「今週のマレーシア」 2005年4月と5月のトピックス

・ マラッカ海峡の海賊行為は昨日今日に始まったことではない -前編−  ・その後編
華人界の日本批判はわかる、しかし星州日報の報道姿勢には強い違和感を覚える
数字で見たマレーシア、 その25  ・赤字のマレー鉄道には悪いけど、がら空きの昼間列車はいいもので
トレンガンヌ州のTasik Kenyir(湖) の訪問客誘致作戦に思う
新聞各紙に載った国内外の反日ニュース・報道を振り返る -前編−  ・ その後編
警察に逮捕された、拘留された者の権利はいかに



マラッカ海峡の海賊行為は昨日今日に始まったことではない -前編−


地震後2ヶ月間ほど発生しなかった海賊行為

2月末から3月中旬にかけてマラッカ海峡で海賊事件が立て続けに発生しました。当初私は、ああまたかということで、とりたてて大きな関心は払いませんでした。ただ、12月終りのスマトラ島アチェ沖地震以後約2ヶ月間、マラッカ海峡での海賊行為は1件も発生してないという記事を1月、2月に数回読んでいましたので、やはり復活したのだな、とも同時に思いました(その理由は下段で書きます)。

1月10日掲載の 「新聞の記事から」 
スマトラ沖地震の発生以来、マラッカ海峡では1件の海賊被害がでていません。これは(世界の海賊行為などを集計したり注意を与えることもしている)国際海洋機構の報告です。最も忙しい海峡の一つであるマラッカ海峡では、地震発生前アチェ東海岸沖(マレー半島との間)で頻繁に海賊行為が起っていました。これはインドネシア海軍がマラッカ海峡の南方でのパトロールを強めたので、海賊がアチェ沖に北上していたのです。パトロールがなくなると海賊行為は南下しました。

海事産業の専門家は語る、海賊らが北上していたら津波被害に遭ったであろう、もしそうでなければ現在は自粛しているだけであろう、と。他にも心配事はあります、海賊行為の真似をする奴がでてくりかもしれない、と。12月26日以前にはマラッカ海峡では複数の船に対する海賊行為が毎週複数回発生していました。国際海洋機構のこの地域の責任者は語る、マラッカ海峡はこの数週間奇妙にできごとがおきていません、と。「海賊らが津波被害にあったかどうかはまだわかりません。アチェ沖は最もひどい海賊行為の発生する場の一つでした。だから多分なんらかの影響があったかもしれない」 「北スマトラの西海岸は被害の矢面にたっている、しかしこちらは伝統的にほとんど海賊行為が起らない。」


3件目の海賊発生と一部乗組員が拉致されたとの記事を見て、その旨の記事を3月15日に 「新聞の記事から」 に掲載しました。

日本船籍船の乗組員の拉致に関する華語紙の報道

その中で、3回目つまり14日に起った海賊拉致事件は日本船籍の船で日本人乗組員も拉致されたと知りました。当然ながらこの時点で日本のマスコミはマラッカ海峡の海賊事件に注目し、わっとマレーシアに押し寄せたことでしょう。私は日頃、紙面の形であれインターネットを通じてであれTV画面であれ日本のマスコミ報道を目にすることは全くしませんので、すぐ上の行で 「ことでしょう」 と書いたのは、当地の新聞の報道記事中にそういう文言があったこと、及び当然そうだろうという私の推測からです。

そこでこの日本人船員の拉致に関する記事が、3月20日付けの華語紙 ”星洲日報” に載りましたので、それから抜粋訳出して、同日の「新聞の記事から」 に掲載しました。この記事は英語紙よりも詳しく報道しており、これを読んでいただければ、恐らく多くの方には事件のあらましを想像しやすいのではないでしょうか。さらに記事後段(下ペラ州漁民 以下の段落)は、英語紙の書かないこと(書けないこと?)も書いてありますので、事件の背景理解に役立つことと思います。

以下3月20日の「新聞の記事」から
ペラ州南端のHutang Melintang 港の漁船主は、所有する漁船の漁民が警察に拘留されている事に不満を語り、すぐ釈放してくれるようにと語っています。この船主は拘留された船員に面会した後次ぎのように語る: その漁船は13日夜にスマトラのアチェ沖で20人ほどの海賊に襲われ、その内6人が漁船に乗り込んできた。雇っているタイ人4人を含めた乗組員は2000リンギット、収穫魚、重油などを奪われた、漁民は海賊に人身を傷つけないでくれと懇願し、海賊はそうしないと言ったとのこと。

海賊に乗り込まれて海賊に操舵を命令されたその漁船は何時間か後、海上で偶然日本船籍の船に遭遇した。海賊はその日本船籍船を追いかけるように命令し、追い付いてから日本船籍船に停まるように命令した。この際海賊は漁船を日本船籍船にぶつけるようにまで命令した。そうして最終的に日本船は停まり、海賊5人が乗り込んで行った。海賊に拉致された船員の日本人3人らは漁船に乗せられ、漁民はインドネシア海域へ行くよう命令された。6時間ほど走行した後、インドネシア漁船に遭遇した。海賊一味はその日本人ら3名を連れてその漁船に乗り込んだ。そこで海賊はようやくマレーシアのその漁船に去ってもいいと言った。

そこで早速マレーシア海域に戻り、無線でHutang Melintang の漁業組合にことを通知し、やがてHutang Melintang 港に16日夜戻った。その後その漁船の乗組員は警察に拘留され調べを受けている。
そこで船主は訴える、彼らは被害者であり、拘留されるのは不公平だ、と。

下ペラ州漁民協同組合の書記長は語る、「ナジブ副首相は常々マラッカ海峡は非常に安全だと言っていますが、現実はそうでもない、海上で働く漁民はいつでも海賊に遭うことがありえる。マレーシア海軍と海上警察は事が起ると、海上警らを強めます、しかししばらくして警らは減ります。副首相はこのことに気を配って欲しい。マレーシア軍隊と警察はいつでもマレーシア海域での警備を強化して欲しい、そしてマレーシア漁民と漁船を守って欲しい。」 「今回の日本船籍の船員拉致連れ去られの件でも漁民はいつも警察に協力したので、警察は早急に調査を終えてその漁民らをすぐ釈放してください。」
以上
注:後日報によれば、3月26日にようやく釈放されたとのことです。


乗組員が解放されたからといって全てが終ったわけではない

そして日本人乗組員ら3人はスマトラ島のどこかを連れまわされた後、最終的に20日にタイ海域でタイ海上警察に保護されて無事が確認され、その後タイから陸路経由でマレーシアに入国したことはすでに皆さんご存知のことですよね。その際解放交渉の陰で身代金が支払われた、といったニュースも後で流れてきましたね。このコラム下段の記事をお読みになれば、これまでにも拉致事件の際にはそういう経過をたどったことがある、またはそういう交渉と支払が行われてきたらしい、ことがなんとなくわかりますよ。

しかしこれで全てが目出度しとはならないないのは当然であり、拉致され恐怖に見舞われた方々にとってこの海賊らは絶対に許せないことのはずですし、他の2件の海賊行為による拉致者はいまだ無事解放されていません(コラム執筆時点において)。さらに今後マラッカ海峡でこの種の海賊、海賊拉致事件が起らないという保証は、誰もできないはずです。よって、マラッカ海峡を走行する船舶と海運会社の人たちにとっては益々油断できない事態だと思われます。そのことを示す記事を次ぎに紹介しておきます。

尚後編で詳しく述べますように、憂慮しているのは船舶と海運会社の人たちだけではありません、漁民もです、いやひょっとしたら漁民が一番心配しているのかもしれません。

海事専門ページで語る専門家の弁

英語紙 The Star に定期的に特集される、海事特集ページ 3月21日付け  に掲載された記事の抜粋を以下に載せます:

マラッカ海峡での海賊行為の再発で、ロンドンに本部のある国際海洋機構は、マラッカ海峡を航行するすべての船舶に、高度に用心をするようにとの警告を出しました。

マラッカ海峡で最近起きた3件の海賊事件:2月28日ペナン沖でタグボートを襲い、船長ら2名を連れさった。3月12日 スマトラ島に向かっていたタンカーが35人ほどの海賊に襲われ、船長ら2名が連れ去られた。3月14日 日本船籍の平底荷舟を引いてミャンマーに向かっていたタグボートが襲われ、日本人ら3名が連れ去られた。

マレーシア海事研究所の議長は語る、「海運業界は大きな危険に面している、この海賊行為で船主はマラッカ海峡の地位の下落を心配しています」 「インドネシアはこの問題ではもっと大きな役割を果たして欲しい。海賊はインドネシアからやってきているのです。海峡の沿岸国と協力し合っているよりも、インドネシアの取締り当局は問題の根に対処すべきだ。」 「これは新しい問題ではない。憂慮しているのは海賊の行為がさらに大胆になっているということです。」

国際海洋機構の理事の一人は語る、「最近の海賊事件は非常に憂慮するできごとだ、3件とも船員が身代金目当てに連れ去られているからです、これはとても我慢できない暴力の悪化です。治安部隊による対処作が取られなければならない。船員拉致は新しい傾向ではない、2004年に乗組員が連れ去られたケースは20件あります。」 「これらの海賊グループを法によって掴まえ罰しなければならない。治安を司る部隊が高度の危険地帯においてその存在を示すことが必須なのです。」 「沿岸国の治安部隊同士の間での迅速でより良い協力が、海賊の行動を抑止し逮捕に役立ちます。」
以上


海賊発生の記事を目にするのは珍しくない

マラッカ海峡での海賊発生事件において、今回3件目の海賊事件は外国人つまり日本人が拉致被害者であり、そのため国際ニュースとなり、マレーシア国内においても注目度があがったかのようです。日本の多くの方は多分海賊事件に驚かれたことでしょう。しかし事実は、マラッカ海峡で海賊行為発生のニュースは特に珍しくないのです。

尚外国籍のタンカーが襲われたのは今回初めてでなく、昨年またはそれ以前にもありました。そういう時はもちろんニュースになりますね。さらに国際海洋機構が統計している マラッカ海峡における海賊発生統計 もごくたまに新聞に載ります。こうしたことから私は、長年細かにマレーシアのニュースを追っている者として、何らかの船がまたは誰かが海賊行為に遭ったニュースは数多くと言えるくらい何回も読んでいます。だから上段では、「ああ、またか」 と思ったと書いたのです。

このコラムを書き終えたら、また海賊事件が起きましたね。

4月2日の「新聞の記事から」 
マラッカ海峡のこの何年か海賊の出現がなかったといわれる場所で、海賊事件が発生しました。襲われたのは日本船籍の26000トンのばら荷船で、深夜木造小船からインドネシア人と見られる武装した3人組がこの船に乗り込んで、金品を強奪しました。この海域はPortKelangの北になり、多くの船が航行する忙しい水路であり、国際海洋機構の海賊報告センターは、「この水路で襲われるのは非常に珍しい、これが海賊出現の始まりでないことを願う。」 「これまで安全と見られていた、マレーシア海域に近い場所で船が襲われた」 としています。

マレーシア海上警察筋は、奪われたのはUS$20万ほどだとしています。船の乗り組み員は朝になって国際海洋機構に通知し、そのまま航行を続けています。この1ヶ月で日本船籍船が襲われたのは2回目です


国際海洋機構の発表する統計から

当ホームページでは海賊被害の統計をこれまでに載せたことがあります。「新聞の記事から」は膨大な量なので新しい統計分が探せませんでした、なんとか3件みつけましたので、それをここに紹介しておきます。

参考資料:海賊行為・被害統計はいずれも国際海洋機構が発表のものです。

世界で海賊被害にあった統計:2000年1月から12月

実際に被害にあった数未遂行為
地区別船に乗り込まれた
ハイジャック

東南アジア全体151387
インドネシア86231
マレーシア17
4
マラッカ海峡36138
タイ6
2
その他は省略


世界全体での数3078143


2002年1月から9月まで航行する船が受けた被害 

インドネシアマレーシアマラッカ海峡フィリピンタイ
乗船された527131
ハイジャックされた518



2004年11月8日掲載の 「新聞の記事から」
国際海洋機構に報告される世界の海賊被害件数は、今年(2004年)は昨年より減っています。しかしインドネシア海域とマラッカ海峡での被害件数は増えています。今年9ヶ月間で報告された世界の件数は251件です、その内最多件数はインドネシア海域で70件です。マレーシア海域とシンガポール海峡はそれぞれ8件です、マラッカ海峡では25件を記録しています。専門家は、報告されるのは実際の発生数の一部であるとみています。

2005年4月3日の新聞報道では、2004年にマラッカ海峡で起った海賊事件は国際海洋機構の発表によれば37件でした。




マラッカ海峡の海賊行為は昨日今日に始まったことではない -後編−


ニュース扱いの小さな海賊被害事件

その海賊事件ニュースのなかで、ちょっと扱いが小さいのがマレーシア漁民が被害に遭った場合です。もちろんその被害が死亡や重傷に結びついたような場合は別ですが、銃撃されたり脅迫されて金品や船を奪われたり、乗組員が連れ去られたような場合だと、大して大きなニュース扱いにならないのがこれまでの例です。というのは、私はマレーシア人漁民がなんらかの海賊行為に遭ったニュースはこれまでに何回も読んでいるのですが、第1面で大きく報道されたようなケースはまず記憶にないからです(全ての新聞に毎日目を通しているわけではないので、絶対などとはもちろん申しません、華語紙の場合はあったかもしれない)。その中で、マレーシア漁民の海賊被害は、華語紙の方が比較的詳しくまたは大きく伝える傾向があります。

商船や貨物船、さらにはタンカーのような中型以上の船に比べて、マラッカ海峡で漁をするような漁船は大きくないことはしろうとでもわかりますし、時々マラッカ海峡を走行する商船、貨物船の船員に比べて、毎日ぐらい漁に出る半島部西海岸のマレーシア漁民がマラッカ海峡の海上にいる日時数ははるかに多いということも、しろうとでも推測できます。このことから漁民が海賊被害になる対象は、商船や貨物船、タンカーなどの船員よりもずっと確率が高いと推定できます。
という基礎知識を説明した後、次ぎの記事をご覧ください。

マラッカ海峡の”平静”をやゆする論評

華語紙 星洲日報は3月20日付け紙面で 「平静な海峡」 と題した署名論説を掲載しました。たいへん示唆に富む内容であり、且つ英語紙ではこの種の論調は載りませんので、それを全訳してみました(多少ぎこちない訳ですが、あしからず)。

