・ヘイズをもたらすためにスマトラがまたまた話題語になった
・マレーシア警察に対する政府諮問委員会の調査報告と提案書−前編 ・その後編
・インターネット接続とブロードバンド接続の現状はいかに ・数字で見たマレーシア、 その27
・DBKL、MPPP といった自治体名と略称を解説します
昨年末のスマトラ沖地震で”スマトラ(島)”という単語が時の話題語になり、とりわけアチェがものすごい注目を浴びましたね。次いでわずか数ヵ月の間隔で起きた再発した第2のスマトラ沖地震では、スマトラ島の北部の一部が被害を受け、ニュースでまた”スマトラ”という単語がしばしば取り上げられました。
しばらくスマトラという単語がマスコミから消えていたところ、この8月初め突然マレーシア半島部の西海岸を襲ったヘイズのために、またまた”スマトラ”という地名単語がニュースに頻繁に登場するようになり、時の話題語になりました。尚ヘイズそのものは年中行事なので、突然というのはあまりふさわしい形容ではないですが、今回のヘイズ襲来においてはという意味であり、マレーシアのマスコミも 「突然襲ったヘイズ」という形容をしていました。
大多数のマレーシア人にとって、トバ湖、メダンなどごく少数の場所を除いてスマトラは観光目的の旅行地ではありません。ビジネス目的の面では工業分野が未発達なので、ごく限られた分野のビジネス目的で訪れる人に限られます。日本人にとっては、マレーシア在住者を含めて、スマトラはどんな意味でも目的地ではないのは間違いないでしょう。日本からスマトラへのツアーは果してあるのだろうか(ないのではないでしょうか)。よってスマトラ沖地震が起きなければ、大多数の日本人はアチェという地名を一生耳にする、目にすることがなかったことでしょう、またマレーシア旅行する予定がなければ、スマトラから渡ってくるヘイズなどというニュースに注意を払われなかったことでしょう。
まことに皮肉なことに、自然災害の起こした大悲劇とスマトラの企業と住民が起こす人為的とも言える火災が引き起こしているヘイズによって、ニュースの中でスマトラという単語が、一時的ではありますが、日本人の目に届いたまたは触れることになっているようですね。
そこでスマトラを何回も訪れたことのある、ごく少数の日本人として、今回のヘイズ被害と騒動に絡めてスマトラのことをちょっと書いてみます。尚私は外国人が足を踏み入れることを禁止される前のアチェを複数回訪れたことがあり、その当時書いた旅行記を 「今週のマレーシア」 の第415から417回で 「スマトラ島アチェとマレーシアの関わり及びアチェ旅行記から 」 として掲載しています。アチェという地方の姿を描写していますから、興味を抱かれたらお読みください。
さてなぜスマトラがマレーシア半島部を襲うヘイズの元凶となっているか? もう何年も前からその度に報道されているので、マレーシア人ならほとんどの人は多少に関わらず次ぎのような説明を読んだり聞かされてきました:プランテーション農園開発のためにあちこちで広大な面積の森林を伐採し燃やす、それが引き起こす煙がモンスーン気流に乗ってマラッカ海峡を渡って半島部に広がる。
マレーシアに、とりわけマレー半島西岸部にヘイズをもたらしてきたし、今回ももたらしている主たる原因は、スマトラ島での森林伐採燃やしにあるというのが、専門家や関係者の一致した見方のように、マスコミではこれまで報道されてきました。
マレーシアの都市部で発生する自動車の排気ガス、各地の住民などがよく起こす空き地や野原での違法な廃棄物燃やし、マレーシアの2、3の州で発生するピート炭土地の火災、農民が慣習的に行う農地焼き などもヘイズの原因であるのは間違いありませんが、やはり主たる要因はスマトラからやってくるということのようです。6月から9月にかけてのヘイズシーズンにおける天候が乾季であるというのは確かに要因ですが、これは人為的なものではないので、これを論じてもことは始まりませんね。
たくさんのヘイズ被害記事と市民の憤慨を伝える記事共に、ヘイズ解説記事とインドネシアでの取材記事も新聞に現われました。その中で説得力のある記事を紹介しておきます。下記に翻訳したのは、Star 紙の8月16日付けの環境特集ページに載った記事からの抜粋です。この記事(2人の共同記事)を書いたのは、環境問題を多分専門にしていると思われる Tan Cheng Li 記者です。この人の記事は現地調査がしっかりとしており、視点が確かなので、これまで当コラムでは、例えばルダン島に関するコラムなどでこの記者の記事を数編紹介したことがあります。
焼けるような苦しみ(見出し)
この記事を読むと、”プランテーション農園開発のためにあちこちで広大な面積の森林を伐採し燃やす”というのは煙発生の要因であることには違いないが、その唯一の要因ではないようです。これまでの通説に多少の訂正が必要だと感じますね。
その翌日、インドネシアで取材した別の記者の記事が載っています。これを書いたのはイラクとアチェでの取材において優れた記事を発表してきた記者(女性)なので記事署名で気がつきました。こちらの記事もなかなか説得力のある記事に思えましたので、引用翻訳しておきます。
8月17日付け「燃え盛る地点の多くは小規模保有者の土地からである」
インドネシア政府、地方トップといった公式筋が発言したことばがマスコミに載るので、それから浮かぶ姿は当然これと違ったものです。インドネシアのマスコミが捉えた姿は恐らく公式筋の発言とは違うはずです、しかしそれを読む機会がない私はどんなものか知ることができません。インドネシアマスコミがここで紹介した姿と違ったニュアンスで伝えていてもおかしくはないでしょう。
いずれにしろ、これまでマレーシアマスコミが伝えてきたまたはマレーシア人が知らされてきた通説とは幾分違った姿であることがわかります。上記の記事がどの程度の正確さを持っているかは、もちろん私に断定はできません。ただマレーシアのマスコミはスマトラ取材に関しては、少なくとも西側報道よりもスマトラへのアクセスの良さと言語などの近似性、取材経験の多さの点から西側報道よりも質は高いと私は判断します。
さてスマトラ島はマラッカ海峡を挟んだマレーシアのすぐ隣に位置します。マラッカ海峡があまり幅広くないことから、地理的にかなり”隣人”だと言えます。よって昔からスマトラとマレー半島は交易と人の行き来、マレー半島への移民を通じてかなり密接な関係がありました。人の交流が関わるので当然文化の交流伝播も伴います。さらにマレー人にとってはイスラム教の伝播経由地でもあったようです。半島部マレー人の場合、先祖がスマトラから渡ってきた移民である人は、決して例外的存在ではありません。
歴史の本を開けば、ジョーホール・リアウ王国などというマレー半島とスマトラの両方に支配・領地を持つ王国も存在したのです(18世紀)。
こうしたことから現在のマレーシアの半島部とスマトラ島とは歴史、文化、宗教、交易の面で切っても切れない関係であったはずです。しかし現代ではこうした意識はマレーシア人の中であまり大きくはないでしょう、とりわけ非マレー人の間でほとんど認識されていないと思えます。それはひとえに、ビジネスと観光の面で、スマトラはマレーシア人大多数にとって、第1はもちろん第2でも第3の選択・対象地ではないからです。尚マレー半島西岸とスマトラの間では、小型船による一次産品などの交易が昔から盛んです。
