「今週のマレーシア」 2005年9月と10月のトピックス

・ヘイズをもたらすためにスマトラがまたまた話題語になった
マレーシア警察に対する政府諮問委員会の調査報告と提案書−前編  ・その後編
インターネット接続とブロードバンド接続の現状はいかに  ・数字で見たマレーシア、 その27
DBKL、MPPP といった自治体名と略称を解説します



ヘイズをもたらすためにスマトラがまたまた話題語になった


昨年末のスマトラ沖地震で”スマトラ(島)”という単語が時の話題語になり、とりわけアチェがものすごい注目を浴びましたね。次いでわずか数ヵ月の間隔で起きた再発した第2のスマトラ沖地震では、スマトラ島の北部の一部が被害を受け、ニュースでまた”スマトラ”という単語がしばしば取り上げられました。

しばらくスマトラという単語がマスコミから消えていたところ、この8月初め突然マレーシア半島部の西海岸を襲ったヘイズのために、またまた”スマトラ”という地名単語がニュースに頻繁に登場するようになり、時の話題語になりました。尚ヘイズそのものは年中行事なので、突然というのはあまりふさわしい形容ではないですが、今回のヘイズ襲来においてはという意味であり、マレーシアのマスコミも 「突然襲ったヘイズ」という形容をしていました。

観光とビジネス面では順位の低いスマトラ

大多数のマレーシア人にとって、トバ湖、メダンなどごく少数の場所を除いてスマトラは観光目的の旅行地ではありません。ビジネス目的の面では工業分野が未発達なので、ごく限られた分野のビジネス目的で訪れる人に限られます。日本人にとっては、マレーシア在住者を含めて、スマトラはどんな意味でも目的地ではないのは間違いないでしょう。日本からスマトラへのツアーは果してあるのだろうか(ないのではないでしょうか)。よってスマトラ沖地震が起きなければ、大多数の日本人はアチェという地名を一生耳にする、目にすることがなかったことでしょう、またマレーシア旅行する予定がなければ、スマトラから渡ってくるヘイズなどというニュースに注意を払われなかったことでしょう。

まことに皮肉なことに、自然災害の起こした大悲劇とスマトラの企業と住民が起こす人為的とも言える火災が引き起こしているヘイズによって、ニュースの中でスマトラという単語が、一時的ではありますが、日本人の目に届いたまたは触れることになっているようですね。

そこでスマトラを何回も訪れたことのある、ごく少数の日本人として、今回のヘイズ被害と騒動に絡めてスマトラのことをちょっと書いてみます。尚私は外国人が足を踏み入れることを禁止される前のアチェを複数回訪れたことがあり、その当時書いた旅行記を 「今週のマレーシア」 の第415から417回で 「スマトラ島アチェとマレーシアの関わり及びアチェ旅行記から 」 として掲載しています。アチェという地方の姿を描写していますから、興味を抱かれたらお読みください。

注:スマトラ島は広大な面積を持ちます(正確な数字が手元に見つかりません)。 マレーシア半島部の数倍です。 マラッカ海峡を挟んでマレー半島に対面しているのは、その巨大なスマトラの北の部分です、つまり最北のアチェ、北スマトラ、リアウRiau、の3地方です。スマトラのその他地方である、Jambi, 南スマトラ、Lampung などはマレー半島と対峙していません。尚これらの地方名はインドネシアの行政的分類に基づいています。
スマトラをこれまで何回か訪れて放浪してきた私は、スマトラ北部にあたるアチェと北スマトラ、スマトラ中部にあたるメダン、Riau と西スマトラを訪れましたが、スマトラ南部はどの地方も訪れたことがありません。


マレー半島にヘイズを発生させる主たる元凶

さてなぜスマトラがマレーシア半島部を襲うヘイズの元凶となっているか? もう何年も前からその度に報道されているので、マレーシア人ならほとんどの人は多少に関わらず次ぎのような説明を読んだり聞かされてきました:プランテーション農園開発のためにあちこちで広大な面積の森林を伐採し燃やす、それが引き起こす煙がモンスーン気流に乗ってマラッカ海峡を渡って半島部に広がる。

マレーシアに、とりわけマレー半島西岸部にヘイズをもたらしてきたし、今回ももたらしている主たる原因は、スマトラ島での森林伐採燃やしにあるというのが、専門家や関係者の一致した見方のように、マスコミではこれまで報道されてきました。

マレーシアの都市部で発生する自動車の排気ガス、各地の住民などがよく起こす空き地や野原での違法な廃棄物燃やし、マレーシアの2、3の州で発生するピート炭土地の火災、農民が慣習的に行う農地焼き などもヘイズの原因であるのは間違いありませんが、やはり主たる要因はスマトラからやってくるということのようです。6月から9月にかけてのヘイズシーズンにおける天候が乾季であるというのは確かに要因ですが、これは人為的なものではないので、これを論じてもことは始まりませんね。

説得力ある記事

たくさんのヘイズ被害記事と市民の憤慨を伝える記事共に、ヘイズ解説記事とインドネシアでの取材記事も新聞に現われました。その中で説得力のある記事を紹介しておきます。下記に翻訳したのは、Star 紙の8月16日付けの環境特集ページに載った記事からの抜粋です。この記事(2人の共同記事)を書いたのは、環境問題を多分専門にしていると思われる Tan Cheng Li 記者です。この人の記事は現地調査がしっかりとしており、視点が確かなので、これまで当コラムでは、例えばルダン島に関するコラムなどでこの記者の記事を数編紹介したことがあります。

焼けるような苦しみ(見出し)

国際的な援助団体、主として日本、カナダ、ドイツ、EUからと食料と農業機間、は森林火災の抑制を向上させようと何百万ドルもの金をインドネシアにつぎ込んできました。それは大火災の起きた1982年以来ずっとであり、しかしインドネシアでの森林火災は毎年毎年起きています。

この金は次ぎのような様々なプロジェクトに宛てられました:火災危険評価、火災の多い地区の地図上の特定化、火災発見と監視、消防訓練、消防道具、燃やさない政策の立案と燃やさない方式の奨励など。監視システムの向上で、4月にスマトラで燃える地点が発見されました、しかしそれは火災が広がっていくことを防ぐことはほとんどできませんでした。

ジャワ島のBogor にベースを置くNGOである Wetland International Asia-Pacific の技術理事は語る、「インドネシアにはたくさんの広大なピート炭(泥炭)の土地がある。そこでその土地が保護されなければ、劣化した土地をリハビリしなければ、火災はもっと起きるでしょう。」「(農民が土地を燃やすという)この種の問題は生活のかかっていることです。彼らの生活がぎりぎりのところにある時、そういう農民に森林を守れとはいえない。」

 「援助団体によるプロジェクトの結果は、地元の農民コミュニティーに届いていません。」 「土地に基づくプロジェクト、とりわけピート炭の土地で農業することへの代替を農民に与えるプロジェクトがもっと効果的であると思う。」 「スマトラ島のRiau地方だけでピート炭(泥炭)の土地は460万ヘクタールもある、これはスマトラ全体でのピート炭の土地700万ヘクタールの半分以上にあたります。」 「コミュニティーに直接援助がない限り、火災は起きます。」

農民を援助することは不可欠なのです。今回のヘイズの元凶として農民を指差す声があります:インドネシア環境省の副大臣は述べる、「スマトラでの火災の30%は森林からであり、70%は農地からである。その農地の内、私有の農地からが70%を占め、プランテーション農園からは30%である。」 と。
農民がピート炭の土地を燃やす、それは結果として灰が土地の酸性度を弱め、農業に適すようになるからです。この深く根付いた慣習は固執されています。
インドネシアのピート炭の土地の劣化はものすごく広範囲に及んでおり、リハビリの仕事は相当骨の折れることです。
以上は記事の抜粋