それは昨年6月中旬に始まった、海賊行為が500年ぐらい続くマラッカ海峡が一躍平静な海峡になったのです。その当時我国(注:つまりマレーシアの)大臣が宣言しました、マレーシアの軍事力は領海の安全を守り、海賊問題に対応する能力を完全に持っているとぶち上げたのです。だから外国の軍隊がこの地に駐留する必要はない、と。

そのことばがまだ耳に新しい数日後、10名のインドネシア人海賊がペラ州からわずか5海里にある海上で、地元漁民3名を拉致しました。この大臣の述べた大言壮語とは対照的に、事件後生き延びた漁民にとっては、心中は理解できないし、不安と不満があります、まさにそれを文章では形容できないでしょう。

今年2月、また別の大臣がマレーシアを訪れた米国の国会議員に自信に満ちてこう語りました、我マレーシアとインドネシアとシンガポールは協同で去年の7月からマラッカ海峡のパトロールを始めた、それ以来その効果はたいへん好調です、と。さらに大臣は述べました、これが示すのはマラッカ海峡の沿岸国は海峡の安全を保持する能力を持っているということです、だから他国の手を借りる必要はないのです、と。

1ヶ月後、マラッカ海峡では事件が連続して発生、日本船籍の船員と20名のペラ州漁民が拉致される事件が起きました。マラッカ海峡は平静な海峡であると一貫して信じさせてきた当局はてんてこ舞い、右往左往となった。マラッカ海峡で海賊に遭遇することについて、日本船籍船、船員、マスコミ、民衆はしかしこう言います、これは諸国が関心を持つ重大事件だ、と。このため該当する国(注:つまり日本)のマスコミがマレーシアにやって来て、まず手がかりとなる状況を知りたいと希望した。

日本マスコミと大衆の反応に関して、半島部の漁民なら大体こう言うであろう、「ほんとうに見聞が少ないのでいろんなことに驚くのです」 。我国の半島部漁民の境遇を思い起こして下さい、バトゥパハット、ムアール、マラッカ、クタム島など、さらにペラ州上郡 からペナン州に至る沿岸の漁港において、その漁民がインドネシア軍または海賊にこれまで拘留された、ゆすられたことのないような地がありえようか?

しかしながら、我マレーシア漁民は長年ゆすられてきた経験を重ねたことで、今では東南アジア諸国連合の協調精神に基づくことが必要だと知ったのです。そこで、”マレーシアの警察に報告する、インドネシアで解決の道を探る、談判する、金を払う” というモデルに照らし合わせます、(すると)拉致された者のほとんどは平穏無事に釈放されます。毎年こんなです、何回試しても結果は変わりません。同時に、ゆすられ続けている漁民を非常に不快にさせています。

マラッカ海峡で漁をする我漁民の中で、毎年80%の漁民は所得税を納めなくてもいいのです。それなのに海賊には”お守り代”を払っています。このようなあり方がすでに長い間続いています。海上防衛の組織はその栄誉が辱めを受けて久しい。漁民らが望むことは多くはありません、海峡で安全に航行し漁さえできればいいのです。

漁民を訪ねた時、「やはり米軍艦艇が来てパトロールしてもらった方が良い!」 という悲痛に満ちた語調で漁民は、当局が長年宣言してきたマラッカ海峡は”平静である”という点を突きました。かくして見えてくるのは、我が国半島部西海岸の漁民はずっと昔からこの悲歌を唱えているのです。これはちょうどインドネシアの軍と海賊が一緒に譜をつけた曲に、我が国海上防衛組織が歌詞を付け、それを辛苦の思いで海に出る人が途絶えることなく歌います。ただこの歌は時には大声で歌うことができません、両国関係に影響を与えないためにです。
以上


最大の被害者は漁民ではないだろうか

この論説記事にもはっきり書かれているように、半島部西海岸の漁民は、絶えず海賊被害に遭ってきたことがわかります。その被害は華々しく報道されるニュースにはなりづらいのですが、銃でゆすられたり拉致されたりした、またはその未遂に遭った漁民にとっては、重大事であり、他の漁民にとっては いつ我が身に という心配感が常にあることでしょう。

そこで、漁民としては自分たちで身を守る方策も必要でしょう。そんな実態を伝える新聞の記事を掲載しておきます。

2004年5月17日の 「新聞の記事から」
マラッカ海峡で操業するマレーシア漁民が、頻発する海賊行為から逃れるためにショバ代を海賊に払っている、と漁業省の幹部が明らかにしました。漁民たちは安全に操業できる保証として、毎月RM 300からRM 400を海賊に納めざるをえないとのことです。「マラッカ海峡では毎日マレーシア漁船が200隻ほど操業している、我我の理解するところでは、その8割が守り賃として海賊に金を納めているはずだ。」とこの役人。

「漁船は海賊が近づいてくると支払った金の証明書を見せることになる。もしその漁船が支払い証明を提示できないと、海賊は身代金としてRM8万から10万を要求します。さもないと漁船を取られてしまう。」 ペルリス州Kuala Perlis とケダー州の漁民がこの件を漁業省に報告しました。「我我はこの証明書を1枚押収した。」 

漁業省は軽飛行機を使用してマラッカ海峡を見張りたいとしていますが、そうなるには相当時間がかかり且つ予年間算がRM300万チャーター代として必要だとのことです。「空からの監視は来年までに実施したい。」
以上

この記事がどこまで正確かは問わないとして、まったくでたらめだとはとても思えません。これまで何回も華語紙に載った記事や上記 「平静な海峡」 と題した論説が示唆しているように、無法者グループつまり海賊に金を払わざるをえない状況があることがなんとなくわかります。

もう1つ最新の報道記事からです。
漁民は海賊に怯えている、という見出しを掲げた、華語紙 「東方日報」 4月3日の特集記事から。

今年のマラッカ海峡で漁民が被害に遭った例:
1月29日 ジョーホール州ムアールのParit Jawaの漁民が出漁中、十数人の海賊グループに遭遇、その内の1人が自動小銃を漁船に向けて乱射したが、漁民4人は漁船内の倉庫に隠れて、幸いにも怪我を免れた。

2月7日 ヌグリスンビラン州の漁民3人が出漁中、4人の海賊が接近して接触した。ちょうどその時警備艇が近づいてきたので、賊は逃げた。しかし漁民は魚網が破損して RM7000の損害を受けた。

Hutang Melintang 漁港はマレーシアで最大級の漁港であり、毎年漁獲収入は1億4000万リンギットに及びます。この5、6年のことです、インドネシア海賊が益々はびこってきて打撃を深刻に受けています。そのため漁民があえて深海出漁に出ないことことに結びついています。この現象がすでに魚産業の収益に影響を与えています。最も厳しい試練に面しているのです。

ペラ州のHutang Melintang は下ペラ郡最大で最も繁栄し人口の密集している漁港です。深海漁業を営む漁船は400艘がここを地元にしています、そのため半島部西海岸で漁業と魚加工業の面で主要地となっています。この地での深海漁業関連に関わる産業によって、華人、マレー人、インド人に多くの就業機会を提供しています。

深海漁法の漁民生活は、大多数の漁民のことばによれば、つらいものです、それはその仕事でいつ何時命を失うかも知れないからです。Hutang Melintang漁港でも漁船主の全てが外国人労働者を雇って船に乗せています。現在その数1500名、タイ人、ミャンマー人、インドネシア人から成ります。

マラッカ海峡の海賊の影響は、半島部西海岸の漁獲量にも及ぼしています。この状況が好転しなければ、マレーシアは近い将来漁獲輸入する事にもなりかねません。加えてこのマラッカ海峡の安全問題が解決しなければ、下流である魚加工業もその運命を避けられません。漁獲量の減少で、Hutang Melintang漁民は皆困難に直面するのです。

2000年に入った頃から海賊は一つ上の悪行に変わりました、もはや長刀で脅すのではなく、重銃器を用いて漁民を拉致して、船主に身代金を要求するのです。そして2004年からは、漁船を襲って奪い、その漁船で国際商船に接近していく手段が始まりました。
海賊被害の深刻化で漁民は、政府がこれに注目を払うようにと長い間声を張り上げてきました。その後海賊征伐の海軍特殊部隊が成立しましたが、人員が足らず且つ海岸線が非常に長いことなどの点から、海賊活動の絶滅には結び付いていません。

下ペラ郡漁民協同組合の書記長はマレーシアとインドネシア境界にある海域の安全問題で語る、漁民は常々海上で作業をしている、そこにインドネシアの「自由アチェ運動」という 反政府組織の脅威に面する、彼等は漁民と漁船を拉致し、隠れてしまい、船主に巨額の身代金要求を突き付ける、これによって船主は負債に陥る。「生命財産の保証のない状況では、漁民はインドネシア−マレーシア境界付近に近づかないような漁をする、結果として漁獲漁は減る、漁民の収入は減るのです。」
以上


国際海洋機構が統計している マラッカ海峡における海賊発生統計 には当然ながら漁民の被害は含まれていません。よってこの統計だけでマラッカ海峡の海賊行為の状況を判断してはいけいないですね。つまり漁民の被害があることも知っておく必要があります。日本船籍の船から乗組員が海賊に拉致された事件で、これを伝えた日本のマスコミはこういう点を知ったうえで報道したのでしょうか? もちろん私は知りませんから、単なる問いかけです。長年マレーシアのニュースを追っている者として言えるのは、マスコミの宿命でもある事件追い取材と日本人が拉致されたという観点だけではこの問題の根深さはわからないでしょうね、という思いです。

海賊問題は国家の絡む難しい問題である

国際海洋機構も被害にあった漁民とその関係者もこの論評記事も、つまり全てが、マラッカ海峡の海賊はインドネシアのスマトラ島からやって来ると指摘または糾弾しています。もちろん交渉仲介者などごく一部はマレーシアにもいるでしょうが、主犯は全てインドネシアのスマトラを根城にしているということです。海賊出現の根源はインドネシアにあるというのは関係する人たちの衆目の一致した見方でしょうし、海賊が単なる無法者グループだけから構成されているのだろうか、という疑問も表明されています。署名論説 「平静な海峡」 でも何やら暗喩した言い回しで書かれていますね。インドネシア社会における軍や官や民のありかたを思い起こすと、私もこの疑問はなるほどと思えてきます。

しかし国家の面子があるので、インドネシア側から海賊行為の実態はなかなか明らかにされないでしょうし、多分永久に表にでないからもしれません。一方被害者側であるマレーシアが、インドネシアからやって来る海賊をマレーシア海域において完全に防ぐことは能力上不可能である、などとは国家の面子から言うことはありえません。上の論評記事は、英語紙ではお目にかかれないいかにも華語新聞らしい調子でこのあたりを暗喩していますね。

ところで、マレーシア政府はこの海賊事件の横行に手をこまねいているわけではありません。3月28日のニュースを引用しておきます。

政府はマレーシア海洋取締り庁、通称沿岸警備隊 を今年中に発足させる意向です。「マレーシア海洋取締り庁が、海洋に関する全ての法を適用し行動し、海洋での捜索・救助も行なう主たる官庁となります」 とのことです。現行ではこの種の取締り活動に関わっているのは、海上警察、海軍、海洋漁業庁、税関、Imigresen です。

さらに海洋取締り協力センターの長官は漁民に対して、「漁民は取締り官庁の目であり耳であり口になります、だから疑わしい船や行動を見かけたら直ちに当局に通報して欲しい。海賊のような犯罪に対するには良いコミュニケーションが必須です」 と語る。「我々は海賊問題をなくすことと領海侵犯を減らすことに非常に真剣です。」 
以上


その発足予定の沿岸警備隊が効果的に機能して、漁民の海賊被害がなくなることはなくても減ることを願っておきます。それが同時にマラッカ海峡を走行する商船や貨物船の被害減少に結び付くことでしょう。
ただいずれにしろ、こういう現実と政治家・国家側から発せられる言語のあやを眺めると、マラッカ海峡の海賊問題は根の深い問題で、一朝一夕に解決できないことがなんとなくわかってきますね。



華人界の日本批判はわかる、しかし星州日報の報道姿勢には強い違和感を覚える


3月の終わり頃からか4月に入ってからかはっきりと覚えていませんが、当地の各新聞では連日のように、韓国と中国における反日行動の記事を掲載しています。掲載される記事の種類と文章量と写真枚数は、いつもながら華語紙が英語紙をずっと上回ります。これは当然といえば当然で、華語紙はその持つ性格上中国・台湾・香港関係のニュースを詳しく且つ量多く報道しているからです。どの華語紙であれ中国台湾関係のニュース専門に毎日最低丸々1ページは費やす、と断言できます。
さらに華語紙は普段から日本に関係するニュース報道でも量と種類と頻度において、はるかまでとは言えませんが大分英語紙を上回ります。

この2点を考慮すれば、中国と韓国における反日運動・行動に関する報道が華語紙では英語紙よりずっと多いことは不思議ではありません。ですから、華語紙は反日行動・運動だけを好んでまたは選んで積極的に載せるということではありませんね。

突出した報道姿勢を示す星州日報

さて、華語紙の中で最大発行部数を持つ”星洲日報”は、4月13日に続いて14日も、さらに15日も16日も第1面で中国の反日行動またはそれに直接関係するニュースを掲載しています。他の華語紙及び英語紙とマレーシア語紙は4日間とも反日行動関係のニュースを第一面では取り上げていないので、その突出ぶりが目立ちます。”星洲日報”以外の新聞はもちろん外報ページでは載せていますし、そのはずです(全紙の第1面はざっとチェックできますが、購買しない限り内部まで調べるのは無理です)。

そこで14日の記事を見ましょう。以下第1面の記事から。
最大級の見出しで: インターネット市民が呼びかける 日本製品のボイコット
それに付属した小見出し: 中国民衆はこの土曜日から反日大行動を始める

記事の前書き:行動の発起人は強調しています、「日本人がもし中国製品を使わないというならば、日常生活でたいへん大きな影響を受けるであろう。しかし中国で売られている日本製品の大半は贅沢品です。日本製品を買わないというのは短期的に中国にとって大きな衝撃にはなりません。」

北京発外報電: 中国の反日抗議の嵐は短期間の間に平静となるのは難しい。中国大陸のインターネット利用者が電子メールと携帯電話のSMSを通じて、今週の土曜日から再度反日大行動を展開したいとしています、そして5月1日から6月1日までの間、日本製品を買わない行動を通して抗議を示したいとしています。