人的面では、スマトラのインドネシア華人が、90年代後半に起きた華人排斥暴動時にマレーシアに避難して来たように、華人界でのつながりはありますし、スマトラのインドネシア人はマレーシアへの外国人労働者主要供給源の一つです。
インドネシア社会のあり方、経済の仕組み、政治構造から推測すれば、スマトラでプランテーション開発のための森林伐採燃やしと小規模農民らの燃やしが、おいそれと止むことはありえないでしょう。なぜならこれらの行為はインドネシア社会に深く深く根のあることに結び付いているからです。単に環境に悪い、健康に悪いという理由からスマトラの民とプランテーション企業が燃やし行為をあきらめる、止めるだろうと期待してもがっかりするでしょう。今年はまだ当分あります、そして来年も、再来年も、上空の大気の流れ次第ではマレー半島に大量の煙が運ばれてきてヘイズ状態を引き起こすことになるでしょう。所詮マレー半島とスマトラは狭い所では100Kmも離れていない”隣人”なのです。
マレーシア警察全体を見なおすために、アブドゥラ首相の首唱のもと、2004年2月にロイヤル(王立)諮問委員会が組織されました。議長に前連邦裁判所長官、副議長に元警察庁長官を起用し、在野の人材も加えた総勢16人、その内女性3人、の委員会が1年かかってまとめた報告書が5月に政府に(名目上は国王宛てに)提出され、一般国民にも有料で発売されました。
この委員会は、警察に関する政府諮問委員会としては以前の例とは比べものにならない規模であり、且つ日月をかけて調査し、分厚い報告書をまとめました。そしてその報告書を全公開したことは、マレーシア警察に関することとしてはまこと画期的なことです。 委員会の構成は副議長だけが警察出身者で、それ以外の15人はすべて警察とは関係ない分野の人たち、すなわち法曹出身者、政治家、企業人、さらによく知られた女性のNGO活動家らから構成されています。この意味では、警察の顔をほとんど気にすることなく報告書をまとめられたでしょうから優れた委員構成といえるでしょう。
マレーシアに限らずどの国であれ警察は権力機構ですから、その力を公然化させています。それだけでなく警察は隠然たる権力も持っていることは誰でも知っていますよね。この二つの権力に目を向けた時、マレーシアの警察は公然権力が日本の警察よりもかなり顕然としています。これはマレーシアという国のあり方にかかわることですから、良いとか悪いのではなくそういう特徴であるということです。
具体的な例を上げれば、各州の警察のトップレベルはいうまでもなく、郡レベル、市レベルでの警察管轄地域(police district という)の長も、階級位且つ氏名とともに丁寧に紹介されます。日本で言えば、地方のある市またはある郡の警察署長にあたるでしょう。こういう警察管轄地域のトップ及び準トップクラスの警察官が階級且つ氏名加えて時々写真入で、どこどこで何何した、なんと発言したなどと紹介されます。さらにどんな事件でも、何々警部とか何々刑事長の指揮のもとに何人の警察官が捜査、取締り、を行なった、と事細かに現場指揮クラスの警察官の氏名と階級位を必ず記します。どんな事件でもどんな新聞でもこれは同様です。下に例を示します:
つまり警察という機構自体の活動を報道するだけでなく、警察官個人にも報道面を割くのです。ある強盗事件で捜査担当の何何刑事がどう言った、ある交通事故現場に急行した何々巡査長と何々巡査が被害者らの救済にあたった、などとは日本の新聞では全く報じませんよね。「警察に因ればとか警察が」 で一括ですね、しかしマレーシアは違います。警察官個人個人に目を向けるのです。日本の新聞では絶対にありえない報道スタイルですね。
州警察トップクラスの紹介はまさに与党政治家並の扱いです。その州警察において、ある下級警官の汚職が見つかった、拘置中の外国人労働者を巡査が強姦した(実際にあった)、刑事が強盗団に加わっていた(珍しいことではない)、などという事件が起きても、マスコミがその州の警察トップ、その警察管区のトップを監督不行きや規律の乱れで批判することはありえません。
このようにマレーシアでは警察の公然権力が極めて顕然としているのです。
そこで正式名”王立マレーシア警察の行動と管理を高めるための王立委員会”に戻ります。
委員会の目的
警察の能率を高める、現代の法律施行下で警察力をより効果的にする、警察を尊敬される強力な法執行体に転換させる、ための方策を研究して提案すること。
委員会に要求される事項
いかにして警察の効率を高め信頼性を高めるかという報告書を提出すること。半年後に中間報告書を提出し、1年後に完全なる報告書を完成して提出すること。
返答者の中で、自分たちの近所で起る犯罪を、”心配またはたいへん心配している”と答えた人が89%を占めました。この高い比率に、委員会も深い憂慮で捉えているそうです。
返答者の内、18%弱が昨年なんらかの被害に遭った。しかしその内の76%だけが、警察に届け報告書を出したと答えました。委員会は、この18%弱の比率を高い比率であり、大きな憂慮する点であると、捉えています。
近所に警察官の姿があると答えた人は返答者の44%で、まったくないと答えた人が36%でした。自分たちの地域の安全に”たいへん不満足または不満足”の人の割合は、45%でした。近所で家宅侵入があったと答えた人、80%、ひったくりがあったと答えた人 65%です。
警察官に賄賂を渡すことに関しての質問では、返答者の22%がそうすると答えました、理由は罰金は面倒だから、罰金はその場で渡す賄賂より高いから、というものです。
なかなか正直な返答ですね。22% という数字がが思ったより少ないのか、多いのか、その捉え方はこの報告書を読む人によって違うことでしょう。しかし、”うそも方便、賄賂も方便” と割りきって正当化する人が増えれば増えるほど、その社会は建前と現実の乖離の激しい社会になっていきます。どんな社会であれ富みと権力の偏在はありますしなくすのは不可能ですが、その偏在をより大きなものにするのか、多少でも小さくする方向に向かうのか、という社会正義の論理と同じですね。
反汚職庁は、政府機間の中で最も腐敗している機間に警察が相当すると見ています。それは反汚職庁の扱いの中で警察に関するものがトップであり、その数は2位である地方自治体評議会に対する件数の3倍になるとのことです。一方委員会は、警察に対する汚職報告は実際よりぐっと少ないと見ています。その理由として、市民は警察官の汚職を報告することにより怖れを抱くからだろうというものです。
委員会は、複数の高級警察官の犯罪シンジケートとのつながり、捜査担当警察官が被疑者から賄賂を受ける、押収した麻薬、金、不動産をリサイクルする行為、などを汚職の例としてあげています。さらに警察組織内部での汚職も汚職リストに加えています。