燃やし行為に関する通説理解の一部修正も必要

この記事を読むと、”プランテーション農園開発のためにあちこちで広大な面積の森林を伐採し燃やす”というのは煙発生の要因であることには違いないが、その唯一の要因ではないようです。これまでの通説に多少の訂正が必要だと感じますね。

その翌日、インドネシアで取材した別の記者の記事が載っています。これを書いたのはイラクとアチェでの取材において優れた記事を発表してきた記者(女性)なので記事署名で気がつきました。こちらの記事もなかなか説得力のある記事に思えましたので、引用翻訳しておきます。

8月17日付け「燃え盛る地点の多くは小規模保有者の土地からである」

(農園開発として森林、ピート炭の土地を燃やしている犯人として)スマトラで操業するマレーシア資本のオイルパーム企業が指差されていますが、記録が示しているのは、燃え盛っている地点の多くが小規模農園や村人に属する土地にあるということです。

世界自然基金WWFインドネシアは次ぎのように言っています:7月18日から8月11日までの期間で、スマトラで燃え盛る(または燃えた)地点2352箇所、すなわち48%が民衆の所有する土地で起きました。 その地点の内オイルパーム農園の占める割合は16.5%、812箇所であり、そのオイルパーム農園の多くはインドネシア資本です。

現時点(8月16日)でも依然として、ピート炭土地で燃え盛っている58ヶ所の土地が所属する大グループの一つに、インドネシア政府オイルパーム産業がある。さらにパルプ生産のために木材育成の許可を与えられた者たち、及び木材伐採による材木産出の権利を与えられた者たちに属する土地でもピート炭が燃えている。
スマトラのRiau地方の広さは900万ヘクタールであり、ピート炭の火災はすでにRiauの面積の90分の1にあたる97,000ヘクタールを焼いた。
Intraasia注:1ヘクタール=1万平方メートル、100ヘクタール= 1平方キロ、 よって 97,000ヘクタールは970平方キロ 

世界自然基金WWFインドネシアの係官によれば、比較すれば今回の燃やし状況は昨年ほどひどくはない、昨年はより広い面積が影響を受けた、以前カリマンタンでは100万ヘクタールの火事があった、とのこと。 前回と今回を比べた違いは、今回の場合は気流がマレーシアに向かって吹いているため、煙がマラッカ海峡を超えて大量に運ばれて行った、そしてひどいヘイズ状況に陥ったことにある、ということです。

この係官は説明を続けて語る、「(スマトラを撮った)衛星写真から判断すれば、燃えている地点は整っており正方形の形である、それが暗示するのは組織的に行われたということです。 それとは別に、いくつかの場所、とりわけ小規模農民の土地では火災は手におえない奔放さで、至るところに広がっている。乾いた天気のために素早く広がっている、人々は消火する道具も手段もないからです。」

「この地では土地の所有は敏感な問題です。政府がある会社にある土地の使用を認める。住民はその土地に住み続けたいために反対する。彼らは復習の意味でその地の森林に火をつけることもある。企業の農園や森林地の中に住んでいる非法住民が、企業にとって問題の種になることもあり、当地でこれは数多く起ってきました。」

「広大な土地を持つ大プランテーション企業は自前の消火隊とパトロールを備えるべきなのに、現実は多くはそうではない。」 「もしその所有地内で火災が起きれば、消火責任はその会社にあるのです。」
以上は抜粋


インドネシア政府、地方トップといった公式筋が発言したことばがマスコミに載るので、それから浮かぶ姿は当然これと違ったものです。インドネシアのマスコミが捉えた姿は恐らく公式筋の発言とは違うはずです、しかしそれを読む機会がない私はどんなものか知ることができません。インドネシアマスコミがここで紹介した姿と違ったニュアンスで伝えていてもおかしくはないでしょう。

いずれにしろ、これまでマレーシアマスコミが伝えてきたまたはマレーシア人が知らされてきた通説とは幾分違った姿であることがわかります。上記の記事がどの程度の正確さを持っているかは、もちろん私に断定はできません。ただマレーシアのマスコミはスマトラ取材に関しては、少なくとも西側報道よりもスマトラへのアクセスの良さと言語などの近似性、取材経験の多さの点から西側報道よりも質は高いと私は判断します。

スマトラとマレー半島はつながりが深い

さてスマトラ島はマラッカ海峡を挟んだマレーシアのすぐ隣に位置します。マラッカ海峡があまり幅広くないことから、地理的にかなり”隣人”だと言えます。よって昔からスマトラとマレー半島は交易と人の行き来、マレー半島への移民を通じてかなり密接な関係がありました。人の交流が関わるので当然文化の交流伝播も伴います。さらにマレー人にとってはイスラム教の伝播経由地でもあったようです。半島部マレー人の場合、先祖がスマトラから渡ってきた移民である人は、決して例外的存在ではありません。

歴史の本を開けば、ジョーホール・リアウ王国などというマレー半島とスマトラの両方に支配・領地を持つ王国も存在したのです(18世紀)。

こうしたことから現在のマレーシアの半島部とスマトラ島とは歴史、文化、宗教、交易の面で切っても切れない関係であったはずです。しかし現代ではこうした意識はマレーシア人の中であまり大きくはないでしょう、とりわけ非マレー人の間でほとんど認識されていないと思えます。それはひとえに、ビジネスと観光の面で、スマトラはマレーシア人大多数にとって、第1はもちろん第2でも第3の選択・対象地ではないからです。尚マレー半島西岸とスマトラの間では、小型船による一次産品などの交易が昔から盛んです。

人的面では、スマトラのインドネシア華人が、90年代後半に起きた華人排斥暴動時にマレーシアに避難して来たように、華人界でのつながりはありますし、スマトラのインドネシア人はマレーシアへの外国人労働者主要供給源の一つです。

ヘイズが今年限りでなくなることはありえない

インドネシア社会のあり方、経済の仕組み、政治構造から推測すれば、スマトラでプランテーション開発のための森林伐採燃やしと小規模農民らの燃やしが、おいそれと止むことはありえないでしょう。なぜならこれらの行為はインドネシア社会に深く深く根のあることに結び付いているからです。単に環境に悪い、健康に悪いという理由からスマトラの民とプランテーション企業が燃やし行為をあきらめる、止めるだろうと期待してもがっかりするでしょう。今年はまだ当分あります、そして来年も、再来年も、上空の大気の流れ次第ではマレー半島に大量の煙が運ばれてきてヘイズ状態を引き起こすことになるでしょう。所詮マレー半島とスマトラは狭い所では100Kmも離れていない”隣人”なのです。



マレーシア警察に対する政府諮問委員会の調査報告と提案書−前編


マレーシア警察全体を見なおすために、アブドゥラ首相の首唱のもと、2004年2月にロイヤル(王立)諮問委員会が組織されました。議長に前連邦裁判所長官、副議長に元警察庁長官を起用し、在野の人材も加えた総勢16人、その内女性3人、の委員会が1年かかってまとめた報告書が5月に政府に(名目上は国王宛てに)提出され、一般国民にも有料で発売されました。

注:マレーシアは君主国なので、時々この "royal"  王立、勅許 という単語を、公的機間、公的な行為に付け加えて、君主制の意味合いを民衆の意識により植え付けています。