一方日本国内では”反中”行動が現れました。極端な分子が中国人を殺害すると脅迫し、日本にいる中国人に生命と安全に脅威を抱かせています。
以下細かな文章は省略

(最後の一文節を紹介すると)
これとは別に、反日の声は香港にも到達して蔓延しています。とりわけ連続テレビ番組にも影響が波及しています。香港のテレビ局はこれまで放送している日本製ドラマが完結した後には、韓国ドラマを放送することになります。ドラマの内容と題材は中華侵略の事件とはなんら関係ありませんが、やはりインターネット民衆から抗議、反駁を引き起こし、放送禁止を要求されています。
以上

星洲日報の4月13日付け第1面記事を再録しましょう (これは「新聞の記事から」に載せたもの)。

最大活字の見出し:中国が日本に反省を促す
それに付属する小見出し: (中国首相の)温家宝 「歴史を尊重しないことが反日デモの爆発を引き起こした」
記事前文:中国における反日デモはしばし平静になった時、横浜にある中国銀行の建築物を誰かが勝手に壊してしまった、中国は既に日本に対して在日本の中国人の保護を要求しました。

ニューデリー発外国通信社電:インド訪問中の中国首相は語る、「日本は前世紀に侵略戦争を引き起こした、中国とアジアだけでなく、さらに世界の民衆にも深刻な苦難をもたらした。最近日本の一部の隣国と中国では、日本が国連の安全保証理事会常任理事国入りをもくろんでいることに対して、大規模なデモ活動が発生している、アジア人民の強烈な反対は日本の当局の深刻な反省を呼び起こすべきです」 
以下まだまだありますが省略

第1面の別の小記事から 
見出し:大阪の中国領事館に弾丸の脅迫

大阪発外国通信社電:大阪にある中国領事館に月曜日に1通の封筒が送られてきました、それには拳銃弾と脅迫の手紙が同封されており、手紙文中では中国国民を傷害させるぞという脅しがあった。日本警察は火曜日にこう説明した、匿名の脅迫状は日本語で書かれており、もし中国がこのまま反日デモを続けるなら(日本にいる)中国人を傷つけることになる、と警告が書かれている、と。
後半は省略
以上

15日の星州日報の第1面では、日本と中国が領有権を主張しあっている海域における油田開発を日本政府が民間企業に試掘の許可を与えたことに対して、中国政府が強く怒りを示したとのニュースを、大活字見出し付きで載せています。

16日の記事を見ましょう。以下第1面の記事から。
大活字の見出し:日本が同国人に対して警報を発した
それに付属する小見出し: 中国のデモ行為の場所に近づかないように促す
記事前文:日本政府は、当地の日本大使館と領事館を守るために自衛隊を国外に派遣することを考慮している、と言及しました。

東京発外報電:中国各地ではこの週末に第2次の大規模な反日デモが準備されている、その前日中国各地の日本領事館は中国在住の日本人宛てに緊急通知を発しました。彼らに姿勢を低くし、デモ行為が行なわれる地点を避けるようにと警告しました。
以下は省略

この記事とは別に、第1面の大きな掲載写真:駐韓国日本大使館前での反日行動中、韓国人行動者が銃を発射しようとして警察と揉めている様子

星州日報はさらにこの日別刷り特集として、丸々4ページをあてた 「中国韓国 反日デモ」 という特集を刷っています。大型サイズの写真の多い特集で、日本発のニュースも少なく載せています。

17日です。前日中国各地とりわけ上海で起きた反日行動の様子を、いくつかの新聞が第1面で報じました。しかし全ページ大に近い写真と大活字の見出しで第1面を全てつぶしてこれを報じているのは星州日報だけです。
マレーシア語紙:2大紙である Utsan Malaysia,  Burita Harian 両紙とも第1面では全く報じていません。
英語紙:The Star 第1面では全く報じていません、New Straits Times 第1面の一部で報じている。
華語紙: 東方日報 第1面の一部で報じている、南洋商報 第1面の半分ぐらいで報じている。

なぜ反日のニュースを連日第1面で強調するのだろうか

ここでは書いてある内容を論評するつもりはありません、納得できる部分もないことはないが、反駁を覚える部分が多いですね。ここで問題にしたいのは、マレーシアに大きく関係するニュースでもないのに、なぜ”星洲日報”は突出して連日第1面で大々的にこのニュースを取り上げているのだろうか、ということです。誤解なきように強調すれば、中国で起きている反日行動のニュースを報道すること自体に違和感を持つのではありません、実際に中国で韓国でそういう動きがある以上、マスコミとして当然ですし、ニュースを知りたいので報道自体は歓迎です

しかしマレーシアに直接関係ない中国首相の温家宝の対日本向け発言、日本人全体を対象にしたかのような日本製品不買を呼びかけるインターネット上での動きを紹介、日中両国が所有を主張するマレーシアとは全く関係ない海底油田の試掘に対して中国が強く反発したことを強調、といった事柄をわざわざ第1面で大活字見出し付き報道する理由が見つからない。他の新聞はどれも第1面で取り上げてないことからも、この3つのニュースはマレーシアとの関連性の強さは相当薄いのであり且つ世界の大ニュースでもないのは明らかです。

この5日間を調べただけで感じるのは、星州日報はまるでマレーシアが当時者かのような報道姿勢です。一体星州日報はなぜこれほどまでに、中国韓国の反日運動を強調するのだろうか?
華語マスコミ界屈指の大企業である ”星洲日報”グループ としては、中国政府筋及びその影響にある中国要人・団体との関係が大切なことはわかります、例えばチベットの問題で中国政府を批判するようなことは私の知る限りしませんからね。”星洲日報”は中国向けの顔を態度で示したいのだろうかと勘ぐりたくなります。

日本人全体を敵視するような中国の動きをなぜ黙認するのか

中国民衆が日本の保守支配層や右翼・国体主義者を主対象として反日感情を抑えられないのであれば、たとえ反日デモが管制であれ、政府の暗黙の後押しがあったとしても、平和裏な行動である限り私には相当程度納得できます。しかし在住日本人への危害、日本企業を妨害、日本製品ボイコット、日本ドラマの禁止などは、日本人一般を敵視した発想であり、反発感情を増幅するだけの許し難い行動です。

注:私は若い時から親中派ではない(といって反中派でもない)、核武装し強大な軍事力を背景に、近隣中小国に影響を及ぼしている覇権主義に満ち満ちた大国中国に親近感はわかない。しかしそういったこととは関係なく、日本が過去に中国を侵略したのはまぎれもない事実であり、このことに対しては国家として陳謝すべきであり、侵略と虐殺をうやむやにするような歴史の改竄は容認できません。

歴史教科書の記述内容を国体史観に改竄するような一部勢力のためになぜ日本人全体が敵視されなければならないのか?日本は自由国家だ、政府など支持しない人間は一杯いるし、一部の人を除いてそれを隠さなければならないような状況下にある人は少ない。要するに中国とは違うのだ。政府・文部科学省がある教科書を認めたからといって、日本人全体がそれを支持しているわけではないのは、明白な事実です。この事実を知って知らずか、一網打尽的に反日本人じゃやりきれません。

”星洲日報”がそのマレーシア華人の観点から日本批判するのは結構です。それ自体はおかしいことではない。 しかし中国人が日本を見るような視点で日本人全体を批判するのであれば、それはおかしい。マレーシア華人は中国人ではない、これはマレーシア華語マスコミと華語教育界が率先して表現していることで、私も当然そうだと確信しています。それであるならば、なぜ 日本人全体を対象にしたような動きを強調して紹介するような報道姿勢を取るのであろう?  さらに領土問題は常に両方の言い分を公平に載せるべきであり、部外者のマレーシアマスコミがどちらかに肩入れ報道する必要はない。マレーシアとインドネシアが領有を争っているスラウエシ海の海底油田開発問題で、もし日本のマスコミがどうのこうのとどちらかに肩入れしたら、マレーシア国民またはインドネシア国民は必ずや反発を感じるであろう、それと同じことだ。

教科書問題で伝えられない事実

指導という名の検定に合格した中学校歴史教科書は8社あり、扶桑社の教科書はその1つにしか過ぎない、さらにこの教科書は前回の採択率が0.1%にもはるか満たない、それは多くの日本人がこの教科書内容に違和感を持つからである、といった事実をマレーシアのどの新聞も全くといっていいほどほとんど報道していない(英語紙の目立たない記事内でこの採択率の低さに言及してあるのを2回目にした)。しかし反日運動のニュースを、最も量多く、詳しく伝えている華語紙は、こういった事実をどこまで伝えているのだろうか? この何日か断続的に”星洲日報”を丁寧に読んでいるが、1句足りともそのことに触れていない。よって、99. 99%の華語新聞読者は、扶桑社の歴史教科書だけが学校で使われていると捉えているはずです。なぜならマレーシアでは、複数の教科書から選択などという制度はないから、マレーシア人一般の発想には浮かんでこない。英語紙の読者でこの反日運動のできごとに関心を持つ者でも、もちろんこういうことはほとんど知るはずがない。

”星洲日報”は中国首相の温家宝の対日本向け発言を第1面で報道するのであれば、こういう日本での事実関係も第1面で報道すべきである。教科書検定の現状や市民団体の扶桑社教科書への反対運動といった日本側の状況、日本人即日本政府支持とはならないことなどをちゃんと伝えた上で、マレーシア華人としての立場から日本批判をすべきではないか。マレーシア華人は中国人ではないのだ。

”星洲日報”は最大華語新聞社として影響力は小さくない

日常生活で華語を主として使うグループの華人はもちろん、日常話す際は福建語、広東語、客家語を使うグループの華人も読み聞く際は華語メディアを主として使う。この2つのグループの華人を合わせれば日常を主として英語で生活しているグループの華人より数はぐっと多い。”星洲日報”は華語新聞界で最大ですから、その影響力は小さくないことはおわかりでしょう。さらに”星洲日報”は新聞上だけでなくラジオにも進出しています、つまり民放中文(華語広東語)ラジオ局のニュースでも”星洲日報”提供のニュースが1日何回か読み上げられる。中文ラジオは華人界ではたいへん身近な存在ですから、短い読み上げニュースとはいえ何回も”星洲日報”観点のニュースを聞いていれば、なんとなくそんな観点に引き込まれやすい。

複数言語国家のマレーシアは、メディア言語によってニュースの選択基準が違い、どういう種類のニュースにまたはニュースのどの面に重みをつけるかに相当なる違いがあります。よって3大メディアである、マレーシア語メディア、英語メディア、華語メディアをそれぞれ検討しないと本当のマレーシア像はつかめません。ほとんどの日本人は英語メディアに偏ってマレーシアの情報を取っていますが、ニュースまたはできごとによっては他言語メディアに注目しないと、より正確な姿をつかめなくなります。今回の中国と韓国における反日行動の件では、できごとの性格上華語メディアの比重が普段よりもずっと大きくなります。従がってとりたてて華語の上級者ではない私に精細な理解と訳し分けは決して容易なことではない中、日頃華語メディアも追っているのです。

そんな時、他の言語紙、他の華語紙の報道には満足ということではありませんが、華語新聞界で最大部数を誇る”星洲日報”の反日報道の姿勢にはとりわけ不満を感じます。一体”星洲日報”はどこに顔を向けて報道しているのか! この一連の華語メディアの報道の中で多いに気になることがあります。それはこの”星洲日報” の報道姿勢に感じられるような、まるで中国の視点かと思えるような反日言動と決議をしている一部の華人勢力の存在です。
繰り返します、マレーシア華人としての立場から日本批判をすべきではないか。マレーシア華人は中国人ではないのだ。



数字で見たマレーシア、 その25


これまで断続的に掲載してきた数字で見たシリーズです。マレーシアに関する様々な統計数字を掲載しています。ここでは、数字を視点にしてマレーシアの諸面を知ってください。

経済指標

国内総生産高の伸び率が中央銀行から発表されました。伸びは好調で第4四半期は5.6%でした。

2000年2001年2002年2003年2004年
GDPの伸び率8.9%0.3%4.1%5.3%7.1%

マレーシアの外貨準備金は2004年末で過去最高のRM 2535億に達しました。

経済指標 単位は%
2004年の四半期第1第2第3第4年間
インフレーション上昇率1.01.21.42.11.2
民間消費伸び率8.411.410.89.710.1
小売り業界売上高伸び率5.915.18.88.78.0


貿易統計

マレーシアの昨年の貿易総額は23%の伸びを記録し、過去最高額でした。
貿易額の比較 通貨RM  億以下は四捨五入

輸入額伸び率輸出額伸び率総額貿易収支
2003年3989億
3177億
7166億811億
2004年4807億25.8%3996億20.5%8804億811億

この結果貿易収支は86ヶ月間連続黒字です。

携帯電話

統計庁が発表した2004年第3四半期の時点における人口推計です。総人口が2570万人で、内2400万人がマレーシア国民、170万人の非マレーシア人は、永住許可者、外国人労働者としての暫定滞在者、エクスパトリエイトなどから構成されます。
そこで携帯電話利用者の数が2004年末で1460万人に達したとのことです。通常払いとプリペード方式利用者の両方を合わせた数字で、これは人口の半分より多い数です。どうも信じられませんが、いずれにしろ、そろそろ飽和状態ではないかとの観測があります。


2000年2001年2002年2003年2004年
利用者総数510万人730万人900万人1110万人1460万人
対人口比率21.8%30.8%363.9%43.9%58%


携帯電話網会社3社のシェア 2004年
携帯電話会社MaxisCelcomDiGi
シェア41%37%22%


トップ企業と株式配当

マレーシアのトップ企業の業績と 配当額 (単位はsen)
企業名主たる業種 総株式価値
単位RM 億
純利益
単位RM 万

配当額/株
2004年
配当額 /株
2003年
Maybank 銀行4536億9350
42.535
Telekom通信3728億2420
3020
Tenaga Nasioanl 電力333850
00
MISC海運29210億
4530
Public Bank銀行2603億2890
9022
Maxis通信2433770
4624
Sime Darbyプランテーションなど1432億7760
55
PGas
1402億890
1010
Genting ホテル・レジャー1382億3930
2422
Plus高速道路1362220
73.5
BATタバコ1301億4280
248.4310
CAHB銀行1261億9530
1510
Resorts Worldホテル1101億9470
2018
Astro衛星放送1072980
00
IOI Corpプランテーション993億400
2012
YTL Power電力942億1440
00
Hong Leong Bank銀行851億2690
8.58.5
YTL総合841億3850
00
Malakof
651億2200
00
AMMB
609480
00


