ドラマで覚えるマレーシアの雑学と常識 ・ 実施中の国勢調査の内容を分析してみる ・ マレーシアをTeh Tarik文化の国と呼ぼう
パブレストランで歌うムスリム女性歌手を宗教局取締官が逮捕した問題を考える 前編 ・ 後編
マレーシア人の生殖意識と避妊 ・ まだまだわかりにくいマルチメディアスーパー回廊プロジェクトの中間成果
旧日本軍に供出させられた金の返還を訴える華人団体 ・ 華語・広東語ラジオ放送で日本はよく話題になる
リークアンユー・シンガポール前首相の記者会見発言を紹介する
脚本・監督:Intraasia
テーマ曲を歌う歌手:シッテーイルハズサ(有名歌手Siti Nurhalizaの前座)
場所:クアラルンプール郊外の高級住宅地にある成り金の豪邸
成り金: 元喫茶店の超貧乏マスター、最近初めて買った番号あてくじLottoで特賞に当ったのでにわかに金持ちになった
夫人: 現在空席、希望者は写真同封のうえ手紙で申し込むこと
第2夫人: これも空席、しかしムスリムでないので募集できない
メイドのまゆみ: 元有名会社の金持ちOL、インターネット株で大損し自宅のマンションまで売り払ったところを成金に救われた
メイドのひでこ: 元家庭の若主婦、香港歌手に夢中になり過ぎて夫に追い出されたところを成金に救われた
お抱えコックToshi: 元料理好きのグルメサラリーマン、料理好きがこうじてコックに転身
お抱え運転手Z: 元車レース好きのサラリーマン、車好きがこうじてベンツ運転手に転身
マレーシア旅行前に質問したいことがあるって?そんな時は「マレーシア旅の掲示板」をご利用くださいね。
成り金:ひでこさん、ムスリムの今日の最後のお祈り時間は何時かな、マレービジネスマンに電話するからちょっと調べてくれないかな。
メイドひでこ:はいTuan、わかりました。でどうやって調べればいいのですか?
成り金:いつもながら鈍いメイドだな、1日のお祈りの時間ぐらいマレーシア語新聞に載ってるだろ、それぐらい覚えておきなさい。
メイドひでこ:すみません、Tuan。
コックtoshi:Tuan, 明朝の朝食はいかがいたしましょうか?
成り金:そうだな、金の器に金のスプーンで粥がいいな。
コックtoshi:粥の中には何をお入れしましょうか?
成り金:コックさんのいいようにしなさい、ありきたりの魚はだめだぞ。そうだ、鮭がいいな。
コックtoshi:鮭ですか、探すのが難しいですが、努力してみます。
コックtoshi:Tuan, デザートの果物は何にいたしましょうか?
成り金:マンゴスチンとライチがいいな。
コックtoshi:わかりました。マンゴスチンもライチもタイ産ですが、よろしいでしょうか?
成り金:うん、結構じゃ。おいしければどこ産でもいいのだ。
メイドまゆみ:コックさん、私たちの明日の朝食は何ですか?
コックtoshi:ロティとテータリッだよ。果物はバナナ1本。
メイドまゆみ:えー、またですか。これで1週間毎日ロティとテータリッの朝食ばかりです。同じロティでもロティチャナイばかりでロティトゥルールさえもないんだから。バナナ1本だけー!
コック:仕方ないんだよ。予算がないからね。
メイドまゆみ:全くTuanはけちだね。だからSuper TOTOに当って急にお金持ちになったにわか成り金は嫌いです。
メイドひでこ:Tuanの悪口言ってはだめでしょ。まゆみさんもTuanにはお世話になっているんでしょ。
メイドまゆみ:うーん、そうね。Tuanはあまりにも長い間貧乏だったから、そのくせが今だに抜けてないかもね。
成り金:今日は疲れたなあ、ASTROで華麗台を見ながら寝よう。
といって2階の寝室に去っていく。
皆:Tuan, Selamat Tidur (おやすみなさいの意)
メイドひでこ:Tuanの部屋はいいですね、ASTROが見られて。リビングルームのテレビは普通のテレビだから香港・台湾の番組、受信できないのですよ。
メイドまゆみ:ひでこさんは香港フリークだからね。でも私は好きなBollywood映画をASTROのインドチャンネルで見たいな。あの踊りとリズムだーい好き、しびれてしまいます。
運転手Z:そうだそうだ、ASTRO見たいぞ。好きなF1レースをASTRO SUPERSPORTで見られないのがつらいな。ゴルフ番組も見たいぞ。
皆はぶつぶつ文句いいながら、リビングルームでテレビ眺めたり、おしゃべりしている。
コックtoshi:腹が減ったので、夜市(イエーシー)へ夜食を食べに行こう、メイドさんたちいっしょに行きますか?
メイドひでこ:行きまーす。お腹が空いた。
メイドまゆみ:私は行きません、ひでこさん、寝る前に食べると”マレーおばさん”みたいになってしまいますよ。
メイドひでこ:少しぐらい太ったっていいんです、私スリミングクラブのMarie Franceに入会してるし、痩身剤を毎晩飲んでますから。
コックtoshi:わーえらい、ひでこさんって努力家なんですね、無駄な努力家。
運転手Z:Tuanはもう寝てしまったから、ベンツで夜市に行きましょう。
メイドまゆみ:えー、ベンツで夜市に行くの、だったら私も行きたいです。
ということで4人は成金の車を勝手に持ち出して夜市に出かけたのです。
ホームページ閲覧中の憩いのひとときを、喫茶”モノローグ”でお過ごしください。おいしいテータリと美人従業員がお待ちしています。
電話がかかってきたので、メイドのひでこが受話器を取る。
電話かけ主:Towkey adakah (トーケイいるかな)?
メイドひでこ:トーケイ? 知らなーい。Tuan、トーケイって誰のことですか?
成り金:こらこら、全く物を知らない娘だな。トーケイとは私のことだ。
と言って、その電話の相手をする。
成り金:運転手さん、1時間後に出かけるぞ。車を洗っておきなさい。
運転手Z:はい、Tuan。 (小声で)あー、大変だ、昨晩車の中でまゆみさんがターパオのサトウキビ水をこぼしたからな。まゆみさん、車掃除手伝いなさい。
メイドまゆみ:えー、でも私今忙しいのです。Tuanの言いつけで、洗濯と靴磨きとトイレの掃除をしろと言われてます、それが終わったら植木に水をやって庭の草を刈れって言われてます。
成り金:おーい、ひでこさん、今日の新聞を買ってきてくれ。星洲と Starと Berita Harianの3部だ。つり銭は取っておいていいぞ
メイドひでこ:はい、Tuan。えーRM4だけですか。ちぇっ、チップは30セントだけか。
成り金:運転手さん、車の準備はできたかな?
運転手Z:はい、Tuan。
ナンバープレートWHQ 2020を付けた新車ベンツの後ろドアを開けて、成金が乗りこむ。
成り金;運転手さん、あまり飛ばさないでくれるかな。曲がる時にはウインカーぐらい出しなさい。
運転手Z:えー、わかりました(でも不満げです)
成り金が出かけてしまうとメイド2人は急に怠けだす。メイドまゆみは、成り金のパソコンのスイッチをいれてインターネットでチャットを楽しんでいる。Intraasiaのチャットコーナー"モノローグ”など見向きもせずに、他サイトの有名チャットで遊んでいる。インターネットカフェなら1時間RM4ほど料金がかかるのだが、成り金の家ならただなのである。会社で仕事中にインターネットしていたくせがぬけない。
メイドひでこは大好きなHello Kittyの人形を探しに近くのショッピングセンターへ遊びに出かける。
コックtoshi:やれやれ、私一人仕事か。
と黙々と夕食のバナナリーフカレーの仕込みをしている。しばらくして疲れたので、食料扉からTongkat Ali Kopiの袋を取り出してカップにいれ、そのコーヒーを飲みながらマイルドセブンで一服する。
その時急に空が暗くなり雷雨が襲ってきた。ショッピングセンターから戻ろうとしたメイドひでこは足止めをくってしまう。
メイドまゆみ:おかしいなあ、ひでこさん、3時間たってもまだ戻ってこない。いい男にでも出会って追っかけているのかな。
その時電話が鳴った、メイドひでこが携帯電話で電話連絡してきたのである。
メイドひでこ:あっ、まゆみさん、今ものすごい雷雨で帰れません。タクシーもつかまらないのです。
メイドまゆみ:そうなの、こちらは晴れてるわよ。ひでこさん、てっきり男の人と一緒だと思ってたわ。相手がマレー人だとカルワットになるから気をつけてね。
メイドひでこ:失礼な、Kittyちゃんといっしょです。
さて夕方になって成金が運転手なしで自分で運転して戻ってきました。
メイドひでこ:あれ、Tuanお帰りなさい。運転手さんはどうしたんですか?
成り金:停車していたら後ろから車にぶつけられたのだよ。身体はどうって事はないけど、保険の請求の件もあるから警察署へPolice Reportを相手と一緒に出しに行かせたのだよ。
成り金:あれ、庭の草が刈ってないな、まゆみさん、どうしてだ?午後草を刈っておきなさいと言った筈だが。
メイドまゆみ:ええ、刈ろうとしたんですが、芝刈り機が故障して動かなくて、コックさんに治してもらおうとしているうちに夕方になってしまったのです。
成り金:ふーん、そうか。まあいいや。明日は必ず刈っておきなさい
メイドまゆみ:はい、Tuan。明日は必ず刈っておきます。
と返事だけは一人前にいい。
さてそのうち運転手Zとメイドひでこが戻ってきました。全員が揃いそこで夕食の開始です。メニューはコックさんが腕によりをかけて作ったバナナリーフカレーです。
コックtoshi:Tuan、Kuah(カレーの意)には辛口タイプのAyamとより辛口タイプのIkanがありますが、どちらにされますか?
成り金:うーん、そうだな、Ayam辛口にしよう。
メイドひでこ:私は甘口がいいです。
コックtoshi:何を言ってますか、バナナリーフカレーに甘口などないのだ。
メイドまゆみ:私はIkanが好きなのでより辛口にします。でもその前にビールを飲まないと食べる気になりません、コックさん、ビールはないんですか?
運転手Z:そうだ、そうだビールがないと1日が終わった気がしないぞ。俺はTigerがいいな。
メイドまゆみ:私はKarlsbergがいいです。
メイドひでこ:私はAnchorにしまーす。
成り金:わかった、わかった。各自缶ビール1本だけだぞ。コックさん、だしてあげなさい。
皆:Tuan、どうもありがとうございます。(内心は1本だけで足りるわけないと不満げ)
メイドひでこ:コックさん、スプーンとフォークで食べないんですか?
コックtoshi:通は指で食べるんだ、その方が味わいがあるのです。ひでこさんも指で食べるといいよ。
コック以外はスプーンとフォークで食べています。食べ終わった成金はバナなリーフの葉を自分の手前に向けて折りたたみます。しかしメイドの2人は手前でなく向こう側に向けてたたみました、運転手は葉をたたまずそのままにしておきました。
コックtoshi:ぷんぷん、向こう側に葉を折りたたむなんて私の料理がまずいということだぞ。それに葉をたたまないのは礼儀知らずだ。さすがTuanだけは私の味がおわかりになる。
デザートは成り金のお気に入りの紅豆沙です、つまりあずきの中国風お汁子です。甘党のメイドひでこだけ喜んでいますが、その他の3人は呑んべいなので手を付けません。
やがて食事が終わり、後片付けはもちろんメイド2人の役目です。運転手は自分のバイクで家族の待つ家へ帰っていきました。コックは家族を自宅において住み込みなので、毎日帰宅する必要はありません。
コック:メイドのお2人さん、食器類をちゃんと洗っておきなさいさいよ。手抜きしたらだめです。
メイドの2人:コックさん、ずるーい。どこへ出かけるのですか?