この委員会は、警察に関する政府諮問委員会としては以前の例とは比べものにならない規模であり、且つ日月をかけて調査し、分厚い報告書をまとめました。そしてその報告書を全公開したことは、マレーシア警察に関することとしてはまこと画期的なことです。 委員会の構成は副議長だけが警察出身者で、それ以外の15人はすべて警察とは関係ない分野の人たち、すなわち法曹出身者、政治家、企業人、さらによく知られた女性のNGO活動家らから構成されています。この意味では、警察の顔をほとんど気にすることなく報告書をまとめられたでしょうから優れた委員構成といえるでしょう。

マレーシア警察の目に見える特徴

マレーシアに限らずどの国であれ警察は権力機構ですから、その力を公然化させています。それだけでなく警察は隠然たる権力も持っていることは誰でも知っていますよね。この二つの権力に目を向けた時、マレーシアの警察は公然権力が日本の警察よりもかなり顕然としています。これはマレーシアという国のあり方にかかわることですから、良いとか悪いのではなくそういう特徴であるということです。

具体的な例を上げれば、各州の警察のトップレベルはいうまでもなく、郡レベル、市レベルでの警察管轄地域(police district という)の長も、階級位且つ氏名とともに丁寧に紹介されます。日本で言えば、地方のある市またはある郡の警察署長にあたるでしょう。こういう警察管轄地域のトップ及び準トップクラスの警察官が階級且つ氏名加えて時々写真入で、どこどこで何何した、なんと発言したなどと紹介されます。さらにどんな事件でも、何々警部とか何々刑事長の指揮のもとに何人の警察官が捜査、取締り、を行なった、と事細かに現場指揮クラスの警察官の氏名と階級位を必ず記します。どんな事件でもどんな新聞でもこれは同様です。下に例を示します:

(記事の前部分は省略) この違法外国人取締りは、Imigresenの係官及び(警察の)一般行動部隊、Subang Jaya警察署の警官ら合計80人によって行なわれました。その際、Subang Jaya 警察管轄地域の副責任者( deputy OCPD と表記されます)である(階級位が)Supt である誰々(フル氏名表記)と 警察庁本部の(階級位が)Assist Supt である誰々(フル氏名表記)の2人が指揮を取りました。
Intraasia注:Assist Supt とはAssistant Superintendant の意味で、新聞ではこう表記されます。華語新聞ではもちろん華語に翻訳されて表記されます。


つまり警察という機構自体の活動を報道するだけでなく、警察官個人にも報道面を割くのです。ある強盗事件で捜査担当の何何刑事がどう言った、ある交通事故現場に急行した何々巡査長と何々巡査が被害者らの救済にあたった、などとは日本の新聞では全く報じませんよね。「警察に因ればとか警察が」 で一括ですね、しかしマレーシアは違います。警察官個人個人に目を向けるのです。日本の新聞では絶対にありえない報道スタイルですね。

州警察トップクラスの紹介はまさに与党政治家並の扱いです。その州警察において、ある下級警官の汚職が見つかった、拘置中の外国人労働者を巡査が強姦した(実際にあった)、刑事が強盗団に加わっていた(珍しいことではない)、などという事件が起きても、マスコミがその州の警察トップ、その警察管区のトップを監督不行きや規律の乱れで批判することはありえません。
このようにマレーシアでは警察の公然権力が極めて顕然としているのです。

ロイヤル委員会の目的と役割

そこで正式名”王立マレーシア警察の行動と管理を高めるための王立委員会”に戻ります。

委員会の目的
警察の能率を高める、現代の法律施行下で警察力をより効果的にする、警察を尊敬される強力な法執行体に転換させる、ための方策を研究して提案すること。

委員会に要求される事項
いかにして警察の効率を高め信頼性を高めるかという報告書を提出すること。半年後に中間報告書を提出し、1年後に完全なる報告書を完成して提出すること。

マレーシア警察のごく簡単な歴史

  1. マレーシア警察はその前史が19世紀後半の警察隊法令が立法された1871年にさかのぼるそうです。この警察隊法令が施行されたのは、当時の海峡植民地、すなわちペナン、マラッカ、シンガポールであり、司令本部はシンガポールに置かれました。この法律は1942年まで施行されました。
  2. いわゆる Federated Malay States すなわちスランゴール州、ペラ州、ヌグリスンビラン州、パハン州に統合した警察が出来上がったのが1896年です。その本部は現在の警察庁本部のある クアラルンプールのBukit Amanに置かれました。
  3. いわゆるUnfederated Malay States のジョーホール州、ケダー州、クランタン州、トレンガヌ州の警察力は、タイ人とマレー人から英国人が引き継ぎ、Federated Malay States の警察に似た組織にしました。ペルリス州の警察だけはマレー人トップ下にあったとのことです。
  4. サラワクとサバはそれぞれ独自の警察隊を持っていました。両警察隊はサバとサラワクのマレーシア国化つまり1963年のマレーシア成立によって、半島部のロイヤルマレーシア警察に吸収されました。
  5. 旧日本軍占領下にあった4年弱の間、それぞれの警察は日本軍統治行政組織の下に置かれました。
  6. 1950年代には国の組織のマラヤ化の中で、警察のトップ職位も徐々にマラヤ化されていきました。
  7. マラヤ共産党の活動とそれによる闘争劇化によって全国に非常事態法が発令され、そのため警察官が何倍にも増やされ、最多時の1950年には16万人ほどにもなりました。
  8. マラヤ連邦独立後の1958年7月には、ロイヤルマラヤ連邦警察という名称になりました。
  9. 1963年9月のマレーシア成立によって、ロイヤル(王立)マレーシア警察と名称が変更されました。


人員数と組織構成の面




マレーシア警察に対する政府諮問委員会の調査報告と提案書 -後編


ロイヤル(王立)委員会が市民対象に行なった調査

返答者の中で、自分たちの近所で起る犯罪を、”心配またはたいへん心配している”と答えた人が89%を占めました。この高い比率に、委員会も深い憂慮で捉えているそうです。
返答者の内、18%弱が昨年なんらかの被害に遭った。しかしその内の76%だけが、警察に届け報告書を出したと答えました。委員会は、この18%弱の比率を高い比率であり、大きな憂慮する点であると、捉えています。

近所に警察官の姿があると答えた人は返答者の44%で、まったくないと答えた人が36%でした。自分たちの地域の安全に”たいへん不満足または不満足”の人の割合は、45%でした。近所で家宅侵入があったと答えた人、80%、ひったくりがあったと答えた人 65%です。

警察官に賄賂を渡すことに関しての質問では、返答者の22%がそうすると答えました、理由は罰金は面倒だから、罰金はその場で渡す賄賂より高いから、というものです。

なかなか正直な返答ですね。22% という数字がが思ったより少ないのか、多いのか、その捉え方はこの報告書を読む人によって違うことでしょう。しかし、”うそも方便、賄賂も方便” と割りきって正当化する人が増えれば増えるほど、その社会は建前と現実の乖離の激しい社会になっていきます。どんな社会であれ富みと権力の偏在はありますしなくすのは不可能ですが、その偏在をより大きなものにするのか、多少でも小さくする方向に向かうのか、という社会正義の論理と同じですね。

汚職の件

反汚職庁は、政府機間の中で最も腐敗している機間に警察が相当すると見ています。それは反汚職庁の扱いの中で警察に関するものがトップであり、その数は2位である地方自治体評議会に対する件数の3倍になるとのことです。一方委員会は、警察に対する汚職報告は実際よりぐっと少ないと見ています。その理由として、市民は警察官の汚職を報告することにより怖れを抱くからだろうというものです。