市民が、もちろん外国人でもかまいません、が警察に訴えをだすことを Police Report を出すといいます。2003年に警察が受けたPolice Report の総数は1,894,989件でした。その内調査に入った件数 13%でした。民事的要素で財産押収とは関係ないゆえ”下級裁判所に委ねる”と処理された件数 13%、 特に対処しないと分類された件数 15%、さらなる調査は他官庁に委ねる件数 30%、その他報告とされた件数 28% 。 これらの結果として調査に入らないことになる件数がかなり多いので、一般市民が警察はPolice Report を出しても捜査しないと捉えてしまうことに寄与している、と委員会は見ています。
警察官というと、マレーシア人は先入観で低給料と考えるようですが、ロイヤル委員会は調査の結果、公務員の範疇からいえばそうではないと結論しています。なぜなら同等クラスの一般公務員及びマレーシア軍隊の軍人と比較して、警察官の初任給は決して見劣りしない、確かに初任給では軍人は警察官より多少警察官より高額であるが、しかし各種手当てを含めた総手取額では警察官は軍人よりもやや上回ります。いうまでもなく一般公務員は警察官と軍人にはぐっと及ばない額です。
同等の階級位 |
最低必要 学歴 | 初任給 |
住宅 手当て |
公務員 手当て |
特別 手当て | 合計額 |
警察 Assistant Super Intendant | Degree 大卒 | 1746 | 450 | 170 | 100 | 2466 |
軍隊 Captain 大尉 | Degree 大卒 | 1808 | 450 | 170 | 2428 | |
警察 Inspector 警部 | Diploma | 1280 | 420 | 115 | 100 | 1915 |
軍隊 Lietenant 中尉 | Diploma | 1361 | 420 | 115 | 1896 | |
警察 Constable 巡査 | SPM 高卒 | 690 | 230 | 80 | 100 | 1100 |
軍隊 Private 2等兵 | SPM 高卒 | 766 | 230 | 80 | 1076 |
通常の高卒程度である SPM卒ですぐ就職して、月給RM 1000以上はなかなかとれませんから、表で示された額なら特に低額ではないでしょう。もちろん警察という組織の持つ階級制の厳しさ、職業として危険に面することもある、勤務時間が昼夜に及ぶという条件からみれば、多少低いかなとも思います。ただ民間では仕事または能力次第では、例えSPM高卒の人でもどんどん稼げる機会もあるが、公務員たる警察官にその機会がないのは当然ですね。もちろん民間では不況、倒産などで首になることもあるし、減給になることもある、さらに転職しやすい、反面警察官にはそういうことはない。
大卒の初任給合計で見れば、民間会社のそれと比べれば、むしろ上回るのではないでしょうか。Assistant Super Intendant というのは高級警察官の入り口ですから、将来の高級幹部警察官候補ということです。
警察は軍隊と同じく階級制であり且つ任官時からその所属階層が退官するまで固定します。上表のように3階層にわかれます。巡査で警察官に任官しても、その上の中間幹部階層には昇任できませんし、中間幹部階層の任官ではその層内での昇任はもちろんありますが高級警官階層には昇任できません。
警察官といえば、すぐ浮かぶのがマレー人ばかりという印象です。現にこれは数字的に示されており、政府首脳、警察幹部はいつも警察官構成の民族バランスを、国民人口比にできるだけ近づけたいと発言し、華人層に警察への加入(就職)を呼びかけています。しかし目に見えた華人比率の上昇はまだないようです。報告書では委員会も、非マレー人の警察への参加の必要性を強調しています。
階級 | 民族 | マレー人 | 華人 | インド人 | その他 |
非マレー系 ブミプトラ | 合計人数 |
見習Assistant Super Intendant | 男性 | 74.8% | 10.1% | 6.5% | 0.7% | 7.9% | 139人 |
女性 | 58.3% | 20.8% | 12.5% | 8.3% | −− | 24人 | |
合計 | 72.4% | 11.7% | 7.4% | 1.8% | 6.7% | 163人 | |
Inspector 警部 | 男性 | 77.2% | 3.2% | 4.5% | 1.3% | 13.8% | 1286 |
女性 | 79.1% | 8.2% | 3.7% | 0.75% | 8.2% | 134人 | |
合計 | 77.4% | 3.7% | 4.4% | 1.2% | 13.3% | 1400人 | |
Constable 巡査 | 男性 | 77.1% | 2.1% | 4.3% | 0.34% | 16.1% | 13878人 |
女性 | 85% | 4.3% | 2.2% | 0.17% | 8.35 | 600人 | |
合計 | 77.5% | 2.2% | 4.2% | 0.33% | 15.8% | 14478人 | |
合計のみ人数表示です |
委員会の報告書に書かれたマレーシア警察への提案は多岐に渡るとのことで、それは、警察の主義、機能、組織、管理における改革さらに警察の責任を達成する関連法における改正を実施するべく目指したものだそうです。同時に警察官の生活と勤務上の情況も向上させることを目指しています。
このコラムで触れたのは、その多岐に渡る中の一部です。コラムを書くにあたっては、Star紙の2005年5月17日付け ”The Police Commision" という特集記事を参照し、データ、表、歴史はすべてこの特集記事から引用しました。
政府はこのロイヤル委員会の報告書を真摯に肯定的に受けとめて、慎重に検討していくとしています。外部の者が考えても、権力機構である警察をどんな意味であれ変えていく、警察が自主的に変わっていくことは容易なことではないはずですし、且つそれは年月のかかることでしょう。さらに目に見えない形、目に見える形の両面で警察内部からの抵抗もあることでしょう。しかし少なくとも現時点では政府は報告書を尊重する意思は示していますので、今後どのように政府自身が報告書の提案を実施していくか、または提案を修正したうえで実施していくか、興味あるところです。
当コラムでは、その初期にマレーシアのインターネット状況を描きましたが、年数が経ちかなり状況が変わってしまいました。そこで最近の状況に合わせる目的もあって、今回のコラム主題に選びました。
マレーシアの人口は、統計庁の推計統計によれば、2005年時点で約2600万人で、その内マレーシア国民が2千四百数十万人です。そこで国民の間における、インターネット利用は2005年前半または現在どういう状況になっているのでしょうか?最近新聞に載ったいくつかのデータ・数字を拾って、わかりやすく描いてみましょう。
マレーシアには、国のコンピューター及びインターネットに関連する政策の諮問を受け、その全体を統括し、携帯電話網とインターネットプロバイダーに関する免許を企業に授与する機間として、マレーシア・マルチメディアとコミュニケーション委員会(会議とも訳せる)という、政府翼下の機間があります。具体的な実務や施行は担当省のエネルギー・テレコミュニケーション・マルチメディア省が行うようですが、詳しい すみわけ まではわかりません。