コックtoshi:どこでもいいでしょ、私の勝手でしょ。
メイドまゆみ:あー、わっかた。女の子のいる所だな。
メイドに洗い物をまかすと、カラオケ好きのコックは近くのカラオケバーへと出かけていきました。
メイド2人は食器洗いが終わると今度はアイロンがけ、その後ようやく自由時間です。
成り金は酒を飲まないので、麗的FMを聞きながら、パソコンに向かって本日の「新聞の記事から」を書いています。
こうして成り金一家の1日が過ぎていったのです。
テーマ曲"Keranamu, Narikin"が流れ(新聞の記事7月1日分に説明あり)、ドラマ終わり。
来週も 「今週のマレーシア」をお楽しみにね。あっ、もうすぐ200回だよ、皆さんのひとこと「ゲストブック」で待ってるね。
プロドゥーサーからのお断りと謝辞:当サイトのチャットコーナー”モノローグ”の常連登場者の方々に無料ご出演いただきありがとうございました。喜んで事後承諾していただけるものと、固く信じております。
今月の5日から20日までは全国一斉に国勢調査が実施されています。正確には人口と住居調査2000年という呼び名ですが、いわゆる国勢調査のことです。
長短期滞在の外国人居住者を含めてマレーシアに住む者全員が対象になっていますから、日本人在住者もこの調査を受けた又は受けることになります。国勢調査はどこの国でも同じでしょうが、国が住民の貴重なデータを得る、確認することにあり、それが今後の発展計画の基礎データとしても使われます。ですからたいへん重要で且つ貴重な機会だということは誰でもわかりますよね。
尚マレーシアでは住民がある町、村などに引っ越してきた又は引っ越して行ったということを、その地方自治体の役所に届ける必要はありません。マレーシア人はすべ身分証明書を保持していますが、その登録住所は現住所と違っていても一向に構いません。また不動産税のような税金がありますので、地方自治体はそこの住民の土地とか家屋の所有状況はつかんでいますが、アパートの住人、借家人、寮の住人などはつかんでいないはずです。ですから小さな村のような人口流動が少ない所は別にして、ある地方自治体の住民の数は正確にはつかめないと筆者は推測しています。
マレーシア官民だけでなく、マレーシアを考える伝える者として筆者もこの国勢調査は大切な機会だとの認識です。データ集計が出るのは相当先のことでしょうが、それでも早く知りたいなと思っています。
マレーシアの国勢調査の方法は調査員による面談式で、日本のように調査対象の国民が自己記入する方式ではありません。筆者のアパートにも早速調査員が回ってきましたので、戸口で答えました。終わって調査員が済みのステッカーをドアに貼っていきました。筆者にとって当地で国勢調査を受けるのは2回目です。
筆者のところに来た調査員は思った通りアルバイトで、とてもプロフェッショナルとはいえない調査態度でした。全国一斉の調査だから、所轄兼実施官庁の統計庁の職員が全てを行えないから、どれくらいか知りませんが、多くのアルバイトを雇わざるを得ないのはよくわかりますが、それにしても雑な質問態度でしたね。調査用紙はすべてマレーシア語で書かれていますがそれほど難しい質問でもなさそうだし、正確に内容を知りたかったので、本当は自分で調査用紙に書きこみたかったのです。でもそうさせてくれなかったので、調査員のマレーシア語の質問にぞれぞれ答えたのです。
マレーシアの国勢調査の方式が面談方式だというのは、多言語が日常的に使われ且つマレーシア語によく通じていない国民も案外いること(簡単な日常会話ができても書記マレーシア語がわからない人は結構いるのです)、識字率が東南アジア国としては高いがそれでも日本よりは落ちることなどが考えられます。ですから面談式の利点はそういう人にも面談して調査できる利点はありますが、これはまさに調査員の質・態度次第ですね。適当に質問していい加減に書きこめばなんら意味はありませんからね。事実筆者が相手した調査員は書きこみ間違いしていたので、それを正してやらねばならなかったぐらいです(やれやれ)。しかも後からもらった調査用紙をじっくり確認したら、彼はいくつかの質問をはしょっていました。
尚筆者の友人が電話してきたところによると、彼の住むコンドミニアムでは英語に翻訳した質問表を各家庭に置いていって後から回収する方式だそうです。これは日本人など外国人の多く住むコンドミニアムでの特別な方法でしょう。聞いた限りでは、質問も大分簡易化されており且つ選択肢のコード表もないので、記入した物を調査員が正式調査用紙に転記するのだと、筆者は推測します。例外はもちろんあるでしょうが、普通の住宅地や筆者の住むような一般アパート、郡部ではあくまで調査員面談方式のはずです。
さてこの調査にはいかにもマレーシアらしい項目もあり、又興味深い部分もありますので、読者の皆さんに知っていただきたいと思い、このコラムで調査用紙の各項目について紹介方々コメントしていきましょう。尚これは、調査員に ”さらの調査用紙” を1枚くれと言ってもらったものを基にしています。実際各項目を丁寧にみていくと、よく知らない単語があり辞書を引き引き意味を確認しました。
項目第1は1世帯に何人住んでいるかです。
日本の国勢調査と一番の違いは調査される人の氏名を身分証明証通りに記入することです(項目第2)。氏名を書かせてこれで本当に個人の秘密が守られるのかなと多少懐疑しますが、まあ漏れて困ることはないので正直に答えました。しかしこれは被調査者への心理的圧力になることは間違いないですね。さらに項目第5では生年月日を書きますしね。
被調査者がその家の戸主又は家長に対する続柄を答える項目第3では、本人、子、孫、嫁、しゅうと、息子又は娘の配偶者、兄弟姉妹などの選択に加えて、その一家の夫婦に全く関係ないという選択肢もあります。日本の調査ではこの選択肢あるのかな。
生年月日を書く項目第5では生年月日がわからない人用に、年齢を尋ねる項目第6が設けてあります。そこの注意書きに、「1才未満は00と記入し、99才を超える場合は99と書きなさい」 とあるのが面白いです。100才以上はマレーシアではまだ極少ないから2桁の枠しか用意してないのでしょう。
結婚状態を尋ねる質問で(項目第7)、被対象者の年齢を10才以上にしています。マレーシアの法定最低結婚年齢は確か15才?のはずなのに、なぜ10才以上かは知りません。4つの選択肢:未婚、既婚、未亡人又はやもめ、離婚又はずっと別居 があります。日本の調査では離婚なんて選択あるのかな、筆者はよく覚えてないのでどうなんでしょう?
項目第8で民族の種類と母語である言語グループを尋ねているのはいかにもマレーシアらしいです。これは調査員のもつコード表から当てはまる番号を書きこむ式なので、残念ながらいくつに分けているかわかりません。筆者には興味ある点なのに。
項目第9は宗教を尋ねる質問、選択肢がイスラム教、キリスト教、ヒンズー教、仏教、道教又は中国宗教、部族伝統宗教、その他、無宗教と別れています。妥当な分け方でしょう。無宗教の筆者はその項目がありほっとしました。尚華人は一般に、道教と仏教と中国伝統宗教の混交宗教徒が割合多いですよ。仏像を拝んだ後神社に詣でるなんてのは日本人だけだという誤った思い込みがありますが、華人もこの点では混交宗教徒が結構いるのです。もっともキリスト教徒でないのに教会で結婚式をあげるなんてことはしませんよ。
出生地をマレーシア国内と国外に分類して尋ね(項目第10)、国内の場合は州名を、国外の場合はその国名を書かせ、さらにその場合はいつマレーシアにやって来たかと尋ねています(項目第11)。移民者の国らしい点ですね。
国籍又は居住している資格を尋ねるのはいかにもマレーシアらしい所です(項目第12)。マレーシア国籍であれば項目第14へ、マレーシア国籍でなければ選択肢は6つ:永住者、エックスパトリエイト(多くの在住日本人の資格)、外国人訪問者、留学生、外国人労働者、その他、 です。
項目第14はマレーシア人だけが答える項目で、95年の時点でどこに住んでいたかを、通りの名前まで細かく書かせます。
学校、専門学校、大学など諸学校で学んだ又は学んでいるかを尋ねるのが項目第15で、ついで最終学歴を尋ねます(項目第16)。小学校前、小学校程度、中学校程度、高校終了程度を2つに分け、専門学校終了程度、大学前予備教育程度、大学卒以上の都合8段階にわけて被調査者の最終学歴又は現在在籍している学歴を調べています。
すでに学校教育を終えた・卒業した人には項目第17で、その最高取得学歴を尋ねます。尚ある段階を終えても終了・資格試験に不合格になればその人はその段階の終了資格はないということになります。この項目には、全然なしを除いて10にものぼる細かい選択肢がありますが、こんなに細かく分けてどうするのという感じです。なぜなら、高校卒程度以上と博士学位取得の間を5つにも細分しているが、高等教育を受けた期間が1,2年程度違うだけで違う資格段階に分類するいかにもマレーシアらしい面です。まあどう分けようといいですが、あまり意味のない分類法でもありますね。
とにかくマレーシアは学歴の肩書きを好む国民です。名刺に海外を含めて何々大学・カレッジ卒で専攻・取得資格何何を書きこみ、さらに学位保持者はDr.と自称他称するのがしきたり、こういったあほらしい英国流をいまだに温存しているのですから、仕方ありませんな。余談ですが、このくだらない仕組みを利用して修士・学位取得方法などを売り混み紹介しているグループとか人がいるようですね。
続いてこれらの就学終了証書、学士、修士、学位などを取得した先の選択です(項目18)。公立、民間、外国の3選択肢があります。項目は第19はその専門分野を書かせます。
こうしてみるとずいぶんと細かい学歴調査ですね。もっと大事な調査事項があるだろうにと思います。
項目第20では、どんな言語でもいいが読み書きできるかと識字能力を問うています。
この後は、職に関する調査です。
過去7日間の間に少なくとも1時間は働きましたかと、仕事状態を問うのが項目第21です。働かなかったと答えた人は、次ぎの質問、どんなでもいいが仕事を持っているか、それとも仕事を持っていないかという質問(項目第22)に進み、仕事がないと答えた人はさらに、過去7日間に仕事を探したのかという質問に進みます(項目第23)。
仕事を探さなかった主理由を問う項目第24では、病気だった、主婦だ、出産で、若すぎる、老いている又は年金生活、身障者、興味なしなどの選択肢があるのは当然ですね。このあたりはよく理解できる質問が続きます。
項目第21で仕事をした人と項目第22で仕事を持ったいると答えた人は、項目第25でそれがどんな仕事なのかを説明します。そしてその仕事は公務員としてか民間で働いているか、又は個人事業主なのかという勤め先の分類があります。項目第26では、被調査者の職場はどの産業に属するかを尋ね、さらに会社名又は雇用者名とその住所まで書かせるのです。このあたりは国勢調査なのになぜ?という疑問が湧いてきます。統計調査にどうして固有名詞が必要かという基本的疑問が、マレーシアでは議論されずにこれまでもきたことでしょう。
項目第27で被調査者の職業上の地位を聞きます。:個人事業主、被雇用者、雇用者、給料ナシの家族労働という4選択肢。
次ぎの2項目、第28と第29、はサバ州、サラワク州、ラブアン島に住む結婚している、したことのある女性に対してのみの質問で、その内容が非常に興味深い。
出産経験を尋ね、あれば生きて生まれた子供の数は何人?そして現在も生存しているのは何人いるか、という質問です。なぜこの質問が上記の州と地域の住民だけに向けられているのかは、筆者にはわかりません。
最後の質問、項目第30は被調査者が身体障害者であれば、調査員手持ちの表から該当のコード番号を書け、となっています。
以上がマレーシアの2000年国勢調査の各項目解説です、いかがですか?日本人にとっては意外な質問もあれば、当然といった質問もありますね。それぞれの質問事項に国事情が現れていてその背景を考えるのも興味深いですよ。はやく結果が知りたいものです。
当サイトにはTeh Tarikを飲みながらチャットしましょうというコーナーがあります(もっとも独り言ばかりでチャットがなかなか成立しませんけど)。マレーシアの国民的飲物、そういうのがあればですが、をあげるならやっぱりTeh Tarik(テー タリッと発音)になります。ですからそう名づけたのです。Teh Tarikを飲みながらロティチャナイ を食べるのが、ご飯に味噌汁が簡単なでもいかにも日本的な朝食であるように、外で食べる代表的なマレーシアの朝食です。物価が上がりましたからセットで最低 RM1.5はするでしょう。
Teh Tarikは紅茶に練乳を混ぜたミルクテーの意ですが、その作り方がユニークで、紅茶と練乳を入れたマグとグラスの間で何回も互いに垂れ流し込むのです。両手一杯に距離を開いて一方から一方へ流し込むスタイルが引く感じなので、”Tarik 引く”と呼びます。よくガイドブックの写真にもでてるからスタイルだけはご存知の方もおおいでしょう。当サイトの「飲食物の話題」の該当ページに写真を載せていますので、ご覧ください。
インド系かマレー系のコーヒーハウスつまり大衆食堂や屋台なら、ほとんどそのメニューに入っています。1杯80セントからRM1.0 です。氷を入れたTeh Tarik Ais はRM1.0から RM1.2になります。田舎はここに示した都会価格より幾分安いのは、どの国でも同じですね。練乳は要らない人は、Teh-O(テ オーと発音します)を注文しましょう。砂糖だけ紅茶にあらかじめ入って出てきます。砂糖をテーブルのさとう壷から各自好みの分量だけ入れる、そいうのはホテルか高級カフェでも行かないとおめにかかれません。