委員会は、複数の高級警察官の犯罪シンジケートとのつながり、捜査担当警察官が被疑者から賄賂を受ける、押収した麻薬、金、不動産をリサイクルする行為、などを汚職の例としてあげています。さらに警察組織内部での汚職も汚職リストに加えています。

市民が届けた警察リポートの扱い

市民が、もちろん外国人でもかまいません、が警察に訴えをだすことを Police Report を出すといいます。2003年に警察が受けたPolice Report の総数は1,894,989件でした。その内調査に入った件数 13%でした。民事的要素で財産押収とは関係ないゆえ”下級裁判所に委ねる”と処理された件数 13%、 特に対処しないと分類された件数 15%、さらなる調査は他官庁に委ねる件数 30%、その他報告とされた件数 28% 。 これらの結果として調査に入らないことになる件数がかなり多いので、一般市民が警察はPolice Report を出しても捜査しないと捉えてしまうことに寄与している、と委員会は見ています。

警察官の給料

警察官というと、マレーシア人は先入観で低給料と考えるようですが、ロイヤル委員会は調査の結果、公務員の範疇からいえばそうではないと結論しています。なぜなら同等クラスの一般公務員及びマレーシア軍隊の軍人と比較して、警察官の初任給は決して見劣りしない、確かに初任給では軍人は警察官より多少警察官より高額であるが、しかし各種手当てを含めた総手取額では警察官は軍人よりもやや上回ります。いうまでもなく一般公務員は警察官と軍人にはぐっと及ばない額です。
給料の比較表 金額はRM
同等の階級位 最低必要
学歴
初任給 住宅
手当て
公務員
手当て
特別
手当て
合計額
警察 Assistant Super IntendantDegree 大卒17464501701002466
軍隊 Captain 大尉Degree 大卒1808450170
2428
警察 Inspector 警部Diploma12804201151001915
軍隊 Lietenant 中尉Diploma1361420115
1896
警察 Constable 巡査SPM 高卒690230801001100
軍隊 Private 2等兵SPM 高卒76623080
1076

注:この表では、警察より2割りから3割は合計額が少ない一般公務員の明細は省きました。

通常の高卒程度である SPM卒ですぐ就職して、月給RM 1000以上はなかなかとれませんから、表で示された額なら特に低額ではないでしょう。もちろん警察という組織の持つ階級制の厳しさ、職業として危険に面することもある、勤務時間が昼夜に及ぶという条件からみれば、多少低いかなとも思います。ただ民間では仕事または能力次第では、例えSPM高卒の人でもどんどん稼げる機会もあるが、公務員たる警察官にその機会がないのは当然ですね。もちろん民間では不況、倒産などで首になることもあるし、減給になることもある、さらに転職しやすい、反面警察官にはそういうことはない。

大卒の初任給合計で見れば、民間会社のそれと比べれば、むしろ上回るのではないでしょうか。Assistant Super Intendant というのは高級警察官の入り口ですから、将来の高級幹部警察官候補ということです。

警察は軍隊と同じく階級制であり且つ任官時からその所属階層が退官するまで固定します。上表のように3階層にわかれます。巡査で警察官に任官しても、その上の中間幹部階層には昇任できませんし、中間幹部階層の任官ではその層内での昇任はもちろんありますが高級警官階層には昇任できません。

警察官の民族構成

警察官といえば、すぐ浮かぶのがマレー人ばかりという印象です。現にこれは数字的に示されており、政府首脳、警察幹部はいつも警察官構成の民族バランスを、国民人口比にできるだけ近づけたいと発言し、華人層に警察への加入(就職)を呼びかけています。しかし目に見えた華人比率の上昇はまだないようです。報告書では委員会も、非マレー人の警察への参加の必要性を強調しています。

警察官採用者の内訳 −マレーシア警察の統計から−
階級民族マレー人華人インド人その他 非マレー系
ブミプトラ
合計人数
見習Assistant
Super Intendant
男性74.8%10.1%6.5%0.7%7.9%139人
女性58.3%20.8%12.5%8.3%−−24人
合計72.4%11.7%7.4%1.8%6.7%163人
Inspector 警部男性77.2%3.2%4.5%1.3%13.8%1286
女性79.1%8.2%3.7%0.75%8.2%134人
合計77.4%3.7%4.4%1.2%13.3%1400人
Constable 巡査男性77.1%2.1%4.3%0.34%16.1%13878人
女性85%4.3%2.2%0.17%8.35600人
合計77.5%2.2%4.2%0.33%15.8%14478人

合計のみ人数表示です

インド人はその総人口に対する比率8%弱かららいえば、3つのどの階級クラスでも大きく乖離してるとはいえません。華人は人口比25%からいえば、3つのどの階級クラスでもはるかに下回りますね。とりわけ巡査階級クラスでの低さは特筆ものです。ところで3階級クラスにおいて、高位のクラスになればなるほど男性に対する女性の比率が高まっていますね、興味深い点です。

報告書は多岐に渡っている

委員会の報告書に書かれたマレーシア警察への提案は多岐に渡るとのことで、それは、警察の主義、機能、組織、管理における改革さらに警察の責任を達成する関連法における改正を実施するべく目指したものだそうです。同時に警察官の生活と勤務上の情況も向上させることを目指しています。

このコラムで触れたのは、その多岐に渡る中の一部です。コラムを書くにあたっては、Star紙の2005年5月17日付け ”The Police Commision" という特集記事を参照し、データ、表、歴史はすべてこの特集記事から引用しました。

全ては今後の行動にかかっている

政府はこのロイヤル委員会の報告書を真摯に肯定的に受けとめて、慎重に検討していくとしています。外部の者が考えても、権力機構である警察をどんな意味であれ変えていく、警察が自主的に変わっていくことは容易なことではないはずですし、且つそれは年月のかかることでしょう。さらに目に見えない形、目に見える形の両面で警察内部からの抵抗もあることでしょう。しかし少なくとも現時点では政府は報告書を尊重する意思は示していますので、今後どのように政府自身が報告書の提案を実施していくか、または提案を修正したうえで実施していくか、興味あるところです。



インターネット接続とブロードバンド接続の現状はいかに


当コラムでは、その初期にマレーシアのインターネット状況を描きましたが、年数が経ちかなり状況が変わってしまいました。そこで最近の状況に合わせる目的もあって、今回のコラム主題に選びました。

マレーシアの人口は、統計庁の推計統計によれば、2005年時点で約2600万人で、その内マレーシア国民が2千四百数十万人です。そこで国民の間における、インターネット利用は2005年前半または現在どういう状況になっているのでしょうか?最近新聞に載ったいくつかのデータ・数字を拾って、わかりやすく描いてみましょう。

インタ−ネット登録者数 400万人という公表数値

マレーシアには、国のコンピューター及びインターネットに関連する政策の諮問を受け、その全体を統括し、携帯電話網とインターネットプロバイダーに関する免許を企業に授与する機間として、マレーシア・マルチメディアとコミュニケーション委員会(会議とも訳せる)という、政府翼下の機間があります。具体的な実務や施行は担当省のエネルギー・テレコミュニケーション・マルチメディア省が行うようですが、詳しい すみわけ まではわかりません。

でこのマレーシア・マルチメディアとコミュニケーション委員会が公表している報告書に寄れば、2005年第2四半期において、国民1万人あたりインターネット利用者は3400人と推定しています、つまり3人に1人という推定です。その推定数字の基になっているのは、