でこのマレーシア・マルチメディアとコミュニケーション委員会が公表している報告書に寄れば、2005年第2四半期において、国民1万人あたりインターネット利用者は3400人と推定しています、つまり3人に1人という推定です。その推定数字の基になっているのは、
というものです。上記の3人に1人という数字と幾分食い違うのですが、そもそもインターネット接続登録者1人あたり3人がインターネット利用接続するということ自体が推定なので、この推定自体を深く検証しない限り、正確な推定値は出てこないですね。いずれにしろ多目に見積もって国民の半分つまり2人に1人、多少少な目に見積もって900万人近い人つまり3人に1人がインターネット利用者だということになるでしょう。加えて、マレーシア・マルチメディアとコミュニケーション委員会は、ブロードバンド利用者は100万人近いと推定しています。
尚マレーシア・マルチメディアとコミュニケーション委員会によれば、インターネット接続登録者は引き続き増加傾向にありますが、増加率に鈍りが出ているとのことです。年に約1%です。
えー、ほんとのそんなにたくさんのインターネット利用者が国内にいるの? というのが私の素直な感想です。赤ん坊から老人までいれて国民の3人に1人がインターネット利用者? マレーシア国内での地域差の大きさ、言語の多様さにも関わらずもっぱら英語コンピュータに圧倒的に偏っている現状、国民の所得額偏差の大きさ、外の文化をどう捉えるかという文化認識のあり方、などの諸状況を考えると、どう考えてもこの推定は多過ぎる推定のように思えます。といって、私にもこれを科学的に裏付けるデータを示すことはできません。
マレーシア・マルチメディアとコミュニケーション委員会に言われるまでもなく、マレーシアに通じているものなら誰でも知っているように、コンピューター関連の国内地域差はかなり大きなものです。インターネットに接続するには、無線接続、(多分ないはずの)光ファイバー、その他技術による接続のできるような例外的な環境下にいる人と場合を除いて、ほぼ電話線の架設に基づきます。
いわゆる発展途上国ではインフラ面で都市と田舎の間での地域の差の大きいことが一般的ですね。もはや発展途上国とは言い難いマレーシアですが、固定電話とインターネット普及率の面で地域差のはなはだしさはかなり大きいといえます。インフラ全体が半島部西海岸側と半島部東海岸側及びサバ州・サラワク州郡部で大きな差があることは公知の事実です。固定電話線の普及率でいえば、クアラルンプールが最高で24%で、東海岸州はぐっと下がりますし、サバ州・サラワク州郡部ではさらにまた下がります。固定電話線の普及率が低ければインターネット接続率が低いのは必然的であり、クランタン州では6.2% にすぎないそうです。悪いことにクランタン州ではこの2年、その普及率が下降しているとのこと。
マレーシア・マルチメディアとコミュニケーション委員会によれば、国内でこの固定電話の普及率が徐々に下がっています。2005年第2四半期において国民100人あたり17.2架線です、これはピーク時であった1998年の 19.7架線数に比べて明らかに下がっています。反対に携帯電話の普及率は急速に上昇して、各携帯電話会社の登録ユーザー数などから今や国民2人に1台強の普及率だと、その高さがしきりに公表されてきました。
しかし私はこの数字に以前から疑いを抱いており、当サイトでも疑問を投げかけてきましたね: プリペード電話の加入者数に相当なるダブりがあるし、1人で2台持つ人もいる。 来年初め各携帯電話会社は新規または使用中に関わらず全てのプリペード利用者の登録を開始しなければならないと、政府の決定がさなれましたので、正直な統計がいずれ公表されれば、携帯電話の保有率は2人に1人 という携帯普及率は間違いなく下方修正されると、私は思っています。
この固定電話の普及率の下降は、国民の間でのブロードバンド接続普及に障害とならないのだろうか?という疑問があるそうです。確かにそうですね。マレーシアにおけるブロードバンド接続は圧倒的多数つまり 97% がADSL接続です。1% がSDSL接続で、残り 2% が無線ブロードバンド及びその他の接続法です。
この現状とインフラ整備のなされ方を考慮すれば、今後数年間のブロードバンド接続の上昇は多分に固定電話線による接続による、つまりADSL接続になるということになります。すると電話線架設の率が伸びない、携帯電話に頼って固定電話を引かない人が増えるという、現象が現われている現状は、国民の間でのインタ−ネッ、トとりわけブロードバンド接続の普及率向上の目的に負の要因になりかねません。
固定電話線に寄らないブロードバンド接続が可能なことは多少知られていますし、世界にはそういう国が数少ないながらもあることでしょう。しかしマレーシアという国の現状から言えば、固定電話線を用いたADSL接続が施設整備の面で一番経済的であり、同時に利用者に比較的低利用料金を提供できるのです、つまり両面からADSL普及の可能性が最も高いのです。技術的に可能であっても、それが高負担高費用であれば、一部の高所得者層に限られてしまいます。この典型が、ごく限られた地域の特定企業や家庭向けのブロードバンド接続を提供している Time.dot.Com 社です、Time 社のブロードバンドが普及する見込みは当分ないでしょう。さらに光ファイバー接続の時代が、数年の後やって来ることは考えられません。
ブロードバンド接続の97%を占めるというADSL接続はもっぱらTM Net が提供しています。Telekomマレーシアの直系子会社であるTM Net はこの1、2年積極的に、ブランド名 Streamyx というブロードバンド接続を宣伝し、普及に努めています。その努力は確かに多といえますが、ADSL接続できる地域はまだまだ全国の郡部には達していません。
家庭向け | ダウンロード/アップロード | モデム | 月額利用料 | |
Streamyx Basic 512K | 512Kb/256Kb | なし | RM 66 |
ダイナミックIP アドレス Eメール1個 |
512Kb/256Kb | 付き | RM 77 | ||
Streamyx Basic 1.0 M | 1Mb/384Kb | なし | RM 88 | |
1Mb/384Kb | 付き | RM 99 |
ダイアルアップ接続数では、TM Net に大きく離されてその10%にも達していない契約者数である、第2位のプロバイダー Jaring の提供する非ADSL方式である無線ブロードバンドサービスの提供地域は首都圏の限られた地区に限られており、その契約者はまだまだはるかに少ない数です。上記の数字からもわかりますよね。
余談です、TM Net を主として利用している私はインターネット接続開始以来のJaring 利用者でもありますが、多少の高料金もあってまだブロードバンド化していません。
