「草冠に意 +米」 と2字で表記されます、はと麦のことです。サトウキビ水は 「甘庶水」と表記されていますので、"Sugar cane" と言ってください。大衆食堂ではこの場合、缶入り又は紙パックのSugar caneがでてくるはずです。屋台などでは実際のサトウキビを絞った「甘庶水」が一般的です。
缶飲料の例:「菊花茶」、「芒果」はマンゴのこと、「鳳梨」はパイナップルのことです。Cincauチンカウと発音する 「涼粉」は粉ではありません。
もっと別の飲み物が試したい方は、大衆食堂の冷蔵庫には各種缶飲料類が入れてあるので、冷蔵ショーケースに近づいて行って "This one" と指差して伝えれば一番確実ですね。氷が欲しければ”Ice”の一言で通じるでしょう。
生ジュースが飲みたければ," Fresh orange, fresh apple" などと注文します。通常はこの他にスイカ"Watermelon"、スターフルーツ、ニンジン"Carrot" など数種類の生ジュースが提供されますので、飲み物屋台の所へ行って、ガラス容器の中に飾ってある果物から好きな物を指差せばいいのです。大きな椰子の実を置いてある屋台もありますよ。その場合はもちろん「ココナッツ」で通じます。大きなココナツが丸ごとでてきて、安価に味わえるのはまさに熱帯国での楽しみです。"No ice" と付け加えれば、氷なしの生ジュースになります。
急須で供される中国茶は、華人大衆食堂、華人主体フードコートですから当然あります、が路上の屋台にはありません。一般的に烏龍茶、水仙、鉄観音などが主なところです。烏龍茶なら「ウーロン」で通じるでしょう、あとは日本語で発音してもまず通じないはずです。そういう場合は仕方ない、紙片にでも書いて店の人に見せてください。この急須茶は複数の人で飲めるという利点があります。急須の湯がなくなったら蓋を半分ずらして待っておればよいという話しがありますが、それは高級レストランのお話です。大衆食堂などでは、手を振って"Hot water" と催促する必要があります。
おっと、ビールなしでは食べた気がしないという方は、次のように注文してください。"Anchor, Tiger, Carlsberg、Guiness" と銘柄を指定します。ついでに"small" 又は"big" と言うのもお忘れなく。大衆食堂でビールを日中から飲んでも誰も文句は言いいませんが、日中に飲んでる客はやはり少ないです。
ちょっと大きな店やフードコート(美食中心)では夜になると、ビールメーカーと契約して働いているビールガールが登場する所がありますので、そういう時は彼女の方から特定銘柄のビールを勧めてきます。尚彼女たちはホステスではないので、座って酌などしませんよ。日本のビールが置いてあるような店は外国人を主として相手又はそれを狙ったちょっと高級な店であり、地元人相手の屋台、店に日本ビールは置いてありません。
それでは食べ物屋台に入りましょう。
クアラルンプール及びその周辺であれば、広東語又は華語で、ペナンであれば福建語で、ジョーホール州であれば華語で、とその土地の華人社会で一番使われることばで注文するのが一番ふさわしく細かい要求まで的確に注文できますが、それを読者の方に説明しても無駄ですし、短期間に取得を期待しても不可能です。そこでこのコラムでは誰でもできる注文の仕方として、看板によく併記されている英語呼称を混ぜたマレーシア英語的非標準英語と指差し法で書きます。これでも必要な事は伝わりますから、覚えてぜひ実際に使ってくださいね。
1の解説
雲呑麺なら日本語でワンタンミンといっても恐らく通じるはずですが、蝦麺、板麺などを日本語読みしても当然だめです。ですから屋台のガラス又は看板に書いてある漢字を指差して注文するのが、読者向きです。蝦麺は時にPrawn Meeと英語で添え書きしてありますが、下手な発音で言ってもよく伝わらない事もあるでしょうし、彼らはマレーシア英語を当然のこととしているので英米人並の流暢すぎる英語でもよく伝わらないこともありますよ。料理の内容がどんなのかわからなければ、数分間料理するところを眺めておればいいのです。おかしな顔をされたらにこっとしながら" I want to see before order" とでも言えばいいでしょう。