というものです。上記の3人に1人という数字と幾分食い違うのですが、そもそもインターネット接続登録者1人あたり3人がインターネット利用接続するということ自体が推定なので、この推定自体を深く検証しない限り、正確な推定値は出てこないですね。いずれにしろ多目に見積もって国民の半分つまり2人に1人、多少少な目に見積もって900万人近い人つまり3人に1人がインターネット利用者だということになるでしょう。加えて、マレーシア・マルチメディアとコミュニケーション委員会は、ブロードバンド利用者は100万人近いと推定しています。

尚マレーシア・マルチメディアとコミュニケーション委員会によれば、インターネット接続登録者は引き続き増加傾向にありますが、増加率に鈍りが出ているとのことです。年に約1%です。

インターネット普及率は地域差がかなり激しい

えー、ほんとのそんなにたくさんのインターネット利用者が国内にいるの? というのが私の素直な感想です。赤ん坊から老人までいれて国民の3人に1人がインターネット利用者? マレーシア国内での地域差の大きさ、言語の多様さにも関わらずもっぱら英語コンピュータに圧倒的に偏っている現状、国民の所得額偏差の大きさ、外の文化をどう捉えるかという文化認識のあり方、などの諸状況を考えると、どう考えてもこの推定は多過ぎる推定のように思えます。といって、私にもこれを科学的に裏付けるデータを示すことはできません。

マレーシア・マルチメディアとコミュニケーション委員会に言われるまでもなく、マレーシアに通じているものなら誰でも知っているように、コンピューター関連の国内地域差はかなり大きなものです。インターネットに接続するには、無線接続、(多分ないはずの)光ファイバー、その他技術による接続のできるような例外的な環境下にいる人と場合を除いて、ほぼ電話線の架設に基づきます。

いわゆる発展途上国ではインフラ面で都市と田舎の間での地域の差の大きいことが一般的ですね。もはや発展途上国とは言い難いマレーシアですが、固定電話とインターネット普及率の面で地域差のはなはだしさはかなり大きいといえます。インフラ全体が半島部西海岸側と半島部東海岸側及びサバ州・サラワク州郡部で大きな差があることは公知の事実です。固定電話線の普及率でいえば、クアラルンプールが最高で24%で、東海岸州はぐっと下がりますし、サバ州・サラワク州郡部ではさらにまた下がります。固定電話線の普及率が低ければインターネット接続率が低いのは必然的であり、クランタン州では6.2% にすぎないそうです。悪いことにクランタン州ではこの2年、その普及率が下降しているとのこと。

固定電話の架線数が下がって携帯電話の保有者が増える

マレーシア・マルチメディアとコミュニケーション委員会によれば、国内でこの固定電話の普及率が徐々に下がっています。2005年第2四半期において国民100人あたり17.2架線です、これはピーク時であった1998年の 19.7架線数に比べて明らかに下がっています。反対に携帯電話の普及率は急速に上昇して、各携帯電話会社の登録ユーザー数などから今や国民2人に1台強の普及率だと、その高さがしきりに公表されてきました。

注:2005年6月時点の携帯電話市場の公表数字では、Maxis が660万人(40%)、Celcom が613万人(37%)、DiGi が370万人(23%) となっています。

しかし私はこの数字に以前から疑いを抱いており、当サイトでも疑問を投げかけてきましたね: プリペード電話の加入者数に相当なるダブりがあるし、1人で2台持つ人もいる。 来年初め各携帯電話会社は新規または使用中に関わらず全てのプリペード利用者の登録を開始しなければならないと、政府の決定がさなれましたので、正直な統計がいずれ公表されれば、携帯電話の保有率は2人に1人 という携帯普及率は間違いなく下方修正されると、私は思っています。

ブロードバンドとはADSLとも言える

この固定電話の普及率の下降は、国民の間でのブロードバンド接続普及に障害とならないのだろうか?という疑問があるそうです。確かにそうですね。マレーシアにおけるブロードバンド接続は圧倒的多数つまり 97% がADSL接続です。1% がSDSL接続で、残り 2% が無線ブロードバンド及びその他の接続法です。

この現状とインフラ整備のなされ方を考慮すれば、今後数年間のブロードバンド接続の上昇は多分に固定電話線による接続による、つまりADSL接続になるということになります。すると電話線架設の率が伸びない、携帯電話に頼って固定電話を引かない人が増えるという、現象が現われている現状は、国民の間でのインタ−ネッ、トとりわけブロードバンド接続の普及率向上の目的に負の要因になりかねません。

固定電話線に寄らないブロードバンド接続が可能なことは多少知られていますし、世界にはそういう国が数少ないながらもあることでしょう。しかしマレーシアという国の現状から言えば、固定電話線を用いたADSL接続が施設整備の面で一番経済的であり、同時に利用者に比較的低利用料金を提供できるのです、つまり両面からADSL普及の可能性が最も高いのです。技術的に可能であっても、それが高負担高費用であれば、一部の高所得者層に限られてしまいます。この典型が、ごく限られた地域の特定企業や家庭向けのブロードバンド接続を提供している Time.dot.Com 社です、Time 社のブロードバンドが普及する見込みは当分ないでしょう。さらに光ファイバー接続の時代が、数年の後やって来ることは考えられません。

ブロードバンド接続の大多数はTM Netが提供

ブロードバンド接続の97%を占めるというADSL接続はもっぱらTM Net が提供しています。Telekomマレーシアの直系子会社であるTM Net はこの1、2年積極的に、ブランド名 Streamyx  というブロードバンド接続を宣伝し、普及に努めています。その努力は確かに多といえますが、ADSL接続できる地域はまだまだ全国の郡部には達していません。

Streamyxパッケージ −2005年9月からの料金−
家庭向けダウンロード/アップロードモデム月額利用料
Streamyx Basic 512K512Kb/256KbなしRM 66 ダイナミックIP
アドレス
Eメール1個
512Kb/256Kb付きRM 77
Streamyx Basic 1.0 M1Mb/384KbなしRM 88
1Mb/384Kb付きRM 99

注:設置費用 RM 75は別途かかります。プロモーション時期だと、モデムがサービスされる場合もあります。尚ここではビジネス用パッケージの表は省略します。

プロバイダーJaring は力及ばず

ダイアルアップ接続数では、TM Net に大きく離されてその10%にも達していない契約者数である、第2位のプロバイダー Jaring の提供する非ADSL方式である無線ブロードバンドサービスの提供地域は首都圏の限られた地区に限られており、その契約者はまだまだはるかに少ない数です。上記の数字からもわかりますよね。
余談です、TM Net を主として利用している私はインターネット接続開始以来のJaring 利用者でもありますが、多少の高料金もあってまだブロードバンド化していません。

Jaring の家庭向け無線ブロードバンド
パッケージ名データの速度月額利用料その他
HOME BASIC最高 512 KbpsまでRM 100IP電話可能 ダイナミックIP
アドレス
HOME STANDARD 最高 1 MbpsまでRM 125IP電話可能


都会のカフェでお馴染みの WiFi サービス

尚主として、複数のカフェチェーンなどが顧客向けにWiFi サービスを無料提供していることは、都市部に住むITに関心ある方ならご存知でしょう。確かにクアラルンプール、ペタリンジャヤのような都市部のにぎやかな地区のカフェなど商業店舗では、顧客がラップトップを持参して手軽にWiFi が利用できるので便利になりました(といってラップトップを持たない私には関係ないです)。こういった顧客向けにWiFi サービスを提供する場所のことを一般に”ホットスポット”とマレーシアでは呼んでおり、この1年で5割増えて、1212箇所もあるそうです:Maxis Comunications が402箇所,  TM Net が 745箇所,  Time dot が 65箇所。