覚えていらっしゃる方もあるでしょう、98年初めのコラムで砂糖不足騒ぎを批評しましたね。たかが砂糖でそんなに騒ぐなんて、という気分をにおわせたのです。そこでマレーシア人の砂糖摂取量が多いということも書きました。マレーシア人の甘さ過剰のいい例がTeh-OやKopi-O の甘さです。作るところを見ているとグラスの下から1Cmぐらいも砂糖を入れるのですから甘いはずですよね。これじゃ砂糖過剰摂取症候群になっても不思議ではありません。
筆者のように甘さ控えめの人は、店の人に注文する時こう言えばいいのです。「Kurang Manis 甘くしないでよ。」
それでも甘すぎると感じる人は次ぎのように言って下さい。これはご存知でない方がほとんどでしょう。「Teh-O Kosong 紅茶だけと言う意味」
紅茶だけでなく、コーヒーにも同じ区別があり、それぞれKopi Tarik, Kopi-O、Kopi Tarik Ais と呼びます。普通これらはグラスに受け皿をつけて供されます。ただ最近は皿をはしょってるところが多いですね。なぜ受け皿がいるかというと、店員が持ってくる時にグラスが熱いし、グラス1杯につがれたTeh なりKopiがこぼれてもいいようにです、これは想像できます。
もう一つの理由はこの受け皿にTehかKopi を注ぎ込んで、受け皿に口につけて飲むのです。グラスのお尻がのっていた皿にですよ。いかにも見た目には”きたない”という印象を撒き散らしますが、飲んでる人はもちろんそんなこと感じないでしょう。こういう飲み方をするのは小さな子供を別にすれば、大体が年配の人か田舎っぽい人です。筆者は数え切れないほどたくさん目にしてきましたが、都会のサラリーマンとか若い女性がこういう飲み方をするのを見た記憶はありません。
これ彼らが猫舌だから、熱いKopi なりTehをさましながら飲んでいるようです。でも猫舌というならマレー人はほとんどそうではないかな。大体マレー料理自体熱々の料理をその場で食べる事少ないのではないでしょうか。Mee Gorengの熱さなどたいしたことありませんし、せいぜいスープ類ぐらいですか、熱々のものといえば。
マレーシアは熱帯の国ですから料理の熱さが味をより一層おいしくする要素としては期待されていないことは間違いありません。中国料理といえど大衆レストランでは、ご飯もおかずもほとんどあったかさを失っていますから。
受け皿飲みに戻ります。これは一見きたない!ですが、よく考えれば皿についで飲もうがグラスからそのまま飲もうがたいして変わりません。なぜなら、こういう受け皿付きKopi なりTeh を供する屋台や屋台に毛の生えた程度の大衆レストランでの、食品取り扱い衛生観念欠如と食器洗いの不完全さを知れば、皿についで飲もうがグラスのまま飲もうが、衛生度から見れば似たり寄ったりの事に気がつきます。屋台など1杯のタライの水でグラスを何個洗うか数えてみてご覧ください。
でもこんなことにびびっていては東南アジアで生活を楽しんでいけません。郷に行っては郷に従えです。ですから気にせずTeh Tarikを味わいましょう。ただ受け皿で飲むのは、ちょっと”田舎者”スタイルですから、都会人であるIntraasiaは遠慮しておきます。
大衆レストランや屋台は汚いから近づかないようにという注意話を、旅行者間や一部の在住者間でささやかれているそうですが、あまりきれいでないでしょと問われれば、筆者もそれは否定しません。気持ちは分かります、でもこれが大衆の、一般人の飲食スタイルですからね。
生水の心配な旅行者も多いようですし、ガイドブックにも飲むなと書かれてますね。筆者も生水を飲みなさいとはいいませんし、家では水道水を沸かして飲んでます。でも生水は自然に口に入ってくるのです。コーラやKopi Aisを店で頼めばグラスの氷に、お茶を飲めばその実態はほとんど生水とかわりありません。大衆レストランで昼飯にお茶一杯飲むそのお茶はお湯から出していますが、決して沸騰などさせてませんよ、それによくお湯に生水加えてさましてますから、所詮生水を飲んでいるのです。
こいうことをあまり気にすると、歯を磨く時にもミネラルボトルを使わなければならないはめになりますよ。「あきらめなさい」 これがIntraasiaからのアドバイスです。
付け加えておきますと、水にあたる、あわないということはありますね。マレーシアやタイでは筆者はほとんどあたりませんが、どういう訳かベトナムでは時としておなかを軽くこわしやすいのです。筆者は東南アジアならどこの国へいっても飲食スタイルは同じですから、やっぱりベトナムの水は筆者にはちょっとばかりあたるのかなと思ったことがあります。もっともベトナムの衛生度はマレーシアのずっと下ですからな。
さて話しはTeh Tarik に戻ります。マレーシアでTeh Tarikが国民的飲物になったのは、おそらくマレーシア産の紅茶Boh Tehブランドが市場を席巻したときからではないでしょうか。英国植民地時代に源を発する Boh Tehはマレーシアの誇るキャメロンハイランドなどの高地で取れる紅茶葉です。国内市場のたしか3分の2を占めているそうです。もちろん輸入紅茶もありますが、大衆食堂でそんなのをつかってないでしょうから、Teh Tarikは純国産です。
コーヒーは国産もありますが輸入が多いのでは。残念ながら手元に統計がないのではっきり知りません。
マレーシアは意外にも輸出する農産物より輸入する農産物の方が多いのです。米それに野菜も完全自給できませんから、相当程度タイなどから輸入してますし、果物でも外国産がスーパーの台を占めています。広大な耕地面積を占めるマレーシアのプランテーション農園が単一作物つまりゴム、パームオイル、椰子に限られており、換金作物の栽培をあまり積極的にしてないからです。パームオイルは世界一の生産国ですし、ゴムは現在世界2位か3位だったかな。
国の食料自給率を高め、農産物輸入額低減を目標に、プランテーション農園を野菜などの換金作物に転換する案が出ていますが、専門家ならずともその実現は難しいことに気がつきます。現在でさえ労働力不足で農園労働に外国からの移入労働者を使っているのに、さらに人手のかかる野菜栽培など労働力の面から見ても不可能でしょう。
そういうわけで農産物の比較的輸入の多い中で、紅茶葉は高級種を除けばほぼ自給できるそうです。
マレーシアなら半島部であれボルネオ島へ行こうと、人がたくさん住んでいるか、商業活動のあるところなら必ず通称コーヒーショップ又はハウスが店を構えています。つまり大衆食堂のことです。それに屋台や屋台街もありますから、ちょっとひとときにTeh やKopiを飲むのはたやすい事です。
これはマレーシア人の生活に溶け込んでいますから、値上ったとはいえまだ値段も庶民的です。暑い天気のなか冷房のないオープンタイプのコーヒーショップの天井からブルンと音のする扇風機の生暖かい風を受けながら、午後のひととき熱いTehを飲みながら、歓談しながら、タバコふかしながら人々は憩うのです。これぞマレーシア的憩いですぞ。
筆者はずっと以前パートナーと商売で毎日のように首都圏を走りまわっていた頃、住宅地で車を停め、コーヒーショップで午後のひとときを過ごすのが日課でした。発展したクアラルンプールのビル街にもその脇に屋台が店を開いて人々がKopiを飲んでいます。
中国系のお店、クアラルンプール華人はチャーサット(茶室)とかチャンテーンと呼びます、なら呼び方がテー とかカーフェーになりまして、Tarikはメニューにありません。グラスでなく、カップにつがれた紅茶か布だしコーヒーが供されます。 もちろん清涼飲料水、ビールも人気ある飲物です。中国語の呼び方とマレーシア語がよくちゃんぽんで使用されます。例えばKopi Ping はアイスコーヒーのことで、マレーシア語のKopi に中国語読みのPingをつけています。
半島部とサバサラワク州では多少Teh類の呼び方に幾分ひらきがあることに筆者は気がつきました、サバ州のコーヒーショップで”Teh” を注文するとTeh SusuかTeh-Oのどちらなのか、よく尋ねられたのです。Teh Susuとはミルクティーのことで、半島部ではTehといえばミルクティーを意味します。サバ州ではあえて区別して言うようです。でもこれは呼び名が違うというより、単なるバラエティーですから、基本的にはマレーシアなら同じです。
お隣のタイではコーヒーや紅茶を大衆食堂つまりコーヒーショップや屋台でマレーシアほど飲みませんし、コーヒー紅茶を一日中サービスしている店を探すのに苦労します。屋台、食堂はどこにでもありますが、清涼飲料水だけの店が圧倒的なのです。インドネシアのスマトラではコーヒー茶店が結構あります。
コーヒーがマレーシア並みに気軽に飲めるのはベトナムのホーチミンシティー(サイゴン)です、フランス植民地のなごりのカフェー、実質は似て非なるものです、がいたる所にありますから。でもTeh はその中心メニューではありません。もちろんTeh Tarikなんてありませんよ。
同じTeh Tarikをメニューに入れたシンガポールに触れないわけには行きませんが、規則ずくめのガーデン都市シンガポールで飲むTeh Tarikとマレーシアのそれは微妙な背景の違いを感じます。たとえて言えば、同じ映画を映画館で見るのと海賊版VCDを買ってテレビで見るみたいなものです。
どこでも気軽に休憩がてらTeh Tarikの飲めるマレーシアを、Teh Tarik文化の国と呼んでもいいのではないでしょうか。
スランゴール州(の州機関である)イスラム教局(JAISと略称する)がクアラルンプール隣接の市Petaling JayaのDamansaraにある有名レストランを深夜取り締まりに訪れて、そこで働いている又は客のムスリム25人を拘束したニュースは、「6月25日付けの新聞の記事から」でお伝えしましたね。この事件はちょっとした波紋を呼びましたし、筆者自身興味を持っています。なぜならマレーシアにおけるイスラム教のあり方に大きく関わるものだからです。
もちろん、これによってマレーシアのイスラム教の流れが変わるとか影響を受けるとかといったものではまったくありません、保守的なイスラム教界がこの程度のことで変わることは考えられませんし、政府がはっきりとした結論を下すことはないでしょうからね。それでもイスラム教の取り締まり規則を当局がどう適用し、ムスリムがそれをどう捕らえているかがよくわかる例であり、且つ保守的な流れに批判的なムスリムはどういうことを言っているかを日本人読者にも知っていただきたいからです。
ムスリムの立場から書いてるわけではなく、絶対無神論者の筆者の描写ですから当然限界はありますが、こういった出来事の伝えられ方は単に逮捕されたという現象を述べるだけでその背景が伝えられないので、出来事の流れを追いながら背景も伝えていきましょう。
スランゴール州のイスラム局JAISの係官が2週間ほど前にDamansaraにある有名レストランを深夜取り締まりに訪れて、25名のムスリムを検挙しました。そのうち生演奏パブの女性歌手がおり、彼女は州シャリア法によって起訴される予定です。この件にたいして、アブドラー副首相が、アルコールが供される場所で働くムスリムを宗教局が拘束するのは正しくないと思う、と述べました。多くのレストラン、ホテルはムスリムが飲食できない飲食物を供している、「しかしムスリムが単にそこにいただけの理由で拘束してはいけない。」 「そのムスリムはそこで働いているかもしれない。もちろんそのムスリムはハラルでない食物とアルコールを飲食してはいけない。しかしそのムスリムがそこで働き生活費を稼いでいるなら、仕事ナシになったら彼の妻子は苦しむであろう。」
一方首相府の別の大臣は、ムスリムはアルコールに関わってはいけないと決められているから、取り締まりは解釈次第である、シャリア法廷が取締官と取り締まられた者の両方の意見を聞いて決めるのがよい、と述べています。
以上
その後ニュース続報から明らかになたことは、拘束された25人のムスリムはこのパブレストランの従業員と客から構成されていました、そしてイスラム教局がシャリア法廷(イスラム教徒だけを対象にした裁判を行う)に起訴を決めたのは、女性歌手を含む女性ばかり15人でした。音楽バンドを含めて男性は起訴されないことになったわけです。尚裁判は9月中旬に行なわれるそうです(この時点ではそうなっていた)。
さてこのレストランでのムスリム拘束問題の焦点は筆者の見るところ2つあります。一つは酒類とHalal料理でないものを供するレストラン、パブ、クラブなどでムスリムが従業員として又はミュージシャンとして働いてもいいのか、それとは別にムスリムは客として訪れてもいいのかという点。もう一つは取り締まりの結果、ムスリムの中で演奏していたミュージシャングループを含めた男性人は起訴から逃れ、女性歌手を含んだ女性のみシャリア法廷で起訴されることになった点です
この事件に対して副首相や大臣がまず意見を出しておりさらに、よく知られたムスリム女性NGOグループであるSisters in Islam やある有名芸能人がJAIS批判の声をあげています。これに対してPAS党、当サイトの読者ならもう説明するまでもありませんね、がJAIS擁護の声明を発表しています。さらに各州の首相もそれぞれ意見を表明していますが、舞台となったスランゴール州の州首相は様子見の声明しか出していません。