2の解説
麺の種類には黄色い麺、米粉、麺線、Kuwai Tiow、冬粉、河粉など種類たくさんあります。ものすごく一般的な"Kuwai Tiow" が日本漢字で表せないので残念ですが 「米偏に果と書き + 條」 と表記します。小さな麺類屋台でも通常は数種の麺を揃えており、麺の種類を選択できるので、客はどの麺かを指定するわけです。この時例えば黄色い麺と米粉を半々にしてもらうことも極めて普通です。1種類であれば その麺を指差して,"This only" といえば通じるでしょう。2種の麺を混ぜる場合は、" This one and this one, mixed" とでも言えば通じるでしょう。又はマレーシア語の単語を入れて" This one and this one , Campur(チャンプー)“と言っても通じるでしょう。
黄色い色をした麺は広東語で[min] 華語では[mian]と発音しますが、この場合は麺類の総称の意味ではないのです、麺類の種類の1つなのです。「麺」という漢字にはめん類という意味ももちろんあります。米粉はビーフンのことですね。板麺は麺の種類がそのまま料理名になっているので麺の選択はありません。
また雲呑麺は麺は最初から決まってますが、碗の中にスープと麺をいっしょに入れる通常の麺スープタイプと、皿に麺だけを盛り、スープは小鉢で別にするタイプの2種類があります。ですから雲呑麺に限っては、スープ入り麺なら "Wantanmen soup" と、スープなしタイプなら"Wantanmen dry" と注文してください。ごくごくたまに、乾撈と書かれてる場合もありますがこれはDry の意味です。
3の解説
特別の注文とは麺を特にやわらかにしてくれとか、シイタケをいれないでくれとかという個人的好みの注文のことです。初めての者がこういうことをくどくど言うと嫌がられますので、その屋台の通常の調理に任しておくのが無難です。
料理つまり碗のサイズを指定します。看板や麺のケースに 大(Big)RM3.50 小(Small) RM3.00 などと書かれているのが通常ですので、これは簡単ですね。普通サイズなら"Small" と言えばいいですし、ちょっと多めが希望なら"Big" と英語でいえば間違いなく通じます。小と書かれていてもそれはその屋台の普通サイズの量ということです。大 中 小 と3段階に分けて売っている屋台も少ないけどあります。
4の解説
ごく数の少ない屋台街、小さな大衆食堂であれば、注文者がどのテーブルに座っているかを伝えなくても、その屋台人は注文者の顔を見ればすぐわかるので、席の位置を伝える必要はありません。それ以外の場合ははっきりと伝えないと、いつまでも注文したのが届かないなんてことになります。大きなホーカーセンターではテーブル数が100を超えるつまり数百人の客を収容できる所がありますので、そういう時はテーブルの番号を伝えるか、位置を指差して" Over there" とはっきり言うことです。
それではめん類の個別解説に移りましょう。「粉」がめん類であることは、前編ですでに説明しましたね。
めん料理に入れる物からついた名で麺料理を区別する場合
「豬肉丸粉」は選択できる麺に小さな豚肉をこねたボール状の物を加えたものです。この豚肉ボールの替わりに魚肉を使えば「魚丸粉」という種類の麺料理になる。「西刀魚丸粉」というのが有名です。 いずれも"Fish" "Pork" で区別注文できるはずです。「雲呑麺」は文字通りワンタンが入ってますが、追加オーダーとして「水餃」とか「蝦餃」を加えることができる場合が多い。文字を指差して、" add this one" で通じるでしょう。