携帯電話の3Gサービス利用はまだ大衆的にはならない

携帯電話の第3世代(G3)サービスが今年中頃ようやく開始されたので、それを使えば携帯電話及びPDA式の携帯データ通信機器でのブロードバンド接続は、理論的に可能です。しかし言うまでもなく、G3用の機器自体の値段の高価さ(RM 2,000 前後)と、データ通信費用の高料金設定から、当分一般大衆の選択にはならないことを、携帯電話網会社自身が認めています。そもそも3Gサービスを提供する携帯電話網会社 2社のサービス網自体が、限られた都市部だけです。


周知のようにインターネットの世界はまことに進歩と変化の早い世界ですよね。とはいえ、その技術進歩がごく少数の富裕層、マニア、技術エリート層を抜け出て一般大衆化するまでには、4年や5年の単位が必要ですから、マレーシアにおいて、ここで描写した状況が相当変わるのは、少なくとも3年という月日はかかるのではないでしょうか。



数字で見たマレーシア、 その27


これまで断続的に掲載してきた 数字で見た シリーズです。マレーシアに関する様々な統計数字を掲載しています。ここでは、数字を視点にしてマレーシアの諸面を知ってください。

貿易統計

2005年上半期の貿易統計

製品別 金額 RM


製品電子・電気原油化学パームオイル 液化天然
ガス
その他

輸出額1245億135億130億117億101億806億


輸出先別 金額 RM
輸出地アセアン米国欧州連合日本中国香港西アジアその他
輸出額668億486億296億247億162億150億95億428億

製品別 金額 RM


製品電子・電気 機械
装置
化学鉄と鐵鋼精製石油その他

輸入額902億173億158億94億90億637億


輸入元別 金額 RM
輸入元アセアン日本米国欧州連合中国台湾韓国その他
輸入額504億300億267億247億223億116億102億293億


マレーシアにとって貿易相手としての日本

マレーシアにとって日本は、外国からの投資受け入れ先主要国の一つです。今年は1月から5月までに日本からの(申請)直接製造投資額はマレーシアにとって2番目の大きさです。
マレーシア訪問の日本人旅行者数は今年上半期は158000人で、昨年同期の147000人より増えました。
マレーシアの対日本向け輸出統計 2004年から (出典は統計庁)
分野価格RM全体での比率伸び率
電子電気製品178億36.8%10.2%
石油・ガスなどを含んだ鉱物製品135億27.9%6.3%
丸太を除いた木材製品37億7.7%31.1%
パームオイルと丸太類を含んだ農業製品26億5.4%15%
化学と化学製品25億5.2%37%
その他82億17.0%25%
総輸出額485億100%14.1%


経済指標

2005年は経済好調が続いています。
実質国内総生産GDP の伸び率変化 2004年と2005年

農業鉱業建設業製造業サービス業実質GDP
2004年第1四半期3.85.90.912.56.47.8%
第2四半期3.21.2-1.711.97.88.2%
第3四半期6.14.2-3.09.96.16.8
第4四半期7.34.4-2.65.56.55.8
2004年年間5.03.9-1.59.86.87.1%
2005年第1四半期6.03.4-2.45.76.25.8%
第2四半期3.2-1.6-2.03.25.44.9%








統計庁の発表では、2005年中頃の製造業における被雇用人口は 前年同期比1.4%伸びで、102.7 万人です。

中期経済計画

マレーシアの国家中期経済計画である 第9次マレーシア計画が来年度から始まります。この9次計画では、これまで実施された計画とは相当違いがでてくることになるだろうと予想されているそうです。このマレーシア計画をまとめるのは、内閣府の下にある経済計画部です。つまり 9次マレーシア計画はアブドゥラ首相の政権下で立案展開される初の5ヵ年計画ともなります。

予定として2005年終りに内閣に提示され、翌06年の3月には国会に提出されるそうです。
マレーシアの長期プランとしては、1991年に提起された 2020年までに先進国入りを目指す Vision 2020 がよく知られていますね。その前には第1次Outline Perspective 計画 1971年−1990年、第2次 1991年−2000年、第3次 2001年−2010年

この3つの中期経済計画 各5ヵ年 でどのように予算が使われたかを表示しますと、

総額 RM経済部門社会部門安全保証一般行政運営
第6次585億298億147億111億27億
第7次895億431億276億114億72億
第8次1600億666億462億162億109億


株式市場と持ち株比率

国内の株式市場においてブミプトラの所有株が総発行株式の30%を占めるようにする、という国家の基本方があります。現時点ではまだ30%に達していないことを政府も認めています。

クアラルンプール株式取引所BursaMalaysia において、総発行株式の市場価額が多いトップ10企業における、ブミプトラと非ブミプトラのそれぞれが保有する株の占める割合を示す表です。この情報は国会で明らかにされました。
2004年12月31日の時点において 

上場企業名
それを示すBhdは省略
市場総額
単位 RM 億
ブミプトラ
保有比率
非ブミプトラ
保有比率
外国人
保有比率
Khazanah
Holding
1May Bank 430.563.1%8.14%18.76%10%
2Telekom Malaysia 392.317.6824.1223.035.2
3Tenaga nasional348.224.4929.518.337.7
4 Malaysian Internasioanl
Shipping Corp
284.675.828.8215.36
5Public Bank243.321.5341.7336.72
6Maxis Communications231.523.5542.3234.13
7Sime Darby142.551.8914.7423.3710
8Petronas Gas 140.568.0820.641.2810
9Plus Expressway140.059.17%15.244.720.89
10Genting 133.83.8250.8445.34

注:Khazanah Holding は政府の持ち株投資会社です。比率の単位は% です。

自動車販売

新車登録
自動車会社名05年下半期04年上半期05年下半期04年上半期
Proton29.3%34.5%1位1位
Perodua24.725.42位2位
Hyundai2.83.97位6位
Kia1.61.09位13位
Kia-Spectra1.41.410位9位
Chevrolet1.31.111位11位
非国産車の総台数97,635台73、878台

非国産車の占める割合37.4%33.8%

国産車の占める割合62.6%66.2%








犯罪統計

2004年被盗難車に関する警察発表統計 −国内で盗難されて警察に届けが出された数 
4輪車
メーカーProton PerdanaToyotaNissanHondaMItsbishiMazdaその他合計
盗難台数409710919464813222271195397822
回収台数164235224913816177441712834
2輪車
メーカーHondaYamahaModenasSuzukiKawasakiVespa
その他合計
盗難台数239091572454814851555103
93751560
回収台数681938181625146318124
20614136


交通事故の死者数

交通事故死者統計 −警察発表
1月1日から
9月26日まで
2輪車運転者
と同乗者
自動車運転者
と同乗者
歩行者自転車 貨物車
運転者
その他合計
2005年20296923091121031863431人
2004年19515833411241331613293人


新聞読者数調査

調査専門会社AC Nielsen による各紙の読者数調査の結果です。発行部数ではありませんよ。
新聞読者数 単位 人


05年第2四半期04年第2四半期増減率
英語紙The Star 116万97万20%
New Straits Times33万31万8%
Malay Mail13万11万19%
Sun (無料配布)22万15万49%
マレーシア
語紙
Utusan Malaysia146万