パッケージ名 | データの速度 | 月額利用料 | その他 | |
HOME BASIC | 最高 512 Kbpsまで | RM 100 | IP電話可能 |
ダイナミックIP アドレス |
HOME STANDARD | 最高 1 Mbpsまで | RM 125 | IP電話可能 |
尚主として、複数のカフェチェーンなどが顧客向けにWiFi サービスを無料提供していることは、都市部に住むITに関心ある方ならご存知でしょう。確かにクアラルンプール、ペタリンジャヤのような都市部のにぎやかな地区のカフェなど商業店舗では、顧客がラップトップを持参して手軽にWiFi が利用できるので便利になりました(といってラップトップを持たない私には関係ないです)。こういった顧客向けにWiFi サービスを提供する場所のことを一般に”ホットスポット”とマレーシアでは呼んでおり、この1年で5割増えて、1212箇所もあるそうです:Maxis Comunications が402箇所, TM Net が 745箇所, Time dot が 65箇所。
携帯電話の第3世代(G3)サービスが今年中頃ようやく開始されたので、それを使えば携帯電話及びPDA式の携帯データ通信機器でのブロードバンド接続は、理論的に可能です。しかし言うまでもなく、G3用の機器自体の値段の高価さ(RM 2,000 前後)と、データ通信費用の高料金設定から、当分一般大衆の選択にはならないことを、携帯電話網会社自身が認めています。そもそも3Gサービスを提供する携帯電話網会社 2社のサービス網自体が、限られた都市部だけです。
周知のようにインターネットの世界はまことに進歩と変化の早い世界ですよね。とはいえ、その技術進歩がごく少数の富裕層、マニア、技術エリート層を抜け出て一般大衆化するまでには、4年や5年の単位が必要ですから、マレーシアにおいて、ここで描写した状況が相当変わるのは、少なくとも3年という月日はかかるのではないでしょうか。
これまで断続的に掲載してきた 数字で見た シリーズです。マレーシアに関する様々な統計数字を掲載しています。ここでは、数字を視点にしてマレーシアの諸面を知ってください。
製品別 金額 RM | ||||||||
製品 | 電子・電気 | 原油 | 化学 | パームオイル |
液化天然 ガス | その他 | ||
輸出額 | 1245億 | 135億 | 130億 | 117億 | 101億 | 806億 | ||
輸出先別 金額 RM |
||||||||
輸出地 | アセアン | 米国 | 欧州連合 | 日本 | 中国 | 香港 | 西アジア | その他 |
輸出額 | 668億 | 486億 | 296億 | 247億 | 162億 | 150億 | 95億 | 428億 |
製品別 金額 RM | ||||||||
製品 | 電子・電気 |
機械 装置 | 化学 | 鉄と鐵鋼 | 精製石油 | その他 | ||
輸入額 | 902億 | 173億 | 158億 | 94億 | 90億 | 637億 | ||
輸入元別 金額 RM |
||||||||
輸入元 | アセアン | 日本 | 米国 | 欧州連合 | 中国 | 台湾 | 韓国 | その他 |
輸入額 | 504億 | 300億 | 267億 | 247億 | 223億 | 116億 | 102億 | 293億 |
マレーシアにとって日本は、外国からの投資受け入れ先主要国の一つです。今年は1月から5月までに日本からの(申請)直接製造投資額はマレーシアにとって2番目の大きさです。
マレーシア訪問の日本人旅行者数は今年上半期は158000人で、昨年同期の147000人より増えました。
分野 | 価格RM | 全体での比率 | 伸び率 |
電子電気製品 | 178億 | 36.8% | 10.2% |
石油・ガスなどを含んだ鉱物製品 | 135億 | 27.9% | 6.3% |
丸太を除いた木材製品 | 37億 | 7.7% | 31.1% |
パームオイルと丸太類を含んだ農業製品 | 26億 | 5.4% | 15% |
化学と化学製品 | 25億 | 5.2% | 37% |
その他 | 82億 | 17.0% | 25% |
総輸出額 | 485億 | 100% | 14.1% |
2005年は経済好調が続いています。
農業 | 鉱業 | 建設業 | 製造業 | サービス業 | 実質GDP | |
2004年第1四半期 | 3.8 | 5.9 | 0.9 | 12.5 | 6.4 | 7.8% |
第2四半期 | 3.2 | 1.2 | -1.7 | 11.9 | 7.8 | 8.2% |
第3四半期 | 6.1 | 4.2 | -3.0 | 9.9 | 6.1 | 6.8 |
第4四半期 | 7.3 | 4.4 | -2.6 | 5.5 | 6.5 | 5.8 |
2004年年間 | 5.0 | 3.9 | -1.5 | 9.8 | 6.8 | 7.1% |
2005年第1四半期 | 6.0 | 3.4 | -2.4 | 5.7 | 6.2 | 5.8% |
第2四半期 | 3.2 | -1.6 | -2.0 | 3.2 | 5.4 | 4.9% |
マレーシアの国家中期経済計画である 第9次マレーシア計画が来年度から始まります。この9次計画では、これまで実施された計画とは相当違いがでてくることになるだろうと予想されているそうです。このマレーシア計画をまとめるのは、内閣府の下にある経済計画部です。つまり 9次マレーシア計画はアブドゥラ首相の政権下で立案展開される初の5ヵ年計画ともなります。
予定として2005年終りに内閣に提示され、翌06年の3月には国会に提出されるそうです。
マレーシアの長期プランとしては、1991年に提起された 2020年までに先進国入りを目指す Vision 2020 がよく知られていますね。その前には第1次Outline Perspective 計画 1971年−1990年、第2次 1991年−2000年、第3次 2001年−2010年
この3つの中期経済計画 各5ヵ年 でどのように予算が使われたかを表示しますと、
総額 RM | 経済部門 | 社会部門 | 安全保証 | 一般行政運営 | |
第6次 | 585億 | 298億 | 147億 | 111億 | 27億 |
第7次 | 895億 | 431億 | 276億 | 114億 | 72億 |
第8次 | 1600億 | 666億 | 462億 | 162億 | 109億 |
国内の株式市場においてブミプトラの所有株が総発行株式の30%を占めるようにする、という国家の基本方があります。現時点ではまだ30%に達していないことを政府も認めています。
クアラルンプール株式取引所BursaMalaysia において、総発行株式の市場価額が多いトップ10企業における、ブミプトラと非ブミプトラのそれぞれが保有する株の占める割合を示す表です。この情報は国会で明らかにされました。
上場企業名 それを示すBhdは省略 |
市場総額 単位 RM 億 |
ブミプトラ 保有比率 |
非ブミプトラ 保有比率 |