豚肉の部位から取った骨付き肉を入れた「排骨麺」、 牛肉を加える牛Nam麺 (Namは月編に南と書く)、牛汁麺、ペナンでは「福建麺」 と呼ばれる「蝦麺」は辛いスープに文字通り蝦が入っています、時に「生蝦麺」と書かれても内容に変わりはありません。これらは英語が添え書きされていなければ、いずれも看板の文字を指差す指差し法がいいでしょう。「鶏脚麺」 は鶏の足の部分がそのままの形で麺の中に入っています、シイタケの加わった 「冬茹鶏脚麺」という場合が多い。 「豬脚麺」はもうおわかりですね。
麺の種類でも区別
麺の種類に「河粉」があるがこれを使った料理は「鶏絲河粉」と 「沙河粉」がよく知られている。「米粉」では「魚頭米粉」が有名です。「板麺」には、道具で平たく伸ばしたタイプと麺の基を料理人が手で細かくちぎって鍋にほうり込むタイプの2種類ある。「老鼠粉」 というマカロニみたいな麺がありますが、これはスープ麺として食べるより乾撈(Dry)で食べる方が一般的でしょう。「河粉」は"ho fan" と発音しますが、指差し法で十分です。
インスタントラーメンの麺みたいな麺を「伊麺」と呼びます。" イ mian "と発音すればいいでしょう。この麺はよく土鍋で料理した 「瓦pou伊麺」の料理名となっています。瓦pouではなく鉄板に載せて料理した麺が、「鐵板麺」です、これは分りやすいですね。ラクサは下記で説明。
スープ味で区別
麺のスープのタイプでその料理の特有のスープ味でなく、すまし汁のように味付けしないタイプのスープを「清湯」と書きます。だからある種のめん類では麺を選択し、ついでスープ味を選択できることになります。例:めんを米粉にしてスープを清湯にすれば、「清湯米粉」ですね。「加厘麺」は文字通りカレー味の麺類です、カレーの意である加厘は両方の字に口編が付きますが、日本漢字にない字です。トムヤムスープのように辛いスープ味を「辣湯」と書きます。タイ料理のトムヤム味を「東炎」と表記しますが、「トムヤム」で通じるでしょう。
スープを麺といっしょにせずに別の小碗にするタイプの麺を「乾撈」と表記します。
ラクサには、亞三"Assam" 叨沙" Laksa" と呼ばれるペナンラクサとカレーラクサの2種類が普通です。ラクサの中国漢字は口編にカと書き、サは沙と書きます。ペナンを「檳城」と中文では表記し、ラクサはペナン名物なので「檳城叨沙」 とよく書かれています。料理名に地名を付け加えたタイプです。発音は「アッサム(又はペナン)ラクサ」、 加厘叨沙は「カリーラクサ」で通じます。
炒めた麺類でよく知られたのがまず "炒Kuwai Tiow"です、これはどこにでもあります。次いで 「廣府炒」と 「福建炒」です。「廣府炒」は揚げ麺を使用し、「福建炒」は福建麺を使います。その他にも「炒老鼠粉」、「炒冬粉」 「炒米粉」などがありますが、こちらの方はどこの屋台でもあるわけではありません。「福建炒」の場合は「フッケン」、「廣府炒」の場合は「コンフー」と言えば通じるかもしれませんが、声調が難しいので、看板の文字を指差すのが無難でしょう。これらの炒め麺類は、チリとか青辛子は小皿で提供されるので、辛さは食べる人が加減できます。
その他まだいろいろあります、"Lu mian"と呼ばれる「鹵麺」 は肉卵を加えた醤油味のめん類です。魚の小さな頭を入れたビーフンの「魚頭米粉」などもよく見かけることでしょう。「淋麺」という料理もあります。いずれも看板の文字を指差してください。
手打ちスタイルの麺を売り物にした屋台もたまにはありまして、そういう場合は「手工麺」 と表記されており、その屋台のめん類はすべて手打ちということです。
一般に華人の屋台、大衆食堂、ホーカーセンターでは、料理が運ばれてきた時に料金を払います。マレー人のつまりマレー料理の屋台、大衆食堂とはこの点で違います(もちろん一般論なので例外はどちらにもある)。そこで運んできた者に, "How much?" と聞いて、答えに基づいて金を払います。屋台の看板に料理の代金が書いてあるのが一般的ですから、普通の料理を注文した場合なら、料金代も知っていることも多いですから、料理が届いたらだまって金を渡してもいいです。おつりが必要な場合はその運んだできた者が屋台まで戻っておつりを持ってきます。尚屋台で 5リンギット以下の代金なのに50リンギット札などを渡せば嫌な顔されるのは、お分かりですよね。