クアラルンプール株式市場 Bursa Malaysia に新規上場した企業


一部市場二部市場Mesdaq市場合計
2002年2272251社
2003年16202258社
2004年15312672社


KLIA(空港)の輸送統計

 KLIA輸送統計

乗客
貨物

国際便国内便合計国際便国内便
2004年1300万人800万人2100万人5億9240万Kg5930万Kg6億5170万Kg
2003年1050万人690万人1740万人5億3590万Kg5030万Kg5億8620万Kg
変化率23.9%15.7%20.6%10.6%17.9%11.2%

どの分野でも2004年は前年より増加していますね。

主要各言語紙の購読者数

調査会社AC Nielsenの発表した主要新聞の購読者数です。実販売部数とは違います。

英語紙
マレーシア語紙
華語紙
新聞名Star Malay
Mail
N.Straits
Times
Utusan
Malaysia
Berita
Harian
Harian
Metro
星洲
日報
中国
光華
日報
2004年110万13.2万32.2万151万147.3万121.8万110万74万27.1万
増減率(注)6.1%23.4%-0.3%0.3%1.2%4.9%0.9%1.5%3.8%

注:2003年10月から2004年9月までの1年間の平均購読者数に対して2004年1年間の平均購読者数がどれくらい増減したかの率


高等教育

2005年1月時点で、マレーシアで学ぶ外国人学生の数
私立の高等教育機間公立の高等教育機間私立の学校公立の学校学生数合計
25939人6315人5056人3376人40686人


国立大学への道

国立の大学に入学する主要な道は2つあり、一つが中学学校6年段階を終えてSPTM試験を受ける道、もう一つが中学5年段階を終えて matriculation プログラムに参加する道です。一般的な見方では、matriculation プログラム参加のほうが容易な道だと捉えられています。2004年の国立大学への入学者で、成績上位グループである評価基準CGPA が 4.0 以上の生徒数はmatriculation出身者が STPM通過生徒数の倍でした。

内訳ブミプトラ華人インド人
CGPA 4.0以上
取得者 1774人
STPM出身者数527人1人503人23人
matriculation出身者数 1247人789人419人39人

matriculationプログラムは1年制であり、非ブミプトラ生徒の数は全体の1割に抑えられてあります。一方STPM試験を受けるために勉強する中学校6年段階は、2年間です。つまりmatriculationプログラムより1年余分にかかる。よってCGPAの評価基準も違う。

国立大学のある学部で入学生徒を選抜する過程では、CGPAの点数が最優先され、もしある生徒とある生徒が同じCGPA点であれば、それぞれの科目の試験結果で比較というよになるとのことです。
matriculationプログラムはブミプトラ政策の一環であるという見方は間違いないですね。

高等教育を受けている学生の専攻内訳

国立大学の学生総数 297,905人、 私立カレッジ及びユニバーシテーカレッジの学生総数 286、874人
私立カレッジ及びユニバーシテーカレッジの学生が登録・専攻したコース・課程の内訳
コース
課程
農業 芸術・デザイン
音楽
ビジネス
と経営
教育 コンピュータ
情報技術
工学と
技術
保健
福祉
航空
海洋
人文科学
人数724022920751728105720421672483795462
コース
課程
法律製造・建設医学 科学
数学
サービス 社会
科学
言語その他学生総数
人数27304740417284568662988111531507286,874

コンピュータ、情報技術が4割ほども占めるんですね。

年代別のテレビ視聴調査

調査会社のAGB Nielsen Media Research が、1月末から2月末にかけて2600人を対象にして行った、テレビ視聴の調査結果です。テレビは有料の衛星テレビを含まず、無料テレビの番組だけが対象です。


時間を費やした割合 %
番組の言語マレーシア語英語華語総時間(分)
6才−14才61.321.217.52707
15才−19才57.721.021.32582
20才−29才60.018.621.42378
30才−39才58.821.319.92758
40才以上61.517.221.32817


ラジオの聴衆者数

ラジオ聴衆者数比較

マレーシア語局英語局華語局タミール語局
1998年417万263万141万
1999年789万222万181万80万
2000年925万208万292万89万
2001年817万186万254万82万
2002年982万216万267万68万


私立病院/グループのマーケット占有率

マレーシアの医療サービス面における、民間(私立)病院または病院グループの占有率です。表は私立病院協会の資料です。
KPJ
グループ
Pantai
グループ
スランゴール
Medical Centre
Subang Jaya
Medical Centre
Assunta
Hospital
Makhota
Hospital
Gleneagles
グループ
その他
14%9%2%3%3%3%3%63%


結婚年齢

女性・家族・コミュニティー発展省が最新統計を基に明らかにしたところによると、結婚年齢の面で華人が一番遅いことが、今回も確認されました。

マレー人華人インド人全国平均
男性27.9才30.6才28.8才28.6才
女性24.8才27才25.4才25.1才


デング熱発生件数

保健省の発表によれば、3月19日までに国内で発生したデング熱発生は11141件でした。その内39人が死亡しました。
昨年1年間の疑いあるケースを含めたデング熱の報告は34000件弱でした。その内デング出血熱のケースは1477件、死亡者は102人でした。

ガン

2003年に発表された全国ガン登録記録 によれば、マレーシア人のガン死亡統計では大腸ガンは第3位です
大腸ガン患者の統計から 10万人当りの患者率・数

男性女性
マレー人35.7%8.9人29.2%5.9人
華人59.1%23.1人64.8%20.5人
インド人5.2%8.3人6.0% 7.9人

100%
100%


麻薬摂取者の増加ペース

全国反麻薬委員会が明らかにした数字に寄れば、マレーシア国内で毎日55人の新規麻薬摂取者が増えていることになります。
2004年における毎月の麻薬摂取者の増加状況

男性女性合計 新規に摂取
者になる
再び摂取
者になる
13才
−19才
20才
−39才
40才
以上
人数3165人58人3223人1651人1572人


割合98.2%1.8%
51.2%48.8%13.4%80.5%5.8%

民族別ではマレー人が64.6%を占めています。

マレーシアを訪れるツーリストに関する統計

マレーシアの観光部門元締め機間であるTourism Malaysia の公式ホームページに載っている ツーリストの入国者数統計を見ていて、正直言って残念に思いました。というのは日本人旅行者のマレーシア訪問者数が伸び悩んでいるからです。
この統計での定義:ツーリストとは1泊以上1年未満の訪問者で、レジャー、ビジネス打ち合わせ、会議参加などを目的とし、商売や労働を目的としない訪問者。雇用パス、家族パスの保持者は当然含まれない。

日本人のツーリストとしてのマレーシア訪問者数
1999年2000年2001年2002年2003年2004年
訪問者数286,940455,981397,639354,563213,527301,429
各国からの訪問者総数793万1022万1278万1329万1058万1570万
国別訪問者数の番付4位4位5位5位6位6位

2003年はSARSの影響でマレーシアの受け入れツーリスト総数そのものが大激減したので、どの国であれ例外的に少ない数です。2004年はマレーシアの受け入れツーリスト総数(1570万人)がこれまでの最高を記録しました、その2004年の日本人訪問者数は2002年のレベルにも達していません。国別訪問者数番付でも下がっていますね。2000年の45万人もが訪問したような時代はもう2度とやって来ないのでしょうか?

2004年 ツーリストとのマレーシア訪問者数 トップ8カ国

シンガポールタイインドネシア中国ブルネイ日本英国オーストラリア
人数9,520,3061,152,296789,825550,241453,664301,429204,409204,053
伸び率60.8%31.8%27.1%56.9%110.4%41.2%62.8%41.2%

2004年 マレーシアが世界各国から受け入れたツーリスト総数は15,703,406人でした。2003年のそれに比べて、48.5% 増えています。表の伸び率とは対2003年の人数と比較した率です。



赤字のマレー鉄道には悪いけど、がら空きの昼間列車はいいものです


マレー鉄道に朗報となるニュース

4月も終りに近づいた日のニュースで、2006年度から始まる(5ヵ年経済計画である)第9次マレーシア計画の中でマレー鉄道の複線電化プロジェクトを復活させる意向であることを、運輸大臣が明らかにしました。マレー鉄道の複線電化プロジェクトとは、イポー以北の北部路線 Ipoh - Padang Besar 区間 と南部路線 Seremban- Johor Baru 区間を複線電化するという、2003年12月に無期延期となった大プロジェクトのことです。アブドゥラ内閣になってすぐ、国家諸プロジェクトの見直しと優先順序の見直しによって、この鉄道プロジェクトは実施に入る前に無期延期となりました。

このニュースが明らかになるとすぐ、2003年の時点で複線電化プロジェクトを請け負った2つの元請けマレーシア企業である、MMC Corp と Gamuda の株価が上がったという記事が載りました。復活すればこの2社に再度元請けの機会が与えられる可能性が高い上に総額RM150億近い巨額のプロジェクトですから、むべなきかなともいえます。

現在進行中のプロジェクトは遅れに遅れている

この新規の複線電化プロジェクト延期の結果、2003年当時すでに工事中であった Rawang −Ipoh区間の複線電化プロジェクトのみが、現在行なわれているマレー鉄道の複線電化プロジェクトです。Rawang −Ipoh区間 約180Km の複線電化プロジェクトはなんと2001年後半に開始したにも関わらず、種種の工事遅延理由から工事完了予定をこれまでに数回も順延しており、未だに完成していません。現時点の予定では2007年初めぐらいの竣工です。最初の予定ではすでに2004年には完成していたはずなのに、実に5年から6年もかかる長期プロジェクトになっています。この工事遅延が主たる理由でしょう、マレー鉄道の北部線、つまりクアラルンプールとペナン州バタワース及びそれ以北を結ぶ便は工事開始の後1往復便だけに減らされて、現時点でもそれが続いています。

北部路線はどの面からもバスに適わない

クアラルンプール−ペナン州間の人の移動は非常に盛んですからいわば公共交通網のゴールデン区間ともいえるでしょう。だから長距離バス便は複数のバス会社がそれぞれ頻繁に便を運行させています。それなのに、クアラルンプールからバタワース、アロースターへといった北部路線が1往復便だけというのは、いかにも”もったいない”ところです。尚何便かは知りませんが、貨物便はこの路線で毎日運行されています。クアラルンプール−ペナン州間は、半島南北縦断ハイウエー利用の長距離バス便の方が、マレー鉄道列車便よりも所要時間がずっと短いので、早さの面でも列車はバスにはとてもかないません。クアラルンプール−バタワース間:長距離バス 約4時間半 RM 24 (2005年5月以前の値上がり前はRM21)、 列車:夜行で約9時間、2等座席 RM 30。

現在の唯一便は夜行便なので時間調整などもあって昼間便よりも時間がかかり、実にバスの倍もかかっています。以前昼間便があった時、これほど時間はかかっていませんでした。いずれにしろ昼間列車の所要時間が倍近くもかかっては、いくらゆったりと乗車して行けても乗客獲得の面で長距離バスには苦戦するでしょう。

夜行列車便の良さはなんといっても ”寝て行ける”ということですよね。リクライニングシートでなく寝台車ですから当然です。2等寝台料金(2005年4月の値上げ後) 上段RM 38 下段 RM 43、長距離バスの1.5倍から2倍になりますが、横になって眠れる良さはこの料金以上の長所ですよね。1等となれば1人RM 85またはRM 77 とぐっと高額になりますが、2人用個室という最大のメリットがあります。

飛行時間1時間にも満たない飛行機は、たとえAirAsiaの最安値切符を入手できたとしても、保険、利用税などを含めてRM 30弱、さらにクアラルンプールとペナンの両方で空港との行き来には安くはない交通費がかかりますので、本当に総費用のことだけを考えればバスが最安になります。飛行機を利用する場合または飛行機だけの利用者は鉄道利用(者)と目的がかなり違うので、「鉄道の利用客を食う」 ことにはならないでしょう。

本来なら列車便はバス便の競争相手となるべき

こういう風に考察すれば鉄道のあるべきライバルは長距離バスといえます。ですから現在クアラルンプール−ペナン州が夜行1往復便しかないマレー鉄道は”もったいない”と上で書いたのです。Rawng -Ipoh がまだ工事中なので昼間列車を走らせないのも仕方ないとは言えますが、それでもゴールデン区間に1日1往復便だけでは”もったいない”。Rawng -Ipohの複線電化工事が竣工すれば、北部路線である Kuala Lumpur - Rawang -Ipoh 区間はすべて複線電化されたことになり、列車運行が増やせます。マレー鉄道当局は、クアラルンプール−イポー間を2時間で結ぶ列車を毎日数時間おきに走らせる計画をすでに明らかにしています。これならバスの競争相手になるでしょう。

さらに5、6年後になるであろう工事完了によって北部路線が全て複線電化されれば、クアラルンプール−ペナン州の所要時間が4時間から5時間も夢ではありません。そうなれば十分にバスの競争相手になれるでしょう。なんといっても列車の良さは車両自体の構造上ゆったり座って行け、時に通路を歩いたりトイレに立ったり、食堂車で時間をつぶすこともできますから、このゆったりさには最近ぐっと増えた座席数26席程度のVIP型バスでも適いません。

とにかく現在、ペナン−クアラルンプール間は9時間もかかる夜行1往復便だけですから、時間かかっても寝て行きたい人以外にはまず列車旅は引きつけません。日中比較的短時間で快適に旅したい人は電化複線化を待つしかないといえます。

南部路線は日に3往復

次ぎに、南部路線に目を向けてみましょう。クアラルンプールからジョーホールバル・シンガポールへの南部路線では、クアラルンプール発は現在、朝発1便と午後早い時間発1便があり、ジョーホールバルに朝7時前に着く夜行便が1本あります。シンガポール発もほぼ同様の発車時刻で日に計3本です。北部路線に比べれば、本数が多いのはクアラルンプール − ジョーホールバル−シンガポール区間の方が需要がいくらか多いことを示しています。