皆さんご存知のように、ムスリムは酒類を一切消費できませんね、また肉類では豚肉は一切消費していけないことは知られていますが、その他肉類ならムスリムは何でも食べていいのかというとそうでもなく、ちゃんとしたイスラム教で定める畜殺方法に基づいて殺した動物肉だけを消費してよいのです。ムスリムは、つまり華人の食肉市場へいってそこに並んでいる牛肉や鶏肉を買ってはいけないし、Non-Halalレストランで食事してもいけないのです。
だからクアラルンプールなど都会では華人経営の大衆レストランやコーヒーショップでムスリムの姿を見ることはほとんどないのです、もっともこれも例えばサバ州ではムスリムがそういう場所で飲んでるのを何回も見かけましたし、半島部でも郡部へ行けばよく見かける。またじゃあ、ムスリムであるインドネシア人従業員がどうして華人の店で働いているのだという疑問が筆者には湧いてきますが、それに触れるのは止めます。
またムスリムは小麦粉などで作られたパンやお菓子類であっても何で消費していいというわけではないのです。マレーシアで売られているパン類やお菓子類にはたいてい”Halal”の字が印刷してありますよ、そのマークがあればムスリムも購入してさしつかえないということです。
ずっと昔、筆者が日本でせんべいを買って来て知り合いの敬虔なムスリムにお土産としてあげたら、Halalでないからいただけませんとやんわりと断られてことがあります。このように規則を厳密に適用するムスリムもいるということです。
さてまずSisters in Islamの意見をみておきましょう。尚ここで引用している発言はいずれもThe Star新聞掲載の発言を基にしていますので、新聞記事自体が間違っていないことを前提にしています。(翻訳はもちろんIntraasiaです)
まず、レストランで拘束されたうち男のバンドグループは起訴されずに女性歌手だけ起訴されたのは州イスラム教局の意図的な選択起訴だ、と批判しています。Sisters in Islamの代表であるZainah女史は、時々ニュースに載る人です、「イスラム教で禁じられた飲食物が供される場所にムスリムがいたらイスラム教を侮辱するとの理由でムスリムは誰でも起訴されるということを、この州Jイスラム局JAISの行動は含蓄している」と述べ、「そうであるならば、酒類がサービスされる場所である飛行機に乗っている、ホテルに滞在している、レストランにいるムスリム、さらに豚肉やアルコールが販売されているスーパーマーケットにいるムスリムはイスラム教を侮辱していることになりますね。」
このイスラム教局の方針は、人々の善悪の判断力、運命、生活スタイルを規制する手段として法を執行している問題を反映しているのです、と彼女は述べています。「誰であろうとイスラム教を侮辱した者に対する罰則であるスランゴール州犯罪条例の第10節は、それ自身を権力の乱用にしています、なぜなら取締官に幅広い解釈を与えることで誰でも捕まえてよいという条項なのですから。」
彼女の発言です、「このシャリア法犯罪取締りの記録からいえるのは、社会の最も弱い者、疎外された者が起訴対象になっている。」 「州のイスラム法の現行のありかたは、増大する不寛容さと保守主義を反映している、それはコーランに示された司法と自由と平等の基本的原則を侵している。」 「私たちは、イスラムという名前において独りよがりの社会を作り上げることに熱中することで公衆のモラルを守る何千人もの守護者が警邏することによって、この国が最終的には自警団国家になってしまわないかと心配しています。」
Sisters in Islamは筆者の知る限り、ムスリム女性グループ、団体のなかでもっともリベラルな思想で行動をするグル−プですが、この発言は相当勇気の要る発言でしょう。これほどはっきりとしたムスリム女性からの先鋭的意見を知る機会はめったにないので感心しました。こういう発言は決して大きく扱われませんから、在住者の方はもちろん普通のマレーシア人でもあまり気づかないでしょう。
この意見を知ったあと、芸能人の次ぎの発言を読むと基本的認識のずれを感じます。有名な男性ボーカルグループKRUのリーダーNormanがこう発言しています。「スランゴール州イスラム局の行動はばかげている。イスラム教は寛大な宗教で、事実として我々は多民族社会に暮らしているということです。」 「JAISは地元の芸能界の6割はムスリムであることを知っておくべきです。全く簡単な事実として、彼らにアルコール飲料やNon−Halal食品の消費を無理強いさせないホテルで、クラブで、パブで彼らムスリム芸人は演じているのです。」 「娯楽施設でマレーシア人芸人をもっと増やすという政府の方針にこのJAISの行動は反している」とも彼は語っています。
有名芸能人として発言した点は立派ですが、ちょと論点が甘いですね。芸能人が生活するためにそういうところで演じてもいいというのは、イスラムの根本的教義からそれが認められるのか認められないのかとは直接関係ないのです。イスラム宗教学者Ulamakやイスラム専門家はこういう議論には組しないと筆者は想像します。なぜなら芸能人のその活動の利益のためにイスラムがその原則を変えることなどありえないから、そういう枝葉末節の論議には乗らないでしょうし、イスラム宗教界本流には影響を及ぼさないでしょう。
なぜならイスラム教はムスリムに対して、単なる生活の指針を示しているのでなく、ムスリムの生き方そのものを規定した唯一絶対の宗教だからです、ムスリムはムスリムになるのでなく、ムスリムに生まれムスリムとして死んでいくのです(少なくともマレーシアのムスリムはこのありかたです)。
この問題に批判を加えていくならば、あくまでもSisters in Islamの論理があるべき手段でしょう、なぜならそれは彼女立ちの理解するあるべきイスラム解釈を土台にして、この宗教庁JAISの行動を批判しているからです。誤解しないでいただきたいのは、筆者はSisters in Islamの解釈自体が正しいと言っているのでなく方法論的に正しいと言っているのですよ。筆者はイスラム教に詳しいわけでも自身がムスリムでもないので、解釈の内容にはタッチしません。
しかしマレー芸能人はどうしてこういう問題にもっと声を上げないのかいつも不思議に思います。珍しくこのKRUが意見を出していますが、他の有名な芸能人、例えばSheila MajidやSiti Nurhalizaは、芸能人組合はどうなんでしょう、発言したかしなかったかの確認は取れませんでしたが。彼ら彼女らはディナーショーなどやっているし、写真などでみる彼女たちの衣装姿は、とてもイスラム保守主義者が定義するムスリム女性の姿に合格しないはずですけどね。
筆者は彼女らにそういう姿をしろというのでなく、なぜ彼女らはイスラム保守主義者のそういう考えを批判しないかです。どうのようなありかたがふさわしい又はふさわしくないかと筆者は言いたいのではなく、それはムスリムが決めることで非ムスリムが口を出すことではない、自分たちの行動がそれでよければそれをなぜもっとイスラム権威者、宗教当局に主張しないのかという疑問です。
さてこのスランゴール州イスラム局JAISの取り締まり行動に支持もあります、それは言わずと知れたPAS党からです。イスラム原理主義政党PASの党首Fazil Noorはその取り締まり行動を賞賛して、JAISは正しいことをしたのだと言っています。「拘束されたムスリム全員が州のイスラム罰則法に違反したのだ。」 さらに彼はアブドラー副首相がJAISの行動を批判したことをとがめています。「副首相はそういう声明を出す前にまずUlamak(イスラム法学者)会議に諮るべきである。」と。さらに「イスラム教に関する限り、ムスリムはそれ以外に方法がない場合を除いて、Non−Halalの施設で働くことを禁じられているのです。」
なるほど、発言内容に賛成するしないは別にして正面からの論ですね。いかにもPAS党指導者らしいとらえ方です。
もう一人PAS党の指導者の一人でクランタン州の州首相でもあるNik AzizもJAISの行動を支持して、「私はJAISがスランゴール州でイスラム法を施行したことを祝福します。州機関として適切な行動です。」 さらに政権党UMNOに対して、「UMNOは生活のための基礎として彼ら独自の規則を打ち立てている。そこでは宗教が第二なのです。この両者(宗教と彼らの定めた規則)間に衝突が起こった時、宗教が脇においやられるのです。」 「これはまさに丈の短すぎるパンツを買うようなものです。UMNOはパンツの長さに合わせるために、自分の足を切ってしまうのです。その足とは基盤なのです。」 「しかしイスラム教においては、パンツに布を当てるのです。なぜなら身体つまり宗教が基盤なのです、食べ物とか衣服といった物は付属の事柄なのです。」
さすがPAS党第一の人気指導者らしい表現です。論理的には適っていると、筆者は感じます、もちろんその内容に賛成とか反対は非ムスリムである私の論ずることではありませんよ。こういう論理の前に、ミュージシャンは酒を飲まないから酒の売られる場所で働いてもいいのだ、観光振興のために必要なのだと言う論理はあまり大きな意味をなしませんね。酒自体がイスラム教とは全く相容れないというPAS党の解釈・とらえ方からいえばですよ。
次ぎは州イスラム局が拘束したムスリムを起訴をしないと発表した後のPAS党の立場を述べた記事です。
Nik Azizクランタン州首相は、「州内のレストランはムスリム用と非ムスリム用に分けるべきだ」 などと私は述べていない、と一部報道を批判しました。そして続けて、「クランタン州ではムスリムが酒を消費しない限り、酒類を販売する場所の客になるのは違法ではない。」 「非ムスリムが所有するレストランなどで、ムスリムがティーを飲むことを規制するような法的禁止事項はありません。しかしイスラム教の観点から、ムスリムが酒類が供される場所、状況にいつかないようにと、我々は奨励するのです。」
トーンは多少違うものの、酒類販売する場所には行くべきではないという、PAS党の立場は明らかですね。付け加えると、一般に華人経営の茶店でマレー人がティーを飲んでいるのを見かけるのは地方へ行くほど多くなります。
華人ベースの野党でPAS党と友好関係を結んでいるDAP党の書記長は、「スランゴール州イスラム局JAISの行動は理屈に合わない、これをしたことでJAISは危険な前例を作った。」と批判しています。さらにスランゴール州に対してJAISが二度とこういうことをしないような指令を出すよう要求しています。
その他多方面からこのJAISの行動に意見が出ています。
ヌグリスンビラン州の州首相は、宗教庁係官によってどのような行動がなされようとそれはそれはイスラム教のイメージを反映したものであろうと述べ、「取られた措置が議論を呼ぶものであれば、イスラムコミュニティーはさらに困惑するでしょう。」
首相府のある大臣は、「宗教庁係官は違法行為を行ったと見られるムスリムを拘束する前に逮捕前手続きを行うべきです。彼らは単に疑いだけで逮捕してはいけない。」 と述べています。こういう政府要人が、もちろんマレー政党UMNO要人ですが、どのような見方をしているか、Sisters in Islamの論理と比べていただければその違いがよくわかると思いますね。Sisters in Islamが問題にした女性だけが起訴された点を、ニュースに報道される限りは、誰も批判してませんね。
芸能人活動に関して一番関わりの深い団体 歌手・音楽家・作曲家の全国団体PAPITAがその会長の談話を発表しています。「我々はこれまでムスリムが酒を飲んだことで逮捕されたニュースは聞いたことがある、しかしミュージシャンが娯楽施設でとかムスリムがクラブにいて逮捕されたというのは聞いたことがない。」
ホテル協会はの幹部は、ホテル・リゾートの半数以上の芸能人はマレーシア人です。そしてその多数がマレー人です、として、「宗教局係官の行動は大きな影響を与えます、フロントから娯楽施設に働く者まで全てです。」 「我々は外国人客に酒を供しています。宗教局係官の行動は、政府が観光振興に多くの金をつぎ込んでいるので反生産的です。」
芸能人団体やホテル協会の声明はなんらイスラム教の根本的教義なり解釈に触れたものでなく、単に金儲けできないから、生活がかかっているから、という理由付けですね。まあいつもの彼らの言葉で何らインパクトを与える言葉でありません。こういう口上ばかり彼らは吐いているので、ムスリムの娯楽におけるあり方は何時までも固まらないのです。本質の論議をせずにすべて自分たちの利益擁護の批判ですね。
Sisters in Islamの意見がいかに優れて本質を突いているものかおわかりになりますよね、反対にPAS党の指導者の言葉がそれはそれで彼らの確固とした立場、宗政一致(政教一致)の立場を示していますね、つまりイスラム教で禁じている物はどんな理由であれ禁じるのだ、それがどういう結果を生もうと、という立場ですね。だからPAS党の支配するクランタン州とトレンガヌ州はクラブ、パブ、ディスコなどの営業にものすごく厳しく、酒類の販売も非ムスリムに限るとしています。
このコラムを書いているうちに事件が解決されていきました。
スランゴール州イスラム教庁JAISは6月12日にパブレストランで拘束したムスリム全員の起訴をしないと、(これまでの態度をがらりと変える)決定をしました。これは女性パブ歌手が拘束・起訴されることになった場所のパブレストランだけでなくその他のパブレストランで拘束された者全員に対する起訴を取り下げたのです。