Burita Harian150万

Harian Metro145万

華語紙星洲日報114万

南洋商報31万

光華日報28万

光明日報38万

東方日報10万

タミール
語紙
Tamil Nesan15万

Namban23万


注:空欄は参考資料自体が空欄です。

次ぎは上の表には含まれていない、サラワク州での新聞購読状況です。サラワク州の華語紙である 詩華日報 が今年7月と8月調査会社に依頼して、人口統計などを基にし無作為抽出による電話調査した結果です。

サラワク州で華人人口の多い主だった地方における華語新聞市場つまり推定読者数はは26万人弱です、その内クチン地方が最も多く10万人、次いでSibu地方が7万人、3番目の Miri 地方が4.8万人です。その他はぐっと少なくなってBintul 地方でも15000人です。

詩華日報はサラワク州で華語新聞として発行部数最大とのことで、2004年後半の部数で日平均 53000部でした。今回の調査では、読者数(発行部数ではない)は134000人となりました。詩華日報 はサラワク州及びサバ州及びブルネイで発行されており、日平均74000部とのことです。その内4分の3は固定読者層です。

詩華日報を発行している 啓徳業グループが半島部で発行しているのが、華語紙 東方日報で、2004年前半で日平均84000部の発行数でした。
以上は珍しいサラワク州の華語新聞市場に関する数字です。この種の数字はまこと目にすることがありません、とりわけ半島部でそれを知るのは稀なことです。

テレビ局別視聴率

次ぎの表は調査専門会社 Nielsen Media Research の発表したもので、半島部の15才以上の者があるテレビ局に対してその四半期で終る12ヶ月間に視聴したことのある率です。つまり常時見るテレビ局の率ではありません。どの局もそれほど変化してないようですね。
テレビ局TV1TV2TV3Ntv7Astro8TV
2004年第1四半期41%56%67%49%22%存在せず
2005年第2四半期40%53%65%42%25%23%


マングローブ樹森林の減少


1973年2003年減少率 %
ジョーホール州39,70023,00042
ケダー州10,2507,90023
クランタン州30015050
マラッカ州30010066
ヌグリスンビラン州3,50080077
パハン州3,5003,00014
ペラ州56,50043,00024
ペルリス州2503088
ペナン州3,9001,40064
スランゴール州32,00017,00047
トレンガヌ州3,5002,50028
サラワク州375,000130,00025
サバ州366,000346,0005
合計694,700ヘクタール574,880ヘクタール17%

樹林の減少の理由は、「マングローブ樹林の地は安い。その地で得られる物とサービスが非常に低く見積もられているか市場価値がないと考えられている、無だな土地と時に捉えられている、そこで州政府はマングローブ樹林地を保護することに大きな利益を見出さない。その結果、マングローブ地はもっと収益を生む土地に転換させられてしまう。」 

法で保護されたマングローブ樹森林は、全体の85%を占めます。このマングローブ樹保安林は、大体が材木生産用のためです。専門家に寄れば、多くのマングローブ保安林は伐採されてもその規模を維持するような伐採がなされていないとのことです。保安林も法指定を解除されます、1980年から2003年までに5万ヘクタールが保安林解除されました、一方保安林指定されたのが25000ヘクタールです。



DBKL、MPPP といった自治体名と略称を解説します


外国人にあまり身近ではない地方自治体役所

マレーシアにお住まいの在住者の圧倒的大多数の方にとって、それぞれの自治体の役所に赴いて自治体の定める一般向けサービスを受けるための申請をしたり、いろんな事業またはそれに伴う処理をすすめるための手続きを申し込んだり、不動産評価税を納めたりすることはまずないようです。強いてあると言えば、自家用車を運転する方が駐車違反の切符を受けて、その罰金を納めるためにその自治体の出納窓口を訪れることぐらいでしょう。その他のケースを考えれば、ペットを飼うために登録料を納めに行く、ぐらいかな。赤ん坊がいても保健サービスは自治体直接ではなく民間病院で受ける方の方が多いのではないでしょうか?

日本人を含めて居住する一般外国人が、その居住地の自治体役所・庁舎にまず縁がないのは、居住外国人をその自治体に登録する制度・仕組み自体がないからです。これはマレーシア市民にとっても同じで、別の自治体からある自治体に引っ越してきた時、転居をその自治体の窓口に届け出る制度・仕組みが存在しません。つまり日本でいうような形の住民登録制度はありません。住民基本台帳がない、よって住民税という概念自体も存在しません。

国民としての登録は国家登録庁で

住民基本台帳はなくても、いわば”国民基本台帳”ともいうべきものは当然あります。マレーシア国民は例外なく全員、全国に220ほどあるという支庁・出張所を通して国家登録庁に出生時から義務として登録しなければなりません。そして一生変わらない身分登録番号に従がって、登録庁が発行した身分証明証を携帯する義務があり、官憲から提示を要求された時は提示する必要があります。もし死亡すれば、その近親者が国家登録庁に届け出なければなりません。この面での国民管理はすみずみまで行き渡っています。もっともごく一部の山間僻地とりわけサバ州とサラワク州の僻地では、出世時に親が子供の出生を届けなかったために、学校へも上がれず、マレーシア人でありながらマレーシア国民として認められていない人々がいることは、ニュースなどで時々取り上げられます。

健康保健制度は存在しない

さらに一般外国人が居住地の自治体役所・庁舎にまず縁がない理由を上げれば、国民健康保健、国民年金のような福祉の仕組みが存在しないからです。被雇用者が納める被雇用者福祉基金EPF への納入金は、雇用者が毎月の給料から天引きしてEPFへ直接納入しますので、役所は関与しません。全国民対象にした公による健康保健は制度自体存在しませんから、自治体の住民が保険料に関して役所から通知を受けたり、納めることも起りません。 

自治体役所の収入源

一般国民がその自治体の役所に納入する主なものに、種種のビジネスを遂行するための免許認可手数料、広告物にかかる税、公共施設利用費、駐車違反、衛生条例違反などに課される罰金などがあります。その中で多分大きな割合を占めるであろうと推測されるのが、門戸税でしょう。これは、その自治体内にある土地、立つ住居、マンション(のユニット)、アパート(のユニット)、店舗、ビルなどの不動産に対する税金で、どこの自治体でも課されます(地方自治体法1976年に定めてあるそうです)。

評価額と税率を決めるのは各自治体です。よってその自治体に住んでいるが一切の不動産を所有しない住民には、自治体から課される直接税はありません。例えば私の例で言えば、クアラルンプールに10数年居住する私は不動産を一切保有していない、したことがないので、クアラルンプール市庁にこの税金を納めたことはありません。本当は不動産を所有して税金を少なからず納めるぐらいになりたいです(涙)。

蛇足:自家用車を所有してないので駐車違反して罰金を払うことができないし、喫茶モノローグは開設以来赤字続きなので免許代を払えません。残念ながら市財政に貢献することができません。


日本人の場合、企業主または企業経営をされている方でも、例えばその会社が位置する自治体の定める免許、許可証、届け出の手続きを自分でその役所に足を運んでなさる方はまれでしょう。ほとんどの場合が、マレーシア人従業員が手続き書類を準備し役所を訪れる、または手続き代行などをマレーシアの業者に依頼していますね。よって長年ある自治体にある会社に務めていても、そこの役所に自分で出かけことのない日本人企業人は多いと推測されます。尚国家の機間であるいろんな省庁を訪問する日本人企業人は珍しくないことは、知っています。

自治体名を示す略語がよく使われます

こういった基本的状況・状態をまず語っておきました。そこで本題にはいります。
 DBKL、 MPSJ、 MPPP  などといった略称が記された自動車や公務員制服 を街で見かけても、その意味を知らない方が多いようなので、簡単に説明してみましょう。DBKL、 MPSJ、 MPPP という略語は新聞では多寡はあっても毎日必ず載るいわばニュース基本単語です。