注:クアラルンプール−シンガポール路線が一番収入が多く、平均月間乗客数は24000人ぐらいと、KTMの公式発表です。

とはいえ日中便ではクアラルンプール−ジョーホールバル間が 約5時間半かかります。さらに時刻表通りに着かない、つまり遅れることがマレー鉄道では珍しくないことがよく知られています。一方長距離バスは クアラルンプール−ジョーホールバル間は約4時間半ですから、やはりバスの方が所要時間は短い、何よりもバスは本数がたいへん多い、これが圧倒的に多くの乗客をバスが引きつけている一番の理由でしょう。クアラルンプールのPuduRayaバスターミナルでは、ジョーホール州との間を運行するバス会社が何社もあって、各社が朝から夕方まで頻繁に便を出しています。もちろん夜行便もあります。各社の便を合計すれば毎時2本、時には3本あるでしょう。よって非繁忙期であれば、その場で切符を買って即乗ればいいので、クアラルンプール発で朝1便と午後早い時間1便だけの列車は利便性ではとてもバスには適いません。

旅好きなら昼間列車の良さは見逃せない

運賃はバス便が RM 25(2005年5月の値上げ前 RM 20)、列車が1等でRM 64、 2等がRM 33です。1等の高額さは極めて小数の人しか引きつけませんからここでは考慮外にします。2等運賃はバスより数割高い程度ですが、それでもやはりバスの方が競争力が圧倒的に強い。非繁忙期の平日に南下する昼間列車は空いているといわれますし、これまでの私の乗車経験から言っても、がら空きが多いと言えます。

2等であっても座席はそれなりにゆったりしており、相当大柄な人を除いて窮屈だと感じる人はまれでしょう。がら空きのため勝手に空いてる席へ席を移動したって通常は構いませんし、退屈になれば車両間をぶらぶらできる平日の昼間列車は、時間に追われるようなスケジュールの旅行者以外には、ゆったり気分で移動(乗車)を楽しめると私は思います。とりわけ旅の好きな者には沿線の風景が楽しめるという利点があります。バスの通行する南北縦断ハイウエーは切り開いた山間地の間を走行することが多いので比較的単調ですが、マレー鉄道の南下沿線は人家に近い場所を走行したり林の中を抜けたり、中小の町中を抜けたりと、景色変化が多彩です。窓から典型的な田舎風景やその中に点在する瀟洒なマレー家屋を眺めたり、オイルパーム樹林のような林の中を走り抜けて行く時にはマレー半島の広さの一端を感じることができますよ。

ただ旅の移動自体を特に楽しむつもりのないマレーシア国民にとっては、鉄道の持つ景色利点もバスか鉄道かの選択の決め手には全くならないですね。だから平日の昼間列車の車内の様子を見てきた限り、これは赤字路線だなと実感できます。週末はそれなりに席は埋まるそうですが、満席は難しいのではないでしょうか。夜行の寝台は埋まりやすいようです。

マレー鉄道乗客部門は赤字である

東海岸線の鈍行列車はどうみても黒字にはなりそうにないでしょう。他に交通の便がないまたはごく限られた沿線住民の足、学生の通学用でもある、ということから、運賃自体が安く抑えてありますから、公共交通企業として仕方のない面もありますね。ただクアラルンプール発着の東海岸路線を走る急行WAU号は乗車率が良いと感じます。とりわけクランタン州の人が故郷を訪問する際、またはクアラルンプール訪問する際に人気あるみたいで、2等寝台はいつ乗っても十分埋まっています。

さらにクアラルンプール以北を走行する北上路線では、1日わずか1往復だけの運行便が路線維持に十分な収入をもたらすとはとても思えません。こういう面を考えて行くとマレー鉄道の乗客部門は赤字ではないだろうか、と推測されます。そうです、現実にマレー鉄道はずっと以前から何年も、それも巨額の赤字なのです。それを示す一つの記事を引用しておきます:

4月中旬の新聞に載った記事の一部から
近距離電車Komuter を除いた、マレー鉄道 (KTMB) の列車便全体の平均乗車率は約 65%です。平日はこれよりぐっと落ち、高いのは学校休暇時期です。昨年2004年の輸送人員数は約370万人でした。費用の面ではメンテナンスが最大を占めるとのことです。マレー鉄道は2004年には純損失 RM 8760万 を記録しており、2003年は RM 1億3120万 でした。尚運輸省の許可なく不採算な路線をマレー鉄道が勝手に廃止できないことになっています。

マレー鉄道幹部に寄れば、現在東海岸線は良い成績で、全体的に格安航空AirAsiaの影響はあるが大したことはない、とのことです。「鉄道旅行は楽しく、リラックスできる、そして一番重要なことは安全です。マレー鉄道が鉄道事故で乗客に死者が出たのは、13年前を最後に起きていない。」 マレー鉄道が受ける最大の苦情は、時間の不正確さだそうです。


運行数に比して鉄道職員の多いことに気がつく

ね、まあ赤字もうべなるかな、です。それは上で私が描写したような車両の乗車率の様子からだけでなく、マレー鉄道職員の多さからもも感じます。マレー鉄道の駅をご覧になってください。例えばKLSentral駅、長距離列車の発車の祭、ホームなどで見かける職員の多さに気がつきます。1時間に何万人という乗客が行き交う日本のJRの大きな駅でみかける駅員の数よりも多いのです。さらに中程度の駅でさえ、ある時点で5、6人もの駅員がのんびりと仕事しています。区間によって違いがありますが、1日に上り下り合わせて6本から10本程度しか列車が走行しないマレー鉄道の路線ですよ。

合理化一辺倒の日本の鉄道からみたら、とんでもない余剰駅員でしょう、しかし労働密度だけ上げられるだけ上げて余裕を極度になくした職場ではなく、暇を余らせることのできる職場というのは、非常に人間的ともいえますね。どちらがいいのやら。

列車の乗務員でも同じですね。空き席の多い平日の日中便では乗務員も正直言って暇でしょう。検札を1回済ませてしまえば駅と次ぎの駅の長い区間など座席に座っている姿も目にします。さらに急行列車には下請けと思われる車内清掃員が複数乗務しており、彼女たちも暇そうにしています。こうしてマレー鉄道の全体の労働者の様子を眺めていると、ゆったりした人員数だなといつも感じます。

昼間列車で楽しむ南部路線

それではこの小文を終える前に、クアラルンプールから南下の列車旅をちょっと紹介しましょう。
クアラルンプールから2時間ほどのTampin はマラッカ州への玄関口です。ここで下車すればマラッカ市内へは乗り合いバスでたどり着けますから、マラッカ訪問の際には、片道はマレー鉄道を使って鉄道乗車を楽しみ、且つ地方の乗り合いバスも試せるという自由旅の良さが味わえますよ。詳しくは 『旅行者・在住者のためになるページ』 にある 「マラッカの観光」ページをご覧ください。

Tampin駅をすぎて40分ぐらい乗ると、Gemas 駅に着きます。この町自体はなんら観光客を呼ぶ町ではありませんので、地元の人以外に下車する旅行者はまずいらっしゃらないでしょう。しかしGemas駅はマレー鉄道の要所駅です、それは西海岸線と交差する東海岸線への起点駅だからです。Gemas駅からクランタン州の終着駅 Tumpat駅までずっと北上する東海岸線はこの駅から始まります。またはTumpat駅 から南下してきた東海岸路線の終りですね。
クアラルンプールから乗った急行便、またはシンガポールから乗った急行便が必ず停車するこの Gemas駅で途中下車して、東海岸線の鈍行に乗り換える。鉄道好きならそんな旅をしてみるのもいいかもしれませんよ。Geams駅に関しては、『旅行者・在住者のためになるページ』 にある 「ヌグリスンビラン州」 内の該当項目で案内しています。

Gemas 駅の隣はジョーホール州のSegamat駅です。Segamt地方 はドリアンで知られていますね。町中にもドリアンの大きなレプリカが飾ってあります。ここから鉄道はジョーホール州をずっと南下して行き、大きな州なのでジョーホールバル駅まで2時間以上もかかります。

その次ぎの主要駅はKluang 駅です。この駅構内にある茶店は地元の人気店だそうです。ですから以前私はKluang を訪れた際立ち寄って、コピーを味わいました。99年当時書いた文の一部を抜き出します:

KluangのCoffee Shop(茶店)で最も人気あるのは、KTMマレー鉄道のKluang駅構内にある茶店だそうです。筆者が訪れた午後も次から次からくる客でにぎわっておりました。ここもCap Televisyen のコーヒー豆を使っているとか(新聞の記事)、1杯80セントの香り豊かなKopi を飲みながら、ナシルマやカリパを食べ、華人、インド人、マレー人の入り交じった地元客の光景を眺めているのは楽しいものです。

急行は中間のごく小さな駅は停まらず通過して、2、3回の駅停車の後、ジョーホールバル駅に着きます。

このようにクアラルンプールからの南下またはシンガポールまたはジョーホールバル駅から乗った北上列車の途中駅で降りてみる。列車の本数がごく少ないので、1日に3回も4回も乗り降りすることは不可能ですが、1回か2回降りてみる、そんなことを1度ぐらい試してみるのも鉄道旅の楽しみといえるのではないでしょうか。



トレンガンヌ州のTasik Kenyir(湖) の訪問客誘致作戦に思う


まずケニール湖をご存知ですか?大きな湖ですが、ほとんどの方には場所さえも頭に浮かばないことでしょう。トレンガヌ州の内陸部にあって、南はタマンヌガラ国立公園に隣接しています。地図が掲載できないのが残念です。まずこのコラムの発端になった記事をお読みください。

ケニール湖の現状

トレンガヌ州の大きな人造湖 Tasik Kenyir(湖) はクアラトレンガヌから60kmほど離れており、広さはシンガポール並です。湖への入り口はPengkalan Gawi です。Kenir湖 に観光客を呼び込むためにこれまでたくさんの金がつぎ込まれましたが、長い休暇時期などを除けば人の気配がありません。この数年Kenir湖 訪問者は減っていると、中部トレンガヌ開発庁は数字を明らかにしています。湖周辺での宿泊者数をみると、 2001年は74244人、2002年は 38022人、2003年は37257人でした。2000年にはなんと10万人を超える 111657人が湖で宿泊したのです。

湖に浮かぶSah Kecil 島は現在ハーブガーデンの島で観光、教育目的で売り込まれています、島には164種のハーブが植えてあります。トレンガヌ州観光開発委員会の議長は語る、湖の観光開発には中部トレンガヌ開発庁が大きな役割を果たして欲しい、クアラトレンガヌからKenir湖まで直接行くバスがなく、公共の足がないことも問題点である、と。さらに、ジョーホールバルからとアロースターからのKenir湖行きバス運行が近く始まる予定であり、これはそれぞれシンガポール人客とランカウイ訪問者を対象としている、とのことです。中部トレンガヌ開発庁はPengkalan Gawi にRM400万の予算でウオーターテーマパークを建設し、湖の島の一つに免税島を設定する、計画とのことで、トレンガヌ州観光開発委員会もこれを支持します。

以上は3月中旬に載ったStar新聞の記事を要約しました。

発想からして違和感のある発展計画

その前に、Tasik  とは湖の意味なので、Tasik Kenyir ケニール湖 という意味です。これを読んで、この種の役人は一体何を考えているのだろう、とあきれます。Kenir湖にテーマパークと免税島?そんなこと目当てにKenir湖までわざわざ足を伸ばす必要はないし、そういう目的でKenir湖 を訪れるようになるのは間違いなくごくわずかの人だけでしょう。以前もそして今後も大事なことは、Kenir湖の豊かな自然をいかに人々に興味を抱かせるかであり、それがこの不便な場所にあるケニール湖の観光開発の資源なのです。

Kenir湖はまこと公共の足が不便である

私はもう何年も前にKenir湖を訪れたことがあり、自前の足を持たない者がKenir湖にはたどり着けない不便さを嘆く短文を当サイトで書きました。クアラトレンガヌからタクシーを1人で借りきるのは、費用面から貧乏旅行者には問題外です。地方バスでKenir湖に比較的近い町まで行き、、そこでシロタクバンを苦労して探し出してKenir湖畔にようやくたどり着きました。ところがそのKenir湖畔から湖上の島やロッジに渡るボートは1艘いくらの設定です。祝祭日で行楽客が多いであろう時ならいざしらず、これじゃ1人や2人組の貧乏旅行者はとても負担がたいへんです。

結局私は湖上の島へ渡るのをあきらめ、その日の午後クアラトレンガヌに戻りましたが、その際戻る足つまり交通手段が全くないのです。休暇時期であればタクシーでも客待ちしているのかもしれませんが、通常時期の平日でしたから行楽客らしきはほとんどゼロでした。どんな車でもいいからと、車をしばらく待っていましたがらちがあかないので、たまたま飯のために湖脇の食堂前に停車していた役所のトラックに尋ねたら(車体に書かれた文字から役所の車とわかる)、クアラトレンガヌまで戻るとのことでしたので、交渉してそれに乗せてもらってクアラトレンガヌに戻ったのです。こういう時こそ、いかにもマレーシアらしいところが助かります(笑)。もちろんヒッチハイク代としての金を払いましたよ、金をいくらか払うから乗せてくれるのです。

自然豊かな場所が人を引きつける要件

このようにKenir湖は当時から、個人旅行者向けの足が全くなかったので、これじゃ自分の車を持たない旅行者、クアラトレンガヌ発の小グループ向けパッケージ旅行に参加しない外国人旅行者は引きつけられないなと思いました。尚クアラルンプールからの夜行バスは当時から運行されており、現在も毎晩運行されています。

注:クアラルンプールのPutraバスターミナル発、kemaman, Kerteh などを経由してKenir湖まで行く、よって乗客は必ずしもKenir湖訪問ということにはならない

こういう自然に囲まれた場所へは、白人旅行者が好んで行きますが、彼らは一般に2人グループが圧倒的に多い。よってパッケージツアーに参加するか、自分たちで交通手段に金をかけることをしない限り、足が確保できない。

私は数年前この点を、観光展示会の際トレンガンヌ州の観光推進ブースで伝えたのですが、彼ら彼女らはそういうことを自分のこととして捉えられないのです。上記の中部トレンガヌ開発庁の役人と同じ思考ですね。Kenir湖への公共交通便がないのは、この湖での行楽が開発・設置されて以来のことではないだろうか、つまりざっと10年間ぐらいは公共交通の足がないはずです。今ごろになってこんな基本的なことに気がついてる思考!