州首相は、スランゴール州イスラム教庁係官は法律を取り違えていたと説明しています。「95年に施行されたスランゴール州シャリア犯罪条例10条は、まだ2通り以上の解釈を許すと考えられる。」 「JAIS係官は州のシャリア法適用を誤解釈して、3箇所でのムスリムの客、従業員、ミュージシャンに対する行動で間違いを起こした。」 「関係した者からの報告を得て、州政府は拘束されたムスリム全員に対する起訴は取り下げるべきだと命令しました。」
州首相は、この事件を起こしたイスラム庁JAISの係官に対する処分はJAISに任す、と述べ「将来またこういう問題を起こさないように、係官はシャリア法解釈の特別コースに参加させることになるだろう。」 「ムスリムはアルコール類を消費しない限り、それを売る場所へ行くことと働くことはできます。」
このニュースを知らされた例の女性歌手は、記者会見の席で安堵の念を明らかにしました。「これで逮捕されるとの心配なく歌えます。この起訴は私自身だけでなく家族の名誉にも関係する重大なものです」
この女性パブ歌手はJAISに対してなんらの行動をするつもりはない、起訴を取り下げた行為に感謝すると述べ、「私はこのことをこれ以上考えたくない。大切なことはもう終わったということです。ことが片付いた以上これ以上話したくありません。」彼女は副首相やスランゴール州首相に感謝の念を述べ、「JAISに感謝しその結論を評価したい。」とまで言っています。
以上
非常に興味深い結論のつけかたですね。29日のニュース報道から、本質の議論はほとんどなされずに常識的決定によって結論が導かれたことが推測できます。多分非常に政治的判断がなされたことも推測されますが、それはもちろんこの時点では筆者にはわかりません。そしてこの女性歌手の発言内容にも注目していただきたいですね。
こうしてこの問題はひとまずニュースとしては下火になり、州政府の決定が下され結論がでました。イスラム教のあるべき教義解釈論議は結局本格的になされていないことは明らかですが、それを避けるのがマレーシア流ということでしょう。筆者もこれ以上追いません。ただ数年前に起こったミスコンテスト参加のムスリム女性起訴問題と同じで、この種の問題はいずれいつかどこかでまた起こると筆者は思います(このコラムで扱いましたよ、目次からどうぞ)。
なにはともあれ、解釈に関してはムスリム自身が決めることですので、その解釈内容に口出すことは筆者はきっちりと慎みます。
筆者の述べたようにこの事件の本当のところは片付いていません、最後にSisters In Islamの声明に関する記事を掲載しておきます。
スランゴール州イスラム教局の女性ムスリム15人に対する起訴取り下げ決定は、イスラム教という名において女性に対する増大する不寛容さと偏見問題を解決するものではない、とSisters In Islamの幹部Zainahは、女性グループ会合後の記者会見で述べています。
発表したプレス声明で、法律の前では男女は平等であるとの基本権利を侵していると、州イスラム教局の選択的起訴を非難しています。
「女性歌手とバングラデシュ人労働者は起訴された、しかし男性ミュージシャンと男性客はそうではない。」 「97年のミスコンテストで宗教局は3人のマレー女性コンテスト参加者を起訴した、しかしMR.マレーシアコンテストに参加した体を露出した水着姿の男性参加者に対してはなんら行動をとらなかった。」
「法律が個人の信念、良心、生活スタイルを制限するために使われている。」 「もし法が宗教的罪を国家に対する犯罪に仕上げることに使われるならば、そんな法は存在するべきではない。」 「この逮捕は、イスラム教で寛容されない恐れを伴った環境を作り出しました。」 「スランゴール州首相は、JAIS係官が法を誤解釈したと述べています。もし取り締まり官自身が法を知らなかったら、どうして他の人がそれを知っていると期待できようか?」
「シャリア法の条項はひどい草稿なのでいくつかの解釈を許す余地を残している。加えて、それらは前例・慣例のない条項を含んでいるのです。」 「我々は、宗教を政治的イデオロギーにとして使い且つ国をイスラム法で治めようと狙っているイスラム教復古主義に捕らわれて悩んでいます。しかし何がイスラム教であり何がイスラムでないかを誰が決定するのですか?」
この声明は29の団体が支持し、さらにマハティール首相夫人、アブドラー副首相夫人、Marina Mahathir女史らもそれを支持しました。
以上
当サイトはアダルトコンテンツを含んでいますので、18歳未満の方はご遠慮ください、なんて警告文が最初に掲げてある日本語サイトがありますよね。日本のURLから発せられているか外国のサーバーを使ってているかに関係なく、掲載内容によってこうしうメッセージを出しているようですね。マレーシアにあるサイトでこんなメッセージを載せているところは言語に関わらず絶対にないといえるでしょう、もしそういうサイトを運営していることがわかれば、サーバー運営者・社はマレーシア当局から処罰を食らいますからね。もっともサーバーがマレーシア外においてあれば別ですが、それでもアダルトサイトは、真剣に調べたことは全くありませんが、ごく少ないと思います。マレーシア関係のサイトでアダルトなサイトを、へんないい方ですが、期待しても無理ですね。
さて前置きはこれぐらいにして本題へ。今回のコラムはアダルトコンテンツを含みます。えーっ、と驚いたり、待ってました、と喜ばないでください。アダルトコンテンツと言っても18歳未満禁止の内容ではなくて、18才以上の方々に関わる生殖と避妊のお話です。これまでこのサイトを運営してきて大体分るのですが、当サイトの読者層は比較的年齢層が高いし、10代の割合がたいへん低いように推測されますので、あえて18才以上向きなどと断らなくてもこのコラム読まれる方はそういう方ばかりでしょう。生殖と避妊のお話ならほとんどの読者に関係する又は感心が高い話題だと思います。
尚マレーシア人ってどんなセックスしているだろうというげすな話題は飲み屋のカウンターかカラオケパブのテーブルで、又は喫茶モノローグでしていただくことにして、Intraasiaは上品に且つ統計的に話しを進めます。
マレーシアはどの構成民族でもそうですが、一般に多方面で保守的な国民ですから、自分や他人の性生活を暴露する、そういうテレビ番組はありませんし存在しえません、がそういう記事を載せた雑誌、新聞は種類からいえば結構あります。その種の雑誌・新聞、新聞の場合は週刊タイプ、でも日本の基準から言えば「なーんだ、こんなものか」という程度です。その中でも、こういうセックス話題や女性のヌードもどき?(裸体そのものはもちろんセミヌードも表示できない)の写真を主に載せた出版物は3流出版物の扱いで、日本で通勤車中でサラリーマンが堂々と読むスポーツ新聞や、医院の待合室で奥さん連中がこれも堂々と読む女性雑誌ような扱いではありません。
そんなおとなしい?マレーシア出版業界ですが、じゃあマレーシア人はそういった情報は拒否しているのかといえば、相当違っており、夜店でポルノVCDが売られていたり、インターネットでこっそりと外国のアダルトサイトを覗いたり、ヤングレディー供給業者を利用したり、タイへいって羽目をはずしたりと(国境の町の歓楽街を見ればよくわかる)、男たちは、もちろん日本人ほどではないが、それなりに楽しんでいる?ようです。じゃあ女性はというと、日本女性にはとてもかないませんとはっきり断言できますね。マレーシアはやはり保守的な社会です、様様な社会制約が高く且つイスラム教、ヒンヅー教、儒教など宗教の力がものすごく強い国ですから、性的対象とされる存在としての女性は概して、イスラム教なら常に、貞淑を期待される存在ですね。
もちろんそんなこと気にしない若い又は若くない女性もいますが、総対数も相対数も少ない。建前としての貞淑が強調される社会でそこから外れた行動するとどうなるかといえば、陰湿化する、特別視化又は村八分化されるわけです。いい例がマレー女性歌手Ning Baizuraの雑誌FHMでのインタビュー発言とセクシーポーズ写真の件です。彼女はこれによって、全マレー女性とムスリムに謝罪しろとまで言われているそうです(7月28日の新聞の記事からを参照してください)。
こういう背景を示した興味深いニュース記事があります。7月23日付Starの記事から
10代の少年少女のセックスの代償
ペタリンジャヤ発: 2人の十代が家でセックスしていた所、たまたま帰ってきたその女の子の父親が、子供の部屋から聞こえてくる音に気がついて覗いたら、男の子は家から逃げ出しました。その16才の女の子は父親にセックスしていたことを認めたので、父親は警察に訴え届を出しました。それに従って17才の男の子は自宅で逮捕されました。警察署幹部は、男の子は10日間拘置されると、述べています。
以上
でその貞淑なあり方を期待されるマレーシア女性と多少は遊ぶが概して保守的なマレーシア男性が結婚すると、当然性生活が始まりますね。結婚しなくてももちろんそれはありますが、ここではとりあえず触れません。性生活を始めれば普通は子供が生まれる、下記の表で出産率をご覧ください。やはり日本は抜群に低いですね。
マレーシア | シンガポール | タイ | ベトナム | 日本 | |
15才から49才までの女性の 出産数(1000人当り) | 25人 | 7人 | 70人 | 27人 | 4人 |
避妊している人の割合 | マレーシア | シンガポール | タイ | ベトナム | 日本 |
伝統的方法を含めて 全ての手段では | 48% | 74% | 74% | 65% | 59% |
ピル、コンドームなど 現代的手段に限ると | 31% | 73% | 72% | 44% | 53% |
じゃあ、避妊法のうちどんな手段が多いのかというのを示したのが下の表です。こちらは国内の全国人口と家族発展評議会の調査によるものなので、信用度はもっと高いと思います。分類法は違いますが、現実に避妊法を採用している人の割合を知る手がかりになりますね。
経口避妊薬 | ペッサリー・IUD | コンドーム | 断種・避妊手術 | その他 | 合計 | |
1980年 | 61,792(76%) | 2,592(3.2%) | 10,573(13%) | 5,102(6.3%) | 1,004(1.3%) | 81,063 |
1990年 | 62,692(73.9%) | 3,554(4.2%) | 11,111(13.1%) | 4,726(5.6%) | 2.754(3.2%) | 84,837 |
1998年 | 74.5% | 4.4% | 10.3% | 6% | 4.8% |
それにしても経口避妊薬つまりピルの比率が断然に高いですね。ピルは医院だけでなく一般薬局で入手できますが、避妊手段の中でこんなに普及しているとは知りませんでした。ピルは大変経済的な価格に設定してあり、1生理周期分でRM10だそうです。これなら1ダース入りのコンドーム価格10数リンギットから20数リンギットより安いですね(おっと失礼、高くつく人もいますね、)。
ピルがマレーシアに導入されたのは63年だそうです。世界で最初にピルが開発されたのが1960年、今年はその40周年とか、だそうなので63年とはずいぶん早い時期ですが、一般人が入手できる段階ではなかったことでしょう。一般人にも入手できるようになったのは、田舎における保健サービス方針に基づいて、保健省が家族計画を始めた1971年からとのことです。現在ではピルは国中で入手できます。
以下2000年7月版Clove編集部の”健康 PILL"という記事から翻訳
マレーシア家族計画協会連合の会長を勤めるAng医師に寄れば、全国に広がる所属医院を訪れる患者中、65%の女性はピルを選択するそうです。この連合は各医院を通じて12万人の会員にサービスを提供しています。会長は、「ピルの人気が高いのはその求めやすい値段です。ピルは長年使われてきた副作用がほぼなくなった。」 「さらに、ピルうを使うと女性が管理していると感じるからです。コンドーム使用では、女性はしばしば夫に依存することになる。IUDのような器具の場合はわざわざ医院を訪ねなければならない、だから(ピルなの)です。」
全国人口と家族発展評議会NPFDB はさらに家族計画サービスを、医院を通して行っています。評議会は生殖時の健康に力点を置いた家族発展プログラムを90年に作製しました。NPFDBはその報告書でこう伝えています。 避妊法の広がりは明らかにあった、例えば66年のわずか8.5%から88年には49%に上昇した、しかしリズム式とか引きぬき法といった伝統的又は非効果的避妊方法を好む人たちがいるのです。
98年だけで評議会NPFDBは1万人以上の新規避妊使用者にサービスを提供しました。そこで保険省の管理する全国家族計画プログラムによって、98年人は合計して7万人以上の新規使用者を得たのです。全国にあるこういった3100箇所の医院には100万人以上の繰り返し訪問者があります。全国人口と家族発展評議会NPFDBの調査では、新しく避妊法を採用した人の66%は、子供1、2人を持つ30才以下の女性でした。
以上
こうするとマレーシア人の避妊状況がだいたわかります。全体として避妊手段を積極的につまり家族計画を採用する比率は、まだそれほど高いとはいえないが、ひとたび新規に避妊実施に踏みきると、経口避妊薬を取り入れる人が4分の3を占める、ということのようですね。
マレーシアでの避妊率がまだそれほど高くないのは、多数派であるマレー人のイスラム教が避妊を認めないということではなく、それは、マレー社会に潜む意識の面にあるからだと思います。なぜなら、マレー人家庭が子供数が多い現状だけでなく、地方でマレー人と話すと必ずこういった子供の話題になることなど筆者のこれまでの見聞と経験から、子沢山歓迎慣習はマレー社会に極めて強いと確信できること、マレー社会が基本的にカンポン文化を残しており、性のタブー化視が壊れていないことです。