マレーシアにはいわゆる市という自治体が数多くありますが、その中で大型で且つ政府の認定した政令市は10市ぐらいです(正確な数にちょっと自信がないので 約 ということです)。いずれもジョーホールバル、コタキナバル、イポー、シャーラム、アロースター、クチンなど、各州の州都ですが、全部の州都ではありません。首都クアラルンプールは当然この政令都市として分類されており、且つ連邦直轄領として国の行政機構の直接支配下にあります。他の市、町、村は各州の州行政の支配下です。

市の中の政令市

その政令市は名前の前に Majlis Bandaraya、MB という短縮形、という単語がつきます。Majlis とは理事会・評議会 という意味であり、 Bandaraya は大都市とでもいう意味です。直訳すれば大都市の理事会・評議会とでもなりますが、一般に Majlis Bandaraya は役所そのものを示しますので、市庁・市役所と訳すのが適当でしょう。
よって例を示しましょう。  スランゴール州の MBSA とは Majlis Bandaraya Shah Alam つまりシャーラム市庁のことです。ジョーホール州のジョーホールバル市は MBJB 、ペラ州のイポー市は MBI となり、ケダー州のアロースター市は MBAS となる(はずです)。

DBKL とはクアラルンプール市庁の意味です

クアラルンプールは頭に DB が付くのです。 DBKL とは Dewan Bandaraya Kuala Lumpur の頭文字をとったものです。クアラルンプール大都市ホール・大会堂 とでも直訳できますが、それではおかしいのでつまりクアラルンプール市庁です。ここでの dewan は物理的な意味である 「ホール・大会堂」 から派生した意味合いである 「評議会・委員会」 という意味です。だからクアラルンプール市評議会 とも訳せますが、通常 DBKL と言えばは自治体クアラルンプールの役所そのものを意味しますので、クアラルンプール市庁と約すのが一番ふさわしいと私は思います。このDBKL という文字は住んでいる方だけでなく、旅行者でも注意してご覧になっていれば、民間の車ではなさそうな車や取締り部門の係官制服に記されていることに気が付かれることでしょう。

サバ州のコタキナバルも DBKK、Dewan Bandaraya Kota Kinabalu つまりコタキナバル市庁となります。この2つの市以外に DB の付く政令市があるかどうか、もしあるとしたらクチンでしょうが、残念ながら調べきれませんでした。

一般の市名には MP が付く

政令市を除く市は、Majlis Perbandaran、 省略形 MP がそれぞれ頭に付きます。Majlis Perbandaran とは市政機間の理事会・会議 とでもいう意味です、多くはその市・自治体当局を意味しますので 市役所または自治体役所と訳すのが良いでしょう。 Perbandaranは英語ではMunicipality と訳されていますね。

よってMP つまり Majlis Perbandaran の付く自治体の中で皆さんにも馴染みのある市名を書いておきましょう。
クアンタン Majlis Perbandaran Kuantan、 ランカウイ Majlis Perbandaran Langkawi、 マラッカ Majlis Perbandaran Melaka, ペナン島 Majlis Perbandaran Pulau Pinang など。
これにはおやっと思われる方もいらっしゃることでしょう。ジョージタウンを含めたペナン島は自治体としては政令市ではないのです。規模からいえば、アロースター、シャーラムよりずっと大きく、且つ英国植民地時代からの歴史ある古い市であるにもかかわらず、ジョージタウンは MB ではなく MP なのです。ジョージタウン市民から、なぜ MB に認めてもらえないのか、という疑問が出されていることは新聞などで何回も読んだことがあります。

MPSJ の意味

クアラルンプールを核とすればそれを取り巻く首都圏の州である、スランゴール州に焦点をあてましょう。
ペタリンジャヤにお住みの方なら何度かは目にしたことのある MPPJ はMajlis Perbandaran Petaling Jaya のことであり、ペタリンジャヤ市役所と訳せます。ペタリンジャヤ自治体役所 は間違いではないが表現上はペタリンジャヤ市役所の方がふさわしいと思います。それでは、日本人在住者が少なからず住んでいる、上記の MPSJ の意味はもうおわかりですね: Majlis Perbandaran Subang Jaya スバンジャヤ市役所です。
スランゴール州にはこの MPPJ と MPSJ に加えて、MPAJ (Majlis Perbandaran Ampang Jaya), MPS (Majlis Perbandaran Sepang), MPK (Majlis Perbandaran Klang ) などの市があります。

行政上の自治体名に一致しない地理上の伝統的地域名

ところでややこしいことがあるのです。上記の MPSJ つまり Majlis Perbandaran Subang Jaya を例として取り上げます。スバンジャヤ と聞いて一般にほとんどのマレーシア人が思い浮かべる地域は 地理的なSubang Jaya となります、一部の人は加えてBandar Sunway 地区もそれに思い浮かべ加えるかもしれません。 しかし行政上の単位としての自治体 Majlis Perbandaran Subang Jaya はこの2地域に限らず、もっとずっと広い地域を翼下に入れています、即ち地理上で一般に、Puchong , Sri Kembagan, Serdang とそれぞれ呼ばれる地域も MPSJ の管轄下に入るのです。Subanga Jaya 自治体の真中あたりを、連邦直轄領である Putra Jaya自治体が占めています。よってMajlis Perbandaran Subang Jaya の治める地域は奇妙な形をしています。

こういったことは、その地域の住民でないと(ここではMPSJ の住民でないと)なかなかわからないことであり、他地域の全く関係ないマレーシア人住民でもこれを知っている人はごく少ないはずです(知らないからといって別に不都合なことは全くない)。行政上の自治体と伝統的な地理上の地域名が一致しないという例は、全国に少なからずあると推定されます。

自治体の長と評議会員を選ぶ選挙制度がない

ここで説明した行政単位である Majlis Perbandaran と Majlis Bandaran と Dewan Bandaraya にはその自治体の長及び評議会 (majlis)を構成する評議会員 がいます。Dewan Bandaraya の場合、長というのはいわば市長にあたり、Mayor (Datuk Bandar) と呼ばれており、評議会員 (Councillor) というのは誤解を怖れずに例えれば市議会議員みたいなものです。Majlis Perbandaran の場合、長は評議会の議長 (President) で、強いて言えば市長ですね。そして評議会員(Councillor)  がいます。 
マレーシアの自治体では長も評議会員も、直接であれ間接であれ住民の選挙によっては選ばれません、その州上層部の任命です。具体的にどのような過程と形でこの選出がなされるかは私もよくわかりません。

評議会員は市の規模などによって人数に違いがあり、クアラルンプール市庁のような大都市を除けば、10人くらいから10数人というところでしょう。定数があると仮定した時、これまた具体的な定数の決め方などは私は知りませんし、マレーシア国民の中で知っている人が果してどれくらいいるのか疑問です。評議会員が地域選出ではないということもあって、その評議会員が担当地域の面倒をみない、という苦情が時に新聞の記事や苦情投書になります。自治体の評議会員のような職にある者を選ぶ際に、マレーシアという土地柄を考慮した時選挙が一概に良いとまでは言えないかもしれませんが、担当地域の面倒をみないような評議会員を罷免するような仕組みのないマレーシアでは、任命する側の責任はより重要ですね。

各州はそれぞれ市と分類される自治体と 市 と分類されない自治体から構成されます。この市 と分類されない自治体に関しては、知識をつけていつか書いてみたいと考えています。



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