自然の豊かな地へどうしたら観光客を引きつけられるか、これは確かに難しいことです。一般に外国人、とりわけ西欧系旅行者は自然の豊かな地への旅行者総体の結構なる比率を占めます。例えばタマンヌガラやEndau Rompin 国立公園の例をみれば明らかです。Kenir湖は人造湖とはいえ今やその地は貴重な動植物の宝庫だと言われています。そんな所に 免税の島を仕立てる発想にあきれます。そんな地へわざわざ免税品を求めて行く人はごくごく小数ですね。客数が少ない所に免税品を豊富に揃えるられるわけがない、そんな品揃えの悪い場所へ免税品を求めて行く人はより少なくなる、という循環が目に見えてきます。免税業者からいえば投資の効率が極めて悪い、訪問者からいえば品が数少なくがっかりで行く気にならない。

さらに、広大な湖とその周囲は今や貴重な自然の宝庫であるのです、湖に浮かぶ島や湖畔にロッジがいくつかあります。そんな湖の一角に、ウオーターテーマパークを建設するという発想は、自然環境を保護する中で人々にエコ旅行、エコ滞在を体験してもらうという自然公園の根本思想を無視したものですね。ペラ州北端にあって、南北ハイウエーからもたいへん近い行楽施設として行楽客を引きつけている Bukit Merah レイクタウンパークじゃあるまいし、Kenir湖は、自然環境とその場所の不便さの両面から、大衆行楽地としては不向きです。

アロースターからKenir湖への直行バスが常に多くの乗客を運んでくるなどと考えるのは、非現実的です。ランカウイを訪れた観光客がアロースターまで足を伸ばし、さらにその人たちをKenir湖までバスで運んでくるなどというのは、旅行者の行動傾向と好みを無視した計画であり、バス運営が経済的に成り立つとはとても思えません。ケダー州住民だけを対象にアロースターからKenir湖へのバスを運行したとしても、これも成り立たない。こういう自然環境豊かな場所を訪れようと考えるのは、クアラルンプールのような都会の自然好きが主流のはずですからね。

シンガポール客を対象にジョーホール州からKenir湖へバス運行、これも難しいなあ。以前クアラルンプールからKenir湖への直行バスがあまり成功したとはいえないことを見れば、成功に導くまでには相当なる工夫及びそれに伴う投資・費用支出が必要でしょう。

Kenir湖を売り込むのは確かに難しい

さてKenir湖は、日本人相手の観光・旅行業者のリストに入っているのだろうか? ゼロとはいえないけど、たまに相当小さな活字でリストの最下段あたりにある目的地でしょうね。これは多分白人旅行者を主体、相手にした旅行代理店のリストでもほぼ同じではないだろうか。Kenir湖は、東海岸の離島と違って青い海と白い砂浜があるわけではない、タマンヌガラのように手軽にジャングルが体験でき野生動物観察もできる地としての定評が出来上がっているわけでもない、さらに旅行機間から好意的な評判が育っているわけでもない、サバ州・サラワク州のジャングルのような大ジャングルに囲まれているというほどでもない、のです。こうしてKenir湖を売り込むのは、誰が音頭を取ろうと確かに難しいことだと私は思います。



新聞各紙に載った国内外の反日ニュース・報道を振り返る -前編−


3月末頃から始まり4月中旬から下旬にかけて最高潮に達し4月末になっても、当地の各新聞は連日のように、韓国と中国における反日運動・行動のニュースを掲載していました。その掲載される記事の種類と文章量、及び写真枚数は、いつもながら華語紙が英語紙をずっと上回ります。これは当然といえば当然で、華語紙はその持つ性格上中国・台湾・香港関係のニュースを詳しく且つ量多く報道しているからです。どの華語紙であれ中国台湾関係のニュースに毎日最低丸々1ページ半は費やす、と断言できます。

もともと華語紙は日本記事が比較的多い

さらに華語紙は日本に関係するニュース報道でも量と種類と頻度において、はるかまでとは言えませんが大分英語紙を上回ります。マレーシア語紙が3言語紙の中で比較上一番少ないのは間違いありません。

この2点を考慮すれば、中国と韓国における反日運動・行動に関する報道が華語紙では英語紙よりずっと多いことは不思議ではありません。ですから、華語紙は反日行動・運動だけを好んでまたは選んで積極的に載せるということではありませんね。

私は一連の報道記事を読んでいく中で、違和感を覚えた場合も多々ありました。単にそういった記事ではなく、新聞社そのものの報道スタイルに違和感を感じた”星州日報”に関しては、すでで1本のコラムとして掲載しましたね(コラム第 428回)。

何が強調され何が見落とされていたか

さて今回のコラムでは、一連の記事報道の中でどんな点が強調され、そしてどんな点が見過ごされたかの例を一つあげてみましょう。
次ぎの記事は4月12日付け英語紙Star に載った、中国における反日行動と日本政府筋の言明を紹介する Reuters 外電記事に付属させて、Star紙編集部がまとめた小記事です:
教科書問題

以上
この場で引用していない本体の記事は通信社の外電記事そのままですが、教科書問題というまとめだけはStar紙編集部が書いたものだと推測されます。なぜならこの小記事にはStar紙のコピーライトマークがついているからです。

これとは別の外報ページに、恐らく中国に派遣されたと推測されるStar紙の記者でしょう、「反日感情が深く流れている」と題した北京訪問記事が載っています。北京などで起った大使館へのデモ行為などを論じた後に、次ぎのような一節があります、「日本がその高校の歴史教科書をまた書き換えた後に起った中国と他のアジア諸国の激怒に続いて、反日感情の強い底流が(中国では)流れています。」

底流があるかどうかはこの記者の判断であり問いません(私は当然あると思うし、あっても不思議ではない)。私がここで問題にしたいのは、この記事の記者に典型的に見られるように、日本における教科書のあり方をほとんど知らないまたは知ろうとせずに、外電報道だけの知識で決めつけている点です、つまり相当事実と違うことを前提にして論じていることです。

マレーシアとは違う教科書制度であることをほとんど説明しない

日本の教科書制度は、全国一律のマレーシア式とは違うのです。日本の教科書検定制度では、4、5年に1回検定が行われ、科目毎に6、7社ある合格を受けた出版社の教科書の中から地域または県の教育委員会が1冊を選んで採用する方式ですよね。マレーシアの教科書では、民間の意見など取り入れるシステムはまったくなく、且つ教科書に関する論議は使用言語の種類に専ら偏っています。マレーシア人にとって、学校も親も教師も政党も団体も、数ある教科書の中から1冊を選ぶという仕組み自体が浮かびませんし、そういう発想にありません。

そういうマレーシア社会を読者対象にして発行しているマレーシアの各新聞は、文部省は日本の侵略を正当化している、歴史を改竄している内容の教科書を認定した、とだけもっぱら報じていました。記事の中でも、各紙の論評・コラム記事の中でも一貫してこの調子です。さらに、問題となっているこの右翼・国体主義史観で書かれた中学校教科書の前回版が、現実には全国の中学校を通じてほとんど採用されなかったという事実はほとんどと言っていいぐらい伝えていません。さらにこれからこの扶桑社の教科書が全国の学校でどれくらい採用されるかは、まだわからないという事情も全く伝えていません。

とはいえゼロとは言いません、途中からこのことを小さく伝える新聞も現われましたので、毎日細かい記事まで丁寧に目を通している読者であれば、いわゆる改竄教科書は数ある内の一つだと知ったはずです。しかしどこの国でも同じでしょう、新聞読者の多数派は内部の細かな記事まで毎日丁寧に目を通す人たちである、とはとても期待できません。よって間違いなく大多数のマレーシア人は、日本の中学生は扶桑社の歴史教科書で勉強してきたし、これからも勉強すると捉えてしまうのです。

多くの記者はこの事実を知らないのではないだろうかと、と私は推測しています。知らない理由は、西欧通信社の配信記事を鵜呑みにしてそれに多分に頼っている、中国が発信する中国語と外国人向け英語メディア報道に影響を受けている、つまりジャーナリストとして各方面からの情報と資料を集める努力をしていないと言えます。もちろん中には知っていてもそれを書かない、または立場上書けない記者もいるでしょうけど。
英語紙ではありえないが、華語紙の中にはごくわずかですが、日本で大学教育を受けた記者もいるとのことです。日本の新聞の関連報道を丁寧に読めばまたは日本語できる人に訳してもらえば、こんな基本的な情報は簡単に取れるはずです。それなのに、しないのか単なる怠慢なのか、それともこういう分野の担当記者ではないから関われないかもしれませんね。

反日ニュースが溢れた4月初旬から中旬の各紙の記事を読んでいて、よくこのように感じざるを得ませんでした。

外報ページは外国通信社配布ニュースが主体

外報ページでRueters , AFP, DPA , AP, UPI など世界の有名通信社の配信記事を主体に載せるのはマレーシア新聞界のごく一般的なありかたであり、これは英語紙、華語紙、マレーシア語紙を通じて同様です。一番の理由はマレーシアの新聞社の事業規模からいって世界の主要地に特派員を滞在させるなどということはできませんので、各社ともごくわずかの国にごくわずかの特派員を置いているだけです。知る限り米国には置いていませんね。ヨーロッパであればロンドンに1人というように、です。ロンドンから全てヨーロッパをカバーなどできっこありませんし、第1すべて英語メディアを通したヨーロッパ感ですから、例えばフランスとかロシアの生の論調などまずお目にかかったことはありません。フランスの有名新聞の論調でも紹介すれば、英語が世界を支配すると信じて疑わない人間ばかりでないことを知ることができるはずですけどね。

華語紙はもちろん台湾なり中国に1、2人というよう特派員を駐在させていますが、ヨーロッパ、米国には置いていません、その地に住むマレーシア人ライターからの定期非定期の寄稿契約記事ですね。さらに悲しいことに隣国タイに自社の特派員を置いている社はほとんどありません。週1度程度タイ発の記事を載せている新聞の場合はタイ在住のマレーシア人を寄稿ライターとして契約しているように思われます(しかしこのライターはタイ語が読めないと書いてました)。

マレーシアの新聞社のみならず東南アジア諸国の新聞社の弱点は互いにその国の言語に通じた記者を置いていない、置けないことです。常日頃アセアン協調精神といいながら、所詮アセアン諸国は互いの情報を外国通信社かその国で外国向けに人向けに発行されている英語紙に頼っているのです。マレーシアの1、2の新聞社はアジア各国で発行されている英語紙とグループを形成して記事特約契約を結び、週に1度程度載せています。例えばタイの場合は英語紙 Nation です。なぜ英語がほとんど使われない国で主として外国人向けとして発行されている新聞をその国の論調の代表として紹介するのだろう? 

よってほとんどの外国ニュースは必然的に世界的通信社の配信記事を主体にせざるを得ません。そしてこれがいつも問題を起こすのです。西側通信社の目を通した世界観、価値観でニュースが配布されているからです(だから少なからずのマレーシア指導者はよく、西欧的イスラム観でマレーシアを固定的に捉えている、と不満を語っています)。といってアラブイスラム世界の世界観、マレーシア国営通信社の世界観、中国国営通信社などの世界観が優れているなどと、私は主張しているのでは全くありませんよ。選択となれば、私も西側有名通信社の配信ニュースを迷わず第一選択にします、そのニュース収集力と情報量の多さは他を寄せ付けませんからね。

自らの力で諸外国のニュースを収拾できない以上、要はこの西側世界の有名通信社の配信ニュースを、どのように収拾選択するか、どのような形で載せるか、どう解説するか、なのです。

若いマレーシア華人内に反日感情はあるのだろうか

さて以上のようなマレーシアの新聞界に批判めいたことを書きました。だからマレーシアの新聞、とりわけ華語紙に載る反日本ニュースの報道と、マレーシア国内の日本非難・批判の声明と行動は、すべからく主として中国など外国の影響を受けた結果であり、学校での反日教材のせいである、と考えたら、それは日本の右翼・国体主義者の捉え方と同じになってしまいますね。

中国の影響とマレーシア華人界の中堅層、年配層の中に根強くある、”中国びいき”は当然あるし私も強く感じます。華人生徒の10人の内9人が通う華語小学校での反日教育のおかげ? もしそれが功を奏していれば、マレーシア華人の若い世代の大部分はとっくに反日になっており、J ポップスだのハローキティーみたいな日本製グッズ、日本アニメと漫画といった日本若者大衆文化はほとんど流行しないでしょう。華人層が客の主体であるそうな回転寿司も大衆的な日本食堂もまったく流行らないでしょう。日本電子電化製品がこれほどには普及しないでしょう。大衆レベルでの反日感情は決して皆無とは言いいませんが、相当ぼやけた薄い状態のはずです。

華人団体指導者層の深層にある嫌日感情

しかし華人社会の指導者、運動家が幹部層を占める華人諸団体は強硬な反日声明と決議をもう数え切れないほど発し、署名活動を行ないましたし、華人インテリ層は多くの反日論調を披露しました。つまり華人社会の主導層の深層にある嫌日気分に火がついた、というところでしょう。ただ中国と違うのは、多くの場合が反日までに至らず嫌日の段階で留まっているというところです。結局のところ、第2次大戦時の行為とその戦後処理のまずさがこの嫌日感情をいつまでも華人社会の深層に残しているわけです。だから、その深層を無視したり知らずに、単に中国びいきのせいだ、反日教材のせいだ、という一部の日本人の短絡した見方には落胆しますね。

そこでマレーシアの各紙に掲載された反日に関係する実にたくさんの記事からすればほんの一部にすぎませんが、とにかくできるだけ数多く訳しましたので、それをここに(次回のコラム後編で)掲載しておきます。華語紙、英語紙、マレーシア語紙を合わせると主要紙だけでも7、8紙ありますから、言うまでもなく、それらを毎日丁寧に購読することは不可能であり、且つ私が読んだまたは流し読みした記事を全部訳すことも時間的に不可能です。一人の力量は限られたものでありますから私のできる範囲でです。反日ニュースの論調はどのようであったか、編集する側は反日ニュースをどのように料理して載せたかを、感じとっていただければなと思います。



新聞各紙に載った国内外の反日ニュース・報道を振り返る -後編−


ここに収録した記事には、すでに「新聞の記事から」に掲載したものも含めています。当地の新聞に載った日にち順に並べてありますので、報道の様子を追いやすくしてあります。記事の多くは華語新聞からですが、英語紙とマレーシア語紙掲載の記事もあります。