ヒンズー教徒の場合はよくわかりませんが、インド社会を頭に置くとなんとなく想像できます。華人社会では宗教的見地から避妊してはいけないと考える人は今やごく少なく、伝統的中国人社会観を保持して、子供が多い方がいいということで避妊しない層もあるでしょう。
避妊率は単に家族観だけでなく、社会経済的要因と国民の教育水準にも依存する事柄であり、加えていうまでもなく宗教要因が大きな要素です。例えば学校教育で性教育なり避妊知識を与えるカリキュラム導入には、保守的層から強い反対があるようです。ですからこういった現状を鑑みるとマレーシア国民の避妊率の急速的な高まりはないのではと推測されます。もちろんこれは人口問題にしろうとの予測ですけどね。
マルチメディアスーパー回廊プロジェクトは、政府発表によれば順調に進んでいるようです。しかしこれはこのプロジェクトの中心となって発展を推し進めていく役割を持ち且つある種の国策会社であるマルチメディア発展公社(MDCと略称する)の発表する
のような記事が大きな情報源です。物には全て表と裏がありますから、MDCの発表だけを基にして、マルチメディアスーパー回廊プロジェクトを評価してはいけないのは当然です。しかし一般人にはマルチメディアスーパー回廊プロジェクトはまことに分りづらい、まことに捉えがたいのです。
製造業なら工業団地に工場が建設され生産が始まると、その活動は目に見えますね、商業分野では、大ショッピングセンターが出来上がりそこに店なりスーパーマーケットがテナントとして入居し、人々が買い物や娯楽に訪れます。しかしこのマルチメディアスーパー回廊プロジェクトはその中心が情報技術産業ITですから、その企業が設立され活動をはじめてもなかなか一般人の目に見えてこないのです。パソコン製造、コンピューター製品を販売するなら形として分りますね、ソフトウエアーでも大衆ユーザーを相手する企業であれば、店に又は広告として目に見えるのですが、そうでないIT企業の活動は具体的に見えないのですからね。
とにかく現在マルチメディアスーパー回廊(MSCと呼ぶ)てどうなっているのだろうかというのが、筆者の知りたいことでした。マルチメディアスーパー回廊プロジェクトの定義と発祥のいきさつ、目標などは、このコラムの早い時期の97年に、2つのコラムにしあげて書きました(第52回と第56回 )。それから約3年がたったわけです。
マルチメディアスーパー回廊内に位置するツインシティーの一つPutrajayaにはすでに首相官邸が99年に完成し、マハティール首相はそこで執務を執っています。その首相官邸横には巨大なモスクが完成しており、政府各官庁の建物も少しづつ出来上がっていますが、それでもPutrajayaは素人目にも完成した都市ではありません(この写真などは旅行ページの「スランゴール州の案内」の該当項目をご覧ください)。
未来の行政首都であるPutrajayaは、予定では2010年までに完成するそうで、その時には住民数35万を期待していますから、十分りっぱな都市ですね。2段階の開発計画で、その第一段階は今年完成予定です。4社ほどのデベロッパーが現在住宅建設中の真っ最中で、年末までに2000戸完成を目指しています。とにかく広大な土地にゆったりとデザインされた都市であることは間違いないですね。
ツインシティーのもう一つCyberjayaはPutrajayaよりも後発でその分プロジェクトが遅れているように思えます。正式にCyberjayaが開発開始になったのは99年ですからね。Cyberjayaの開発責任会社であるSetia Haruman Sdn Bhdでさえ、3年後にCyberjayaが都市になるのは怪しいと認めているそうです。しかし「CeberyJayaの第1次段階1460ヘクタールは完成した、その中には、Cyberjaya交通ターミナル、3000人の学生を擁するマルチメディア大学、Telekom ITビル、(日本の)NTT MSC研究と開発センター、サイバービューガーデン、Cyberview Lodgeホテルなどが出来あがった。」とSetia Harumanは自慢しています。
尚このSetia Haruman Sdn Bhdはマレーシアの大企業Renong、Country Heightsなどが出資して設立した会社です。
”自然と調和し人間にやさしいインテリジェントシティー”を歌うCyberjayaですが、本当にそれがどこまで実現されているか筆者は見てみたい、感じてみたいと思っているのですが、それを試してみるのは結構難しい、なぜならCyberjayaとPutrajayaへの公共交通網便がきわめて限られたものであるからです、さらに近々PutrajayaとCyberjay内を周回する周回バスが運行を始めるとは伝えられてますが、路線バスは主要路を走るだけで、PutrajayaとCyberjayの細かい部分を見て回ることが全くできないからです。
Cyberjayaへの交通網は4社のバス会社が運行しており、Kuala Lumpur, Serdang, Kajang, Dengkil, Bantingを結んでいます。まだずっと先のことですが、クアラルンプールに建設中のでまだ未完成の鉄道駅KL Centralと KLIA空港間を結ぶ高速鉄道ERLが2002年に運行を始めれば、PutrajayaとCyberjayaを通り、Putrajayaに駅ができるのです。
クアラルンプールからの直行バスはSerdang経由の1便だけで、それも1時間に1本という少なさ、加えてその運賃の高さ、片道RM3.4、です。これではCyberjayaに引越ししない理由に公共交通の不充分さを上げる企業が多いのもうなづけます。
マルチメディア発展公社MDCによれば、2000年7月現在MSC地位の取得会社のわずか50社しかCyberjayaに転居していません。MDCの幹部はそれを認めてこう言っているそうです。「今やサイバージャヤにコミュニティーを設けるときです、もっと多くのMSC地位の会社をCyberjayaに引越しさせるようにしなければならない。」 「Cyerjayaでは国内の他のどこにもない世界水準のインフラとサービスを享受できます。」
筆者は8月のある日バスでCyberjayaを訪れてみました。クアラルンプールから1時間ほどかかってPutrajayaにバスは入り、その内部周回道路を1周して乗客を降ろし又乗せてから、PutrajayaとCyberjayaを結ぼ快適なリンク道路を渡り、Cyberjayaにはいります。Putrajayaに比べればまだ開発の進んでいないCyberjayaは、あちこちにぽつんぽつんとできかけの住宅又は建設中の施設と住宅が目に入るぐらいで、まことに索莫とした風景です。パームツリーの丘陵を開発したさまが素人目にも明らかに分る状態ですね。
ただ広大なPutrajayaとCyberjay内の主要道路網だけは相当完成しているようで、バスの運行は極めて快適です。これは、道路の立派さに比べて通行する車がものすごい少ないせいが多分にあるでしょう。バスは最後にUniversiti Multimediaの正門前で停まり、そこが終点で且つ降り返し停留所です。その少し手前に完成していたバスターミナルには行き帰り寄らないのです。最後までの乗客のほとんどはマルチメディア大学の学生みたいでした。
このCyberjayaの目玉の一つであるマルチメディア大学は、丘陵の中に忽然と建設された建物の様相を示しており、いくつかのホステル棟がキャンパス内に建っています。大学回りにほとんど店らしきものと完成した住宅はないし、バス便も限られていることから、学生の多くはホステル生活のようです、もっとも比率はわかりません。ぴかぴかのキャンパスを歩いて見ましたが、一般的に大学を歩くと感じるにぎやかさが感じられなく、まるでオフィスビル郡を歩いているみたいな無機的な感じを抱く大学ですね。まあこれもその置かれた場所のせいに多分に拠るのでしょう。大学の回りにもっと民間施設ができ、住宅が完成するまでは、この大学はこんな感じのキャンパスでありつづけるかもしれません。
施設名 | Millenia Centre |
Shopping Plaza |
Pangsaburi Bestari |
Smart School |
Century Square | Cyberia | Cyberpark |
規模 | 14,500 平方m | 5,400平方m |
120戸 アパート |
20,000 30,000(第2段階) |
420戸アパート 148住宅 | 50ヘクタール | |
用途 | オフィス | 商用 | 住居 | 教育 | オフィス | 住居用 | 公園 |
完成予定 | 2000年末 | 2000年末 |
40戸のみ 2000年10月 | 不明 |
完成 第2段階建設中 | 2002年までに | 完成 |
Cyberjayaのインフラ整備をする2大会社が電気会社のTenaga Nasionalと通信網会社のTelekomです。(この項目は2000年7月31日のStar紙の記事参照)
電気設備
電力会社Tenaga Nasionalの現在のCyberjayaの電気供給は供給能力で75メガワットです、これを20年かかって250メガワットに上げるそうです、この供給を高品質で且つ信頼性のあるものにするためにTenaga Nasionalは日本企業のTepcoと共同調査を行いました。現在Tenaga NasionalはCyberjaya 転入する最初の100社に接続費用と保証金を免除することにしています。
この2点を見ただけでも、公共企業体の電力会社がわずか数百社、現在は百社にもみ足りませんが、に対するサービスとしては破格の高待遇を示していますね。
通信設備
もう一つの重要インフラである通信面でのインフラを整備する通信産業Telekomは、国内最初のDSL技術でのサービスをCyberjaya内の企業に提供するのです、現在すでにこれをを享受しているのは、Cyberview Lodge, Century Square, マルチメディア大学の施設だけです。このDSLを使えばインターネット接続は2Mbpsまで高速化できるそうです。その他テレコムの通常サービスはCyberjayaにほとんど現在では供給されています。さらにTelekomがここで適用する料金体系は世界的テレコミュニケーション会社にひけをとらないものになっているのです。
こうして電気と通信のインフラの面で、すごい優遇策をCyberjaya内に転居したMSC地位の会社に与えるのです。まだまだ居住者人口はいうまでもなく通勤で働く人の数もごく少ないCyberjayaに巨大な設備投資がなされてきたしこれからも続くので、Cyberjayaは1人当りのインフラ投資額では恐らく国内でトップになるのではないかと思われますね。
2000年8月6日のStar紙に載ったサラワク出身の識者の署名記事から抜粋
「マルチメディアスーパー回廊の影響は首都圏とその周辺には直接的であろう、しかしサラワク州の僻地のような地域では、全くないとはいわないがずっとずっと少ないでしょう。こういう僻地は基本的な情報技術の施設にアクセスできないかその恩恵を受けていません。
サラワク州の都市部、Kuching、Sibu,Miri,Bintulの家庭やインターネットカフェではインターネット接続の増加を見ています。しかし州内のその他の地域では、水道と電気と電話の恩恵を受けている住民数は増加してはいるものの、インターネットに接続している状態には程遠い。どれくらいの僻地の学校がインターネット接続できるでしょうか?それに関して言えば、僻地の学校のどれぐらいがまだ電気供給を得てないのだろうか? 実際僻地校はまさにインフラ設備の向上が必要なのです。
以上
このように、サバ州サラワク州の僻地では電話線はもちろん電気供給もされていない地域が残っているにも関わらず、こういう超巨大投資を750平方Kmほどの限られた面積のマルチメディアスーパー回廊域内につぎ込み、様様な優遇策をMSC内の企業に与えるのは、マレーシア政府の強烈な国策のゆえ以外の何ものでもありません。このマルチメディアスーパー回廊プロジェクトによって、マレーシアが先進国の情報化産業に伍せるように独自の情報産業を生み出し且つ発展させ、国民中に情報化社会を作り上げ、雇用も創出するというのが目的です。
そのため情報化技術教育が強調され、その方面の技術者・研究者はもてはやされるという結果を生み出しているのですが、じゃ労働集約的産業はどうかといえば、やはりその方面の軽視観を生み出しかねないというマイナス面も現れてくるでしょうね。
マルチメディアスーパー回廊プロジェクトの最終的でなく、現時点での成果はまだまだ一般人にはよくわからないし、目に見えてこないというのが正直な感想です。尚、本来ならMSC地位を得た企業にインタビューなり、その現状を調べなければこの巨大プロジェクトの現時点での判断はするべきではありませんから、当コラムで書いたものはそれを欠いた不充分な検証であることを、筆者はここで記しておきます。
参考: マルチメディア発展公社MDCのサイトwww.mdc.com.my/へ行けば、Cyberjayaなどの情報もリンクしています。