外国人 保有比率 |
Khazanah Holding |
|
1 | May Bank | 430.5 | 63.1% | 8.14% | 18.76% | 10% |
2 | Telekom Malaysia | 392.3 | 17.68 | 24.12 | 23.0 | 35.2 |
3 | Tenaga nasional | 348.2 | 24.49 | 29.51 | 8.3 | 37.7 |
4 |
Malaysian Internasioanl Shipping Corp | 284.6 | 75.82 | 8.82 | 15.36 | |
5 | Public Bank | 243.3 | 21.53 | 41.73 | 36.72 | |
6 | Maxis Communications | 231.5 | 23.55 | 42.32 | 34.13 | |
7 | Sime Darby | 142.5 | 51.89 | 14.74 | 23.37 | 10 |
8 | Petronas Gas | 140.5 | 68.08 | 20.64 | 1.28 | 10 |
9 | Plus Expressway | 140.0 | 59.17% | 15.24 | 4.7 | 20.89 |
10 | Genting | 133.8 | 3.82 | 50.84 | 45.34 |
自動車会社名 | 05年下半期 | 04年上半期 | 05年下半期 | 04年上半期 |
Proton | 29.3% | 34.5% | 1位 | 1位 |
Perodua | 24.7 | 25.4 | 2位 | 2位 |
Hyundai | 2.8 | 3.9 | 7位 | 6位 |
Kia | 1.6 | 1.0 | 9位 | 13位 |
Kia-Spectra | 1.4 | 1.4 | 10位 | 9位 |
Chevrolet | 1.3 | 1.1 | 11位 | 11位 |
非国産車の総台数 | 97,635台 | 73、878台 | ||
非国産車の占める割合 | 37.4% | 33.8% | ||
国産車の占める割合 | 62.6% | 66.2% | ||
4輪車 |
|||||||||
メーカー | Proton | Perdana | Toyota | Nissan | Honda | MItsbishi | Mazda | その他 | 合計 |
盗難台数 | 4097 | 1091 | 946 | 481 | 322 | 227 | 119 | 539 | 7822 |
回収台数 | 1642 | 352 | 249 | 138 | 161 | 77 | 44 | 171 | 2834 |
2輪車 |
|||||||||
メーカー | Honda | Yamaha | Modenas | Suzuki | Kawasaki | Vespa | その他 | 合計 | |
盗難台数 | 23909 | 15724 | 5481 | 4851 | 555 | 103 | 937 | 51560 | |
回収台数 | 6819 | 3818 | 1625 | 1463 | 181 | 24 | 206 | 14136 |
1月1日から 9月26日まで |
2輪車運転者 と同乗者 |
自動車運転者 と同乗者 | 歩行者 | 自転車 |
貨物車 運転者 | その他 | 合計 |
2005年 | 2029 | 692 | 309 | 112 | 103 | 186 | 3431人 |
2004年 | 1951 | 583 | 341 | 124 | 133 | 161 | 3293人 |
調査専門会社AC Nielsen による各紙の読者数調査の結果です。発行部数ではありませんよ。
05年第2四半期 | 04年第2四半期 | 増減率 | ||
英語紙 | The Star | 116万 | 97万 | 20% |
New Straits Times | 33万 | 31万 | 8% | |
Malay Mail | 13万 | 11万 | 19% | |
Sun (無料配布) | 22万 | 15万 | 49% | |
マレーシア 語紙 | Utusan Malaysia | 146万 | ||
Burita Harian | 150万 | |||
Harian Metro | 145万 | |||
華語紙 | 星洲日報 | 114万 | ||
南洋商報 | 31万 | |||
光華日報 | 28万 | |||
光明日報 | 38万 | |||
東方日報 | 10万 | |||
タミール 語紙 | Tamil Nesan | 15万 | ||
Namban | 23万 |
次ぎの表は調査専門会社 Nielsen Media Research の発表したもので、半島部の15才以上の者があるテレビ局に対してその四半期で終る12ヶ月間に視聴したことのある率です。つまり常時見るテレビ局の率ではありません。どの局もそれほど変化してないようですね。
テレビ局 | TV1 | TV2 | TV3 | Ntv7 | Astro | 8TV |
2004年第1四半期 | 41% | 56% | 67% | 49% | 22% | 存在せず |
2005年第2四半期 | 40% | 53% | 65% | 42% | 25% | 23% |
1973年 | 2003年 | 減少率 % | |
ジョーホール州 | 39,700 | 23,000 | 42 |
ケダー州 | 10,250 | 7,900 | 23 |
クランタン州 | 300 | 150 | 50 |
マラッカ州 | 300 | 100 | 66 |
ヌグリスンビラン州 | 3,500 | 800 | 77 |
パハン州 | 3,500 | 3,000 | 14 |
ペラ州 | 56,500 | 43,000 | 24 |
ペルリス州 | 250 | 30 | 88 |
ペナン州 | 3,900 | 1,400 | 64 |
スランゴール州 | 32,000 | 17,000 | 47 |
トレンガヌ州 | 3,500 | 2,500 | 28 |
サラワク州 | 375,000 | 130,000 | 25 |
サバ州 | 366,000 | 346,000 | 5 |
合計 | 694,700ヘクタール | 574,880ヘクタール | 17% |
マレーシアにお住まいの在住者の圧倒的大多数の方にとって、それぞれの自治体の役所に赴いて自治体の定める一般向けサービスを受けるための申請をしたり、いろんな事業またはそれに伴う処理をすすめるための手続きを申し込んだり、不動産評価税を納めたりすることはまずないようです。強いてあると言えば、自家用車を運転する方が駐車違反の切符を受けて、その罰金を納めるためにその自治体の出納窓口を訪れることぐらいでしょう。その他のケースを考えれば、ペットを飼うために登録料を納めに行く、ぐらいかな。赤ん坊がいても保健サービスは自治体直接ではなく民間病院で受ける方の方が多いのではないでしょうか?