4月3日の 「記事の記事から」 に掲載したもの

日本占領時に殉難した同胞を記念する委員会の決議

日本占領時に殉難した同胞を記念する委員会が、今年9月に予定されている日本の国連常任安全理事国への選出希望に対して、反対決議を採択しました。(華人団体の)スランゴール州中華堂会長でもある同委員会顧問は語る、国連が常任理事会を改革して理事国を増加するのには反対しない、しかし野心を持った国は支持できない、日本は東南アジアにおいて全部の国から信任を得るのは不可能だ、いかにして世界を導くのか、世界平和を維持できるのだろうか?、と。

さらにこの顧問は、日本は第2次世界大戦時の他国を侵略した罪状を認めず、教科書で歴史を改竄している、マレーシアの方が日本よりも常任理事国になる資格をより有している、などと語りました。「我々は大人しい方法を取ります、日本大使館へ示威行動はせずに、ホームページでの書き込みを通して、安保常任理事国入りに反対する。」

日本占領時に殉難した同胞を記念する委員会は、インターネット上で署名運動を全国的に直ちに開始すると決めました。これによって華人社会の声を集め、日本の常任理事国化に反対するとのことです。委員会の議長は、委員会が反対することで、この民間からの声を国連に伝えたい、スランゴール州中華堂のホームページ www.scah.org.my で署名運動し、人々の声を集める、と語る。

「日本占領時に殉難した同胞を記念する委員会の署名運動は、日本人民に反対するものではない、日本政府と好戦的な右翼分子に向けて反対するものです。世界の人が日本人の罪状を忘れたら、軍国主義の台頭を奨励することになる、世界平和に脅威です。」 日本軍が占領中に(当時の華人社会から)強制徴集した奉納金5000万円の返還要求に関して、日本の反戦的法律団の支持を通して、日本政府に要求できるように、委員会は希望している。」

4月13日の「記事の記事から」に掲載したもの

星州日報の第1面での報道から

最大活字の見出し:中国が日本に反省を促す
それに付属する小見出し: (中国首相の)温家宝 「歴史を尊重しないことが反日デモの爆発を引き起こした」
記事前文:中国における反日デモはしばし平静になった時、横浜にある中国銀行の建築物を誰かが勝手に壊してしまった、中国は既に日本に対して在日本の中国人の保護を要求しました。

ニューデリー発外国通信社電:インド訪問中の中国首相は語る、「日本は前世紀に侵略戦争を引き起こした、中国とアジアだけでなく、さらに世界の民衆にも深刻な苦難をもたらした。最近日本の一部の隣国と中国では、日本が国連の安全保証理事会常任理事国入りをもくろんでいることに対して、大規模なデモ活動が発生している、アジア人民の強烈な反対は日本の当局の深刻な反省を呼び起こすべきです」 
以下まだまだありますが省略

第1面の別の小記事から 
見出し:大阪の中国領事館に弾丸の脅迫

大阪発外国通信社電:大阪にある中国領事館に月曜日に1通の封筒が送られてきました、それには拳銃弾と脅迫の手紙が同封されており、手紙文中では中国国民を傷害させるぞという脅しがあった。日本警察は火曜日にこう説明した、匿名の脅迫状は日本語で書かれており、もし中国がこのまま反日デモを続けるなら(日本にいる)中国人を傷つけることになる、と警告が書かれている、と。
後半省略

4月14日の「記事の記事から」に掲載したもの

華人諸団体の連合体が日本の歴史改竄に怒りを表明

(華人界で組織されているたくさんの団体の上部連合組織である)華総 は小泉首相宛てに公式書簡を出すことになります、その中でマレーシア華人社会は日本の第2次大戦歴史改竄に怒りを持っていることを表明します。

華総 の会長は語る、日本は第2次大戦での侵略行為で被害を受けた全国家に陳謝すべきです、歴史の事実を歪曲してその侵略責任を棚に上げようと図ってはいけません、と。これは華総 としての最初の行動です、華総 及び各州の大会堂(華人組織の上部のこと)は日本政府の反応を見て、その後の対策を決定します、と。

平和愛好と良心的日本人は皆、日本の侵略を受けた国家の人民と一緒になって立ちあがり、日本の歴史改竄行為を反対するようにと、会長は促しました。

Intraasia注:華総は文字通り華人界のあらゆる団体の上部総連合組織です。地方の一団体とか一組織ではありません。


日本製品のボイコットを呼びかける

マレーシア華人職業団体総会は所属する各団体とビジネスマンに対して、日本製品のボイコットを呼びかけました。これは日本当局が新教科書において歴史を改竄したこと、さらに日本の国連安保常任理事国入りの希望、に抗議するためです。この社団総会は日本が歴史の事実を改竄したことに注目しています、とりわけ日本が前世紀の第2次大戦中、侵略戦争を起こした事実に関してです。社団総会の発表文では、日本政府は侵略して世界の人民に傷害を及ぼしたことを今になっても反省しない、さらに現在それを一歩進めて歴史を改竄して戦争の暴行を隠している、これは歴史のあり方を尊重していない、と訴える。「これが明らかに示すのは、日本は歴史の教訓を学んでいないということです。」

4月14日の星州日報の記事から

侵略時に受難した人たちの団体

日本侵略時に受難を被った者のマレーシア連絡会は、日本政府が再度歴史を改竄したことに怒りを表明しました。連絡会は13日に声明を出してその中で、日本政府の意図は日本人のした大虐殺行為を美化していると指摘、人々に日本製品のボイコットを呼びかけると共に、安保理理事会に入ることに反対するように呼びかけています。さらに、このボイコット運動は日本人が間違だと気付いて止めるまで続けるとしています。ドイツ人は歴史上で侵略行為をしたが、彼等は勇敢に間違いを認めた、歴史を反面教師として現代人を警戒させている。それなのに日本人はラクダのように頭を身体に入れて、本当の姿を隠蔽しようとしている。これでは世の人の信任を得ることはできない。

4月16日の「記事の記事から」に掲載したもの

スランゴール州華人団体上部組織は抗議大会を開く

(スランゴール州華人団体の連合組織である)雪華堂は今月24日に抗議大会を開催します、日本軍国主義、歴史教科書の改竄、国連安保理常任理事会入りに対して強烈な反対を日本に伝えるためです。国内の(華人)団体と組織に、連帯署名と捺印及びインターネット上での署名抗議行動に積極的に応じるように呼びかけています。
雪華堂はこの大会の際集めた署名と捺印を、国連、駐マレーシア日本大使館、マレーシア首相府と外務省の届けてマレーシア華人社会の声を伝えるとしています。

ペナンでは野党主催の抗議集会

ペナン発:ペナンに反日の感情が沸き起こっています。単に日本政府の歴史改竄と陳謝の拒否に反対するだけでなく、同時に(第2次大戦下の)人民抗日軍の功労をマレーシア政府が認めるよう要求しています。(野党の)人民公正党の主催で、ペナン州のアイールヒタムにある華僑抗戦殉職同朋記念碑前に、華人組織と団体と個々人が約50人集まって、反日集会を開きました。唯一の存命者も杖にすがって参加しました。

警察はその日の朝このニュースを知って現場に人員を秩序維持のために派遣しました。この日の集会は平和に行なわれ30分で解散しました。人民公正党のペナン州副議長は指摘する、日本の中学校と高校の歴史教科書は、侵略を進入、戦争を事変、敗戦を終戦と言い換えている、これらは第2次大戦の事実と犯罪を美化する手法だ、責任を全く負わない行為だ、と。

17日の”東方日報”の記事から

駐マレーシア日本大使宛ての書簡

マレー半島日本侵略時に受難を被った同朋家族協会の準備委員会の議長は駐マレーシア日本大使宛てに9回目の書簡を出しました。その中で、マレーシアと日本の協議で第2次大戦時の問題は既に解決したとの大使の表明は、責任を負わず中味のない言論である、と指摘しています。この議長は訴える、日本大使の発表は第2次大戦の歴史を歪曲している、大使は議長からの挑戦を避けるべきではない、そこで大使に、「弁論と対話」を開くように提案しています、これによって一般大衆とりわけ若い世代に歴史の真相を理解させることになる、と議長はしています。

「現在の大使と以前の大使は同じようないくじなく臆病であり、同時に大ペテン師だ。この両人は時期も違い年代も違う日本大使なのだが、言っていることは一様にごまかし話しだ。」 議長は、大使が第2次大戦問題はマレーシア・日本の協議で終わっているというようなことを言い続けるのではない、(侵略時に犠牲になった)10万人の人命を双方は慰めたなどいわない、ことを望んでいます。第2次大戦が終って半世紀以上経っても、日本政府は陳謝せず、賠償せず、おまけに歴史を改ざんし、自己の罪を洗い流そうとしている、と彼は訴えます。

4月18日 の「記事の記事から」に掲載したもの

反日署名行動に参加はするがボイコットはしないとある同業者団体

マレーシア百貨布及び衣料製造商協会は、日本が歴史教科書を改竄したことに反対するために、連合組織が24日に行なう署名捺印行動に参加するが、日本製品ボイコット行動には参加しないとしています。
協会の会長は語る、当協会は日本の軍事侵略の歴史を改竄したことに反対を示すものである、しかし当協会は日本製品のボイコット行動を展開しません、現在は地球が一つの村であるとの概念の下、日本製品ボイコットの影響を経済と生活が受けます。

この協会の会長は(スランゴール州華人諸団体の連合組織である)雪華堂の会長でもあります。当新聞(中国報)の記者が、中国では日増しに反日行動が高まっている折り、布及び衣料製造商協会は中国の反日運動と製品ボイコットに呼応しますかとの質問に、会長はこのように答え意見表明しました。

会長は語る、「我協会は日本に不満を示すために連帯署名と捺印行動には参加する、しかし日本製品ボイコットは我国情に合わない、人々が日本製品を買うことを我々は阻止できない、日本の歴史教科書改竄と日本製品ボイコットは2つの別のことです。」 と。

会長はさらに語る、「日本が歴史許可書改竄したことで、人々は一部の偏ったことで持って例外なき全体にしてはいけない、なぜなら大部分の日本人は友好的なのだから」 「我々の生活の中で日本製品に触れずにはおられない。地球は一つの村の概念下、日本製品ボイコットは商業、経済活動に影響を与える。」

これとは別にマレーシア中華工商連合会の副会長は、工商連合会として近いうちに会議を召集して、日本の歴史教科書改竄の問題を討論するとしています。「我我はそれまで態度を保留します。我我はこの件においてまず理事会で会議討論を行ないます、そしてどうするかの立場を決めます。」

教科書改竄に反対する地方の華人団体

ジョーホール州バトゥパハットの(複数の)華人団体は地元の中華商会として 「バトゥパハット華人団体は日本教科書改竄に抗議する大会」を開きました。その場で4つを決議しました。

  1. 日本に反省を要求し、陳謝をさせる、ドイツの例を見習わせる。
  2. 日本の教科書改竄に強烈に抗議する。
  3. マレーシア政府が日本の常任安保理委員国入りに反対するよう要求する。
  4. マレーシア国民全員にこれら3項目を呼びかける、同時に日本製品の使用を減らしマレーシア製品を多く使うよう呼びかける。

この会議には華人の数十の団体から100名を超える代表が出席しました。この会議ではさらに署名活動で抗議を示すことにしました。
この時刻と同じ頃州内のMuarでも華人団体が会議を開き、今月24日のムアールでの連合会議を開くべく会場を予約しました。

Intraasia注:先週末の中国での大反日活動を受けて、今日の華語新聞はどれも第1面から内部数ページに渡ってこの関連ニュースを一杯載せています。例によって星州日報は異常に第1面で強調していますね。ここに掲げた記事は他の華語紙からです。


4月22日 の「記事の記事から」に掲載したもの

”星州日報”の上級・取材主任の意見記事から、タイトル:抗議イコール反日ではない

日本の右翼分子が推し進めた教科書改竄事件、中国と韓国で大規模なデモと怒りの渦を巻き起こした、これはまた世界の中華子孫の悲憤を説明しています。続々といろんな道が議決された、即ち、復活軍国主義的日本右翼の言うことにNOという意思を示す、戦争犯罪を陳謝しないのに国連の常任理事国に入りたいという日本政府にNO という拒絶を示す。

日本人は奮い立って進む民族である。第2次大戦の後、彼らは素早く廃墟の中から立ちあがって、わずか数十年で、日本製品は世界を席巻するようになった。日本流行文化が、さらには次いで日本ドラマも多くの家庭に入り込んだ。アジア一帯で“日本ブーム”の狂騒が沸き起こった。

我国の若い世代が成長した時代は太平で栄える世の中である、戦争は若い彼らには遠い昔のこととなっている。今回の事件は、その彼らに考えをひっくり返すような一つの歴史教材をまさに提供しました。

今日のニュースは明日の歴史。歴史の永遠性は一面の鏡である。マレーシア華人社会の新聞において一つの足場を固めることになった。我々は次のことを必ず表明するある:日本人は依然として深刻な反省のことをわかっていないのであれば、我々は下の世代を教育して、その彼らに伝えなければならない、「我が国はかつて日本軍国主義の被害を受けた、皇軍の軍靴の下で、人々は悲惨な3年8ヶ月の歳月を過ごした、これは歴史である、”我々は許すことはできる、しかし我々はこれを忘れてはいけない。”」

このために、星州日報は連日、中国と韓国の反日デモ事件の原因をたくさん報道している。もちろん我々は強調しなければならな、デモ行為は平和的で理性的でなければならない、我々は暴力に反対する、と。これは戦争反対の立場に一致します。我々は軍国主義に反対します、反日と同じだと捉えられてはいけない。

我々のより大きな目的、それは日本の民間が我々の声を耳を傾けることを望んでいます。そして自己反省してドイツを師として自己で罪を償う。ただこれだけなのです、日本はもう1度我々の尊敬を得られることになります。

24日の”東方日報”の記事から

華総が日本に教科書を正すように促す −言行不一致は信任を得られません

華総は日本に対して、実際の行動を通して第2次大戦時の犯罪行為を陳謝する誠意を示すべきだと、訴えました。
華総の議長はその発表した文面において表明しています:日本国家の指導者たちはもし口だけでその陳謝を表明し、実際の行動では靖国神社に相変わらず参拝し続け、日本の自衛隊を軍隊に改編し、第2次大戦の歴史的事実と違う教科書を正そうとせずのであれば、その陳謝とは誠意に欠け意味のないことである。 日本が当時侵略を受けて被害にあったアジア諸国の尊敬と信任を得ようと思うのであれば、必ずや真心と誠意を持って過ちを認めなければならない。それは第2次大戦の史実に勇敢に相対し、戦争の被害者に賠償しなければならない、口で言うのではなく、行動することです。