数人で料理を注文して、誰かがまとめて払う場合は、”All together, How much? " とでも尋ねればいいのです。1人1人が別々に払う場合は、その料理を指差して、”Not all together, this one how much?" で十分でしょう。
飲み物は料理とは別の屋台で注文するのが一般的ですから、飲み物に関してもこれは同じです。
何はともあれこういう屋台料理は、客の注文によって一品一品炒めたり煮たり蒸したりする注文料理を提供するタイプの屋台・大衆食堂とは違って、食べる前に払うので明瞭会計ということになります。料金は食べてからでもいいよという屋台、店も中にはありますが、そういう時でも旅行者や初心者はできるだけ食べる前に払う方式を取った方が無難です。
めしを食べないと食べた気がしないという方、お待たせしました。飯類の屋台に入りましょう
飯類の代表はいずれも同じ意味である、経済飯、汁飯、経済雑飯と書かれた屋台です。最低10種類以上のおかずがアルミの容器に入れられて保温式台の上に並んでいます。最初にその場で食べるのか持ちかえりにするかを告げます。
その場で食べる場合は"Eat here" と言えば、店の人が皿にご飯を盛ってくれます。ご飯を減らして欲しければ、”Small rice“ と言えばいいでしょう。そしてめいめいの客が大きなスプーン、つかみ器で好みのおかずをアルミ容器から取り、それを自分のご飯皿に加えます。つまりご飯の上におかずを載せるのです。何種類載せようとそれは個人の好き好きです。グループで経済飯、汁飯、経済雑飯を食べる時は、めいめいのご飯の皿とは別におかずを小皿に盛ってもらう場合もありますが、1人2人だとあまりこういうことをしません。たくさんおかずをよそりたい人は小皿を要求して、"Small plate, please" とでも言えばいいのです。
経済飯、汁飯、経済雑飯の屋台の中には、粥 "porridge" をメニューに加えている所もあります。その場合はご飯の替わりに粥の碗になるわけです。この場合は当然おかずは小皿に盛ります。尚屋台、店によっては客におかずを勝手に盛らせない所もよくありますが、こういう所はあまり好まれませんね。自分でおかずを盛りたいのが客の心理ですから。
さておかずを盛り終わったらそのご飯とおかずを盛った皿を店の人に示して、”How much?" と尋ねます。その場ですぐ金を払う場合が通常ですが、値段だけ聞いて食べ終わって払う場合も少ないながらあります。このコラムの読者は食べる前に払うことにした方が無難です。"I want to pay now" と伝えましょう。
飯類で人気あるためほとんどの屋台にあるのが鶏飯ですね。「鶏」の鳥偏の部分が通常は「誰」の右側旁の部分になっていますが、意味は同じでニワトリです。よく看板に「海南鶏飯」と書かれてますが、鶏飯を発祥・発展させたのが、中国海南島出身の海南人だからです。といって現在ではその看板を出している商売人が全て海南人ということではありません。
この鶏飯のメニューには「焼鶏」とよく表示してありますが、これはマレーシアでごく一般的な鶏飯の種類で、こげ茶色に焼き仕上げた鶏です。[siugai] と広東語ではいいますが、あえてそれを言わなくても単に”Chicken rice one ”とでも注文しておけばいいでしょう。それに叉焼を追加して欲しければ、「チャーシュー チキンライス」 で通じます。大盛りならもちろん"Big" と付け加えます。