8月15日の終戦記念日(敗戦記念日とすべきだと筆者は長年思っています)の数日前からクアラルンプールの中華大会堂でマレーシア華人の団体が太平洋戦争終結55周年の写真展と催しを開いていました。華語の新聞のお知らせでそれを知った筆者は興味半分で写真展だけを訪れてみました。筆者は聞き飽きた建前論を述べている日本政府とその代理の日本大使館に気を使う立場など一才ない自由人ですから、マレーシア華人の一部はどのように主張しているのかちょっと知りたかったわけです。そこでは、マラヤ半島を占領した旧日本軍の極悪行為を中心にした写真が飾ってありました。旧日本軍に敵視された華人社会としては当然のことでしょう、これ自体は別に驚くことではありません。尚講演会には、日本からこういう問題を研究している学者やグループが来マレーシアして出席していたと新聞には書かれていました。
日本だけでなく在住者の方も含めて、さて次ぎのようなニュースをご存知でしょうか?このニュースは英字紙では対して大きく扱われていませんが、中国語紙では以前からその都度伝えられてきたようです。筆者はこの問題に詳しくありませんから結論づけるようなことは書きませんが、マレーシアを伝える者として、これも華人社会の見逃せない事なのでここに載せておきます。
ただしこの場に載せたからといって、華人団体の要求にすべて賛成するということではありませんよ、それはまた別のことです。
第2次世界大戦中に旧日本軍がマレー半島を占領して当時の英領マラヤを3年半ほど軍事統治をしたことは歴史の事実です。旧日本軍の先遣隊がコタバル近くの海岸ととタイのパタヤの海岸に上陸して、半島を瞬く間に南下しついにシンガポールを陥落させ、マラヤ半島を占領しましたが、ここはそのことを扱うのではありません。ただこれぐらいの歴史は知っておいてほしいとの意味で触れておきます。
その旧日本軍統治時代の1942年3月に、旧日本軍政府はマレー半島とシンガポール島の中国人社会に対して奉納金を差し出すように求めたのです、これは名目は何であれ強制的な供出金命令です。その額は当時の額で5000万海峡ドルとのことでした、現在の額にすればRM5億(日本円換算で約150億円)になると、この奉納金返還を求めているマレーシア中華大会堂総会(華人の様様な団体・組織の総連合)は見積もっています。各州に割り当てられた奉納金額は次ぎの表に示します。
州名 | スランゴール | シンガポール | ペラ | ペナン | マラッカ | ヌグリスンビラン | その他の5州 |
当時の金額 | $1,000万 | $1,000万 | $850万 | $700万 | $550万 | $200万 | $200万 |
で問題はこれからです。
太平洋戦争終結後の1947年、シンガポールのある委員会が日本政府に供出金を返還するように求める文書を、英国殖民政府宛てに出しました。しかし何も起こりませんでした。1963年マラヤ連邦とシンガポールそれにサバとサラワクが統合してマレーシアを成立させました。シンガポールの中国人商業会議所は日本政府に5000万海峡ドル返還を求めるための委員会を組織。マレーシアの中華総商会(華人商業会議所)は日本政府に対して賠償を含めてRM1億3千万(130万海峡ドル)を要求しています, 各州にRM1千万ずつということです。
65年にシンガポールが分離独立し、両国政府は別々に日本に要求することにしたのです。しかしマレーシア政府は戦争当時マラヤもシンガポールも英国統治下にあり、その英国政府がマラヤとシンガポールのためにと戦争賠償金4億500万ドルを日本から得た、だからマレーシア政府もシンガポール政府もこれ以上要求する権利はない、というのがマレーシア政府の取った立場です。
しかしこのマレーシア政府の立場に供出金返還を求めている華人らは納得しませんでした。その言い分は、戦争賠償金は戦争被害者のためと経済復興のためであり、その賠償金は2つの基金によって分配された。中国人コミュニティーが戦争中に供出させられた5000万海峡ドルはその戦争賠償金には含まれていないというのが、返還を求める人たちの立場です。
この議論はさらに引き続き、1967年に日本政府とシンガポール政府はある合意に達しました、それは日本がシンガポールに2500万シンガポールドルの贈与するというものです。マレーシアはといえば別の合意が67年7月に結ばれました。それは2500万リンギットを日本が贈与して、2隻の海洋船を日本から買い入れるというものでした。この際日本政府はマレーシア政府に、これ以上の要求はしないと保証をするべきだとの要求したのですが、マレーシア政府は拒否しました。その後日本政府はこの申し入れを取り下げ9月に合意書に署名があったのです。両国政府は、2500万リンギットの贈与は旧日本軍の占領の件に関しての最終的解決であるとの合意でした。
しかしマレーシアの華人コミュニティーにとって、この1件を終わりにするには全く遠いことでした、それは賠償には華人の供出した5000万ドルの返還が含まれていなかったからです。67年以降この問題は何度も提起されたそうですが、効果はありませんでした。しかしマレーシア中華大会堂総会(華人の様様な団体・組織の総連合)は55年を過ぎた今もこの訴えを続け、最近も日本大使館や日本外務省にコンタクトしているのですが、結果ははかばかしくありません、何でも中華大会堂総会は国連に訴えるそうです。
筆者はこれが現在日本政府側でどういう扱いになっているかはよく知りません、日本のマスコミでどういう風に取り上げられている又は全く取り上げられていないかも知りません。しかしマレーシア華人団体は依然として返還要求をあきらめていないということは確かです、ある意味では当然でしょう。ですから日本人もこの事実は、賛成反対は別にして、知っておくべきだと思います。
もう4年近くも前になるコラム第1回で放送開始したばかりの麗的FMラジオ局のことを書きました。コラム開始当時はコラムも数百字程度の短文でしたから、詳しいことは全く書いていませんが、それでも日本語でこのラジオ局を始めて日本人社会に紹介したのは当サイトのはずです。それ以来筆者はこのラジオ局のファンであり、去年のコラム第166回で、その編成番組中に日本ポップス紹介の番組があることを、担当DJとのインタービューを通じてお伝えしましたね。
Radio Rediffusion社が運営するこの民放FMラジオ放送は、当初1日24時間を放送言語別に分けて、つまり広東語・中国語放送時間帯、英語放送時間帯、マレーシア語放送時間帯の3時間帯に分けて放送していましたが、98年からマレーシア語と英語放送番組を分離させ、それまでの放送名RFMをそのまま使って、別の周波数で24時間放送しています。中国語・広東語放送の方は周波数は変わらず、麗的988(Redi 988)と名づけられ現在に至っています。多言語社会であるいかにもマレーシアらしい発想と出来事ですね。
公営放送局RTMは英語放送とマレーシア語放送と中国語放送とタミール語放送はそれぞれ周波数を異にしてサバ州サラワク州を含めて全国放送しており、一つの周波数内で他の言語放送をしません、さらに中国語放送では、一部の10分程度のニュース報道を除いて華語(日本で呼ぶ中国語のこと)一辺倒であり、広東語など他の中国語諸語は放送言語としては使用しません。尚10分程度のニュース番組は1日に数回福建語又は客家語又は又は広東語又は潮州語で放送されており、これは華語がよくわからない高年齢華人層向けでしょう
Radio Rediffusionは公営と違って民放ラジオですから、もっと自由な番組編成ができ言語選択もできる麗的988放送が聴取者の支持を受けて伸びてきたのはいわば当然のことでしょう。聴取者は半島部の西海岸側の都会及び周辺の華語コミュニティーに絞り、人気DJを起用したり番組内容を多様化させて伸びてきたようです。ここでいう華語コミュニティーとは華語・広東語を主に話す華人のことで、英語を好んで日常的に話す華人ではありません。又広東語を解さない華人が多数を占めるジョーホール州、マラッカ州などでは聴取率があまり高くないように、番組内で電話登場する聴取者の数と反応及び筆者の旅行訪問時の観察からそう感じます。
後発ですが、このRadio Rediffusionと同じような放送形式を取っているのが衛星放送のAstroを経営するMesat社です。この社は中国語・広東語放送局のMy FMとマレーシア語局のERAを数年前に立ち上げ、都市の住民を対象に聴取者を伸ばし、半島部で一番聞かれる中国語又はマレーシア語放送だそうです。テレビやラジオには人それぞれ好みがあるのは日本でもマレーシアでも同じですが、加えてこのように視聴・聴取者の日常常用言語に極めて影響を受けるのがマレーシアの放送界です、テレビ以上にラジオはその傾向が高いといえますね、ラジオは映像がないので目から理解することは不可能ですから当然ですね。多民族多言語社会の面白さがこういう所に感じられるのです。
筆者はマレーシアを伝える目的でこのコラムを書いていますので、できれば様様なテレビ、ラジオ放送を紹介したいのですが、どうしても好みと限られた時間面から、全部の放送を聞くわけにもいかないことになってしまい、多少残念でもあります。尚テレビとラジオの英語放送は比較的日本人にとっつきやすいでしょうから、まあ別に筆者でなくても誰でも紹介できるでしょう、筆者はそれに力をさくようなことはしません。一般の日本人によりなじみのないマレー人とマレーシア語娯楽面及び華人と華語・広東語娯楽面を当サイトで時々紹介しているのは、こういう理由です。
そこで都会の華語広東語コミュニティーの好む麗的988を聞いていると、その話題に興味深いことが発見できるるのです。頻繁に放送されるニュース番組、数分間程度から30分間程度までの中で日本の政経・社会ニュースが毎日必ずといっていいほど、つまり1日何本もある長短のニュース番組の中で一度も日本のことを言及しない日はまずないでしょう。日本のラジオ番組の中で、特別な出来事が起きた時でなく通常時に、マレーシアのニュースがどの程度の頻度で放送されるか考えていただければ、その違いがよくおわかりになることでしょう。筆者はこのニュースの中で、日本のどこかで地震が起きたとか、新首相に誰がなったとかを知り、翌日の英語新聞で精細を知るなんてことが時々あるぐらいです。
さらに民放ですから各DJそれぞれの持ち味を生かして放送していますが、そのDJの中には日本の話題にふれるDJが結構多いのです。毎日いろんな話題でおしゃべりしながら曲をかけ、聴取者と電話で話し、時にはゲストの芸能人にインタービューするというおなじみのスタイルです。
その中で日本・日本人に関する話題に触れるDJが結構いるのです。ざっとおおまかに3分の1ぐらいのDJは多少なりとも日本の話題に触れます。中にはその都度触れるかのようなDJもいるぐらいです。つまり麗的988のDJは毎日何らかの、例えば日本のファッションであるとか社会のちょっとしたニュースであるとか、経済ニュースであるとか、日本食やクアラルンプールの日本レストランの話しとか、そういった軽い日本の話題に触れます。日々の放送のなかで、何であれ全く日本の事・人が1回も1個も話題に上らない日はないと断言できます。もちろん日本通のDJは、下記で触れるサイモン以外いないようですから、マレーシア人としての興味程度で深いものでは決してありませんが、それでもこれほど頻繁に日本が話題になるというのは感心します。反対に、日本のラジオ番組のDJがどの程度マレーシアを語る又は語れるか比べるまでもないでしょう。
何局かはよく覚えてないのですが、マレーシア語放送局の中に、毎日10分間程度の外国語レッスンを放送している局があります。真剣な語学教育番組でなく、サバイバルことば的にある外国語を楽しく軽く教える番組です。そこでもよく日本語が取り上げられ、マレー人聴取者が電話してきて講師とそのことばで挨拶を交わしたりします。マレーシア語放送は華語・広東語放送より当然日本のことを語る頻度はぐっと落ちるでしょうが、それでもたまにDJが日本のことに触れる場合もあります。
印刷物の面でのマレーシアマスコミの日本報道に関してはまたいつか書くかもしれませんが、いずれにしろマレーシア華語放送での一般向け軽い日本報道は、日本での一般向けマレーシア報道より数は多いのです。しかし旅行ガイドブックや本格的な国別紹介書籍・雑誌の分野では日本のマレーシア物の方がマレーシアの日本物より圧倒的に多く内容が濃いのは、さすが出版文化の高い日本らしい面ですね。
さてこの麗的988の新番組発表パーティーが先週ありましたので、筆者もでかけました。会場のクアラルンプールのあるパブには多数の業界関係者、ゲスト芸能人、関係者マスコミ、そして数十人の聴衆者がいましたが、やはりこういう場に来る聴取者は若い人がほとんどですね。
いくつかの新番組がパブの小さなステージで紹介されましたが、その中で5月に終了した日本ポップス紹介番組が改番組名して再登場した話題もありましたので、ここでそれを紹介しておきます。
以前のコラムで紹介した日本流行音楽通のDJ Simon(左写真の男性)が担当する”Simon San的楽園” という日曜夕方の1時間番組が8月初旬から始まりました。とりたててというか全く日本流行音楽・歌手のファンでも通でもないIntraasiaですが、麗的988とDJ Simonの熱心さに敬意を表して、写真も掲載しておきますね。右の写真は、このパーティーで歌を披露した人気華人ドゥオ”年少”です、地元華語娯楽誌はこの2人を日本のKinki Kids になぞえているぐらいのグループですよ。
尚、地元のある日本語情報メディアが招かれて初めて来ていましたが、(筆者に語ったところによれば)Simonの番組の存在さえ知らなかったそうで、どの程度彼等がラジオ局の期待通りこの新番組を在住者に知らしめられるかな?