日本首相が陳謝するのは初めてのことではない、以前村山首相が第2次大戦のことを陳謝した。日本の一部では陳謝を表明しているが、もう一部では、いくらかの指導者たちが軍国主義復活の野心を表明している。それには毎年靖国神社参拝と歴史改竄した教科書が含まれる。

日本の指導者たちは一方では平和が必要である、戦争は要らないと公言する、しかしもう一方では近隣国家が不満になり反感行動をとるような行動をします。この種の言行不一致のあり方は、日本のアジア隣国からの反感を起こすことになります。

東方日報の国際面の解説記事から

日本首相が金曜日に発表した、「陳謝」 のことばは、中日の緊張関係を緩和することを狙った以外に、ずっと重要なことは、日本が狙っている国連の安全保障理事会常任国入りの運動にアジアの多くの国が反対していることで変化させることをねらったものにすぎない。
インドネシアのアジアアフリカ会議で、小泉首相は過去の“村山発言”を引用して演説の主調にして過去の戦争への陳謝を表明した

4月25日の「記事の記事から」に掲載したもの

マレーシア華人社会の抗議を伝える(新聞の見出し)

”国連安全保障理事会の常任理事国に日本を加えることに反対する”大会が、スランゴール州大会堂で開かれ、出席した全国の328の華人団体が署名捺印しました。これはスランゴール州華人大会堂が呼びかけた署名運動に含まれていたもので、(全華人団体の連合組織である)華総、スランゴール州華人大会堂、日本占領時に殉難を受けた同胞を記念するマレーシア委員会、の協同で主催され、(華語教育の総元締めである)董総、教総、七大郷団、校友連総などが後援しました。

2時間ほどの大会では、参加した代表が、日本首相は陳謝したが誠意がない、歴史教科書改竄、靖国神社参拝にと強烈な不満を表明しました。華総の会長は語る、この日本の常任理事国化に反対する項目での協同署名捺印を、協同処理部門が近いうちに政府に提出し、同時に駐マレーシア日本大使館に手渡し、マレーシア華人社会の意識を伝達します、と。

この大会が望んでいるのは、日本はその実際行動を通して陳謝し、それは靖国神社参拝を止めること、大戦時に華人社会が強要された奉納金を返還することなどが含まれます。

この大会に代表が出席して署名捺印した団体には、スランゴール州・クアラルンプール中華工商総会、日本留学同学会、スランゴール州福建会館、クアラルンプール・スランゴール州海南会館、スランゴール州・クアラルンプール客家総会などがあります。

Intraasia注:ヌグリスンビラン州では50の華人団体から200名が集まって、ペラ州では32の華人団体から100名が集まって、いずれも同じような日本の常任理事国入り化反対、教科書改竄反対、態度で示せといった会合と決議と声明を行なった記事が、写真入で載っています。


華語紙 星州日報から

第1面大見出し:承諾に反する、と胡錦壽が日本を指弾
付属見出し:靖国参拝、歴史問題、台湾問題はちゃんと処理されておらず不満だ
ジャカルタ発外電:先週土曜日、中国国家主席 胡錦壽 が日本首相小泉純一郎と会談した際、小泉に靖国神社問題で態度を明らかにするように要求した、さらに歴史問題と台湾問題で承諾していることに反していると日本を叱責して、これは中国とアジア人民の感情を害している、と。

報道に寄れば、胡錦壽と小泉の会談では各自がそれぞれの立場を明らかにした、日本が第2次大戦の歴史を処理する問題ではなんら知識を共有することには至っていない。
以下略

4月26日の「記事の記事から」に掲載したもの

国会での論議から

数人の議員が、中国での反日運動とインドネシアでのアジアアフリカ会議での小泉首相の発言に触れました。
与党マレー議員は、マレーシアは日本から陳謝を要求すべきだ、マレーシアも同様に第2次大戦中に苦しめられたから、と発言。別の与党ブミプトラ議員は、教科書の改竄で日本は歴史を消そうとしているかのようだ、マレーシアはそれに屈してはいけない、と。外務省の政務次官は答えて、歴史は日本の敗戦を示している、ただ日本から陳謝を求める要求は外務省で考慮します、と。「もう過去のことです。60年過ぎた、我々は政治的経済的に良い関係を作ることに焦点を絞るべきです。」 

野党DAPの議長は、大戦中にKualaPilah付近の住民で殺された者が補償を要求しています、と述べました。
以上


言うまでもなく、これで終ったわけではありません。5月に入ってもごく少なくなりましたが、日本への批判記事は華語紙に時々見受けられました。”星州日報”だけは、毎日1ページの特集ページで日本の過去の戦争と侵略行為を細かく伝えています。最後にマレーシア語紙の論説記事を掲載して、華人とはいささか違った見方に立つマレー人界の論調にも触れて下さい。

華語紙の報道スタイルとは違うマレーシア語紙のそれ

4月17日付け マレーシア語紙 ”Utusan Malaysia” の署名記事
「惨酷さが忘れ去られるのは難しい」 と題する長い評論記事から抜き出した一部です:

歴史教科書の問題は新しいことではない。それは時々提起され、日本は第二次大戦中に起こした間違いと惨酷な行為を本当には認めていないという疑いを表面化させています。このことはドイツの場合と違います、ドイツは、惨酷な行為に対して十分に責任をとり、次いでユダヤ民族の間からも含めてかつて迫害された国々からの信頼を発展させました。

事実、現在の日本はすでに過去のそれとたいへん違う。確かに、現在の日本民衆世代に、その父祖が行なったそれらの惨酷な行為に対して責任をとる側であるとして負担をかけさせるのは正しくない。しかし日本による犠牲者の子孫が望んでいることは、日本民族が第二次大戦中に引き起こした事柄に対して間違いであり罪を犯した受け入れ且つ認めるという東京側からの明確で具体的な態度 なのです。

この意味は、日本は歴史教科書の中でその暗黒の時代の起った事柄について影響を減らすようなことをしないで本当の絵(姿)を提示することがふさわしいということです。

日本への怒りは中国民族の間からだけに限りません、他の国家すなわち韓国、北朝鮮、台湾、東南アジア諸国からもあります、それらの国では かつて中国の子孫民族が日本軍の暴虐行為による恐怖の受難者となりました。

アジア諸国に対する日本の残虐行為はたいへんひどいものでした。韓国、中国から東南アジアまで、日本の残虐行為はまさに度が過ぎたのです。その上例えばマレーシアでは、はじめは日本を敵として考えていなかったマレー人は、次ぎに日本軍の残虐対象になってしまった。

米国によって広島と長崎に原爆が落とされた時第二次大戦で日本の敗北が確定的だと見なされたにも関わらず、その時同時に日本国の本当の敵は、日本自身の残虐行為でした。
以上

客観的な評論といえるでしょう。例外はもちろんあるが一般に、日本のマラヤ侵略・統治時代にマレー人は、日本軍に抑圧され困難な生活を強要はされたが虐殺の対象にはならなかったので、(現代のマレーシア華人の父祖にあたる)中国華僑とは日本軍占領と統治への捉え方に違いがあったのは確かでしょう。それが現在にも引き継がれており、マレー人を主対象とするマレーシア語紙の反日ニュースに関する扱いは取り立てて大きなものではありませんでした。加えて私の見た限りでは今回の日本に対する論調は批判的であるが攻撃的ではありません。

ですからここに抜粋訳した評論は、反日関連の記事をあまり大きく且つたくさん掲載していない中で、目立つ長文の評論ですが、その展開論調はマレーシア語紙主流的な見方を反映したものといえるでしょう(数多く調べたわけではないので断定まではしません)。日本帝国に占領された側からの常識的な見方であり、且つ中国に傾斜したような立場は感じられません。過去の軍国日本と現在の日本を区別し、且ついたずらに反日本人情緒に走らない、こういう良識的な論調を現代の日本人は受け入れ、大事にすべきであり、同時に現代の日本人はその昔侵略と虐殺が行なわれた事実から目をそらさないことですね。



警察に逮捕された、拘留された者の権利はいかに


マレーシアの法律、とりわけ刑法や刑事訴訟方や警察関連の法律、及び弁護士実務に詳しくないと、警察に逮捕された場合などといったような法律知識に関わる事象は解説はできません。よってここに掲載するのは英字紙 Star が3月6日付けで載せた ”事実がマレーシア国民を動揺させる” という趣旨の特集記事を引用しています。

この記事は、警察に逮捕された時の実際の状況とその法律的根拠を、法律書の講義調ではなく、誰にでも分かりやすい例示で解説したところが優れていると思いました。外国人としてこの種のことを経験しないに超したことはありませんが、知識として知っておいた方がいいでしょう。

警察庁の最上級警官の説明

マレーシアにおいて、警察が被疑者、犯人を逮捕する時の手続き、慣行などは法律に基づいたものであるとして、警察庁本部の重犯罪部門(CID)の長官が説明しています。以下質問者は新聞記者、答える人はこの長官です。

質問:逮捕された人が(家族などに)電話する権利はありますか?
答:それを規定した確とした規則はない。一般に、警察に逮捕された人は最低1回の電話は許されます。しかし重大なケースの場合、それが捜査の妨げになるかもしれないので、電話できるかは警察の裁量に任されています。

質問:捜査を始める前に被疑者に対して、警察は捜査令状を示す義務があるのですか?
答:その事件の性格によります。殺人、強姦、強盗のような重犯罪の場合、警察は捜査令状を示し、その者に通知する必要がある。

質問:ある者が警察の尋問を求められた、または逮捕された時点で、その者はその警察官に身分証明証の閲覧を要求できますか?
答:できます。警察官は身分を明らかにし、その公的な証明証を示さなければなりません。警察官の証明証には警察官番号、名前、階級が記されています。裏には証明証発行者の署名があります。

Intraasia注:警察官の身分証明証は国民が義務携帯する MyKad のような高機能なICチップ埋め込みカードではなく、昔ながらの身分証形式であり手書きされています。


質問:調べを受ける者が、尿検査を拒むことができますか?
答:もしその者が尿検査用の尿サンプルを提供しなければ、違反行為をしているのでしょう。現実にその者は法律を妨害しています。その者は麻薬使用者かどうかを判断されるために、尿検査を受けなければなりません。

質問:被疑者は警察の取り調べを受ける前に弁護士に面談する権利がありますか?
答:それはその事件の性格によります。警察には弁護士が被疑者に面接することを許す、許さないという権利があるので、被疑者の弁護士との面談は警察の裁量下にあるのです。

質問:ある者が警察に逮捕された時、警察は逮捕者に対してその者には権利があることを通知しなければなりませんか?
答:連邦憲法の5(3)節には、逮捕する警察官はその者に対してなぜ逮捕されるかを通知しなければならないとある。警察官は逮捕の理由を告げなければなりません。これは逮捕令状あり、なしに関わらず同様です。
以上引用。

よくあるケースとして、パブやディスコが一斉取締りにあった場合、その店内にいた客は全員薬物使用を調べるための尿検査を受けることになります。もちろん外国人でも旅行者でも検査対象になりますよ。その時人はやましいことがあろうとなかろうと、その尿検査は拒めないということです。これはマレーシア人なら誰でも認識していることでしょう。

なるほど、弁護士接見を要求しても、それを認める認めないはすべて警察の裁量次第なのですね。覚えておきましょう。

経験豊かな弁護士が説明する

次ぎは、警察に逮捕された者、拘置された者に関しての交渉などに経験豊富な弁護士 Latheefa Koya 女史の解説です。以下引用。

逮捕された外国人は、その理由が Imigresen関連すなわち出入国滞在関連の法律違反なのかどうかを告げられるべきです。なぜならImigresen関連の法律では、外国人は最長2週間まで拘留できますが、普通の刑事犯罪では拘留は24時間までで、それを超える場合は裁判所に連れて行く必要があります。(Intraasia注:裁判所で拘留延長を申請するためですね)

逮捕された者が弁護士に接見できる権利に関して、女史は説明する、「マレーシア憲法では弁護士を呼ぶ権利があります、しかしその権利がどの時点で実施されるかについては述べていません。ある者が警察に逮捕されて取調べが始まるとき、警察は弁護士を遠ざけることができます、弁護士が取調べに干渉していると言うのです。よってこの権利は非効果的です。」 

これに関して女史の説明は続く、「一般の刑事事件の場合、被疑者はどういう容疑で連行されるのかわからないままに逮捕されることもあります、そして弁護士に接見できないので、被疑者は相談を得られない。もちろん警察が弁護士接見を認める場合もあります、しかし多くの場合は被疑者が裁判所に連れ出されるまでは全く弁護士に接見できません。」 さらに重大な問題は貧しい被疑者の多くは適正な弁護士を雇えないとことだと女史は語る、しばしばこういう被疑者は法律援助にすがらざるを得ない、そして法曹学院の学生しか得られないことになる、とのことです。

「(捜査される者の家などの場所を)捜査する場合、技術上は捜査令状が必要です。しかし警察は捜査令状なくして捜査をしなければならないと説明できるような情状酌量の状況があります。例えば被疑者が証拠を隠滅しようとしていたと警察が主張できる場合です。よって現実には警察は急に押しかけて、どのような証拠もそうだと言えます。」

保釈に関して、Latheefa Koya 女史は説明する、「その件が保釈が認められる犯罪であるとの前提で、保釈は権利です。しかし多くの場合、裁判所は保釈金を被疑者が払えないような高額に設定します。マレーシアの刑事訴訟法はインドの法律体系を取り入れています、しかし不幸にも保護手段を伴っていません。」 「それ故に、テロリズムから我々を守るために国内治安法のようなものを求める時、我我は市民の自由を守る法律があまりないことを心しなければなりません。国内治安法では、ある者を60日間起訴することなく拘留できるのです。」

米国の法律で定められている、被疑者に黙秘する権利があることを伝えるようなことは、マレーシアでは決して実施されないと弁護士 Latheefa Koya 女史は説明しています。
以上引用。

ということから、マレーシアおける種種の法律的権利や市民の自由はあくまでもマレーシアの地に”合わせた”それなのだということが、わかりますね。



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