鶏飯の鳥には3種類ほどあって、一番多いのが通常のこげ茶色の鶏、次いで「白鶏」 と呼ぶ白い鶏です。注文する場合”White” を単語に追加すればいいでしょう。数は少ないですが、地卵ならぬ地鶏を提供している屋台店もあります。そういう場合は、「家郷鶏」 と書いてあります。怡保(イポー)が白鶏の有名地なので 「怡保鶏飯」というのがありまして、もやしが載ったちょっと別の味付け鶏飯です。「家郷鶏」 と「怡保鶏飯」の屋台は通常それだけ販売してますので、あえて区別して注文する必要はありません。
さらに「鶏飯」の屋台の中には、アヒル肉をメニューに加えている所もあり、「鴨飯」 又は「焼鴨」と表記されています。その時は"Duck rice" と注文してください。華人はアヒル肉が案外好きなのです。尚ここでは、空を飛ぶカモの意味ではありませんよ。「鴨飯」に叉焼を追加するのはおかしくありませんが、「鴨飯」 と 「鴨飯」を1つの飯皿に盛るのはちょっとおかしなことです。そういう時は、チキンとダックを盛った皿と、ご飯の皿が別で供されます。
鶏飯ですがちょっと料理法の違った鶏飯が、「瓦pou鶏飯」 というのがあります。pou の漢字は保の下に火と書きます。これは土鍋にライスと鶏の肉を入れて炊いたご飯です。本格的な屋台では今でも炭火で炊くのです。1、2人用の小さな瓦pou から4人ぐらい用の大きな瓦pouまで3種ほどあるのが普通で、それが 大”Big”, 中”Medium”, 小”Small” の違いになります。注文は、"Claypot chicken rice" と言ってサイズを伝えます。「瓦pou鶏飯」にはスープ小碗が付いてくる場合がよくあります(付かない店もある)。
その他鶏に関係ある飯料理では、「鹽火局鶏」 という塩辛い鶏飯の店もごくたまにあります。”火局”で1漢字です。
その他飯類には中国風焼き飯である「炒飯」 "Fried rice"と発音、 「揚州炒飯」と名打っている時もある。この「炒飯」の種類に、パイナップルを真っ二つに切って中を空にして、それを皿替わりに用いて炒飯を盛った"Pinapple Fried Rice" をメニューに入れた店にであったら、その読者は幸運ですよ。パイナップル味が炒飯と調和してたいへん美味しいのです(筆者の好物です−余談)。
屋台、大衆食堂では飯類はめん類に比べて種類が少ないのが一般的です。「火敦飯」と表記された(火敦で1字)”Steam Rice”を各種売る屋台がもしあれば、それは珍しいことです。
スープ専門の「豬汁湯」 と看板に掲げた屋台ではそのスープの追加注文としてお碗盛りのご飯を用意していますので、その場合は"Rice" で通じます。「豬汁湯」 とは豚肉ベースのスープです。筆者は英語で注文したことがないので何というか知りませんが、読者の方は文字を指差して注文すれば十分分ってもらえるでしょう。「湯」とはこの場合はスープの意味です。例えば、「海鮮湯」、「ABC湯」などいくつか種類があります。
ご飯といっしょに食べる料理物としていわゆる精進料理があり、「齋」 又は「素食」という表示を出した専門屋台、店が商売しています。多くの人が好む大衆的な「齋」 「素食」ですので、日本での精進料理とはちょっと違いますが、材料に肉や魚はもちろん使いません。齋 のスタイルは経済飯と同じく、ご飯に齋おかずを盛るタイプです。代金は経済飯と同じかむしろ多少安いのが普通です。
ご飯ではないがその親戚として「粥」があります。粥専門店はよく「潮州粥」 と看板を掲げてますが、これは中国南方出身の潮州人がこの料理で有名だからです。「潮州粥」の場合は、客がおかずを選んで小皿に盛るスタイルです。これとは別のスタイルである粥専門屋台だと、はじめから粥の碗に魚、鶏絲などが混じっており、その内容物の名を取って、「豬汁粥」、「魚粥」、「鶏絲粥」、「田鶏」(カエルの意)などの種類がある。この場合は"Chicken porridge" "Fish porridge" "Pork porridge" などと言うか、指差し法がいいでしょう。