日本人を含めて居住する一般外国人が、その居住地の自治体役所・庁舎にまず縁がないのは、居住外国人をその自治体に登録する制度・仕組み自体がないからです。これはマレーシア市民にとっても同じで、別の自治体からある自治体に引っ越してきた時、転居をその自治体の窓口に届け出る制度・仕組みが存在しません。つまり日本でいうような形の住民登録制度はありません。住民基本台帳がない、よって住民税という概念自体も存在しません。
住民基本台帳はなくても、いわば”国民基本台帳”ともいうべきものは当然あります。マレーシア国民は例外なく全員、全国に220ほどあるという支庁・出張所を通して国家登録庁に出生時から義務として登録しなければなりません。そして一生変わらない身分登録番号に従がって、登録庁が発行した身分証明証を携帯する義務があり、官憲から提示を要求された時は提示する必要があります。もし死亡すれば、その近親者が国家登録庁に届け出なければなりません。この面での国民管理はすみずみまで行き渡っています。もっともごく一部の山間僻地とりわけサバ州とサラワク州の僻地では、出世時に親が子供の出生を届けなかったために、学校へも上がれず、マレーシア人でありながらマレーシア国民として認められていない人々がいることは、ニュースなどで時々取り上げられます。
さらに一般外国人が居住地の自治体役所・庁舎にまず縁がない理由を上げれば、国民健康保健、国民年金のような福祉の仕組みが存在しないからです。被雇用者が納める被雇用者福祉基金EPF への納入金は、雇用者が毎月の給料から天引きしてEPFへ直接納入しますので、役所は関与しません。全国民対象にした公による健康保健は制度自体存在しませんから、自治体の住民が保険料に関して役所から通知を受けたり、納めることも起りません。
一般国民がその自治体の役所に納入する主なものに、種種のビジネスを遂行するための免許認可手数料、広告物にかかる税、公共施設利用費、駐車違反、衛生条例違反などに課される罰金などがあります。その中で多分大きな割合を占めるであろうと推測されるのが、門戸税でしょう。これは、その自治体内にある土地、立つ住居、マンション(のユニット)、アパート(のユニット)、店舗、ビルなどの不動産に対する税金で、どこの自治体でも課されます(地方自治体法1976年に定めてあるそうです)。
評価額と税率を決めるのは各自治体です。よってその自治体に住んでいるが一切の不動産を所有しない住民には、自治体から課される直接税はありません。例えば私の例で言えば、クアラルンプールに10数年居住する私は不動産を一切保有していない、したことがないので、クアラルンプール市庁にこの税金を納めたことはありません。本当は不動産を所有して税金を少なからず納めるぐらいになりたいです(涙)。
日本人の場合、企業主または企業経営をされている方でも、例えばその会社が位置する自治体の定める免許、許可証、届け出の手続きを自分でその役所に足を運んでなさる方はまれでしょう。ほとんどの場合が、マレーシア人従業員が手続き書類を準備し役所を訪れる、または手続き代行などをマレーシアの業者に依頼していますね。よって長年ある自治体にある会社に務めていても、そこの役所に自分で出かけことのない日本人企業人は多いと推測されます。尚国家の機間であるいろんな省庁を訪問する日本人企業人は珍しくないことは、知っています。
こういった基本的状況・状態をまず語っておきました。そこで本題にはいります。
DBKL、 MPSJ、 MPPP などといった略称が記された自動車や公務員制服 を街で見かけても、その意味を知らない方が多いようなので、簡単に説明してみましょう。DBKL、 MPSJ、 MPPP という略語は新聞では多寡はあっても毎日必ず載るいわばニュース基本単語です。
マレーシアにはいわゆる市という自治体が数多くありますが、その中で大型で且つ政府の認定した政令市は10市ぐらいです(正確な数にちょっと自信がないので 約 ということです)。いずれもジョーホールバル、コタキナバル、イポー、シャーラム、アロースター、クチンなど、各州の州都ですが、全部の州都ではありません。首都クアラルンプールは当然この政令都市として分類されており、且つ連邦直轄領として国の行政機構の直接支配下にあります。他の市、町、村は各州の州行政の支配下です。
その政令市は名前の前に Majlis Bandaraya、MB という短縮形、という単語がつきます。Majlis とは理事会・評議会 という意味であり、 Bandaraya は大都市とでもいう意味です。直訳すれば大都市の理事会・評議会とでもなりますが、一般に Majlis Bandaraya は役所そのものを示しますので、市庁・市役所と訳すのが適当でしょう。
よって例を示しましょう。 スランゴール州の MBSA とは Majlis Bandaraya Shah Alam つまりシャーラム市庁のことです。ジョーホール州のジョーホールバル市は MBJB 、ペラ州のイポー市は MBI となり、ケダー州のアロースター市は MBAS となる(はずです)。
クアラルンプールは頭に DB が付くのです。 DBKL とは Dewan Bandaraya Kuala Lumpur の頭文字をとったものです。クアラルンプール大都市ホール・大会堂 とでも直訳できますが、それではおかしいのでつまりクアラルンプール市庁です。ここでの dewan は物理的な意味である 「ホール・大会堂」 から派生した意味合いである 「評議会・委員会」 という意味です。だからクアラルンプール市評議会 とも訳せますが、通常 DBKL と言えばは自治体クアラルンプールの役所そのものを意味しますので、クアラルンプール市庁と約すのが一番ふさわしいと私は思います。このDBKL という文字は住んでいる方だけでなく、旅行者でも注意してご覧になっていれば、民間の車ではなさそうな車や取締り部門の係官制服に記されていることに気が付かれることでしょう。
