熱帯の国の伝統的イメージは椰子の木の並ぶ白い砂浜でしょう。もちろん今でもマレーシアには、こういう風景がきわめて普通に見られます。しかし、政府が2020年までに先進国入りを目指していることもあり、マレーシアをこういうイメージだけでとらえるのはまさに時代遅れです。
椰子の木になる椰子つまりココナッツは、日本のスーパーや果物店ではきわめて高価ですが、マレーシアではあたりまえですが、きわめて安価です。ココナツ1個は、大きさや場所によりますが3から5リンギットです。果肉からそのままココナツジュースを飲むのは熱帯の国の特権ですね。
(右の写真は屋台でココナツを切り開いてジュースを作っているところです。コップ1杯のココナツ水を注文して、普通は立ち飲みします。)
ココナツはココナツジュースで人に消費されるのは一部であり、ココナツ加工製品になります。ココナツ加工産業はほとんど中小企業の領域ですから、研究開発の面で遅れをとっているようです。そのためマレーシア農業研究開発研究所にあるココナツ研究所のような公的な機関が製品開発に援助をしているのです。
マレーシアのココナツ産業は現在二つの問題に面しています。 一つはココナツの生産量が毎年減ってきていることです。生産は80年代に比べて半減近くにもなったのです。作付け面積でいってもこの15年間に30%も減ったのです。従ってココナツの供給よりも需要の方が多い状態だそうです。以外ですね。
これは主に栽培者がココナツより金になるパームツリーにココナツ園を変更したのです。マレーシアはパームオイルでは世界一の産出国兼輸出国にですから。それと新しい労働力をみつけるのに苦労している、プランテーションの労働者不足も起因しています。ココナツ栽培には人手がかかりますから。
もう一つは先に述べたココナツ栽培者が小規模であることです。そのため製品開発に遅れをとってしまったわけです。
(左の写真は道路に無造作におかれたココナツ)
ココナツは木から取れただけではだめでですから、まず皮剥き工程が入ります。これはすべて人手です。
ココナツ加工製品には、我々の知っているココナツオイル以外に、チャコールがあります。チャーコールはココナツの殻を燃やしてつくられますが、半島マレーシアにこういう工場はわずか4つだけです。
伝統的製品にコプラというココナツの胚乳を乾燥させたものがあります。専門家は、マレーシアのココナツ加工製品業はいつまでもコプラにばかりたよってないで新しい製品マーケットを求めるべきだ、と指摘しています。
マレーシア特有のココナツ製品に Kerisik と呼ばれるものがあります。これは熱乾燥させたココナツを細かく砕き最後にグラインダーのような道具で粉末化させます。郊外の食品雑貨店では店先でグラインダーにかけて、売っています。これをカレーなどの地元料理に使用するのです。
ココナツ加工品で一般的なのはココナツミルク/クリームでしょう。世界のココナツ生産量の4分の1はココナツミルクに消費されるそうです。食品産業にも家庭でも消費されます。
伝統的ココナツ製品でない加工製品にココナツクリームパウダーや乾燥ココナツ(乾燥剤のことか?)があるそうです。また私も好きなココナツジェリー(パンに塗るジャム)があります。意外なところでは、マットレスやクッションの詰め物材料にも使われるそうです。こう知ると椰子の木の実、ココナツはいろんな用途があるものですね。