8月中旬シンガポールのリークアンユー前首相が10年ぶりという来マレーシアして、クアラルンプールを訪れ実質3日間の訪問中マハティール首相はじめ政府要人やジャーナリストらと会談を重ね、また要所を訪れたと新聞は報じています。当サイトの新聞の記事からでも少しだけお伝えしましたね。今回リークアンユーは、ジョーホールバルとの間のコーズウエーを渡って陸路クアラルンプールに到着し、帰りはKLIA空港からシンガポールに戻りました。高速道路沿いにマレーシナの半島部の様子を観察し、マレーシアの誇るKLIA空港を見学してマレーシア訪問を締めくくったということでしょう。
筆者はここで、主としてリークアンユー論を述べるつもりでもシンガポールとの関係を論じるつもりでもありません。実はこのリークアンユーがクアラルンプールで最後に記者会見して述べた言葉を紹介したいのです。マレーシアと互いに愛憎の関係にあるシンガポールの首相を建国前から31年も務め現在も上級大臣としてシンガポール政治に大きな影響を与えるだけでなく、中国と台湾問題もに積極的に関与する彼ですが、それを論じるのは筆者の興味と知識範疇外です。
この記者会見の内容を紹介するのは、それがマレーシアとその関係に建国前から関わってきたリークアンユーならではの貴重な見方を示していると思うし、且つ含蓄を含んだマレーシア論でもあると筆者は感じたからです。当コラムは、旅行者や在住者の単なる興味毎”だけ”を扱うわけではないと掲げていますから、こういったテーマで、マレーシアに深い興味をお持ちの方向けにも書くことはご了承ください。
筆者はリークアンユー信奉者では全くありません、その推進したクリーン且つ発展シンガポールは大きく評価するものの、少数のエリートによる国の政策決定と運営するというエリーティズムには嫌悪感を抱きます。しかしそれはそれ、聞くべき意見は参考にし又は考慮すべき見方は取り入れるベきだという立場です、正直言って今回のリークアンユーの観察には教えられる所があります。ですからここに掲載しておきます。
シンガポールは1963年から65年までマレーシアの構成部分であったことはご存知ですよね?そのマレーシアへの参加とマレーシアからの離脱の決断をしたのはいうまでもなくリークアンユーとその政党PAPです。シンガポールの独自発展のために離脱し独立の路を歩み出したのでしょうが、それはリークアンユーらがマレーシアの政治風土を知り尽くしていたからでしょうし、その時のマレーシア指導部つまりラーマン首相の大きな判断があったといわれています。それ以来シンガポールはその小さな小さな国土と有利な地勢的位置を十分に生かして発展に発展を重ね、今では当南アジアでダントツの発展を遂げたことは周知の事実です。
マレーシア人にとってシンガポールはまさに愛憎の対象ですね、南の隣国タイには関する感情とは相当違う感情を持っている国民が多いと思います。国民所得ははるか高い、それゆえマレーシアの一部、特にジョーホール州は商売面でも労働供給面でもシンガポールと強く結びついています。シンガポールの休日にはシンガポールの行楽客と買い物客がジョーホール州にあふれるのは毎度の出来事ですね。マレーシア人はシンガポールにより高給を求めて働きに行く、行楽や親戚を訪ねて行くなどと両国間の交流はきわめて日常的な光景です。ジョーホールバルのコーズウエーで出入国する車と人の流れを見ればまこと実感は増幅しますよ。
両国間には常に問題があり又は発生し、例えばマレーシアのシンガポールへの上水道水供給問題、マレー(マラヤ)鉄道の駅と国境検問所の移転と位置問題、シンガポールで働いているマレーシア人労働者が収めているシンガポールの中央保険基金CPFからの引き出し問題など、現在でもこういう未解決の大きな懸案があります。
さて記者会見でリークアンユーは以下のように述べています。
「この何年にも渡る両国間にある行き詰まった事柄はどちらをも益しない。」 「両国が成長し両国が協調することができることを国際的に再び植え付ければ、両国は得るものがあると思う。」 「マレーシア側がある面で譲歩すれば、例えば水道水供給で公正な振る舞いをすれば、私は(リー)は、マハティール首相の要求である点に答えるべく両国間の合意点文書を改めるようにと、シンガポール首相ゴーチョクトンにアドバイスする。」 と述べています。要するに互いにギブアンドテイクしようと提案している訳です。なかなかこういう言葉はこれまで両国の指導者からは公式には聞こえてきませんでした(私的にはあるかもしれませんが、マスコミ関係者でない筆者にはわかりません)。さすがシンガポールの超実力者らしいリーの言葉ですね。
「シンガポール側は相手を信用しないということはありません。我々が合意に達すれば、(両国は)それに従って行こう」 「両国は問題解決に興味を持っている。両国はうまくやって行くと思う。どんなに難しくても乗り越えて行こうということだ。」 「両国間に困難は存在する。だから解決しよう。」
マハティール首相との関係に尋ねられて、「我々が常に互いに同意するということではないが、互いにやって行こうという路を探したのです。」 「次世代の両国の指導的政治家はもっと非公式に会って話し合うべきだ。」 「彼らは人間として知り合うことができるのです。ひょっとしたら友情関係を築くかもしれない。」などといいことを述べています。
アンワル前副首相の追放と逮捕と懲役判決に触れて、リークアンユーは、「この件においてマハティール首相が多大な犠牲を払ったことに、私はアンワルよりもマハティールをより気の毒だなと感じる。」 「シンガポールは(マレーシアの)敵ではない。もし何かがあったとしても友達なのだ。あなたたちは(マレーシア人のこと)これを忘れてはいけない。」 「我々はマレーシアの指導者とはたいへん親しい間柄だ、副首相時代のアンワルを含めてだ。」 「アンワル事件は決して軽減されない不幸な出来事である。マハティール首相はたいへん不幸な判断の間違いといういくつかのミスを起こした。」
クアラルンプールでの記者会見で1国の指導者クラスがマハティール首相がミスを犯した、とはっきり述べたことを新聞で読んだのは筆者は初めてです。「私のコメントは、マハティール首相がアンワルの暴行を受けた件で公開を選ばなかったという判断は重大なミスだ、ということです。」 とリークアンユーはシンガポールに戻ってから、クアラルンプールでの発言を再説明しています。マレーシアの新聞がこういう首相への批判的発言を伝えるのは極めて珍しい。オフレコでは以前からあったかもしれないが、そんなことは一般人にはわかりませんからね。もちろん国内の野党はしょっちゅうそういう批判発言をしているが、それは国内政治として当然ですから別に驚きません。
リークワンユーは続けて、「アンワル事件の直後1999年初めのスイスでの国際会議でマハティール首相にあったとき、私はなぜ国内治安法を用いたのかと尋ねたら、彼(マハティール)は彼自身治安法を行使することを知らなかった、それは警察庁長官の特権だと答えたので、私は面食らった。」 と述べています。「これはマハティール首相が大きな犠牲を払った一連の失敗の始まりだと思った。」 「アンワルが拘置中に暴行を受けた件で、すぐ査問委員会を設けなかったのはもう一つの失敗だ。」 「それは(査問委員会を設けること)マハティール首相を批判からまぬがれさせはしなかったであろうが、マハティール首相がその暴行を働いた一味であるとの疑いを晴らしたであろう。」 「マハティール首相はアンワルが暴行を受けてそこから得るものはないと思う。」
「マハティール首相は得るものがない」、確かにこれはいえることで、暴行の件を当初マハティール首相が疑われたことを相当程度薄らげる理由ではあります。アンワル逮捕が誰の指示かは歴史がそのうち明らかにしてくれるでしょう。推測は止めておきます。
「残念ながらマハティール首相は大きな犠牲を払った。彼を気の毒に思う、私の同情はマハティール首相に向かう。」 「アンワルに対しても同情する。アンワルは副首相時代にマハティールを支持し、彼の後を継ごうとしていたのだ」
このリーの言葉には多くの人が意外感を持ったかもしれません。リークアンユーが政治的な意図からかそれとも心から正直に語ったのかそれは筆者にはわかりません。しかしマハティール首相への応援に結果としてなることは確かですね。
全体の発言は、うーんという極めて率直で含蓄に富んだ発言だと思いました、マレーシアを訪れた他国の政治家でここまではっきりとものをいう政治家はありません、米国の論理から単なる批判を述べた米国のアルブライト国務長官のようなのはいますが、彼女は全くのアジア音痴のごりごりの米国主義者でその発言はとてもまともに論ずる対象ではありません。マレーシアを知りぬいて尚且つそれをはっきりとした言葉でマハティール首相のミスまでクアラルンプールでの記者会見で指摘したリークアンユーの言葉は重みを持ちますね。シンガポールの利益第一を掲げていても、彼の発言は批判のための批判でないことは明らかですね、シンガポールとマレーシアがいがみ合っていて得なことは、両国とも何もないでしょうから。だからこそ彼は堂々としてマハティール首相のミスを指摘し且つ同情を述べています。
マハティール批判の言葉はもちろん野党から聞こえるし、インターネットでは飛び交っています、しかし1国の指導者が、マレーシアの土地で理解と同情を込めて批判も述べたというのは初めて聞くことですね。ここにリークアンユーの非凡さがあり且つマレーシア人が彼を愛憎する原因でもありますね。憎悪といういい例は、何年か前リークワンユーがジョーホール州を評して、その犯罪の多さで悪名高いなどと述べたことがマレーシア国民の反感を招き、マレーシア人の抗議行動と政府の公式反論を招いたことがあります。いくらマレーシアを知り尽くしていても、彼の発言の全てが的を得ているとか合っている訳ではない例ですね。
7月はじめにペラ州で起きた軍隊基地からの武器強奪して山中に立てこもり非ムスリムの人質2人殺害したイスラム教逸脱グループの事件に関して、「この事件そのものをマレーシア政府が製作した劇だという意見を信じる人がいるのはばかげたことだ。」 「世界の国で、武器を強奪し保安当局の人命と引き換えにその武器を取り戻すというようなことをする政府は存在しない。」 「そんなことがありえるか?どんな政府もそんなことをやりません。」 「私が事実だと思うことを野党の人々が疑問視していることに当惑しています。」 「 (たくさんの武器を短時間に車に載せられないと訴えていた反対勢力を納得させるために)政府が盗まれたのと同じ数の銃器類を3台のパジェロに詰みこむことを再現してみなけらればならなかったと告げられて、私は非常に驚いた。」 「(この事件を疑うなんて)ばかげたことだ。」
この武器強奪人質事件はまだまだ精細が明らかにされていませんし、公判も始まっていませんので、決定的なことをいうのは時期早々ですが、事件自体を政府のでっち上げと言う論は、筆者もばかげていると思います。
「2国間に関する限り、私が今回マレーシアに来る前よりも去る今は多少楽観的である。」 「PAS党がもし政権を握ったらもっと柔軟に成らざるを得ないであろう、非ムスリムの支持を得るために(PASは)新しいイメージを作らなければ成らないだろう。」 「そういうPAS党であれば此の世の終わりではないかもしれない。しかし(独立以来の現支配政党の)UMNOと付き合う方がもっと気楽に眠られる、なぜならUMNOは私が1940年代から知っている政党だから。」
「UMNOと付き合う方がもっと気楽に眠られる」とは言い得て妙なる表現です。いずれにしろ老獪且つ自信に満ちたシンガポール指導者いやアジア有数の政治家の言わしめる発言の数々ですね。マレーシアの土地で記者会見上これほど正直に且つ的を得た内容を語った政治家は最近はいません、といえると思います。少なくともマスコミに載る言葉としてこれを上回る発言を筆者は読んだ記憶はありません。だからあれほどエリーティズムと優劣主義に満ちた国シンガポールを作り上げ、今も国民から畏怖されているのでしょう。そしてマレーシア国民は彼を愛憎し、筆者もそれに比べれば程度はずっとずっと落ちるし違う意味で、リークアンユーを愛憎しますね。
リークワンユーの発言はシンガポールの利益をバックにしたマレーシアへの見方であるのは当然ですが、その中にマレーシア人としても聞くべき意見があることは認めてもいいでしょう。リークアンユーが語るマレーシアが何よりも優れているなどと、筆者は思っているわけでも、読者に説得しているわけでもないことはおわかりですよね。リークアンユー発言は結果としてマレーシア現支配層に有利な発言ではあるが、単なるごますり発言ではなく貴重な見方だという認識でこれを紹介したのです。