サバ州のコタキナバルも DBKK、Dewan Bandaraya Kota Kinabalu つまりコタキナバル市庁となります。この2つの市以外に DB の付く政令市があるかどうか、もしあるとしたらクチンでしょうが、残念ながら調べきれませんでした。
政令市を除く市は、Majlis Perbandaran、 省略形 MP がそれぞれ頭に付きます。Majlis Perbandaran とは市政機間の理事会・会議 とでもいう意味です、多くはその市・自治体当局を意味しますので 市役所または自治体役所と訳すのが良いでしょう。 Perbandaranは英語ではMunicipality と訳されていますね。
よってMP つまり Majlis Perbandaran の付く自治体の中で皆さんにも馴染みのある市名を書いておきましょう。
クアンタン Majlis Perbandaran Kuantan、 ランカウイ Majlis Perbandaran Langkawi、 マラッカ Majlis Perbandaran Melaka, ペナン島 Majlis Perbandaran Pulau Pinang など。
これにはおやっと思われる方もいらっしゃることでしょう。ジョージタウンを含めたペナン島は自治体としては政令市ではないのです。規模からいえば、アロースター、シャーラムよりずっと大きく、且つ英国植民地時代からの歴史ある古い市であるにもかかわらず、ジョージタウンは MB ではなく MP なのです。ジョージタウン市民から、なぜ MB に認めてもらえないのか、という疑問が出されていることは新聞などで何回も読んだことがあります。
クアラルンプールを核とすればそれを取り巻く首都圏の州である、スランゴール州に焦点をあてましょう。
ペタリンジャヤにお住みの方なら何度かは目にしたことのある MPPJ はMajlis Perbandaran Petaling Jaya のことであり、ペタリンジャヤ市役所と訳せます。ペタリンジャヤ自治体役所 は間違いではないが表現上はペタリンジャヤ市役所の方がふさわしいと思います。それでは、日本人在住者が少なからず住んでいる、上記の MPSJ の意味はもうおわかりですね: Majlis Perbandaran Subang Jaya スバンジャヤ市役所です。
スランゴール州にはこの MPPJ と MPSJ に加えて、MPAJ (Majlis Perbandaran Ampang Jaya), MPS (Majlis Perbandaran Sepang), MPK (Majlis Perbandaran Klang ) などの市があります。
ところでややこしいことがあるのです。上記の MPSJ つまり Majlis Perbandaran Subang Jaya を例として取り上げます。スバンジャヤ と聞いて一般にほとんどのマレーシア人が思い浮かべる地域は 地理的なSubang Jaya となります、一部の人は加えてBandar Sunway 地区もそれに思い浮かべ加えるかもしれません。 しかし行政上の単位としての自治体 Majlis Perbandaran Subang Jaya はこの2地域に限らず、もっとずっと広い地域を翼下に入れています、即ち地理上で一般に、Puchong , Sri Kembagan, Serdang とそれぞれ呼ばれる地域も MPSJ の管轄下に入るのです。Subanga Jaya 自治体の真中あたりを、連邦直轄領である Putra Jaya自治体が占めています。よってMajlis Perbandaran Subang Jaya の治める地域は奇妙な形をしています。
こういったことは、その地域の住民でないと(ここではMPSJ の住民でないと)なかなかわからないことであり、他地域の全く関係ないマレーシア人住民でもこれを知っている人はごく少ないはずです(知らないからといって別に不都合なことは全くない)。行政上の自治体と伝統的な地理上の地域名が一致しないという例は、全国に少なからずあると推定されます。
ここで説明した行政単位である Majlis Perbandaran と Majlis Bandaran と Dewan Bandaraya にはその自治体の長及び評議会 (majlis)を構成する評議会員 がいます。Dewan Bandaraya の場合、長というのはいわば市長にあたり、Mayor (Datuk Bandar) と呼ばれており、評議会員 (Councillor) というのは誤解を怖れずに例えれば市議会議員みたいなものです。Majlis Perbandaran の場合、長は評議会の議長 (President) で、強いて言えば市長ですね。そして評議会員(Councillor) がいます。
マレーシアの自治体では長も評議会員も、直接であれ間接であれ住民の選挙によっては選ばれません、その州上層部の任命です。具体的にどのような過程と形でこの選出がなされるかは私もよくわかりません。
評議会員は市の規模などによって人数に違いがあり、クアラルンプール市庁のような大都市を除けば、10人くらいから10数人というところでしょう。定数があると仮定した時、これまた具体的な定数の決め方などは私は知りませんし、マレーシア国民の中で知っている人が果してどれくらいいるのか疑問です。評議会員が地域選出ではないということもあって、その評議会員が担当地域の面倒をみない、という苦情が時に新聞の記事や苦情投書になります。自治体の評議会員のような職にある者を選ぶ際に、マレーシアという土地柄を考慮した時選挙が一概に良いとまでは言えないかもしれませんが、担当地域の面倒をみないような評議会員を罷免するような仕組みのないマレーシアでは、任命する側の責任はより重要ですね。
各州はそれぞれ市と分類される自治体と 市 と分類されない自治体から構成されます。この市 と分類されない自治体に関しては、知識をつけていつか書いてみたいと考えています。