「豬腸粉」 というのがある、これはめん類ではなく、中身にあれこれ材料を包んで蒸し焼く軽い料理で、平皿に載せて供します。羅白gao(gao は米偏に羊と書く)、これらは英語で言うのはほとんど馴染まないのですが、看板に英語綴りが書いてあればそれ風に発音するか、指差し法で注文してください。尚「豬腸粉」などは数を伝えて注文しますので、例えば" two, three "で十分でしょう。「薄餅」はいわゆる「ポーピア」のことです。これも数を指定して注文します。
さらにいろんな種類の品からなる 「鹵肉」と表記された料理があります、発音は"lobak" です。「羅口也」というインド料理起源のメニューもあります。「口也」はこれで1漢字で、合わせて「ロジャ」 と発音します。鶏の翼を火で照り焼きしながら売っていたらそれは「焼鶏翼」です、たくさんくしに刺し売っていますから、" one, two" などと数を言って買えばいいのです。
「讓豆腐」は”Yong Tau Foo ヨンタオフー” と発音し、観光客にも案外知られた料理ですね。「肉骨茶」と同じく、屋台だけでなく独立した専門店も時々あり、「客家讓豆腐」などと看板を出しています。客家とは客家人のことです。「讓豆腐」は種類たくさんある品が1個いくらという値段のつけ方ですから、指差し法で ”How much this one?"と尋ねましょう。通常は1個40セントから60セントぐらいでしょう。
「讓豆腐」はたいていお碗盛りの白飯を用意していますよ、ですからおかずとして食べられます。飯が要らなければ" No rice" と伝えて、讓豆腐を別注文しためん類のおかずのようにして食べればよいのです。また「讓豆腐」といっしょにめん類をメニューにしている屋台もありますから、まず「讓豆腐」をいくつか選んでそれから麺を選びます。
魚の頭を辛いカレー汁に入れて煮込んだのが 「加厘魚頭」です。英語では"Fish head curry" という決まった呼び名があります。通常は「瓦pou」で供される形が多く、相当辛いのが一般的です。ハンカチでは足りないほど汗が出ますよ(笑)。
海産物は一般に「海鮮」と表記します。例えば海産物を具にしためん類は、「海鮮麺」と書かれています。
「海鮮」の代表的一品料理は、魚を鉄板上でバナナの皮に包んで焼く「焼魚」です、日本の焼き魚とは相当趣が違う。通称"Sotong"と一般に呼ばれるイカ焼きがあります、イカは烏賊ではなく 「魚尤魚」 (中国漢字で魚尤は1字です)と書いてあります。「鮮蛤」と書いてあれば貝を意味します。牡蠣を卵といっしょに炒めた料理が 「hao煎」です。haoは虫偏に豪と書きます。魚、イカはガラスケースの中に数々の種類とサイズの物が氷付けされていますので、好きなのを選んで指差して注文します。その時あらかじめ "How much is this fish?" と値段を必ず尋ねておきましょう。細かい料理注文をしようとすればできない事はないのですが、それはあきらめてください。
茶と書かれていてもいうまでもなくお茶ではありません、台湾や香港にもないマレーシア華人独特の料理がこの「パコッテー」です。豚肉の各部位をハーブスープで煮込んだ料理で、腹に持つ料理です。「肉骨茶」には2種類あって、一人又は数人用に土鍋で煮込んで作るタイプの「瓦pou肉骨茶」 と店側が大きな鍋であらかじめ完全に煮込んだものを小碗に盛って供する通常のタイプです。いずれも白ご飯が付きます。「肉骨茶」の発祥と最も有名な地がスランゴール州Kelang なので、その中文地名表示である巴生を頭につけて「巴生肉骨茶」 と看板を出している店もあります。巴生までわざわざ出かけて行って「肉骨茶」を食べるのもちょっと贅沢な食旅行ですよ。
「肉骨茶」の細かい注文は易しくありません、なぜなら各部位の名前を華語などで覚えておかねばならないからです。そこで一般的な注文法である、特別なリクエストをしない、「パコテー、ミックス Please」 とか「Normal パコッテー」 程度で我慢しましょう。これは一通りの部位を入れた一般的な「肉骨茶」です。この料理には中国茶が付きものですので、前編の飲み物の箇所を参考にして茶の種類を指定します。通常サイドオーダーとして茹で野菜、通称 「油菜」、を勧められますので、欲しければ「レタス」 とか「カイラン」 などと野菜名を告げてください。ただし上手く伝わるかは保証しませんよ。他人のテーブル上の料理を指差して、"same vegetabel" とするのが賢明でしょう。
この料理ぐらいになると、ブロークン英語や指差し方だけでは限界はありますが、料理自体を楽しめないということではありませんから、気にせずに注文してください。「肉骨茶」はマレーシアで是非味わって欲しい料理の一つですよ。
いわゆるステーキとかスパゲティーとかフライドポテト付きのフライドチキンなどの料理を 「西餐」と呼びます。意味はウエスタンフードということです。昔から屋台料理としてもありましたが、この数年そういう屋台に人気が出てきて数が増えたようです。この「西餐」屋台の看板にはまず間違いなく、中国漢字名と英語名が併記されていますから、その英語名で注文するのがいいでしょう。参考までに、「牛八」はビーフステーキ、「鶏八」はチキンチョップ、「豬八」はポークチョップ、「魚八」はフィッシュ&チップスのことです。ただしどれも味と肉を高級レストランのステーキ風だと期待してはいけませんよ。「八」の部分は「手偏に八」と表記しますが、日本語フォントにはないので「八」としてあります。
最後にデザートを紹介しておきます。これらは時には飲み物屋台に関連することなのですが、デザートのようなものを一般に「甜品」 といいます。尚「甜品」はある規模以上のホーカーセンターなどにならないと専門屋台が営業しないのが一般的です。この数年ショッピングセンターなどの一画に「珍珠女偏に乃 茶」 と書かれた看板を掲げたしゃれた飲み物売り場が人気を呼んであちこちに増えました。通常の屋台街や大衆食堂にはありませんが、大きな規模のフードコートなら、あるかもしれません。この「珍珠女偏に乃 茶」は台湾からもたらされたそうで、Bubble Teaなどと訳されています。
で最後に、デザートとして一般的な物を多少あげておきます。豆乳を固めた物を「豆腐花」 と表記します。“Soya bean curd"と注文。かき氷は「汁雪」 「雑雪」 「ABC」と表記されているので、「エービーシー」と言ってください、雪はここではかき氷のことです。 おしるこのように甘い液体を 「糖水」と表記します。この「糖水」には、「紅豆水(アズキの形が残っているタイプ)」 「緑豆」 「黒糯米(もち米が入っている)」 「花生糊」 「芝麻糊」 などの種類があります。これらは通常英語名は載っていないか、載っていても英語で注文することは稀ですので、いずれも指差し方で注文してください。他にも多少のかき氷とココナツミルクベースに南国特有の材料を加えた「摩摩渣渣」 (ボーボーチャチャと発音、ヤムいもとサツマイモの混じった粥みたいなもの)、「西米露」(サゴ)などの冷たいデザートがあります。甘党でない方も一度は試食されるのがいいですよ。
以上このコラムで触れた料理だけでも数十種類に及ぶ屋台・大衆中国料理を紹介しました。一地方限定とか珍しい大衆料理は除いて、一般的な屋台・大衆中国料理はほとんど網羅したつもりです。食べ終ったらこう言いましょう、「ハオチー!」(美味しい という華語の表現です)。
当コラムはグルメのための文章ではありません、マレーシアの屋台・大衆中国料理の仕組みとあらましを知っていただき、その上で実際に注文するための手引きなのです。ですからタイトルに書いたように「実践」なのです。旅行者、在住者に関わらず、多くの読者の方が、外国人旅行者向けとおぼしき屋台・大衆レストランだけではなく、地元民相手のごく普通の屋台街、ホーカーセンター、大衆食堂でも実際に屋台・大衆中国料理を味わっていただきたいなと思っています。もちろん筆者のように毎日毎食利用しなさいということではなく、せっかくマレーシアを旅行する又は住んでいるのだから、時々は利用されたらいかが、ということですね。